聖剣/乱舞 後編
それは輝ける聖剣。
それは輝ける神聖。
謳い給え、祝福せよ、其は聖剣たるものの最高位。
星が鍛え上げた神造兵器の一振り。
それは輝ける神聖。
謳い給え、祝福せよ、其は聖剣たるものの最高位。
星が鍛え上げた神造兵器の一振り。
「なっ……」
不可視の鞘を取り払い、抜き放たれたそれは美しき装飾の施された聖剣。
嗚呼、美しきかな。
嗚呼、偉大なるかな。
その聖剣の正体を知らぬものなどいない、その刀身に戦慄が走らぬものなどいない。
だがしかし、対峙する流鏑馬 勇士郎だけは違う態度だった。
困惑に、驚愕を顔に張り詰めて、呟くのみ。
嗚呼、美しきかな。
嗚呼、偉大なるかな。
その聖剣の正体を知らぬものなどいない、その刀身に戦慄が走らぬものなどいない。
だがしかし、対峙する流鏑馬 勇士郎だけは違う態度だった。
困惑に、驚愕を顔に張り詰めて、呟くのみ。
「エクスカリバーだと?」
それは姿が違えども、己が握る聖剣と同一。
握り手など居ないはず。
己以外に使い手がいないはずの遺産。
勇士郎は理解する。
何故己が握っていた聖剣に驚愕していたのかを。
何故己が手にした鞘に動揺したのかを。
なるほど、彼女もまた担い手。
同じ聖剣の――
握り手など居ないはず。
己以外に使い手がいないはずの遺産。
勇士郎は理解する。
何故己が握っていた聖剣に驚愕していたのかを。
何故己が手にした鞘に動揺したのかを。
なるほど、彼女もまた担い手。
同じ聖剣の――
「そう、これが私の剣。再び訊ねましょう、何故貴方がエクススカリバーを持っている?」
同じ聖剣。
再現されし宝具。
継承されし遺産。
姿は変わり、使い手も変えて、二刀の聖剣がこの地にて相見える。
再現されし宝具。
継承されし遺産。
姿は変わり、使い手も変えて、二刀の聖剣がこの地にて相見える。
「それはこちらの台詞だな、何故君がエクスカリバーを所有している。もうこれは……俺以外が手にするはずもない剣なのに」
勇士郎は静かに言葉を紡ぐ。
かつての養父を思い出す。
湖に沈められた王の刃、それを継承した己を育ててくれた円卓の騎士。
ベディヴィエール。
湖に聖剣を沈めた張本人。
アーサー・ペンドラゴンの最後を見届けた騎士。
彼は告げたのだ。
この手に継承した聖剣は紛れも無くエクスカリバーだと。
だがしかし、それならばどうなる?
目の前のエクスカリバー、そこから感じられる魔力は輝きこそ差があるものの質は同一。
自らも聖剣の担い手である以上、見間違えるはずなどない。
あちらも本物だ。
真作と真作、二つが出会えば、どちらかが贋作だと常識ならば告げるだろう。
だがしかし、その常識の通用しない場所にウィザードは立つ。
“常識の領域外である魔法使い”、それがウィザードなのだから。
かつての養父を思い出す。
湖に沈められた王の刃、それを継承した己を育ててくれた円卓の騎士。
ベディヴィエール。
湖に聖剣を沈めた張本人。
アーサー・ペンドラゴンの最後を見届けた騎士。
彼は告げたのだ。
この手に継承した聖剣は紛れも無くエクスカリバーだと。
だがしかし、それならばどうなる?
目の前のエクスカリバー、そこから感じられる魔力は輝きこそ差があるものの質は同一。
自らも聖剣の担い手である以上、見間違えるはずなどない。
あちらも本物だ。
真作と真作、二つが出会えば、どちらかが贋作だと常識ならば告げるだろう。
だがしかし、その常識の通用しない場所にウィザードは立つ。
“常識の領域外である魔法使い”、それがウィザードなのだから。
「一言告げよう。君の聖剣は本物か? 俺のエクスカリバーと同一の力を感じる、まるで同じもののように」
吹き荒ぶ風のような剣気を発し、夜闇に吹くビル風が勇士郎の紅い外套をなびかせる。
彼はただ立ち尽くしていた。
鋭く構えられた刀身のように油断無く、偽りを貫き切り開いて真実を手に入れようとするかのように。
彼はただ立ち尽くしていた。
鋭く構えられた刀身のように油断無く、偽りを貫き切り開いて真実を手に入れようとするかのように。
「でしょう。私もそれが本物だと感じている、だからこそ不可解だ。同じ聖剣が二つ存在する、そんな矛盾を世界が許すはずがない」
冷たく、鋭い刃先のような双眸が勇士郎を射抜く。
息を飲むほどに鮮烈な少女の顔が剣気を纏いて、一種の芸術品じみた美しさを放っていた。
二つの聖剣の担い手。
二つの聖剣、それは合ってはならぬ矛盾の塊。
同一たる聖剣が対峙するなどありえないのだ。
ならば、その謎を紐解くには互いの聖剣、その逸話を語るしかあるまい。
息を飲むほどに鮮烈な少女の顔が剣気を纏いて、一種の芸術品じみた美しさを放っていた。
二つの聖剣の担い手。
二つの聖剣、それは合ってはならぬ矛盾の塊。
同一たる聖剣が対峙するなどありえないのだ。
ならば、その謎を紐解くには互いの聖剣、その逸話を語るしかあるまい。
「ならば、告げよう。俺の聖剣の由来を」
勇士郎は判断し、言葉を奏で上げる。
右手に構えた麗しい、かつて幾多のエミュイレターを切り裂き、貪欲の魔王を滅ぼす一因となった受け継がれし王の刃を掲げる。
右手に構えた麗しい、かつて幾多のエミュイレターを切り裂き、貪欲の魔王を滅ぼす一因となった受け継がれし王の刃を掲げる。
「湖の貴婦人より授かりし聖剣、かつての死せし騎士王より継承された剣。それが俺の聖剣だ」
「っ」
セイバーは眉を潜める。
ほんの僅かだが、驚きに目を見開く。
湖に返された聖剣、それを受け継いだと目の前の少年は告げたのだ。
それはすなわち――己の死を意味するのではないか?
