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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第03話

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(flag.X3 非日常の境界)

―――輝明学園 天文部部室

トオルと麒麟は2人、天文部の部室で向かい合っていた。
トオルと麒麟がユリの覚醒の事情を調べ始めて早3日。
調査は暗礁に乗り上げていた。
「ダメだ…よく分からん」
トオルがため息をつく。
あの後、くれはの許可を取り、色々と調べてはみたものの、やはりよく分からない。
「検査の結果では何か、異世界のモンスターが絡んでる可能性があるって聞いたけど…」
それが何なのかまでは分からなかった。
「異世界のモンスターは専門外だからさっぱりね。人間にとりつく奴なんて腐るほどいるし」
昨日、極生のモンスターデータベースにアクセスして調べて見た麒麟がげんなりして答える。
この学園世界には数多くのモンスターが存在する。
多くはスライムやゴブリン、ゾンビやゴーストなどどの世界(主にファンタジー系の世界)にもいるモンスターなのだが、
稀に特定の学園でしか知られていない"固有種"や同名で全く違う性質を持つモンスターが別々の学園から登録されていたりして物凄くややこしいのだ。
「多分真面目に調べてたら1ヶ月くらいかかるわ。それに載ってるのかも分からないし…」
「だよなあ。けど、まるっきり情報なしってのもなあ…」
「そうね。誰かこういう情報に詳しい知り合いって…」
誰かいないものかと考えて見て…
「「…あ」」
2人同時に思いついた。
「ごめ~ん。ホームルームが長引いちゃった」
2人して顔を見合わせた瞬間、2人の目的の人物が入ってくる。
「「そうだ、葵先輩!!!」」
「ひゃっ!?何!?」
行き成り矛先を向けられ、戸惑う少女…子ノ日葵(ねのひあおい)に2人は同時に寄る。
「え?なに?どうしたの?」
困惑しきった葵に、真面目な表情で、トオルが言う。
「力を貸してほしいことがあるんだ…ゲシュペンスト」
その名を口にした瞬間。
「…なんだ。藪から棒に」
表情を一変させた葵…否、子ノ日葵の中に宿った精神寄生生命体ウィザード、ゲシュペンストが問い返した。


「朱野ユリがウィザード…それも落とし子に覚醒した、だと?」
トオルと麒麟の説明を聞き、ゲシュペンストが眉をひそめる。
「ああ。そうだ。くれは先輩の話じゃあ何か異世界のモンスターが関係してるって話なんだが…」
「私たちじゃあちょっと調べきれなかったわ。かといって橘先輩には聞くだけ無駄だろうし」
「なぜそれをワタシに言う?ワタシとて異世界の魔のことなど…ああ、そう言うことか」
何故そこで自分なのかを理解したゲシュペンストが言葉を漏らす。
ゲシュペンスト自身が知らずとも、ほぼ間違いなくその答えを知る存在に、ゲシュペンストは心当たりがある。
「そう、力を借りてもらえないかしら?その…秘密公爵さんに」
麒麟が少しだけ言いにくそうに、その通り名を口にする。
「俺からも頼む。他の方法じゃあ、時間がかかり過ぎる」
真剣な瞳で頼みこむ。
それに対しゲシュペンストは…
「…力を貸すのはやぶさかではない。ユリには過去世で世話になったこともある」
「じゃあ!」
「だが」
勢い込むトオルをゲシュペンストは制し、時計をちらりと確認して指を2本たて言葉を続ける。
「2時間待て」
「2時間…なんでまた?」
ゲシュペンストの言いだした言葉に、麒麟が首をかしげる。
それにゲシュペンストは溜息とともに答える。
「この世界に来てから、我が主に言われていてな。"6時"より前には呼ぶなと言われている」
「6時?」
「ああ。それまでは葵の手伝いでもしてやれ。お前らも一応は天文部員なのだろう?…それでは、また2時間後にな」
そう言うと共にゲシュペンストの表情が変わる。ゲシュペンストから、葵へと。
「…あれ?2人ともどうしたの?ってあれ?私今まで何を…」
葵がきょろきょろと2人を見回した。
「ど、どうしたんですかもうぼうっとしちゃって!」
「そ、そうだ。さ、今日は天文観測会の準備だったよな。俺は何すりゃあいいんだ?」
わけが分からないという葵を慌てて誤魔化す。
「あ、うん。それじゃあ…」
葵が混乱しながらも、2人にやって欲しいことの説明を始めた。

そして、2時間後…
「さて、そろそろか」
合同天文観測会の準備も一段落したところで、再びゲシュペンストに人格が表へと現れる。

「主よ。我が声にお答えください…」

目を閉じ、集中。そして小さな声で囁くようにゲシュペンストが"主"へと呼びかけた瞬間だった。
景色が揺らぎ、変わる。
畳の敷かれた小さな部室から、静謐が支配する広大な館へと。
永遠に続くかのように伸びた通路の両端を埋め尽くすのは、大量の本。本。本…
例え1000年の時を持ってしても読み終えることが出来ないであろう無数の本が明り取りの窓から差し込む紅き月に照らされて紅く染まり、黴とインクの混ざりあった芳香を漂わせる。
そう、そこはただ1人、この館の主のためだけに作られた図書館だった。

コツコツコツ…

静謐が破られる。何処からともなく響いてくる、密やかな足音によって。

バサバサバサバサッ!

