1話 再会 -HOME SWEET HOME-
時に。「魔法少女」というものをご存知だろうか?
魔砲少女ではない。魔女っ子でもない。「魔法少女」という存在だ。
「魔」とはこの世の常識で測れぬもののことをさし、「魔法」とはそれを縛る法則という意味を持つ。
では、「魔法少女」とはこの世の常識で測れぬものを操る少女なのか?
それは少しニュアンスが違うと感じる方も多いだろう。
魔砲少女ではない。魔女っ子でもない。「魔法少女」という存在だ。
「魔」とはこの世の常識で測れぬもののことをさし、「魔法」とはそれを縛る法則という意味を持つ。
では、「魔法少女」とはこの世の常識で測れぬものを操る少女なのか?
それは少しニュアンスが違うと感じる方も多いだろう。
とある少女に聞いたのなら、こんな答えが返ってくることだろう。
「魔法少女は、困ってる人を助けたり人の夢を叶えたり―――人を笑顔にすることが仕事っスよ」
そう、少し照れたように、しかし満面の笑顔で答えてくれることだろう。
ここ。桃月町には、一人の魔法少女がいる。
誰かを守るために奔走し、誰かのために拳を握る、
ある意味もっとも魔法少女らしくなく―――しかしピンチの時は魔法少女たろうとする、ある意味もっとも魔法少女らしい魔法少女が。
誰かを守るために奔走し、誰かのために拳を握る、
ある意味もっとも魔法少女らしくなく―――しかしピンチの時は魔法少女たろうとする、ある意味もっとも魔法少女らしい魔法少女が。
黄昏時。
だんだんと夜になるのが速くなりつつあるこの時期、すでに外にいる子供達は家路についている時間帯。
先ほどまで子供達が集まり、わいのわいのと騒いでいたにぎやかな公園は今、とても静かだった。
しかし、誰もいないから静かなわけではない。
公園は今、「異界」となっていたのだ。
青い世界。
太陽が沈みかけ、琥珀から宵青までのグラデーションが不思議に彩る美しいキャンバスと化す空の時刻を無視するように、公園の内部は青く染まっていた。
けれど、常人ならばそれを知覚することはできないだろう。それはこの空間―――月匣が「常識外」の存在であるからだ。
「常識」とは世界を守る法則。ゆえに、それに守られている多くの者は「常識の外側」について覗き見ることはできない。
逆に言えば、「常識外」の場に存在することができるのは同じく「常識外」の者のみ。
だんだんと夜になるのが速くなりつつあるこの時期、すでに外にいる子供達は家路についている時間帯。
先ほどまで子供達が集まり、わいのわいのと騒いでいたにぎやかな公園は今、とても静かだった。
しかし、誰もいないから静かなわけではない。
公園は今、「異界」となっていたのだ。
青い世界。
太陽が沈みかけ、琥珀から宵青までのグラデーションが不思議に彩る美しいキャンバスと化す空の時刻を無視するように、公園の内部は青く染まっていた。
けれど、常人ならばそれを知覚することはできないだろう。それはこの空間―――月匣が「常識外」の存在であるからだ。
「常識」とは世界を守る法則。ゆえに、それに守られている多くの者は「常識の外側」について覗き見ることはできない。
逆に言えば、「常識外」の場に存在することができるのは同じく「常識外」の者のみ。
異界となった公園に立つのは、長い剣を持った若い男だった。
彼の足元には、いくつもの赤い宝石が転がっている。
東京のど真ん中で、近代兵器ではなく剣をもった若い男、というのは確かに常識で考えるのなら異常な事態だ。
まごうことなく、男は「常識外」の存在―――魔法使い(ウィザード)だった。
彼の足元には、いくつもの赤い宝石が転がっている。
東京のど真ん中で、近代兵器ではなく剣をもった若い男、というのは確かに常識で考えるのなら異常な事態だ。
まごうことなく、男は「常識外」の存在―――魔法使い(ウィザード)だった。
と。軽く息をつく彼の背中に、声がかかった。
「こんなところで、何してるっスか」
声の主は公園にある高い街灯の上に立っていた。
この異界の中で平然と動くその存在も、また「常識の外側」の存在、ウィザードでしかありえない。
ピンクを基調とする、この近くにある桃月学園の制服のバリエーションの一つを身に着け、青い石のはまったブローチを胸に着ける少女。
風で短いスカートがばたばたとひるがえるが期待してはならない。スパッツがあるから。
ともあれ、少女は―――この街を守る魔法少女は、侵入者に対するためにここに現れた。
彼女は内心嘆息する。ことのはじまりは、昼間の学校での級友との会話が原因だった。
この異界の中で平然と動くその存在も、また「常識の外側」の存在、ウィザードでしかありえない。
ピンクを基調とする、この近くにある桃月学園の制服のバリエーションの一つを身に着け、青い石のはまったブローチを胸に着ける少女。
風で短いスカートがばたばたとひるがえるが期待してはならない。スパッツがあるから。
ともあれ、少女は―――この街を守る魔法少女は、侵入者に対するためにここに現れた。
彼女は内心嘆息する。ことのはじまりは、昼間の学校での級友との会話が原因だった。
昼時。
桃月学園1-Dは、普段盛り上がらない少女の周りにたくさんの少女達が集まっていた。
発端は簡単だ。普段ぼうっとしているわけではない少女が、そうしていたのが原因だ。
朝のホームルームで、こんなやり取りがあった。
担任の、もう何歳になるのかもわからない仙人のような風貌の教師が、様子のおかしいその少女にたずねた。
発端は簡単だ。普段ぼうっとしているわけではない少女が、そうしていたのが原因だ。
朝のホームルームで、こんなやり取りがあった。
担任の、もう何歳になるのかもわからない仙人のような風貌の教師が、様子のおかしいその少女にたずねた。
「これ、宮田。お前さんが朝から考え事とは珍しいのぅ。
ただでさえお前さんは危なっかしいんじゃから、悩み事ならこのワシにして解決しておけばよいのではないかな?」
ただでさえお前さんは危なっかしいんじゃから、悩み事ならこのワシにして解決しておけばよいのではないかな?」
お前に話しても解決しねーよ、とクラスの何人かは思ったらしいがそこはスルー。
宮田―――宮田 晶は、少し思い悩んで答えた。
宮田―――宮田 晶は、少し思い悩んで答えた。
「先生、名前も知らない男の人の名前を知るにはどうしたらいいですか?」
一瞬、クラスが凍りついた。
今まで浮いた噂の一つもなく、ラブという言葉からもかなり縁遠い生活をしていた晶に男の影だ。
ホームルーム中ということも忘れ、女子はすぐさま飛びついた。
今まで浮いた噂の一つもなく、ラブという言葉からもかなり縁遠い生活をしていた晶に男の影だ。
ホームルーム中ということも忘れ、女子はすぐさま飛びついた。
「え、なになに晶ちゃん初恋かーっ!?」
「ちょっと晶、あんた何があったのよ!吐け!今すぐ吐きなさーい!」
「誰か!誰かC組の橘呼んで来い!あいつならすぐ調べがつくはずだ!」
―――合点承知ケロ!
