戦い終わって日は暮れて、場所は秋葉原の一等地。
小さな影と大きな影がなかよしこよしで並んでる。
小さな影と大きな影がなかよしこよしで並んでる。
一人はぱっと見高校生。
ほのかに漂う苦労の匂いは大人の味。拍車をかけるのは頭と手にぞんざいに巻かれた包帯か。
ほのかに漂う苦労の匂いは大人の味。拍車をかけるのは頭と手にぞんざいに巻かれた包帯か。
そしてもう一人はぱっと見外国人。
けれどその身に纏った制服は、どこぞの学園の中等部のものだったり。
けれどその身に纏った制服は、どこぞの学園の中等部のものだったり。
見方を変えれば、じゃれつく兄に甘える妹、なんて見えるかもしれぬ。
並んで歩く姿は一見仲睦まじく、思わず微笑んでしまいそう。
まああくまでそう見えるだけで、当の本人たちはそう思ってなんかいない。
少なくとも片方は。
並んで歩く姿は一見仲睦まじく、思わず微笑んでしまいそう。
まああくまでそう見えるだけで、当の本人たちはそう思ってなんかいない。
少なくとも片方は。
「…納得いかねえ」
「ばっちり変身して、しっかりあの犯罪者も倒してくださったではありませんか。
見事なご活躍でした…今はその傷ついた体を癒すことだけを考えてください。
あ、紅茶飲みます?缶ジュースですけど」
「ただ飛び上がって、落ちて、頭から激突しただけだぞっ!
どこが活躍なんだ!?」
「柊さんには、見渡す限りの大観衆からの大喝采が聞こえなかったのですか?」
「ありゃどう考えても芸人とかに向ける類のもんだろうがっ!?」
「ばっちり変身して、しっかりあの犯罪者も倒してくださったではありませんか。
見事なご活躍でした…今はその傷ついた体を癒すことだけを考えてください。
あ、紅茶飲みます?缶ジュースですけど」
「ただ飛び上がって、落ちて、頭から激突しただけだぞっ!
どこが活躍なんだ!?」
「柊さんには、見渡す限りの大観衆からの大喝采が聞こえなかったのですか?」
「ありゃどう考えても芸人とかに向ける類のもんだろうがっ!?」
叫ぶ男の名前は柊蓮司。
笑って受け流す女の名前はアンゼロット。
笑って受け流す女の名前はアンゼロット。
さてはて。
それではすこしばかり過去に溯ってみよう。
それではすこしばかり過去に溯ってみよう。
■■■
「いくぜっ!!」
電柱の上から、青い線が空へと伸びる。
それは皆が待ち望んだもの。
誰もがなろうと思って、しかし決してなれない存在。
それは皆が待ち望んだもの。
誰もがなろうと思って、しかし決してなれない存在。
すなわち。
正義の味方。
そして、正義の味方の醍醐味と言えば、必殺の技と武器。
正義の味方。
そして、正義の味方の醍醐味と言えば、必殺の技と武器。
「スーパーエクセレントダイナマイツマジックソォオオオオオオオオオオオオドッ!!」
吠える声とともに光が疾る。
輝く光の中に、微かに見えるは剣の影。
両刃の剣がその手に握られるより早く、青きヒーローは放物線の頂点に至り―――そして、落下する…!
輝く光の中に、微かに見えるは剣の影。
両刃の剣がその手に握られるより早く、青きヒーローは放物線の頂点に至り―――そして、落下する…!
「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
吠えるドッコイダー。
だが、正義の味方に対するは、大悪党。
ドッコイダーを前にしたゲイフラワーは、何を恐れるものぞと叫ぶ。
ドッコイダーを前にしたゲイフラワーは、何を恐れるものぞと叫ぶ。
「自らの手のうちを明かすとはぁっ!!
愚の、骨頂ぅううううううううううううう!!」
愚の、骨頂ぅううううううううううううう!!」
剣を相手が握るならば、それをたたき落とすまで。
ゲイフラワーの叫びとともに、ドッコイダーに向かってミサイルが放たれる。
ゲイフラワーの叫びとともに、ドッコイダーに向かってミサイルが放たれる。
「ちぃ…!?」
愛らしい…というのも変な話だが、妙に愛嬌のある顔に似合わぬ舌打ちをする、ドッコイダー。
落下し続けるだけのドッコイダーには、ミサイルを避けるだけの機動は不可能。
そもそも、ミサイルは一発ではない。
十、二十、三十。
もとより、回避の余地などない。
落下し続けるだけのドッコイダーには、ミサイルを避けるだけの機動は不可能。
そもそも、ミサイルは一発ではない。
十、二十、三十。
もとより、回避の余地などない。
ならば。
(…これしかねえっ!!)
