輝明学園。
一部の界隈では有名なその学園の高等部では、今日も今日とて世界の危機が―――
一部の界隈では有名なその学園の高等部では、今日も今日とて世界の危機が―――
「な、なにするんだよう!出れないじゃないかぁ!」
「へっへっへ…てめえが悪いんだろ?」
「高校生にもなって学校でトイレに行くなんて馬鹿な奴だぜ」
「へっへっへ…てめえが悪いんだろ?」
「高校生にもなって学校でトイレに行くなんて馬鹿な奴だぜ」
―――失礼。
世界の危機ではなく、悪質ないじめがが起きていた。
世界の危機ではなく、悪質ないじめがが起きていた。
「ぼ、僕の勝手じゃないかぁ!?
っていうか小学生とか中学生ならともかく、普通高校生ならおっきい方のトイレぐらいくだろ!?」
「知らねえなあ」
「水を上からぶっかけてやるぜ!」
「はっはっは!
今日は体育もないから着替えも持ってきていないはず!」
「濡れた制服で授業に出るがいい!」
「すこしすっぱい臭いをさせて女子に引かれるんだな!!」
「や、やめろおおおおおおおおおおお!?」
っていうか小学生とか中学生ならともかく、普通高校生ならおっきい方のトイレぐらいくだろ!?」
「知らねえなあ」
「水を上からぶっかけてやるぜ!」
「はっはっは!
今日は体育もないから着替えも持ってきていないはず!」
「濡れた制服で授業に出るがいい!」
「すこしすっぱい臭いをさせて女子に引かれるんだな!!」
「や、やめろおおおおおおおおおおお!?」
個室トイレに閉じ込められ、涙目のいじめられっ子。
扉の外では、数人のいじめっ子達がドアを抑えているのだろう、非力な彼がいくら頑張っても扉は開かなかった。
扉の外では、数人のいじめっ子達がドアを抑えているのだろう、非力な彼がいくら頑張っても扉は開かなかった。
いじめられっ子は、世の不条理を嘆く。
なんで僕だけいじめられるのか。
なんでいじめっ子達は僕を標的にするのか。
僕を守ってくれるヒーローはいないのか。
ちょっと気になるあの子の料理はもう少しうまくならないのか…!
なんで僕だけいじめられるのか。
なんでいじめっ子達は僕を標的にするのか。
僕を守ってくれるヒーローはいないのか。
ちょっと気になるあの子の料理はもう少しうまくならないのか…!
そう、思ったときだった。
「おい。
そこまでにしておけ」
そこまでにしておけ」
どこか、頼もしげな声が男子便所に響いた。
いじめっ子には姿が見えないが、その声だけで十分だった。
いじめっ子には姿が見えないが、その声だけで十分だった。
その男の人は間違いなく、かっこいいに違いない。
そんな、どこか的外れな思いをいじめっ子は抱く。
そんな、どこか的外れな思いをいじめっ子は抱く。
「そ、その微妙に悪い目つきと微妙にいいガタイ、そして身からあふれ出るどうしようもない不幸なオーラ…!