「ちょっと晶、あんた何があったのよ!吐け!今すぐ吐きなさーい!」
「誰か!誰かC組の橘呼んで来い!あいつならすぐ調べがつくはずだ!」
―――合点承知ケロ!
宮田の友達のオオサンショウウオすらがその騒ぎに参加し、すでに戦場の様相を呈しているD組。
……ネタを振ったのに無視されて寂しいおじいちゃん先生を、犬神が(うっとうしいと)強制的に外に出しているのはまぁお約束だ。
ともあれ、朝からそんなことがあったD組の熱は、いくつかの授業を終えてもなお冷めることはない。
今、取調べ室のように机をはさんで腕を組み晶に問うのは、隣のクラスであるC組の橘 玲。桃月学園内で最も敵にまわしたくないと言われ、「魔女」と呼ばれる少女だ。
彼女はなるほど、と呟いて晶のこれまでの言葉をまとめた。
……ネタを振ったのに無視されて寂しいおじいちゃん先生を、犬神が(うっとうしいと)強制的に外に出しているのはまぁお約束だ。
ともあれ、朝からそんなことがあったD組の熱は、いくつかの授業を終えてもなお冷めることはない。
今、取調べ室のように机をはさんで腕を組み晶に問うのは、隣のクラスであるC組の橘 玲。桃月学園内で最も敵にまわしたくないと言われ、「魔女」と呼ばれる少女だ。
彼女はなるほど、と呟いて晶のこれまでの言葉をまとめた。
「つまり。宮田は昨日変なことに巻き込まれかけて、それをなんかかっこいい人に助けてもらって、その人の名前も知らないから知りたい、と。
……どんな漫画の中の世界だそれ」
「そんなこと言われてもホントなんですっ!こんな出来すぎた事が本当に私の人生に起こっていいのかって思うくらいホントなんです!」
「いや、お前結構波乱万丈に人生送ってる気がする。
オオサンショウウオの相方になったり無人島に放り出されたりしないぞ普通の人生って」
……どんな漫画の中の世界だそれ」
「そんなこと言われてもホントなんですっ!こんな出来すぎた事が本当に私の人生に起こっていいのかって思うくらいホントなんです!」
「いや、お前結構波乱万丈に人生送ってる気がする。
オオサンショウウオの相方になったり無人島に放り出されたりしないぞ普通の人生って」
冷静にツッコミを返す玲の発言をスルーし、宮田のクラスメイトの芹沢 茜が問う。
「けどさ、晶ちゃんその人の顔しか知らないんだろ?それで見つけられるもんなのか?」
「ふむ。確かにちょっと情報が少なすぎるか……じゃあ、似顔絵でも描いてみるか?」
「美術0には無理だろ」
「芹沢、お前の恥ずかしい写真と秘密をネット上に―――」
「すみませんでした以後気をつけます玲様」
「ふむ。確かにちょっと情報が少なすぎるか……じゃあ、似顔絵でも描いてみるか?」
「美術0には無理だろ」
「芹沢、お前の恥ずかしい写真と秘密をネット上に―――」
「すみませんでした以後気をつけます玲様」
本気でやりかねないと思ったのだろう、がたがた震えながら土下座する芹沢。
そんな状況をスルーして、メイド服の娘が話に加わる。
そんな状況をスルーして、メイド服の娘が話に加わる。
「素敵ですねぇ、危機を颯爽と助けて去っていくなんてまるで王子様みたいじゃないですか」
「もしくは正義の味方みたいなもんっスかね」
「もしくは正義の味方みたいなもんっスかね」
それにつられて加わるのは地味な眼鏡少女。ブロンドのメイドと地味な眼鏡少女の組み合わせは異色だが、このクラスでは日常的な光景である。
顔を上げた芹沢が不思議そうにその二人に問う。
顔を上げた芹沢が不思議そうにその二人に問う。
「ベホイミにメディア。お前らもこういう話に興味あんの?」
「だって素敵じゃないですか。女の子の夢でしょう?」
「いや、そりゃそうかもしれないけどさ。
まぁいいや。ともかく、似顔絵って案は悪くないかもしれないな。皆で書いてみよう。んで、晶ちゃんに選ばせてみればいいじゃん」
「だって素敵じゃないですか。女の子の夢でしょう?」
「いや、そりゃそうかもしれないけどさ。
まぁいいや。ともかく、似顔絵って案は悪くないかもしれないな。皆で書いてみよう。んで、晶ちゃんに選ばせてみればいいじゃん」
口は悪いが芹沢は結構友達思いである。
猫耳のようにぴんと立つ髪の毛を揺らしてそう言った彼女に、宮田は感動したように目を潤ませた。
芹沢の音頭にクラスに集まった人間が皆ペンと紙を取り出した。
意外とこのクラス結束が固かったようだ。いや、面白がってる連中もいるんだろうが。
芹沢が言う。
猫耳のようにぴんと立つ髪の毛を揺らしてそう言った彼女に、宮田は感動したように目を潤ませた。