忘れていたわけではない。
今は時を乗り越え、英霊としてあるだけの身。
本来の我が身は己が息子の恨みの刃を受け、死を待つだけの身だということを忘れていたわけではない。
いずれは死ぬ。
人と同じように、決して逃げられない事実。
けれど……その事実にセイバーは怯えることなど許されない。否、当然のものとして受け止める。
この身は世界との契約にして成り立つ仮初の命。
泡沫の夢。
それを自覚するべきだ。
だがしかし、一つだけ喜ぶべきことがある。
ほんの僅かだが、驚きに目を見開く。
湖に返された聖剣、それを受け継いだと目の前の少年は告げたのだ。
それはすなわち――己の死を意味するのではないか?
忘れていたわけではない。
今は時を乗り越え、英霊としてあるだけの身。
本来の我が身は己が息子の恨みの刃を受け、死を待つだけの身だということを忘れていたわけではない。
いずれは死ぬ。
人と同じように、決して逃げられない事実。
けれど……その事実にセイバーは怯えることなど許されない。否、当然のものとして受け止める。
この身は世界との契約にして成り立つ仮初の命。
泡沫の夢。
それを自覚するべきだ。
だがしかし、一つだけ喜ぶべきことがある。
「そうですか……」
ふっとセイバーの口元が和らぐ。
嬉しそうに、雪が温かく溶けるかのような、ほんの少しの温かさ。
嬉しそうに、雪が温かく溶けるかのような、ほんの少しの温かさ。
「ベディヴィエールは確かに聖剣を返してくれたのですね」
「? 彼を知っているのか」
聖剣を継承せし時に自らに剣技を教え、育ててくれた養父の名前に勇士郎は反応する。
「ええ。彼は私にもっとも仕えてくれた忠臣なのですから」
「なに?」
「私は喜ぶべきなのでしょう」
勇士郎の疑問の言葉も捨て置いて、セイバーの身は歓喜に満ち溢れる。
記憶を思い出す。
英霊となり永き時が重ねられた。
未だに肉体を持ち、記憶を重ね続ける己には遠き過去。
けれど、忘れることなどない。
円卓の騎士の戦いを。
自らの国が滅び行く様を。
最後の死せし時を、聖剣を返すように命じたベディヴィエールの顔を忘れることなどない。
喜びたまえ、約束は果たされた。
歓喜せよ、目の前に立つ少年に。
己の刃は死してもなお終わる事無く、継承されたのだ。
聖剣は終わらぬ、自らが死んでも、誰かが振るい続ける。
正しき心を持って、誰かのために振るわれ続けるのだろう。
彼の真っ直ぐな心は打ち合いながらに理解し、把握し、共感している。
剣士の心は太刀筋に現れる。
卑しき心はどこか卑屈になり、歪んだ心は歪んだ太刀筋になり、正しき信念は無駄なく刃に力を乗せるだろう。
彼の振るう太刀は邪法でも外道でもなく正道。
どこかで見覚えのある、どこかで感じ取る、かつての円卓の騎士の太刀筋によく似ていた。
誰かに教わったのだろう。
己が死んだ後か、それとも前か、いずれかの円卓の騎士より剣を習ったに違いない。
記憶を思い出す。
英霊となり永き時が重ねられた。
未だに肉体を持ち、記憶を重ね続ける己には遠き過去。
けれど、忘れることなどない。
円卓の騎士の戦いを。
自らの国が滅び行く様を。
最後の死せし時を、聖剣を返すように命じたベディヴィエールの顔を忘れることなどない。
喜びたまえ、約束は果たされた。
歓喜せよ、目の前に立つ少年に。
己の刃は死してもなお終わる事無く、継承されたのだ。
聖剣は終わらぬ、自らが死んでも、誰かが振るい続ける。
正しき心を持って、誰かのために振るわれ続けるのだろう。
彼の真っ直ぐな心は打ち合いながらに理解し、把握し、共感している。
剣士の心は太刀筋に現れる。
卑しき心はどこか卑屈になり、歪んだ心は歪んだ太刀筋になり、正しき信念は無駄なく刃に力を乗せるだろう。
彼の振るう太刀は邪法でも外道でもなく正道。
どこかで見覚えのある、どこかで感じ取る、かつての円卓の騎士の太刀筋によく似ていた。
誰かに教わったのだろう。
己が死んだ後か、それとも前か、いずれかの円卓の騎士より剣を習ったに違いない。
(私の聖剣を振るうために)
エクスカリバーの担い手として振るい続けたのだろう、それだけの練度が、一体感が彼にある。
ならば、ならば、ならば!