てめえは…!?」
「し、知っているのか瀬田!」
「へ…何やらいろいろ気になるが…俺のことを知ってるとはな。
なら、悪いことは言わねえ。
痛い目みねえうちにとっとと消せな」
「…噂の二年生…!ひいら「二年生じゃねえっ!?」
てめえは…!?」
「し、知っているのか瀬田!」
「へ…何やらいろいろ気になるが…俺のことを知ってるとはな。
なら、悪いことは言わねえ。
痛い目みねえうちにとっとと消せな」
「…噂の二年生…!ひいら「二年生じゃねえっ!?」
打音。打音。打音。
「げ…げふっ…間違った…ちゅうが「いい加減にしやがれっ!!」
さらに打音。
「へへ…お前のことは知っている…世にも不幸な男が「ちっくしょう…!!」
何やら地団太を踏みつつ、しつこく打音。
と、そこでようやくいじめっ子達は駆け出して行った。
と、そこでようやくいじめっ子達は駆け出して行った。
結果的にいじめっ子を助けた男は、しばし息を切らせていたが、間もなく、落ち着いた声でこう彼に呼びかけた。
「…あいつらはもういねえ。
出てくるんなら今のうちだぞ」
「…あ」
出てくるんなら今のうちだぞ」
「…あ」
今更ながら、いじめられっ子は扉を開く。
ぎい、という錆びた蝶番の音とともに、彼は個室トイレの外にでる。
扉の前には、彼の言うとおり、いじめっ子の姿はない。
そこにいたのは、一人の男。
ぎい、という錆びた蝶番の音とともに、彼は個室トイレの外にでる。
扉の前には、彼の言うとおり、いじめっ子の姿はない。
そこにいたのは、一人の男。
目つきが悪く。
どこか不幸そうで。
あるいは、どこか苦労性な雰囲気が漂い。
そして何より。
どこか不幸そうで。
あるいは、どこか苦労性な雰囲気が漂い。
そして何より。
「…ああ…やっぱりかっこいい…」
「…は?なんか言ったか?」
「い、いえ何も!」
「…変な奴だな。
ま、とにかく今度から気をつけろよ」
「…は?なんか言ったか?」
「い、いえ何も!」
「…変な奴だな。
ま、とにかく今度から気をつけろよ」
じゃあな、と言葉を残して去っていく男。
いじめられっ子は、その背中に向かって声をかける。
いじめられっ子は、その背中に向かって声をかける。
「あ、あの!!お名前は!」
「…名乗るほどのもんじゃねえさ」
「…名乗るほどのもんじゃねえさ」
軽く片手を上げ、男は去っていった。
少年の心が、ずきん、と痛む。
少年の心が、ずきん、と痛む。
その胸の痛みは、切なくて、重い。
それを紛らわすように、少年は。
それを紛らわすように、少年は。
「…貴方の背中…すごく、大きいです…」
頬を染め、つぶやいた。
ヒーローは、確かにいた。
少年―――真行寺命は、自分のことを助けてくれたヒーローの顔を、しかと、その眼に焼き付けたのであった。
少年―――真行寺命は、自分のことを助けてくれたヒーローの顔を、しかと、その眼に焼き付けたのであった。
「…何してるの、命」
「うわっ!?」
「うわっ!?」
突如かけられた声に、命は文字通り飛び上がった。
慌てて声の元を探ると、トイレの入り口に、彼の知った顔があった。
慌てて声の元を探ると、トイレの入り口に、彼の知った顔があった。
「あ、あかりん?どうしたの?」
「…命が、いじめられてたから」
「…命が、いじめられてたから」
ああ、と言って、顔見知りの少女に向かって命は笑う。
「大丈夫だよ…名前は知らないけど、僕を助けてくれた人がいたから」
「…そう。よかった」
「?あかりん、どうしたの?」
「…なんでもない」
「…そう。よかった」
「?あかりん、どうしたの?」
「…なんでもない」
あかりん、と呼ばれた少女はそうとだけ言って命から視線を外す。
そこに表情は浮かんでおらず、彼女が何を思っているかは読み取れない。
そこに表情は浮かんでおらず、彼女が何を思っているかは読み取れない。
「…それより、次の任務がはいったわ」
「え…?」
「え…?」
『任務』、という言葉に命が目を瞬かせる。