芹沢の音頭にクラスに集まった人間が皆ペンと紙を取り出した。
意外とこのクラス結束が固かったようだ。いや、面白がってる連中もいるんだろうが。
芹沢が言う。
「それで晶ちゃん、その人どんな人だったの?」
「えぇっとですね。髪が茶色くて、そんなに長くなくって、両手に指だし手袋してて……」
「えぇっとですね。髪が茶色くて、そんなに長くなくって、両手に指だし手袋してて……」
宮田の言葉にかりかりかりかり、と鉛筆の音がクラス中に響く。
芹沢は眉を寄せつつ、その先を促した。
芹沢は眉を寄せつつ、その先を促した。
「……なんかアキバ系っぽいな。まぁいいけど。続けて?」
「それで。目つきが悪くて、なんか不幸そうで」
「それで。目つきが悪くて、なんか不幸そうで」
その言葉にベホイミがぴくりと反応する。
もっとも、芹沢は気づかずにその先を聞いた。
もっとも、芹沢は気づかずにその先を聞いた。
「不幸そうな顔ってどんなだよ。……まぁいいや、他には?」
「それで、えーと……」
「えーと?」
「……か、かっこいい人でした!」
「それで、えーと……」
「えーと?」
「……か、かっこいい人でした!」
ぴたり、と鉛筆の音が止まる。その時、D組の皆の心は一つになった。
『そんなんでわかるかぁぁぁ―――っ!?』
やっぱり、宮田 晶はダメな子だった。
ベホイミは学校を終えてバイトを終え、夜の巡回を開始する。
最近思うところがあって、巡回が必要だと判断したゆえだ。
リズミカルに走りながら、桃月町中をぐるりと一周するベホイミ。それだけの運動をしながら、息は切らせていない。
日頃の訓練と昔取った杵柄だ。色々あったが、そのおかげで街を守れるならそれもまた無駄ではなかったのだろう。
今日は何もなかったか、と思い一旦自宅に帰ろうと思ったその時だった。
最近思うところがあって、巡回が必要だと判断したゆえだ。
リズミカルに走りながら、桃月町中をぐるりと一周するベホイミ。それだけの運動をしながら、息は切らせていない。
日頃の訓練と昔取った杵柄だ。色々あったが、そのおかげで街を守れるならそれもまた無駄ではなかったのだろう。
今日は何もなかったか、と思い一旦自宅に帰ろうと思ったその時だった。
ぴん、と何かを感覚が感じ取った。
ベホイミはヘアゴムを一つづつ腕にはめ、それを胸の前で腕ごとクロスさせる。
打ち合わされたヘアゴムから、ふわりと白い輝きが生まれて彼女を覆う。
右の拳を腰溜めに構え、左腕は手の先までぴんと伸ばして右肩の上へと掲げるように。
左腕をぐるりと顔の前を通るようにゆっくりとまわしている間に髪の色が変わり、瞳の色が変わり、服の形状も変わっていく。
某蹴りで敵をぶちのめす特撮ヒーローのようにポーズを決めて、変身を完了した。
ベホイミはヘアゴムを一つづつ腕にはめ、それを胸の前で腕ごとクロスさせる。
打ち合わされたヘアゴムから、ふわりと白い輝きが生まれて彼女を覆う。
右の拳を腰溜めに構え、左腕は手の先までぴんと伸ばして右肩の上へと掲げるように。
左腕をぐるりと顔の前を通るようにゆっくりとまわしている間に髪の色が変わり、瞳の色が変わり、服の形状も変わっていく。
某蹴りで敵をぶちのめす特撮ヒーローのようにポーズを決めて、変身を完了した。
「―――魔法少女ベホイミ」
誰にかわからないが宣言し、彼女は近くの塀に足をかけて近くの家の屋根に飛び乗り、そのまま屋根と電柱を飛び移り駆けながら現場に急行する。
現場は、すでに子供のいない公園だった。彼女の身になじんだ感覚は『敵』が現れている証だ。
ならばすぐにでも駆除しなくてはならない。
現場は、すでに子供のいない公園だった。彼女の身になじんだ感覚は『敵』が現れている証だ。
ならばすぐにでも駆除しなくてはならない。
そして―――今に至る。
そこには、ある意味彼女がほんの少しだけ予想していた光景があった。彼女が到着するとそこはすでに戦闘が終了した後らしく、一人の男が息をついていた。
彼女は一つ嘆息し、街灯の上からほんの少しの呆れをこめて、知人である男にたずねた。
彼女は一つ嘆息し、街灯の上からほんの少しの呆れをこめて、知人である男にたずねた。
「こんなところで、何してるっスか」
相手はこちらを向くと、少し首を傾げた。
「……なんか聞いたことある気がすんだけど微妙に覚えてねぇな。お前誰だっけ?」
知っている相手に対してはものすごく失礼な発言だが、彼女は今変身している。理解できなくても無理はない。
ぴょい、と街灯から飛び降りながら彼女は変身を解く。敵がいないのなら変身する意味もない。