ならば、ならば、ならば!
「確かめてあげましょう」
「どういう意味だ?」
己が内に言葉走らせるセイバーに、勇士郎は眉を潜め、警戒を強めていた。
「貴方がエクスカリバーを……かつての私の聖剣の継承者として相応しいかどうか!」
「なっに? な、まさか君は!」
勇士郎はセイバーの言葉に、同時に彼女が握る聖剣を見て、一つの確信を得る。
まさか、まさか、まさかと疑問は反芻し、ありえないと叫ぶ理性がある。
されど、本能が叫ぶのだ。その身に刻まれた魂の歴史が、己の埋没した記憶の中で語られる養父の物語に合致するのだ。
ブルー・アース。
流鏑馬 勇士郎。彼がこの手にエクスカリバーを手にし、使いこなした人物はただ一人。
知らぬものなどいない。
世界に届く最高の騎士たる王。
まさか、まさか、まさかと疑問は反芻し、ありえないと叫ぶ理性がある。
されど、本能が叫ぶのだ。その身に刻まれた魂の歴史が、己の埋没した記憶の中で語られる養父の物語に合致するのだ。
ブルー・アース。
流鏑馬 勇士郎。彼がこの手にエクスカリバーを手にし、使いこなした人物はただ一人。
知らぬものなどいない。
世界に届く最高の騎士たる王。
「今こそ名乗りましょう! 我が真名を、アーサー・ペンドラゴンの名を!」
剣の英霊にして、騎士王たる少女は吼える。
歓喜に、剣気に、殺意に、全細胞を震わせて闘争に挑むのだ。
魔力を放出し、その身が光に溢れる。
歓喜に、剣気に、殺意に、全細胞を震わせて闘争に挑むのだ。
魔力を放出し、その身が光に溢れる。
「……なるほど」
驚愕はその名を聞いた次の瞬間には掻き消えた。
変わりに浮かび上がったのは奇しくも同じ歓喜。
自らが所有する聖剣、その最初の担い手。
ならば、納得しよう。
その苛烈なる剣技を、見るもの全てを魅了する美しき剣舞の数々を。
ならば、楽しもう。
自らの養父が生涯をかけて仕え続けた、円卓の騎士たちの主君との戦いを。
変わりに浮かび上がったのは奇しくも同じ歓喜。
自らが所有する聖剣、その最初の担い手。
ならば、納得しよう。
その苛烈なる剣技を、見るもの全てを魅了する美しき剣舞の数々を。
ならば、楽しもう。
自らの養父が生涯をかけて仕え続けた、円卓の騎士たちの主君との戦いを。
「ならば、名乗ろう! 俺こそがエクスカリバーの継承者だと! 我が師は円卓の騎士が一人、ベディヴィエール!」
全身に溢れるほどの神々しいプラーナを放射する。
周囲がひび割れ、その圧倒的な存在力に押し負けるかのようにビルの屋上がひび割れていく。
かの者は勇者。
蒼き惑星に選ばれし守護者が一人――ブルー・アース。
その力は、その誇りは、その存在は決して世界の守護者たる英霊に劣るものではない。
周囲がひび割れ、その圧倒的な存在力に押し負けるかのようにビルの屋上がひび割れていく。
かの者は勇者。
蒼き惑星に選ばれし守護者が一人――ブルー・アース。
その力は、その誇りは、その存在は決して世界の守護者たる英霊に劣るものではない。
「古き名は捨てた。今の我が身は流鏑馬 勇士郎として存在する! 故に告げよう、アーサー・ペンドラゴン! 貴方に決闘を挑むと!」
「――受けて立ちましょう!」
互いに浮かぶのは笑み。
凍れるほどの冷たく、肌が切れるほどの鋭い剣気を放つ剣の英霊は己の聖剣を油断無く構え。
煮え滾るほどに熱く、肌が裂けるほどに苛烈な剣気を放つ勇者は己の聖剣を、守護の鞘を左右に構え。
凍れるほどの冷たく、肌が切れるほどの鋭い剣気を放つ剣の英霊は己の聖剣を油断無く構え。
煮え滾るほどに熱く、肌が裂けるほどに苛烈な剣気を放つ勇者は己の聖剣を、守護の鞘を左右に構え。
『参る!』
ほぼ同時に叫び、踏み込んだ。
「おぉおおおお!」
剣の英霊たるセイバーの踏み込みは亜音速を超え、その剣閃は音速を凌駕する速度を持つ。
未熟な魔術使い衛宮士郎と契約し、本来の能力から大幅に弱体化した身であっても、それだけの能力を保有している。
ならば、今魔力放出で一時的に本来の能力に近い状態であれば?
その踏み込みは――音速を超える。
音響の壁という障害すらも強靭な身体能力と迸る魔力による干渉により無効化し、剣圧が大地を抉るほどの剣閃を放てる。
人の身ではありえない、到達し得ない領域に存在する動作。
それが英霊たる規格外の存在、人の身でありながら精霊の域にまで転位したかつての英雄。
そして、それに立ち向かうのは言うならば現世の英雄。
世界を守護する常識外の住人、夜闇の魔法使い。
その身は英霊に追いつけるか、立ち向かえるのか、本来の強さを誇る英霊に人の身で追いつけるのか。
未熟な魔術使い衛宮士郎と契約し、本来の能力から大幅に弱体化した身であっても、それだけの能力を保有している。
ならば、今魔力放出で一時的に本来の能力に近い状態であれば?