命が何かを言うより早く、少女はこう言った。
命が何かを言うより早く、少女はこう言った。
「今回は、命にも手伝ってもらうから」
「…え」
「…え」
少女の言葉に、命はどこか不安を覚えた。
そして、その不安は―――的中することとなった。
そして、その不安は―――的中することとなった。
■■■
「おい…あれって…?」
「三年の柊だ…」
「え?俺は二年って聞いたけど?」
「そんなことはどうでもいい。
問題は奴の隣にいる中等部の女の子だ」
「妹だってよ」
「義理の妹だって!」
「外国にいたんだけど、最近一緒に暮らし始めたみたい!!」
「しかも二人きりで!!!」
「同棲!?」
「柊くんのこと、かけがえの無い人って言ってたわよ!」
「な、なんだってー!?」
「義理の妹で外国人でお嬢様でお兄ちゃんっ娘だと…!?」
「おのれ柊蓮司…!なんであいつだけ…!」
「赤羽さん、二年の真壁さん、最近見てないけど七瀬さんに…女の敵め!」
「あ、中等部の志宝ちゃんともべったりだよな。さりげなく」
「学園の美少女をなんだと思ってやがる…!」
「三年の柊だ…」
「え?俺は二年って聞いたけど?」
「そんなことはどうでもいい。
問題は奴の隣にいる中等部の女の子だ」
「妹だってよ」
「義理の妹だって!」
「外国にいたんだけど、最近一緒に暮らし始めたみたい!!」
「しかも二人きりで!!!」
「同棲!?」
「柊くんのこと、かけがえの無い人って言ってたわよ!」
「な、なんだってー!?」
「義理の妹で外国人でお嬢様でお兄ちゃんっ娘だと…!?」
「おのれ柊蓮司…!なんであいつだけ…!」
「赤羽さん、二年の真壁さん、最近見てないけど七瀬さんに…女の敵め!」
「あ、中等部の志宝ちゃんともべったりだよな。さりげなく」
「学園の美少女をなんだと思ってやがる…!」
輝明学園の放課後。
一人の男と、一人の少女を取り囲むように、人だかりがあった。
男と少女が歩くと一定の距離をおいて、人だかりもまた、動く。
それはまるで油にはじかれる水のようである。
確かに、男の方にも少々近寄りがたい雰囲気があったが、人だかりが距離を置く最大の理由は少女であろう。
一人の男と、一人の少女を取り囲むように、人だかりがあった。
男と少女が歩くと一定の距離をおいて、人だかりもまた、動く。
それはまるで油にはじかれる水のようである。
確かに、男の方にも少々近寄りがたい雰囲気があったが、人だかりが距離を置く最大の理由は少女であろう。
着ているものこそ中等部の制服だが、その一挙手一投足は洗練されたものが感じられる。
姿もまた、本当に人かどうか、疑いたくなるような容であった。
姿もまた、本当に人かどうか、疑いたくなるような容であった。
そんな、絶世の美少女―――かもしれない―――の傍ら。
人だかりの中心で。
周囲で聞こえる話に耳をふさぎたくなる衝動を抑えながら、柊蓮司は隣に歩く少女―――のようにも見える存在―――に話しかけた。
人だかりの中心で。
周囲で聞こえる話に耳をふさぎたくなる衝動を抑えながら、柊蓮司は隣に歩く少女―――のようにも見える存在―――に話しかけた。
「お前…何言った?」
「さあ、なんのことでしょうか、お兄さま」
「だから止めろっつってるだろうが!?気持ち悪いんだよ!!」
「あらあら…そんなことを言って…いいんですか?」
「はあ!?何がだよ!」
「単位。あげませんよ?」
「うぐっ…」
「さあ、なんのことでしょうか、お兄さま」
「だから止めろっつってるだろうが!?気持ち悪いんだよ!!」
「あらあら…そんなことを言って…いいんですか?」
「はあ!?何がだよ!」
「単位。あげませんよ?」
「うぐっ…」
それ以上の言葉を飲み込み、柊蓮司は諦めたように歩く。
まあ実際諦めてるわけだが。
まあ実際諦めてるわけだが。
柊蓮司は、とある事情により、つい最近まで全く学校に出席できていなかった。
ここ一週間ほどはまともに学校に出ているものの、どう考えても出席日数も単位も足りない。