ピンクの魔法少女から地味な眼鏡娘に戻った彼女を見て、相手はぽんと手を叩いた。
ぴょい、と街灯から飛び降りながら彼女は変身を解く。敵がいないのなら変身する意味もない。
ピンクの魔法少女から地味な眼鏡娘に戻った彼女を見て、相手はぽんと手を叩いた。
「あー、あの時の!久しぶりだな、っつーか何でお前こんなとこにいるんだよ」
「それはこっちの台詞っスよ。秋葉原離れて世界漫遊してるんじゃないんスか柊さん」
「それはこっちの台詞っスよ。秋葉原離れて世界漫遊してるんじゃないんスか柊さん」
ものすごく嫌そうな顔で言うベホイミ。
彼―――柊 蓮司とは幾度か『前の職場』にいた時に敵としても味方としても会っているが、その度に何か不幸な出来事に見舞われていたような気がする。
ベホイミが東京に来た時には、前年に卒業できたとのことでもう会うことはないと思っていたのだが。
柊はベホイミの問いに答えた。
彼―――柊 蓮司とは幾度か『前の職場』にいた時に敵としても味方としても会っているが、その度に何か不幸な出来事に見舞われていたような気がする。
ベホイミが東京に来た時には、前年に卒業できたとのことでもう会うことはないと思っていたのだが。
柊はベホイミの問いに答えた。
「いや、姉貴がどっか行くのはいいけど盆と正月くらいは帰ってこいって言っててな」
「今10月っスよっ!?」
「しょうがねぇだろ東京着いたと思ったらなんかの月匣展開されて終わったと思ったらアルゼンチンにいたりとか色々あったんだよっ!?」
「今10月っスよっ!?」
「しょうがねぇだろ東京着いたと思ったらなんかの月匣展開されて終わったと思ったらアルゼンチンにいたりとか色々あったんだよっ!?」
……やっぱり何かあったらしい。学生卒業しても不幸なのは変わらないようだ。
それで?と彼は不機嫌そうにベホイミに問い直す。
それで?と彼は不機嫌そうにベホイミに問い直す。
「お前の方はなんでこんなとこにいるんだよ。あそこの仕事か?っつーかさっきの珍妙なカッコはなんだ」
「とっくにあんなとことは縁切ったっスよ。今はこの街で学生やってるっス。さっきのは……まぁ、触れないでほしいっス」
「とっくにあんなとことは縁切ったっスよ。今はこの街で学生やってるっス。さっきのは……まぁ、触れないでほしいっス」
まさか宇宙人から与えられた装備で変身ヒーローっぽい魔法少女やってますとも言いづらい。
そもそも宇宙から現れた存在というのはこの世界の「常識外」であり、下手をすれば侵略者とも取られかねない。
そもそも宇宙から現れた存在というのはこの世界の「常識外」であり、下手をすれば侵略者とも取られかねない。
―――ベホイミも知らないことだが、実際彼女にこの装備を与えた相手はもともとは侵略者なのだが。
閑話休題。
今の彼女にとっては大事なものを守るために力を与えてくれ、また彼女を「魔法少女」にするために力を貸してくれた相手である。
むげに扱うことは考えられないが、この世界―――ファー・ジ・アースの人間が受け入れてくれるかどうかは別だ。
最近は「訪問者」と呼ばれ、侵略者として扱われない者もいるのだが、それもここ一年ほどのこと。
もう少しはっきりした制度ができなければ宇宙人達も堂々と現れることは難しいと考えているようだ。
ベホイミの様子を見て、少し哀れに思った柊が地雷を踏んだことを理解する。
今の彼女にとっては大事なものを守るために力を与えてくれ、また彼女を「魔法少女」にするために力を貸してくれた相手である。
むげに扱うことは考えられないが、この世界―――ファー・ジ・アースの人間が受け入れてくれるかどうかは別だ。
最近は「訪問者」と呼ばれ、侵略者として扱われない者もいるのだが、それもここ一年ほどのこと。
もう少しはっきりした制度ができなければ宇宙人達も堂々と現れることは難しいと考えているようだ。
ベホイミの様子を見て、少し哀れに思った柊が地雷を踏んだことを理解する。
「なんつーか……お前も大変だな」
「哀れなものを見る目で見ないでほしいっスっ!?」
「あー、うんわかるわかる。俺も魔法少女にされたことはないからわかんねぇけど、なんか世界中から悪意とかそーゆー感じの目で見られてるような感覚、わかるぜ?」
「哀れなものを見る目で見ないでほしいっスっ!?」
「あー、うんわかるわかる。俺も魔法少女にされたことはないからわかんねぇけど、なんか世界中から悪意とかそーゆー感じの目で見られてるような感覚、わかるぜ?」
この二人、意外に波長が合うのではなかろうか?