その踏み込みは――音速を超える。
音響の壁という障害すらも強靭な身体能力と迸る魔力による干渉により無効化し、剣圧が大地を抉るほどの剣閃を放てる。
人の身ではありえない、到達し得ない領域に存在する動作。
それが英霊たる規格外の存在、人の身でありながら精霊の域にまで転位したかつての英雄。
そして、それに立ち向かうのは言うならば現世の英雄。
世界を守護する常識外の住人、夜闇の魔法使い。
その身は英霊に追いつけるか、立ち向かえるのか、本来の強さを誇る英霊に人の身で追いつけるのか。
「あぁあああ!!!」
共に踏み込んだ、勇士郎の速度は音速を超えた。
音響の壁が物理法則に基づき、彼の体を粉砕しようと襲い掛かり――発生した“月衣”により無効化される。
月衣、ウィザードを常識外の領域に位置させる異相結界。
月衣を纏えば如何なる環境であろうとも生存を約束し、熟達した使い手であれば虚空すらも足場と変える、己の常識を世界に押し付けるまさしく異能。
その領域内で物理法則は我侭に改竄されるのだ。
鍛え上げた肉体は限界を知らずに増強し、鍛え込まれ続ける。
加速し続ける速度は限界を知らず、如何なる壁をも乗り越える、光速に至ろうとも光に還元されない無限大の速度へと達することを可能とする。
ならば、莫大なプラーナによって後押しされ、強化された四肢を持って踏み込んだ勇士郎の速度は隔てられることはあるか?
否!
いかに精霊の領域にある英霊であろうとも、その身がウィザードであり力量が追いつけば太刀打ち出来る。
音響の壁が物理法則に基づき、彼の体を粉砕しようと襲い掛かり――発生した“月衣”により無効化される。
月衣、ウィザードを常識外の領域に位置させる異相結界。
月衣を纏えば如何なる環境であろうとも生存を約束し、熟達した使い手であれば虚空すらも足場と変える、己の常識を世界に押し付けるまさしく異能。
その領域内で物理法則は我侭に改竄されるのだ。
鍛え上げた肉体は限界を知らずに増強し、鍛え込まれ続ける。
加速し続ける速度は限界を知らず、如何なる壁をも乗り越える、光速に至ろうとも光に還元されない無限大の速度へと達することを可能とする。
ならば、莫大なプラーナによって後押しされ、強化された四肢を持って踏み込んだ勇士郎の速度は隔てられることはあるか?
否!
いかに精霊の領域にある英霊であろうとも、その身がウィザードであり力量が追いつけば太刀打ち出来る。
超音速の衝撃破を撒き散らしながら、聖剣の担い手達が激突する。
我に敵する聖剣よ、折れろと聖剣が吼える。
輝ける蒼き刀身が、青白く光る刃によって打ち弾かれる。
王は剣によって語る。
我は正当なる剣の所有者、始まりの剣にて、幾多の戦場を潜り抜けし騎士王だと。
勇者は剣によって語る。
我は正当なる剣の後継者、続く剣にて、永劫の戦いを切り開き続けた勇者だと。
聖剣/乱舞。
踊る、舞う、剣舞する。
音速を超えた斬撃が、先ほどまでの斬撃とは比べ物にならない初速を魅せ、終速にて加速する。
弾く、弾く、捌く。
火花散る、金属音が鳴り響く、獅子の咆哮が如く剣風が大気を抉り、衝撃破がアスファルトの床を粉砕していく。
先ほどまでは技量の戦い。
先ほどまでは殺意ある探り。
ならば、ここからは斬り砕くための死合に他ならない。
己の誇りにかけて、己の手に持つ聖剣にかけて、前に立つ剣士に敗れることは許されない。
魅せよ。約束されし勝利の剣よ。この手に勝利を見せよ!
魅せよ。受け継がれし王の刃よ。この手に重ねた歴史が無駄ではなかったことを証明せよ!
剣を重ね、刃を繰り返し、人ならぬ闘争を見せる二人は果たして人なのだろうか?