ここ一週間ほどはまともに学校に出ているものの、どう考えても出席日数も単位も足りない。
それを一発逆転できる鍵を、妹を名乗る、彼の隣を歩いている女は握っているのだ。
鬱屈した思いを抱えながらも、柊蓮司は無理やり言葉を絞り出した。
鬱屈した思いを抱えながらも、柊蓮司は無理やり言葉を絞り出した。
「…しかし、その名前どうにかなんなかったのかよ」
「あら。気に入りませんか?」
「柊小蓮ってなんだよ…外国から来たんだろうが」
「ですから、日本名は柊小蓮で、外国名がアンゼロット、というわけです」
「…わけわかんねえよ」
「あら。気に入りませんか?」
「柊小蓮ってなんだよ…外国から来たんだろうが」
「ですから、日本名は柊小蓮で、外国名がアンゼロット、というわけです」
「…わけわかんねえよ」
首をかくり、と折り、彼は溜息をつく。
不愉快だ、というのを隠そうともしない。
不愉快だ、というのを隠そうともしない。
と、その時。
「…ちょっと、話があるんだけど」
周囲の人だかりの中から、一歩歩み出てきた者がいた。
なぜか巫女服を着た少女。
彼女の姿をみとめて、柊蓮司は尻ごみするように手をあげ。
彼の自称妹は、優雅に一礼した。
そしてさらに。
その少女が、柊蓮司とアンゼロットに歩み寄った途端、ざわめきが一挙に大きくなった。
なぜか巫女服を着た少女。
彼女の姿をみとめて、柊蓮司は尻ごみするように手をあげ。
彼の自称妹は、優雅に一礼した。
そしてさらに。
その少女が、柊蓮司とアンゼロットに歩み寄った途端、ざわめきが一挙に大きくなった。
「ま、まじか…」
「これは…」
「何が起こるんだ、一体…!」
「頑張れー、赤羽さーん!!
あんなぽっと出の小娘なんかに負けるなー!」
「しゅ、修羅場…!!」
「これは…」
「何が起こるんだ、一体…!」
「頑張れー、赤羽さーん!!
あんなぽっと出の小娘なんかに負けるなー!」
「しゅ、修羅場…!!」
緊張感があたりを包む。
固唾を飲んで、周囲の人々が彼らを見つめる中。
巫女服姿の少女。
柊蓮司の幼馴染である彼女は、静かに口を開いた。
固唾を飲んで、周囲の人々が彼らを見つめる中。
巫女服姿の少女。
柊蓮司の幼馴染である彼女は、静かに口を開いた。
「ひーらぎ、晩御飯どうする?」
かくて人だかりは散ってゆき。
柊蓮司、アンゼロット、そして赤羽くれはは共に家路をゆくこととなった。
柊蓮司、アンゼロット、そして赤羽くれはは共に家路をゆくこととなった。
観客達はのちにこう語る。
「まあ、なんていうか?
古女房の貫録を見せつけられた、って感じかな」
「それでもさりげなく眉毛がぴくぴくしてたぜ」
「やっぱ嫉妬してたんだろーなあ」
「個人的には小蓮ちゃんに頑張ってほしい」
「あのあまりにも強固な壁を突き崩せるかなあ」
「胸も最近大きくなったしね」
「アンゼロット様のためなら死ねる」
古女房の貫録を見せつけられた、って感じかな」
「それでもさりげなく眉毛がぴくぴくしてたぜ」
「やっぱ嫉妬してたんだろーなあ」
「個人的には小蓮ちゃんに頑張ってほしい」
「あのあまりにも強固な壁を突き崩せるかなあ」
「胸も最近大きくなったしね」
「アンゼロット様のためなら死ねる」
さてはて。
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そのころ、校舎の片隅では。
ひと組の友達以上恋人未満な男女がこんなやり取りを繰り広げていた。
ひと組の友達以上恋人未満な男女がこんなやり取りを繰り広げていた。
「あ、あかりん…本当に、これ、やるの…?」
「…」
「あかりんの、格好…もそうだけど、僕、こんなもの持たされてもどうすればいいのか…」
「…大丈夫。命なら、できる」
「む、無理だよ!?」
「…」
「あかりんの、格好…もそうだけど、僕、こんなもの持たされてもどうすればいいのか…」
「…大丈夫。命なら、できる」
「む、無理だよ!?」
…後半に、つづくっ!!