ともあれ、ベホイミは考えた。
ともあれ、ベホイミは考えた。
「それじゃあ、今は何かの任務中ってわけじゃないんスね?」
「おう、単に実家に帰省する途中だ。それがどうかしたか?」
「だったらちょうどいいっス。少し付き合ってくれないっスか?」
「は?あ、おい人の返事聞く前に引っ張んなっ!?引きずるなっ、っつかどこに連れてく気なんだよっ!?」
「あーはいはい聞こえない聞こえなーいっスよー」
「おう、単に実家に帰省する途中だ。それがどうかしたか?」
「だったらちょうどいいっス。少し付き合ってくれないっスか?」
「は?あ、おい人の返事聞く前に引っ張んなっ!?引きずるなっ、っつかどこに連れてく気なんだよっ!?」
「あーはいはい聞こえない聞こえなーいっスよー」
ずるずるずるずる、と後ろがうるさいがまったく無視して引きずっていく。
ベホイミにとっては柊がこの街にいたことはある意味で確かに嫌ではあったものの、普通に戦力として数えられるという点ではとてもありがたかったりしたわけで。
その戦力を手放すわけにはいかないと引きずっていく。
目指す場所は、色々考えた上で一番いいと思われる―――商店街のとある喫茶店だ。
ベホイミにとっては柊がこの街にいたことはある意味で確かに嫌ではあったものの、普通に戦力として数えられるという点ではとてもありがたかったりしたわけで。
その戦力を手放すわけにはいかないと引きずっていく。
目指す場所は、色々考えた上で一番いいと思われる―――商店街のとある喫茶店だ。
喫茶エトワール。それは、桃月商店街にある個人経営の「売れない」喫茶店。
同名の全国チェーン店がありますが何の関係もありません。ご了承ください。
ここでならある程度常識外の会話をしても問題はない。
同名の全国チェーン店がありますが何の関係もありません。ご了承ください。
ここでならある程度常識外の会話をしても問題はない。
「おやいらっしゃいベホイミちゃん。そっちの人は彼氏さんか何か?」
「なによ、この神聖な男の城でイチャつこうっていうわけなのね!?邪魔してやるー邪魔してやるニャー!」
「なによ、この神聖な男の城でイチャつこうっていうわけなのね!?邪魔してやるー邪魔してやるニャー!」
店長とともに迎え入れるのは、マスコットを自称するなんだかよくわからない二足歩行する猫耳つき生物(ナマモノ)。
常識外に触れることの多い柊も、はじめて見る生物に対して少し目を丸くしているようだった。
ベホイミは店長の声を笑って叩き落す。
常識外に触れることの多い柊も、はじめて見る生物に対して少し目を丸くしているようだった。
ベホイミは店長の声を笑って叩き落す。
「あっはっは、冗談もたいがいにしてほしいっスよ。誰がこんなろくでなしの甲斐性なしと彼氏彼女の関係になりたがるっつーんスか」
「笑顔で酷ぇこと言うなお前っ!?」
「何か反論があるっスかー?東京に大事な人たち残してぽんぽん世界周ってる放蕩野郎が」
「悪意が見え隠れどころか隠す気もないだろお前っ!?」
「待たされる側も大変っスよねぇ、どんだけ根気あるんだか。
と。とにかく、久しぶりにあったんでちょっと秘密の話がしたいんス。奥のテーブル行っていいっスか?」
「笑顔で酷ぇこと言うなお前っ!?」
「何か反論があるっスかー?東京に大事な人たち残してぽんぽん世界周ってる放蕩野郎が」
「悪意が見え隠れどころか隠す気もないだろお前っ!?」
「待たされる側も大変っスよねぇ、どんだけ根気あるんだか。
と。とにかく、久しぶりにあったんでちょっと秘密の話がしたいんス。奥のテーブル行っていいっスか?」
笑顔で柊をさんざんいじり、それでも話をすすめるベホイミに、表情を固くしつつも店長は答える。
「あ、あぁうん。どうせここ人入らないしさ、お客さんならありがたいくらいだよ」
「じゃあ、とりあえずアメリカン二つよろしくっス。あー……そういえばくるみさんはどうしたっスか?」
「じゃあ、とりあえずアメリカン二つよろしくっス。あー……そういえばくるみさんはどうしたっスか?」
ベホイミは今気づいたようにたずねる。実際今気づいたわけだが。
くるみ―――桃瀬 くるみは桃月学園1-Cにいる、彼女の同窓生だ。
本来、桃月学園はアルバイトが禁止されている(ベホイミは留学生扱いなので別だが)が、その中でくるみはこの店でアルバイトをしている。
……ちょっとうっかりバイクの運転中にこの店に突っ込んでしまい、その弁償の代金を払うためにはじめたアルバイトが続いているだけだったりはする。
店長は得心したように答えた。
くるみ―――桃瀬 くるみは桃月学園1-Cにいる、彼女の同窓生だ。
本来、桃月学園はアルバイトが禁止されている(ベホイミは留学生扱いなので別だが)が、その中でくるみはこの店でアルバイトをしている。
……ちょっとうっかりバイクの運転中にこの店に突っ込んでしまい、その弁償の代金を払うためにはじめたアルバイトが続いているだけだったりはする。
店長は得心したように答えた。
「くるみちゃんなら今ちょっとお遣いに行ってもらっててね、会いたかったらもうちょっと待ってればいいよ」
「わかったっス。それじゃ、くるみさんにコーヒー運んでもらっていいっスか。だいたいそれぐらいには話も終わってると思うっス」
「うん、わかった。それじゃごゆっくり」