否、まさしく獣、あるいは怪物、或いは幻想。
約束されし勝利の剣、聖剣を振るい放つ騎士王は例えるならば竜。
己が血脈に繋げた最強の幻想たる血を滾らせ、牙の変わりに聖剣を、炎の代わりに魔力を放出し、鮮烈なる王者の威厳を放つ。
受け継がれし王の刃、聖剣を担い掲げる勇者は例えるならば虎。
己が歴史に積み重ねし闘争の経験はもはや本能として息吹を上げ、爪の代わりに聖剣を、しなやかなる動きの代わりに守護の鞘を持って剣閃を翻弄し、苛烈なる勇者の闘気を発す。
共に同じ聖剣。
されど、重ねた歴史は異なる、形状も異なる、使い手も異なる。
故に同一ではありえない。
二つに分かれた聖剣たちは同じではありえない。
共鳴し、感応し、共に同じ自分でありながらも憎悪し、恋焦がれる聖剣たちの歌を聞け。
二振りの聖剣は使い手と同じく、あるいは異なりながらも、息吹を発し、互いの聖剣へと噛み付き合う。
己こそが本物だと主張するかのように。
己の使い手こそが優れていると褒め称えるかのように。
近親憎悪にして同類愛。
憎みながらも愛し、愛しながらも憎む、刃たちの心はまるで塗り固められた感情の塊のようだった。
切れろ、砕けろ、切り裂け。
刃に篭められし念、刀身に染み渡る一念、斬撃にこめし切断の士魂。
剣士としての念こそが勝負を付けるとばかりに、セイバーは、勇士郎は心を刃に乗せて、振るい貫く。
輝ける蒼き刀身が、青白く光る刃によって打ち弾かれる。
王は剣によって語る。
我は正当なる剣の所有者、始まりの剣にて、幾多の戦場を潜り抜けし騎士王だと。
勇者は剣によって語る。
我は正当なる剣の後継者、続く剣にて、永劫の戦いを切り開き続けた勇者だと。
聖剣/乱舞。
踊る、舞う、剣舞する。
音速を超えた斬撃が、先ほどまでの斬撃とは比べ物にならない初速を魅せ、終速にて加速する。
弾く、弾く、捌く。
火花散る、金属音が鳴り響く、獅子の咆哮が如く剣風が大気を抉り、衝撃破がアスファルトの床を粉砕していく。
先ほどまでは技量の戦い。
先ほどまでは殺意ある探り。
ならば、ここからは斬り砕くための死合に他ならない。
己の誇りにかけて、己の手に持つ聖剣にかけて、前に立つ剣士に敗れることは許されない。
魅せよ。約束されし勝利の剣よ。この手に勝利を見せよ!
魅せよ。受け継がれし王の刃よ。この手に重ねた歴史が無駄ではなかったことを証明せよ!
剣を重ね、刃を繰り返し、人ならぬ闘争を見せる二人は果たして人なのだろうか?
否、まさしく獣、あるいは怪物、或いは幻想。
約束されし勝利の剣、聖剣を振るい放つ騎士王は例えるならば竜。
己が血脈に繋げた最強の幻想たる血を滾らせ、牙の変わりに聖剣を、炎の代わりに魔力を放出し、鮮烈なる王者の威厳を放つ。
受け継がれし王の刃、聖剣を担い掲げる勇者は例えるならば虎。
己が歴史に積み重ねし闘争の経験はもはや本能として息吹を上げ、爪の代わりに聖剣を、しなやかなる動きの代わりに守護の鞘を持って剣閃を翻弄し、苛烈なる勇者の闘気を発す。
共に同じ聖剣。
されど、重ねた歴史は異なる、形状も異なる、使い手も異なる。
故に同一ではありえない。
二つに分かれた聖剣たちは同じではありえない。
共鳴し、感応し、共に同じ自分でありながらも憎悪し、恋焦がれる聖剣たちの歌を聞け。
二振りの聖剣は使い手と同じく、あるいは異なりながらも、息吹を発し、互いの聖剣へと噛み付き合う。
己こそが本物だと主張するかのように。
己の使い手こそが優れていると褒め称えるかのように。
近親憎悪にして同類愛。
憎みながらも愛し、愛しながらも憎む、刃たちの心はまるで塗り固められた感情の塊のようだった。
切れろ、砕けろ、切り裂け。
刃に篭められし念、刀身に染み渡る一念、斬撃にこめし切断の士魂。
剣士としての念こそが勝負を付けるとばかりに、セイバーは、勇士郎は心を刃に乗せて、振るい貫く。
「らぁあああ!」
「ぉおおお!」
床を踏み砕きながら、高速のステップを踏む。
全ての剣を躱すのではなく、見切り、逸らし、互いに有利な位置へと移動する。
脚の技法、これもまた剣士には必須。
戦場で囲まれれば命は絶えるだろう、その戦いを十の年月で、十二もの会戦を潜り抜けたアーサー王が身に付けていないわけが無く、幾多の異世界――月匣に侵入し、少数で無数のエミュレイターを斬り屠り続けた勇士郎もまた熟知。
少しでも有利な位置を、少しでも均衡を崩せば、流れは途端に引き寄せられる。
完全なる同一体による綱引きのように、或いは百日戦争のように、二人の力量は拮抗していた。
間断なく剣を交えながらも、足を動かし、踊るように場所を変え続ける。
ソードダンス、剣舞、命がけの演舞を二人は演じ続ける。
どちらかが死に果てるまで。
この振り下ろす、殺すための刃が、敵の肉体に食い込むまで。
全ての剣を躱すのではなく、見切り、逸らし、互いに有利な位置へと移動する。
脚の技法、これもまた剣士には必須。
戦場で囲まれれば命は絶えるだろう、その戦いを十の年月で、十二もの会戦を潜り抜けたアーサー王が身に付けていないわけが無く、幾多の異世界――月匣に侵入し、少数で無数のエミュレイターを斬り屠り続けた勇士郎もまた熟知。
少しでも有利な位置を、少しでも均衡を崩せば、流れは途端に引き寄せられる。