纏った男の意思にパワードスーツが応える。
スタピライザーたるマントが方向を決め、バーニアが火を噴く。
そう。
答えは、加速。
彼は、パワードスーツの性能を信じ、賭けに出る。
そう。
答えは、加速。
彼は、パワードスーツの性能を信じ、賭けに出る。
一秒の、さらに数万分の一の世界。
その一瞬で、ドッコイダーはミサイルと衝突し。
爆発に、包まれた。
その一瞬で、ドッコイダーはミサイルと衝突し。
爆発に、包まれた。
次の一瞬。
爆炎の中から現れたドッコイダーの手には、剣など、握られていなかった。
爆炎の中から現れたドッコイダーの手には、剣など、握られていなかった。
「ふはぁっ!!」
邪悪な笑みを浮かべる特A級犯罪者、ゲイフラワー。
だが、その笑みはまたも一瞬で消える。
だが、その笑みはまたも一瞬で消える。
そう。
バーニアによる加速。
ミサイルによる爆発。
そしてさらに、『彼』自身でさえ制御できない『力』すらも上乗せし。
バーニアによる加速。
ミサイルによる爆発。
そしてさらに、『彼』自身でさえ制御できない『力』すらも上乗せし。
青い流星は地に向かって落下してゆく。
その先には、ゲイフラワー。と、メカ。
その先には、ゲイフラワー。と、メカ。
「ん?お、おい?
まさか、そのまま落下してくる気か?
ちょっと待て?あたるぞ?おい?」
まさか、そのまま落下してくる気か?
ちょっと待て?あたるぞ?おい?」
筋骨隆々の犯罪者の問に対する答えは、絶叫だった。
「止まらねええええええええええええええええええええええええええええ!!」
激突。衝突。
崩壊。圧壊。
歓声。呆然。
…劇終。
崩壊。圧壊。
歓声。呆然。
…劇終。
■■■
「そもそも、だ!
ちゃんと指定されてた通りの名前を叫んだのに、剣が出てこなかったじゃねえか!」
「いえ、マニュアルにはちゃんと書いてありますよ?」
ちゃんと指定されてた通りの名前を叫んだのに、剣が出てこなかったじゃねえか!」
「いえ、マニュアルにはちゃんと書いてありますよ?」
―――魔剣は、剣を持った敵と交戦する時にしかつかえないから気をつけてね、柊くん?
―――By 開発主任 アキラ・ナナセ
―――By 開発主任 アキラ・ナナセ
「なんだそりゃあ!?
ってかそもそも、なんでこの開発主任俺の名前知ってんだよ!?
なんつーか、いろいろおかしくないかおいっ!」
「…などと話している間に、着きましたよ、柊さん」
「…ん?」
ってかそもそも、なんでこの開発主任俺の名前知ってんだよ!?
なんつーか、いろいろおかしくないかおいっ!」
「…などと話している間に、着きましたよ、柊さん」
「…ん?」
最初にアンゼロットが立ち止まり、続いて柊も足を止める。
そこは、かなり巨大なマンションだった。
ひと部屋ひと部屋の広さもかなりありそうである。
そこは、かなり巨大なマンションだった。
ひと部屋ひと部屋の広さもかなりありそうである。
「へえ…秋葉原の一等地にこんな場所があったとはな」
「まあ、急いで造らせたのですが、ないよりましでしょう」
「…は?今なんて言った?」
「いえ、こちらの話です」
「まあ、急いで造らせたのですが、ないよりましでしょう」
「…は?今なんて言った?」
「いえ、こちらの話です」
と、柊がアンゼロットの方を振り向いたところで、彼女はその顔に笑みを浮かべたまま、こう切り出した。
「さて、柊さん?今からする私のお願いに、はいかYesで答えてくださいね?」
「…おい。それ、さっき無理やり変身させられた時にもきいたんだが」
「さあ?そうでしたか?」
「はいかYesって、俺に選択権ねえってことだよな…?」
「『はい』と『Yes』。二つあるじゃないですか」
「意味は同じだろがっ!?」
「…おい。それ、さっき無理やり変身させられた時にもきいたんだが」
「さあ?そうでしたか?」
「はいかYesって、俺に選択権ねえってことだよな…?」
「『はい』と『Yes』。二つあるじゃないですか」
「意味は同じだろがっ!?」
叫んだ柊に、はあ、とわざとらしく溜息を一つ。
柊の頭に青筋が浮かんでいるのを確認してから、アンゼロットは口を開いた。
柊の頭に青筋が浮かんでいるのを確認してから、アンゼロットは口を開いた。
「…まあいいでしょう。
どちらにせよ、貴方がパワードスーツの審査に参加する以上、私のお願いは聞いていただく必要があります」
「……俺じゃなけりゃできないってんならやってやるさ。
学校には行かせてくれるんだろうな?」
「はい。それは勿論」
どちらにせよ、貴方がパワードスーツの審査に参加する以上、私のお願いは聞いていただく必要があります」
「……俺じゃなけりゃできないってんならやってやるさ。
学校には行かせてくれるんだろうな?」
「はい。それは勿論」
眉をしかめ、口をへの字に曲げたまま、だが柊はアンゼロットに先を話すよう促す。
そんな彼の態度に満足したのか、アンゼロットは、彼女の要件を言った。
そんな彼の態度に満足したのか、アンゼロットは、彼女の要件を言った。
「では。
貴方には、私と一緒に生活していただきます」
貴方には、私と一緒に生活していただきます」
柊は、一瞬何を言われたのかわからなかった。
だが、アンゼロットは気にすることもなく先を続ける。
だが、アンゼロットは気にすることもなく先を続ける。
「もちろん、男と女がいきなり同居、ということでは世間の目も厳しいことが予想されます。
なので、私は柊さんの妹ということになりました」
「…はぁっ!?」
「ちなみに、ご家族の許可はとってあります。
思う存分、パワードスーツの審査に心血を注いでください」
「なんだそりゃ!?