どこからか飛んできた紙が舞い踊り、集まる。まるで何かを形作るように。
そして、一度はひとところへと集まった紙が何処かへと飛び去った時。

「呼びましたか?我が僕、ゲシュペンストよ…」
うっそりとした瘴気を纏った、美しい女性…魔王の1柱"秘密侯爵"リオン=グンタがその場に現れた。
「はい。我が主よ。お聞きしたいことがあります」
恭しくその問いかけに答え、膝をおり、恭しく頭を下げるゲシュペンスト。
浮世離れした美少女と、それにかしづく美少女。実に絵になる光景だった。
そしてそんな2人を見て麒麟は。
「…え?」
目の前の光景に目を点にする。
「…どうかしたか?」
そんな麒麟の反応にゲシュペンストが顔を上げ、トオルたちを見る。
そう、既に慣れてしまったゲシュペンストは気づかない。その"おかしなところ"に。
一方、この場にいるもう1人、夜見トオルは気づいている。と言うより麒麟と同じ疑問を覚えていた。
「え~~~~と…そのな…」
この場に現れた存在…リオンの姿に。
「…なんでセーラー服なんだ?」
「…しまった!?」
その突っ込みに、ゲシュペンストが思わず声を上げ、主の方を見る。
そして、リオンはゆっくりと下を見て、自らの姿を確認する。

一本、臙脂色のラインが入った、深くカットされた水色の襟と袖口が特徴的な上着。
襟の下で結ばれた赤いリボン。
いつもの彼女の基準からはかなり短い、ひざ上20cmでカットされた水色のスカート。
黒いハイソックスと、学生ならではの特徴的なデザインの靴…いわゆる上履き。

そんな、どこからどう見てもセーラー服を着た女子高生にしか見えない、自分の姿を。
10秒、20秒、30秒…
誰も喋らないことによる沈黙が辺りを支配する。
元々が静寂を基本とするこの場には相応しいのかも知れないが、相手の出方を固唾を飲んで待つときの厭な緊迫感が漂っているせいか、微妙な空気になっている。
そしてその沈黙の中、渦中の張本人は。
「…趣味です」
言った。言いきった。そりゃあもうはっきりと。
「趣味!?」
「そうです。たまたまセーラー服の気分だっただけです。
 今日はたまたま部室で行われる団員全員参加の闇鍋パーティーのため遅くまで残っていたわけではありません」
「部室?…それに団員?」
「って言うか魔王が闇鍋パーティーって…」
混乱したまま思わず質問する2人。そんな2人に。
「……それ以上の追及は"質問"とみなしますが、続けますか?」
リオンは艶然とほほ笑み、聞き返す。
「「…うっ!?」」
その問いかけに、思わず2人は詰まった。
目の前の魔王が質問に答えてくれるのは、1セッション1回。それ以上は何があっても答えてはくれない。
そのことを2人は理解していた。

何故この魔王がセーラー服なのか?
気にならないと言えば嘘になるが、今はそんなことよりよっぽど大事なことがある。
そんなわけで。
「いいえ。何でも無いです。質問させてください…」
冷静さを取り戻したトオルがリオンに言った。