完全なる同一体による綱引きのように、或いは百日戦争のように、二人の力量は拮抗していた。
間断なく剣を交えながらも、足を動かし、踊るように場所を変え続ける。
ソードダンス、剣舞、命がけの演舞を二人は演じ続ける。
どちらかが死に果てるまで。
この振り下ろす、殺すための刃が、敵の肉体に食い込むまで。
「ふっ!」
「しゅっ!」
――セイバーは横薙ぎに、勇士郎は縦に剣を振り翳し、聖剣同士が衝突する。
何合目の激突か、もはや数えることも馬鹿らしい。
世界有数の、最高の聖剣同士の衝突、そこから発せられる衝撃は計り知れぬ。
一度でさえも受け流すのをしくじれば途端に骨は歪み、肉は千切れ、神経は歪み狂うだろう。
例えるならばセイバーと勇士郎は戦車の主砲を至近距離で撃ち込み続けているようなものなのだ。
それを捌き続ける、或いは打ち出し続ける、一つのミスで崩壊する、ガラスのような均衡。
いつ崩れるか。
いつ終わるのか。
魂を削り、刃を削り上げ、果てしなき螺旋階段を登り続けるかのような二人、足を踏み外せば途端に奈落へと落ちる綱渡り。
重なる金属音の悲鳴の中で、セイバーは見る。勇士郎の喉が鳴らす、渇きを。
重なる火花の閃光の中で、勇士郎は見る。セイバーの額に浮かぶ汗を、疲れを。
人間は決して永遠を続けることなど出来ない。
いつか限界は来るのだ。
疲労という形で、軋みを上げる血肉はいずれ朽ち果てる。
両手で聖剣を振るい続ける剣の英霊にもまた放出し続ける魔力の限界は近づき、右に聖剣、左に鞘を掴んだ、言うなれば二つの武具を操りこなす勇士郎もまた肉体の限界が近づいていた。
勇士郎の全細胞が悲鳴を上げているのだ。
もはや無理だと、骨は断末魔のように軋みを上げて、肉は断裂したかのように痛みを発し続けて、流れる血は激流のごとく心臓を打ち鳴らし続ける。
強化を施し、肉体を鍛え続け、全ての無駄を削り取り続けた鍛錬の果ての極みたる剣技においても疲労は蓄積し、重なり続ける。
まずい、このままではいずれ剣閃は鈍り、切り捨てられるだろうと勇士郎は考えていた。
セイバーの肉体もまた限界に近づいていた。
士郎からのレイライン。
彼からの魔力量からしてこれ以上の放出は危険、彼の命にすら関わる――只でさえ危険な投影魔術を使い放った後だというのに。
主を考える彼女は判断する、これ以上長引くことは危険だと、大胆なる一手を打ってでも終止符を打つ必要があると。
奇しくも――否、同一の聖剣を持ち、同一なる剣士は必然として同じ結論に出る。
最後の一手を打つ必要があると。
己が最強の一撃を放ち、それで雌雄を決するしかあるまいと。
何合目の激突か、もはや数えることも馬鹿らしい。
世界有数の、最高の聖剣同士の衝突、そこから発せられる衝撃は計り知れぬ。
一度でさえも受け流すのをしくじれば途端に骨は歪み、肉は千切れ、神経は歪み狂うだろう。
例えるならばセイバーと勇士郎は戦車の主砲を至近距離で撃ち込み続けているようなものなのだ。
それを捌き続ける、或いは打ち出し続ける、一つのミスで崩壊する、ガラスのような均衡。
いつ崩れるか。
いつ終わるのか。
魂を削り、刃を削り上げ、果てしなき螺旋階段を登り続けるかのような二人、足を踏み外せば途端に奈落へと落ちる綱渡り。
重なる金属音の悲鳴の中で、セイバーは見る。勇士郎の喉が鳴らす、渇きを。
重なる火花の閃光の中で、勇士郎は見る。セイバーの額に浮かぶ汗を、疲れを。
人間は決して永遠を続けることなど出来ない。
いつか限界は来るのだ。
疲労という形で、軋みを上げる血肉はいずれ朽ち果てる。
両手で聖剣を振るい続ける剣の英霊にもまた放出し続ける魔力の限界は近づき、右に聖剣、左に鞘を掴んだ、言うなれば二つの武具を操りこなす勇士郎もまた肉体の限界が近づいていた。
勇士郎の全細胞が悲鳴を上げているのだ。
もはや無理だと、骨は断末魔のように軋みを上げて、肉は断裂したかのように痛みを発し続けて、流れる血は激流のごとく心臓を打ち鳴らし続ける。
強化を施し、肉体を鍛え続け、全ての無駄を削り取り続けた鍛錬の果ての極みたる剣技においても疲労は蓄積し、重なり続ける。
まずい、このままではいずれ剣閃は鈍り、切り捨てられるだろうと勇士郎は考えていた。
セイバーの肉体もまた限界に近づいていた。
士郎からのレイライン。
彼からの魔力量からしてこれ以上の放出は危険、彼の命にすら関わる――只でさえ危険な投影魔術を使い放った後だというのに。
主を考える彼女は判断する、これ以上長引くことは危険だと、大胆なる一手を打ってでも終止符を打つ必要があると。
奇しくも――否、同一の聖剣を持ち、同一なる剣士は必然として同じ結論に出る。
最後の一手を打つ必要があると。
己が最強の一撃を放ち、それで雌雄を決するしかあるまいと。
「おぉおおおおお!!」
そして、息吹を上げたのはセイバーが先だった。
降り注がれる剣戟、それらを受け弾き、捌き払うと、ピタリと魔力放出を抑える。
代わりに膨大なる魔力が刀身に注ぎこまれ――閃光を放つ。
降り注がれる剣戟、それらを受け弾き、捌き払うと、ピタリと魔力放出を抑える。
代わりに膨大なる魔力が刀身に注ぎこまれ――閃光を放つ。
「っ!?」
勇士郎は判断する。
彼女は賭けに出たと、何かを使う気だと、否――彼女が握る聖剣、それが己と同一であればやることは一つ。