そもそもなんでお前が一緒にいる必要が…はあっ!?
何が何だかわからねえぞ!?」
「さあ、それではいきましょうか、お兄ちゃん」
なので、私は柊さんの妹ということになりました」
「…はぁっ!?」
「ちなみに、ご家族の許可はとってあります。
思う存分、パワードスーツの審査に心血を注いでください」
「なんだそりゃ!?
そもそもなんでお前が一緒にいる必要が…はあっ!?
何が何だかわからねえぞ!?」
「さあ、それではいきましょうか、お兄ちゃん」
わざとらしくそう言われて、柊は体を震わせ。
思わず、本心を口にしてしまっていた。
思わず、本心を口にしてしまっていた。
「気持ちわりいからやめろっ!?
お前俺より年上じゃねえのか!?」
お前俺より年上じゃねえのか!?」
「…」
にっこり。
「くたばれ☆地獄で懺悔しろ」
ぽちっ。
ごきょ。
ごきょ。
音とともに、柊が膝から崩れ落ちる。
頭の包帯には、若干血がにじんでいる。
傷が開いたようだが、大したことはない。
むしろ、衝撃そのものが痛手だった。
頭の包帯には、若干血がにじんでいる。
傷が開いたようだが、大したことはない。
むしろ、衝撃そのものが痛手だった。
「ど、どこからか盥、が…」
「全く…これだから柊さんは」
「全くだな。これだから柊蓮司は」
「HAHAHA!マッタクデスネー!!
これだからゴッシュジンサマハー」
「全く…これだから柊さんは」
「全くだな。これだから柊蓮司は」
「HAHAHA!マッタクデスネー!!
これだからゴッシュジンサマハー」
霞がかかっている。
まるで、世界が揺れているようだ。
それでも柊は言葉を絞り出さずにはいられなかった。
まるで、世界が揺れているようだ。
それでも柊は言葉を絞り出さずにはいられなかった。
「ぐ…お、お前ら、さっきの…?」
「何を言っているんだ柊蓮司ぃ?
私は今日からこのマンションの住人となるグッイィィィィド・ボルジアという名の一神父だ。
ドクター・ゲイフラワーなどという宇宙特A級犯罪人とは全くの別人だぞぉ?」
「俺は…ゲイフラワーなんて…言って…ねえぞ…」
「HAHAHAHAHA-!!
オカシナゴシュジン様デスネー」
「つか…なんで…お前は俺を主人って呼ぶんだ…」
「はわ!何で柊がここにいるの!?」
「くれは…か…?
お前こそ、さっきはなんであんな妙な格好してたんだ…。
あんな格好で人前に出たら、おばさんが泣くぞ…仮装にもほどがあるだろ…」
「な、なんのこと?」
「あの、全身装甲板で特に胸のあたりが分厚い「死ねぇっ!!」
「何を言っているんだ柊蓮司ぃ?
私は今日からこのマンションの住人となるグッイィィィィド・ボルジアという名の一神父だ。
ドクター・ゲイフラワーなどという宇宙特A級犯罪人とは全くの別人だぞぉ?」
「俺は…ゲイフラワーなんて…言って…ねえぞ…」
「HAHAHAHAHA-!!
オカシナゴシュジン様デスネー」
「つか…なんで…お前は俺を主人って呼ぶんだ…」
「はわ!何で柊がここにいるの!?」
「くれは…か…?
お前こそ、さっきはなんであんな妙な格好してたんだ…。
あんな格好で人前に出たら、おばさんが泣くぞ…仮装にもほどがあるだろ…」
「な、なんのこと?」
「あの、全身装甲板で特に胸のあたりが分厚い「死ねぇっ!!」
打音。
柊の目にわずかに映ったのは、何故か机を持っている幼馴染の姿だった。
騒がしくなっていく周囲。
薄れゆく意識。
そんな中、柊蓮司は、何でこんなことになってしまったのかを、今更考えていた。
薄れゆく意識。
そんな中、柊蓮司は、何でこんなことになってしまったのかを、今更考えていた。
■■■