「…朱野ユリに覚醒をもたらした存在…それは駆け魂。そのことはこの書物に記されています」
本を広げ、眺めながらリオンはポツリと答えをもたらす。
「駆け魂?」
「はい。駆け魂です。またの名をヴァイス。地獄における権力闘争に敗北し、封印された古き悪魔の魂。女性の心の隙間に寄生し、復活しようとする習性を持ちます。
 そして、寄生された女性は駆け魂より力を与えられ、常人には無い能力を有する場合があります。ただし、心の隙間が大きくなるにつれその影響を受けやすくなるとも。
 放っておけば朱野ユリは駆け魂にとらわれ、不幸な結末を迎えるでしょう」
「そんな…」
魔王からの情報に麒麟は息をのむ。
「つ、つまりユリを助けるにはその駆け魂って奴を倒すなりユリから追い出すなりすりゃあいいんだな?」
トオルが自らの動揺を抑えながら、リオンに尋ねる。
「いいえ。それだけでは駄目です」
だが、トオルの問いに本から顔を上げたリオンはふるふると首を振り否定する。
「どういうことだ…?」
「朱野ユリは駆け魂の影響を受け、かつてその肉体に宿った魔王の瘴気を引き出すことで、落とし子として覚醒を果たしました。しかし…」
リオンが淡々と言葉を続ける。
「今の朱野ユリに落とし子の瘴気に耐えるだけの力はありません」
魔王ならではの酷薄さを持って。
「なんだって!?」
驚いた顔で聞き返すトオルに、リオンは言葉を続ける。彼女にとってはどうでもいいとでも言うように、あっさりと。
「落とし子とは侵魔に最も近きウィザード。その瘴気を力と出来るのもウィザードであるからこそ。
 ただ人には、瘴気は毒にしかなりえません。今は駆け魂から供給されるプラーナのお陰で安定していますが、もしそれが崩れれば、待っているのは…破滅」
パタンと。
本を閉じてリオンは踵を返す。
「…ここまでです。対価はいずれ、あなたの魂で。ゲシュペンスト」
「は。わざわざのご足労いただき、ありがとうございました。我が主よ」
傍らのゲシュペンストに声をかけ、来た時と同じように、リオンは帰ろうとする。
「あ!おい!待ってくれ!助ける方法は…ないのか!?」
「何でもいいの!貴方なら分かっているんじゃないの!?」
その背中にトオルは必死に声をかける。
「…答えるべき質問には既に答えました。私が答える質問は1つだけ。それが理(ルール)です」
帰って来たのは、答えではなく、答えの拒絶。
「人は人の、神は神の、そして魔王は魔王の理に従うのです」
ちらりとトオルの方を見て、続ける。
「私はただ、己が理に従うのみ。故に、答えは与えません」
それで終わりだと言うように、リオンは去って行く。それと同時に景色がぼやけ、崩れる。
魔王の時間は、終わったのだ。