彼女は賭けに出たと、何かを使う気だと、否――彼女が握る聖剣、それが己と同一であればやることは一つ。
「るぅうおおおおおお!!」
勇士郎もまた四肢に注ぎ込んでいたプラーナの量を莫大的に増幅させる。
己の命を燃やし尽くさんとばかりに、己の四肢すらも壊れるほどのプラーナを放出し、己の聖剣に宿す。
蒼き惑星の守護者、その勇者たる命を宿し、聖剣が神聖なる光を宿し始める。
その左手に握っていた守護の鞘を床に突き刺し、右手の聖剣を両手で握る。
己の命を燃やし尽くさんとばかりに、己の四肢すらも壊れるほどのプラーナを放出し、己の聖剣に宿す。
蒼き惑星の守護者、その勇者たる命を宿し、聖剣が神聖なる光を宿し始める。
その左手に握っていた守護の鞘を床に突き刺し、右手の聖剣を両手で握る。
「っ!」
セイバーの目が一瞬見開かれ、確信する。
そうか。
やはり、同じものか。
そうか。
やはり、同じものか。
「そうでしたね、貴方も――エクスカリバー!」
「アーサー・ペンドラゴン! 貴方のエクスカリバー、俺のエクスカリバー! どちらが上か!」
世界最高の聖剣が二つ、世界を割らんとばかりに吼え猛る。
光の柱が吹き上がる。
世界が狂乱し、怯え、喝采した。
見よ!
夜空の星よ、夜闇の月よ!
汝らでは決して届かぬ、太陽の如き二振りの聖剣の降臨を。
光の柱が吹き上がる。
世界が狂乱し、怯え、喝采した。
見よ!
夜空の星よ、夜闇の月よ!
汝らでは決して届かぬ、太陽の如き二振りの聖剣の降臨を。
――勝負!
心同じく、無声の咆哮を上げる竜虎。
二人が同時に踏み込む。
最後の決着を付けるために。
二人が同時に踏み込む。
最後の決着を付けるために。
「エクス/勝利すべき」
セイバーは腰溜めから前へと振り翳し。
「エクス/受け継がれし」
勇士郎は掲げ上げるかのように振り上げて。
【カリバー/約束の剣!!】/【カリバー/王の刃!!】
――解き放った。
その夜、空とビルは切り裂かれた。
それは天を切り裂かんばかりの光景だった。
セイバーが立っていたはずの場所から立ち上る――かつてライダーを■■するために解放された聖剣の一撃。
それが“二つ”
地上から空へと立ち上る光の柱のように噴き上げ、大気が震えるほどの衝撃だった。
セイバーが立っていたはずの場所から立ち上る――かつてライダーを■■するために解放された聖剣の一撃。
それが“二つ”
地上から空へと立ち上る光の柱のように噴き上げ、大気が震えるほどの衝撃だった。
「セイバー!」
屋上の歪んだ扉を蹴り破り、衛宮 士郎は滝のような汗を流しながら、己のサーヴァントの元に駆けつけた。
そして、そこに居たのは……
そして、そこに居たのは……
「あ、シロウ……来てくれたのですね」
震えるほどに美しい一人の少女だった。
結い上げていたはずの髪は解け、風に靡きながら、月光の元で輝く少女。
纏っていた鎧は無残に砕け、その頬には、その手には幾つものきり傷がある。
けれど、士郎は彼女を美しいと思った。
一瞬見惚れてしまった、けれどフルフルと頭を振って雑念を払うと、慌ててセイバーに駆けつける。
結い上げていたはずの髪は解け、風に靡きながら、月光の元で輝く少女。
纏っていた鎧は無残に砕け、その頬には、その手には幾つものきり傷がある。
けれど、士郎は彼女を美しいと思った。
一瞬見惚れてしまった、けれどフルフルと頭を振って雑念を払うと、慌ててセイバーに駆けつける。
「セイバー、大丈夫か!? 何があったんだ、まさかアーチャーの奴が……」
「いえ、大丈夫です……少し疲れましたが」
一度ぐらいの聖剣解放ではさすがに消失はしないが、堪えた。
汗が白銀の如きブロンドから滴り落ち、床で砕けた。
セイバーは改めて周囲を見渡す。
それは凄惨な状態だった。
たった十数分前まで繰り広げていた剣戟が、二つの聖剣の激突で荒れ果て、砕け散り、もはや崩壊近い状態だった。
セイバーからの要請で少なくない魔力を振り絞られ、滝のような汗を流しているにも関わらず士郎は心配そうな顔でセイバーを覗き込んでいる。
クスリとその様子にセイバーは微笑んだ。
汗が白銀の如きブロンドから滴り落ち、床で砕けた。
セイバーは改めて周囲を見渡す。
それは凄惨な状態だった。
たった十数分前まで繰り広げていた剣戟が、二つの聖剣の激突で荒れ果て、砕け散り、もはや崩壊近い状態だった。
セイバーからの要請で少なくない魔力を振り絞られ、滝のような汗を流しているにも関わらず士郎は心配そうな顔でセイバーを覗き込んでいる。
クスリとその様子にセイバーは微笑んだ。
「まぁ、無事だったらいいんだけど……本当に何があったんだ? アーチャーの姿は見えないけど、倒したのか?」
「いえ、彼はもう既に斬りました。私が聖剣を抜いたのは別の相手です」
「え?」
士郎が驚愕の瞳を浮かべて、セイバーに目を向ける。
「まさか、他のサーヴァントが――」
「違います。相手は流鏑馬 勇士郎と名乗る――私の剣を受け継いだ少年でした」
「しょう、ねん? いや、私の剣を受け継いだって!?」
士郎の困惑は限界だった。
何があったのか。
サーヴァントであるセイバーをここまで追い詰める、それはサーヴァントでしかありえない。
そう考えていたのに、今この冬木市にいるサーヴァントのどれでもないというのか?