「わかったっス。それじゃ、くるみさんにコーヒー運んでもらっていいっスか。だいたいそれぐらいには話も終わってると思うっス」
「うん、わかった。それじゃごゆっくり」
奥のテーブルに陣取って、ベホイミはお冷に手を伸ばす。水を運んできたのは謎のナマモノだ。
それを見送って、柊が不思議そうにベホイミに聞いた。
それを見送って、柊が不思議そうにベホイミに聞いた。
「なぁ。アレ、なんだ?」
「見ればわかるじゃないっスか、『妖怪』っスよ」
「見ればわかるじゃないっスか、『妖怪』っスよ」
『妖怪』というのは、ウィザード達の間でエミュレイターではない『人外』のもののことを指す用語だ。わかりやすいものには人狼や吸血鬼やUMAが挙げられるだろう。
もともとこの世界に存在する人外のことを『妖怪』と呼ぶわけなのだが、これらの存在は常人の持つ『常識』の中にはない存在である。
世界結界が強かった時代は、人間の少ない土地に行くことで世界結界からの干渉を抑え、細々と生きていた彼らだが、20年前の第三天使の喇叭より事情が変わる。
強力に氏族ごとに統治されている吸血鬼や人狼と違い、結界が薄れたことで自然発生してしまったUMAなどのはぐれ妖怪が街中に迷い出ることが多くなったのだ。
けれど、それは世界結界を揺らがせる事態に発展しかねないため、こういったはぐれ妖怪に関しては各地の地方団体がそれぞれで対処する決まりになっている。
もともとこの世界に存在する人外のことを『妖怪』と呼ぶわけなのだが、これらの存在は常人の持つ『常識』の中にはない存在である。
世界結界が強かった時代は、人間の少ない土地に行くことで世界結界からの干渉を抑え、細々と生きていた彼らだが、20年前の第三天使の喇叭より事情が変わる。
強力に氏族ごとに統治されている吸血鬼や人狼と違い、結界が薄れたことで自然発生してしまったUMAなどのはぐれ妖怪が街中に迷い出ることが多くなったのだ。
けれど、それは世界結界を揺らがせる事態に発展しかねないため、こういったはぐれ妖怪に関しては各地の地方団体がそれぞれで対処する決まりになっている。
それを知っている柊は、何を今更、という感じのベホイミに問い詰める。
「それくらい俺だって見りゃわかるっつーの。
そうじゃなくてなんでああいうのが東京で平然と生活してんだよって聞いてんだ、まずいだろ」
「そっか、柊さんここには偶然で来てたんスよね。
ここは『交流区域』なんスよ。柊さんも『桜新町』は覚えてるっスよね?」
そうじゃなくてなんでああいうのが東京で平然と生活してんだよって聞いてんだ、まずいだろ」
「そっか、柊さんここには偶然で来てたんスよね。
ここは『交流区域』なんスよ。柊さんも『桜新町』は覚えてるっスよね?」
そう言われて柊も理解した。『桜新町』は彼とベホイミがはじめて会った場所であり、任務でしばらく滞在した場所だからでもある。
確かに、はぐれ妖怪に対して世界のあり方の説明をして人の町に下りてこないよう指導するのは各地のウィザード組織が行っている。
けれど今現在人間の手の入らない秘境などには限りがある。そこに今いる妖怪たち全てを入れておくわけにもいかず、また妖怪のうちにも人間に興味を持つものも多い。
よって、世界魔術結社の日本支部と典礼庁外典儀式課が組み、背教者会議などの協力を得て始めたのが『交流区域』という地域政策であった。
妖怪を一定のルールを守るという条件をつけて人間の街で暮らすことに許可をするというこの政策は、開始当初はたくさんの問題を抱えていた。
妖怪の住む場所の確保、生きるための糧を得るための方法を身につけるための講習会、なにより、住人の常識がゆらぐことに対してどのように対策をするのか。
世界で一番最初の交流区域である『桜新町』の苦労は山のように存在した。
しかし、『桜新町』の町長は頑張って頑張って全ての問題を克服する。
住居の確保ははじめは町役場の部屋を開放し、住人達が住むことを許可したり生活ができるようになって自分で住む場所を借りられるまでそこを使用し続けた。
講習会には忙しい合間を縫って自分が演説しに行ったり、ルールを無視してただ自分勝手に生きようとする輩には自身が鉄槌を下しにいった。
世界結界への常識による干渉は、知人の魔術師や大いなるものに教えを請うて、町の各地に『意識区画の拡大』を行う装置を配置することで解決した。
『意識区画の拡大』というのは、個人個人の「常識」の範囲を、人格が崩壊しない程度に広げる―――つまりは「常識」が広がるようにしたのだ。
それが世界結界への悪影響を与えないように、通常の常識から逸脱しながらも区画内でははみ出ていない部分のズレが起きないよう、
その部分の余剰をエネルギー化し、半永久的に稼動できるように装置に組み込んだ回路があるため、そこまで激しい乖離は起きていない。
そうやって数々のハードルを乗り越えた今、『桜新町』は上手く運営されている。
けれど今現在人間の手の入らない秘境などには限りがある。そこに今いる妖怪たち全てを入れておくわけにもいかず、また妖怪のうちにも人間に興味を持つものも多い。
よって、世界魔術結社の日本支部と典礼庁外典儀式課が組み、背教者会議などの協力を得て始めたのが『交流区域』という地域政策であった。
妖怪を一定のルールを守るという条件をつけて人間の街で暮らすことに許可をするというこの政策は、開始当初はたくさんの問題を抱えていた。