「クソっ…!どうすりゃあいいんだ!」
ユリの身に何が起こっているのかは分かった。だが、その情報は、トオルには焦りしか与えなかった。
その事にトオルは動揺し、苛立ちを天文部の机にぶつける。そんなトオルに。
「さあな。だが、良かったじゃないか」
ゲシュペンストは飄々と返した。
「良かった?どういう意味だ?」
「我が主が言っていただろう?理に従うが故に"答えない"と…裏を返せば、"答え"事態は存在するということだ」
怒りを隠せない様子のトオルを諭すようにゲシュペンストが言葉を紡ぐ。
「それは…そうかも知れないけど。だったら、どうすればいいの?」
麒麟がゲシュペンストに尋ねる。
「さあな。それはワタシにも分からん。恐らくはお前たちで答えを出さねばならんことなのだろう」
その問いにゲシュペンストは首を振る。
「とにかく、とりあえずは俺はユリに会いに行く。あいつは今日は…」
選抜隊に行ったはず。そう、考え、立ち上がった時だった。
~~~♪
携帯から着メロが流れる。専用の音楽だ。
「…ユリからだ。ちょっと出て見る…おう。俺だ。どうし…?」
言葉を紡ごうとして、トオルは顔をしかめる。なぜならば。
「…あんたは…選抜の滝野智?…ああ、ユリの友達だったか?なんでユリの携帯で…」
ユリの携帯を使い、トオルにかけてきた選抜隊の少女が大慌てでトオルへの緊急の用事を伝える。
「…ユリが化け物と戦って保健室に運ばれた!?」
彼女の一番大切な人に、即刻伝えるべき内容を。


―――極上保健室

執行部をはじめとした、荒事を担当する部署のものも含めた極上生徒会のスタッフや『元の世界』では治療不可能な難病に冒された生徒たちのために作られた極上生徒会直轄の病院、
通称『保健室』は学園世界でも屈指の医療機関である。
貴重な秘薬や現代医学の知識、治癒魔法、果ては神の奇跡まで…各学園の治療技術の粋を集めた保健室の技術は、死人だって蘇らせるとまでうたわれている。
そんな、保健室の一室で。

「…ここは?」
朱野ユリはゆっくりと目を覚ました。
「あたしは…確か…?」
白い部屋とベッド。
「スイーツと戦って…それから」
「倒れたんだよ。力の使い過ぎらしい」
寝起きで鈍った頭で、何があったのかを考えるユリに声が掛けられる。
「え!?」
驚いて声のした方を見る。そこには。
「さっきまで外ハネの選抜委員が心配してたぞ」
手にしたゲーム機から視線を上げ、ユリを見つめる少年の顔があった。
「えっと…あなたは…桂木くん、だよね?」
「ああ。桂木桂馬。改めて、よろしく」
無表情に答える桂馬の顔をまじまじと見る。
先ほどはそんな余裕は無かったので気付かなかったが、『変身』したトオルと同じくらい整った端正な顔立ちの美少年である。
そんな桂馬に見つめられたユリは思わず視線を外す。
「よ、よろしく…あ」
挨拶をして、ユリの頭がようやく回転を始める。
「さっきはありがとう。助かったよ」
さっきの戦いは桂馬の冷静な判断が無かったら本当に危なかった。そう実感しているだけに、ユリの言葉には混じりけのない感謝の意が含まれていた。
「それはボクのセリフだ」
そんなユリに溜息をつき、桂馬が言う。
「アレ相手では、ボクだけでは逃げるしか選択が無かった。実際に倒したのはユリ。お前だろう…それに」
そもそもアレを作ったのはエルシィだしな。と言うセリフは飲み込む。
このシーンでは過度な変人属性はいらない。
「なんにせよ。ユリが無事で良かった。安心したよ」
そう言うと、桂馬はほほ笑んだ。裏表のない、直球の笑顔。
「へ!?あ、その…うん」
そんな桂馬の笑顔をまともに見れず、ユリは俯いてしまう。そんなユリを見て。
(…やはり性格は素直系。リアル離れはしていない明るい髪色のロングヘアーでチビじゃないからそうだろうとは思っていたが)
桂馬は顔には出さず、次の"攻略対象"を冷静に観察する。
(先ほどの戦い方を見るに特殊能力の扱いには慣れていなかった。恐らく力を使えるようになったのはごく最近。
 となると能力者系ヒロインにありがちな浮世離れはしていないな)
「…さてと。ボクはもうそろそろ行くよ。さっき君の友達が誰かを呼びに行ったみたいだし、ボクがいたら邪魔だろうからね」
冷静に次のアプローチを考えつつもそんなことはおくびにも出さず、桂馬は立ち上がる。
「…それじゃあ、また」
笑顔で別れの挨拶をする桂馬に。
「あ、うん。また…ね」
ユリがちょっとだけ赤くなりながら挨拶を返した。


「あ、神に~さま…」
桂馬が病室の外に出ると同時にかなりつかれた様子のエルシィが桂馬に声をかける。
「ひどい目にあっちゃいました」
つい先ほどまで、選抜隊にこってり絞られていたエルシィがため息を吐く。
「ちゃんと灯さんに聞いたレシピ通りに『マドレーヌあかりんスペシャル』を作っただけなのに…」
「お前はまずそこが一番の間違いだと気づけ。それより」
桂馬がエルシィに頼んでおいたことについて尋ねる。
「彼女…朱野ユリについては何か分かったか?」
「あ、はい。そうでした。色々聞いてきました」
先ほど、選抜隊の面々に聞いたことを桂馬に伝える。
「朱野ユリさんは、選抜隊の1人です。戦う力は無いけど、人当たりが良くて色んな人と仲良くなるのが得意です。だけど…」
「つい最近、戦う力を身につけた。違うか?」
「はい!そうなんです。何でも灯さんと同じ"うぃざーど"さんになったって聞きました。それで魔法が使えるようになったって」
「やはりか」
桂馬は先ほどの自分の分析が間違っていなかったことを確認する。そして、さらに考える。
「…明日から本格的に動く。選抜隊と言うことはエンカウントは放課後の街だな」
「りょうかいです!頑張りましょう!お~…ってうひゃあ!?」
ドンッ
新たな駆け魂狩りに燃えるエルシィが誰かにぶつかられてよろける。
「おっと!?」
ぶつかって来たのは一見するとごく普通風味の少年。紫色の制服を着ている。
「いったあ~」
「ごめん!急いでるんだ!じゃあな!」
特徴と言えば、怪しげで豪華なマントをつけていることくらい。
その少年は転んだエルシィを軽く拝んで謝ると再び駆けだし、病室へと入る。
「ん?あいつは…」
その入って行った病室に桂馬はわずかに眉をひそめ、すぐに結論を出す。
「エルシィ。羽衣でボクたちの姿を隠せ」
「え?」
「あいつ…ユリの病室に入って行った。恐らくさっき、智とか言う選抜委員が呼んだ奴だ。となると…」
ユリの関係者。あの格好と年齢から察するに…
「兄弟…それか、幼馴染。ユリに近しい間柄だ」
そして、エルシィに再度命令する。
「ユリとあいつの会話を聞く。このパターンだとこっそり聞く方が正解の確率が高い」
その会話を聞いておくことは今後の攻略への糸口となる、そう、直感して。




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