何があったのか。
サーヴァントであるセイバーをここまで追い詰める、それはサーヴァントでしかありえない。
そう考えていたのに、今この冬木市にいるサーヴァントのどれでもないというのか?
「歳は……士郎と同じぐらいでしょうか。ウィザードと名乗るおそらく魔術師ですが、サーヴァントである私と互角の剣技を使いこなし、エクスカリバーまで持っています」
「え、エクスカリバー!? そんな、あれはセイバーしか」
「私の聖剣、ベディヴィエールが湖に沈めた聖剣の後継者らしいです」
マスターに先ほどであった少年の情報を伝えながらも、セイバーの意識は過去に飛んでいた。
あの瞬間、互いに聖剣を解放した瞬間。
永劫にも思える一瞬の時間、拮抗し、そして英霊としてのポテンシャルでセイバーのエクスカリバーが優ったのだ。
本来ならばそこでケリが付くはずだった。
しかし、それを――鞘が防いだ。
勇士郎の足元にあった守護の鞘は彼を護り、聖剣の一撃を受け止めた。
そのはずだ。
その後、勇士郎はセイバーの前から姿を消した。
ビルから落ちたのかもしれない。
普通ならば死んでいるはず、だがしかし、セイバーにはそう思えない。
何故ならば聖剣が囁くのだ。
まだ終わっていないと、まだ戦いは続いているのだと、感応し共鳴を続けている。
永劫にも思える一瞬の時間、拮抗し、そして英霊としてのポテンシャルでセイバーのエクスカリバーが優ったのだ。
本来ならばそこでケリが付くはずだった。
しかし、それを――鞘が防いだ。
勇士郎の足元にあった守護の鞘は彼を護り、聖剣の一撃を受け止めた。
そのはずだ。
その後、勇士郎はセイバーの前から姿を消した。
ビルから落ちたのかもしれない。
普通ならば死んでいるはず、だがしかし、セイバーにはそう思えない。
何故ならば聖剣が囁くのだ。
まだ終わっていないと、まだ戦いは続いているのだと、感応し共鳴を続けている。
「敵なのか?」
士郎は考えかねるかのように熟考し、その果てに出した質問。
それにセイバーは我に返り、静かに答えた。
それにセイバーは我に返り、静かに答えた。
「分かりません」
そう分からないのだ。
彼の背後にあるものが、彼が何の目的だったのか。
ただ風のように現れ、対峙し、姿を消した。
――ウィザード。
それは本当に魔術師のことなのか?
彼の背後にあるものが、彼が何の目的だったのか。
ただ風のように現れ、対峙し、姿を消した。
――ウィザード。
それは本当に魔術師のことなのか?
それとも……
「ただ何かが起きるのかもしれません」
静かにセイバーは空を仰ぎ見る。
美しい夜空だった。
嗚呼、今日も月は綺麗だった。
美しい夜空だった。
嗚呼、今日も月は綺麗だった。
嗚呼、今日も月は綺麗だな。
「やれやれ、死ぬかと思った」
ビルより遥か真下、地上を歩く勇士郎は静かに傷口に当てた光る指先――レイ・オン・フィンガーで止血をしながら呟いた。
聖剣の激突は彼の負けだった。
どうやらまだまだ聖剣としての使い手は先代の方が上らしい。
聖剣の激突は彼の負けだった。
どうやらまだまだ聖剣としての使い手は先代の方が上らしい。
「しかし、助かった」
月衣に仕舞った己の鞘に静かに礼を告げて、勇士郎は先ほどの激闘の舞台になったビルの屋上を見上げる。
プラーナで強化した視力で、屋上の縁に立つ二人の人影を見つめることが出来た。
アーサー・ペンドラゴン。
既に死んだはずの人物、転生者であろうともこの手にエクスカリバーがあり、持つことはありえないはずの少女。
そして、もう一人は仲間だろうか?
プラーナで強化した視力で、屋上の縁に立つ二人の人影を見つめることが出来た。
アーサー・ペンドラゴン。
既に死んだはずの人物、転生者であろうともこの手にエクスカリバーがあり、持つことはありえないはずの少女。
そして、もう一人は仲間だろうか?
「いずれにしても、今回も簡単には事が済みそうにないな」
プルルと0-PHONEの着信音を聞きながら、勇士郎は静かにため息を吐き出した。
これから続くだろう激闘の数々の到来を予見しながら。
こうして、聖剣を持つ二人の邂逅は終わる。
これはこれから先に待ち受ける戦乱の引き金か、それともただの偶然か。
それは誰にも分からない。
運命の夜は未だに終わりを告げないのだから。