妖怪の住む場所の確保、生きるための糧を得るための方法を身につけるための講習会、なにより、住人の常識がゆらぐことに対してどのように対策をするのか。
世界で一番最初の交流区域である『桜新町』の苦労は山のように存在した。
しかし、『桜新町』の町長は頑張って頑張って全ての問題を克服する。
住居の確保ははじめは町役場の部屋を開放し、住人達が住むことを許可したり生活ができるようになって自分で住む場所を借りられるまでそこを使用し続けた。
講習会には忙しい合間を縫って自分が演説しに行ったり、ルールを無視してただ自分勝手に生きようとする輩には自身が鉄槌を下しにいった。
世界結界への常識による干渉は、知人の魔術師や大いなるものに教えを請うて、町の各地に『意識区画の拡大』を行う装置を配置することで解決した。
『意識区画の拡大』というのは、個人個人の「常識」の範囲を、人格が崩壊しない程度に広げる―――つまりは「常識」が広がるようにしたのだ。
それが世界結界への悪影響を与えないように、通常の常識から逸脱しながらも区画内でははみ出ていない部分のズレが起きないよう、
その部分の余剰をエネルギー化し、半永久的に稼動できるように装置に組み込んだ回路があるため、そこまで激しい乖離は起きていない。
そうやって数々のハードルを乗り越えた今、『桜新町』は上手く運営されている。
今ではまだ日本の数箇所にしかないが、これからも増えていくだろう妖怪の数を考えればこれからも増えていくだろう区画だ。
ここ、桃月町もまた、ウィザードや妖怪といった存在に寛容な町長がいるため、その事業に乗り出した。ゆえに、この町には多くの不思議な生物が存在する。
ここ、桃月町もまた、ウィザードや妖怪といった存在に寛容な町長がいるため、その事業に乗り出した。ゆえに、この町には多くの不思議な生物が存在する。
「へぇ、全然知らなかった」
「そりゃ柊さんっスからねぇ……っていうのは冗談としても、あまり有名な話じゃないっスからね。
もっとも、日本で仕事してる場合はこういうこと把握してないと現地でいらない誤解を招くことになるんスからちゃんと広報すりゃいいのに」
「今度会ったらアンゼロットの奴に言っとく。
あ。そういやここに来る途中にあの町に寄ったぞ、町長さんがお前に礼言っといてくれってよ」
「そりゃ柊さんっスからねぇ……っていうのは冗談としても、あまり有名な話じゃないっスからね。
もっとも、日本で仕事してる場合はこういうこと把握してないと現地でいらない誤解を招くことになるんスからちゃんと広報すりゃいいのに」
「今度会ったらアンゼロットの奴に言っとく。
あ。そういやここに来る途中にあの町に寄ったぞ、町長さんがお前に礼言っといてくれってよ」
懐かしい話題が出て、ベホイミの頬が緩んだ。
「槍桜さんスか。比泉さんとかアオさんとかは元気だったっスか?」
「あぁ、相談所の連中はみんな元気だったぞ。五十音だけは『大鑑巨砲主義に学ぶ欧州の旅』とかいうツアー旅行当てたらしくて会えなかったけどな」
「それは……なんていうか、ことはさんらしいっスねぇ」
「あぁ、相談所の連中はみんな元気だったぞ。五十音だけは『大鑑巨砲主義に学ぶ欧州の旅』とかいうツアー旅行当てたらしくて会えなかったけどな」
「それは……なんていうか、ことはさんらしいっスねぇ」
苦笑するしかないベホイミ。昔の友人が元気なだけで、よしとするべきだろうと納得させる。
そんな彼女に、柊は話を促した。
そんな彼女に、柊は話を促した。
「それで?結局人を引きずって連れてきたのにはちゃんと理由があるんだろうな、これでなけりゃほんとに斬るぞ」
「度量の小さい男っスねぇ。
ま、それはさておき―――実は、最近妙な事件が桃月町周辺で起きてるんスよ」
「度量の小さい男っスねぇ。
ま、それはさておき―――実は、最近妙な事件が桃月町周辺で起きてるんスよ」
ベホイミが真面目な顔になる。
彼女が言うには、最近この町で起きているのは通り魔事件であるらしい。
対象に人間、妖怪の区別がなく、襲われた対象は軽い傷とともに多量のプラーナを抜かれ、死にはしないものの昏睡状態に陥っていることから普通の事件ではないと判断。
また、後を追うようにエミュレイターの出現が頻発。だからこそここ最近彼女はずっと夜の見回りを行っていたわけだ。
が、宮田が昨日何かに襲われているところを柊が助けたという話を聞き、トラブルに引き寄せられる彼がいるなら絶対に大事件に発展すると考えて協力を求めたのだった。
そのベホイミの説明に、一瞬不思議そうな顔をする柊。
彼女が言うには、最近この町で起きているのは通り魔事件であるらしい。
対象に人間、妖怪の区別がなく、襲われた対象は軽い傷とともに多量のプラーナを抜かれ、死にはしないものの昏睡状態に陥っていることから普通の事件ではないと判断。
また、後を追うようにエミュレイターの出現が頻発。だからこそここ最近彼女はずっと夜の見回りを行っていたわけだ。
が、宮田が昨日何かに襲われているところを柊が助けたという話を聞き、トラブルに引き寄せられる彼がいるなら絶対に大事件に発展すると考えて協力を求めたのだった。
そのベホイミの説明に、一瞬不思議そうな顔をする柊。
「……あきら?」
「はい。ウチのクラスの宮田 晶さんっス。昨日危ないところを助けたの柊さんじゃないんスか?」
「はい。ウチのクラスの宮田 晶さんっス。昨日危ないところを助けたの柊さんじゃないんスか?」
そう説明すると、得心がいったらしくあぁ、と頷いた。
「そうか、昨日助けたおかっぱの。あの子晶っていうのか」
「そうっス。それがどうかしたっスか?」
「あ、いや気にすんな。こっちの話だ。それより、協力って言ったって俺金ないからそう長く泊まれないぞ?」
「そうっス。それがどうかしたっスか?」
「あ、いや気にすんな。こっちの話だ。それより、協力って言ったって俺金ないからそう長く泊まれないぞ?」
困るのが、彼が協力しなければならないとベホイミの中で決定していることではなく、滞在が金銭的な面で心もとないという理由なのがこの男らしい。
柊 蓮司という人間は、求められた時「応えない」という選択をまずしない。
周りが無理矢理にでも求めに応じさせる人間ばかりだったというのもこの性格形成に一部荷担しているのだろうが、
彼自身が見過ごすという結果を受け入れたくない類の人間―――要は諦めるのが嫌いな往生際の悪い人間であることがその選択をさせないのだ。損な性格である。
ベホイミもそれを考えていなかったのか、うーんと唸りだす。
これで世界の守護者が関わっているのだったら、彼の年齢を下げたり彼の学年を下げたりして強制的に学校に通わせたりもするのだろうが、
生憎今回は(宇宙人の関係上)あまり彼女に関わりたくないベホイミが個人的に彼に依頼しているわけなので、そういう無茶苦茶もできない。
柊 蓮司という人間は、求められた時「応えない」という選択をまずしない。
周りが無理矢理にでも求めに応じさせる人間ばかりだったというのもこの性格形成に一部荷担しているのだろうが、
彼自身が見過ごすという結果を受け入れたくない類の人間―――要は諦めるのが嫌いな往生際の悪い人間であることがその選択をさせないのだ。損な性格である。
ベホイミもそれを考えていなかったのか、うーんと唸りだす。
これで世界の守護者が関わっているのだったら、彼の年齢を下げたり彼の学年を下げたりして強制的に学校に通わせたりもするのだろうが、
生憎今回は(宇宙人の関係上)あまり彼女に関わりたくないベホイミが個人的に彼に依頼しているわけなので、そういう無茶苦茶もできない。
「私の家ってわけにもいきませんっスしねぇ」
「あったり前だっ!?若い娘が何考えてんだ!」
「いえ、別に私はいいんスよ。どーせ柊さんに手ぇ出すような甲斐性ないっスし。
ただ大家さんがちょっと最近疲れてらっしゃるみたいなんで心臓に悪い光景をこれ以上見せたくないだけっス」
「あったり前だっ!?若い娘が何考えてんだ!」
「いえ、別に私はいいんスよ。どーせ柊さんに手ぇ出すような甲斐性ないっスし。
ただ大家さんがちょっと最近疲れてらっしゃるみたいなんで心臓に悪い光景をこれ以上見せたくないだけっス」
そう言われて男としてちょっと自信をなくした柊は部屋の隅っこに行ってさめざめと泣きはじめるが、ベホイミはそれを完全に無視。
と、そこでコーヒーを持った茶髪に二本のお下げの少女がコーヒーを運んでくる。
彼女は笑顔でベホイミに話しかけた。
と、そこでコーヒーを持った茶髪に二本のお下げの少女がコーヒーを運んでくる。
彼女は笑顔でベホイミに話しかけた。
「ベホイミちゃんいらっしゃーい。こんな流行らない喫茶店に来てくれてありがとうね」
「あぁ、くるみさん。おかえりなさいっス」
「あぁ、くるみさん。おかえりなさいっス」
コーヒーを運んできたのはさっき店長と話していた時に出てきた桃瀬 くるみだった。
なお、店長がやはり店の角でさめざめと泣いているがまぁそこもスルー。
彼女はコーヒーを置くと、邪推の混じった底意地の悪い目でベホイミを見る。
なお、店長がやはり店の角でさめざめと泣いているがまぁそこもスルー。
彼女はコーヒーを置くと、邪推の混じった底意地の悪い目でベホイミを見る。
「で、ベホちゃんにも彼氏さんができたのかな?今日は晶ちゃんといいベホイミちゃんといい大豊作だねー、秋はラブの季節か?うん?」
「言い方がオヤジっぽいっスよくるみさん……。
コレはそんなんじゃなくて、昔の知り合いっス。くるみさんだって犬神くんと恋仲って言われたらイヤでしょう?」
「あー……うん、無理だね。絶対無理。そっか、そんな昔の友達なんだー。
けど、なんかこの人すごい落ち込んでるみたいだけど、なんかあったの?」
「泊まる場所がなくて困ってるんスよ。金もないしどうしようかって話をしてたとこっス」
「言い方がオヤジっぽいっスよくるみさん……。
コレはそんなんじゃなくて、昔の知り合いっス。くるみさんだって犬神くんと恋仲って言われたらイヤでしょう?」
「あー……うん、無理だね。絶対無理。そっか、そんな昔の友達なんだー。
けど、なんかこの人すごい落ち込んでるみたいだけど、なんかあったの?」
「泊まる場所がなくて困ってるんスよ。金もないしどうしようかって話をしてたとこっス」
勝手に話を改竄するベホイミだが、柊としても話をややこしくする意味がないため、特に否定することはない。
それを聞いたくるみがふぅん、と呟いて―――ある一言を口にする。
それを聞いたくるみがふぅん、と呟いて―――ある一言を口にする。
―――その日、喫茶エトワールに新しいバイト(住み込み)が加わった。