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想いと絆と破壊の力(後編) ◆SXmcM2fBg6

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        ○ ○ ○


 マスケット銃の銃口を前へ後ろへ右へ左へ。次から次へと標準し魔弾を吐き出す。
 撃ち終えたマスケット銃は投げ捨て、時には鈍器として使用し、新たなマスケット銃を生成して引き金を引く。
 留処なく流れるように、休みなく踊るように。軽やかなステップを刻む少女の顔に、最初に見せた余裕はまったくなかった。

「――――――」
 少女が踊る相手は七つもの同貌。彼らは剣の切っ先を銃の銃口を少女達へと向け、その度に魔弾に打ち抜かれる。
 しかし輪舞(ロンド)のリズムはいつ彼らに奪われてもおかしくはない。何しろ人数の上では彼らのほうが多数なのだ。
 加えて三人のダンスパートナーの内一人は、いつドジを踏んでもおかしくはない。それフォローをするのは、基本的に少女の役目だ。
 助けがないわけではないが、舞台全体を把握するためにも、今は僅かな思考の乱れも許容できない。

「ッ――――ハ」
 いつの間にか止まっていた呼吸を意識的に再開させる。
 正確なリズムを刻むためには、呼吸は重要なファクターだ。
 脳はもちろん全身――指先にまで酸素を行き渡らせなければ、思考は単純化し意識は鈍化しいつか些細なミスをする。
 そうなればミスを補うために無理をしてまた些細なミスを繰り返し、後はドミノ倒しにリズムが崩れる。
 ここで踊り続けるためには、僅かなミスも許されない。

 今考えられる舞踏の終わりは三種類。
 一つは自身の体力が切れ、彼らの速度から遅れることだ。
 今は先手を打つことにより、彼らの行動を封殺し、拘束された二人の解放を防いでいる。
 だが僅かでも遅れてしまえば、相手をする人数は一人、二人と増え、致命的なまでに手数が足りなくなる。
 そうなれば彼らは己が目的を果たし、先に逃げた少女を追いかけるだろう。
 それがこの戦いにおける少女の敗北。避けなければいけない結末だ。

 そしてあと二つ、勝利条件といえるものがある。
 一つは彼らのメダル切れ。聞けば彼らは長い時間変身しているらしい。
 シグマ算で増える消費量を考えれば、それほど先は長くないはずだ。
 そしてもう一つが、この場からの逃走。
 彼らの目的は仮面ライダーの破壊。故に、ファイヤーエンブレムたちに用はない。
 龍騎へと変身した少年を連れて逃げることができれば、彼らも戦う理由はなくなるはずだ。
 それを困難とさせるのは、今も少女の結界で守られている一人の青年だ。
 彼らは手段を問わない闘いをするらしい。もし青年を人質に取られてしまえば、逃げることもできなくなる。

 故に、取れる選択肢は一つだけ。
 少しでも長く、時間を稼ぐことだけだ。
 彼らのセルメダルが切れるか、青年が動けるようになるその時まで。

「ハッ―――、ハッ―――、ハッ―――」

 いつ割れるとも知れぬ薄氷の上を、少女は軽やかに舞い踊る。
 息を弾ませながらも、自身を鼓舞するために笑顔を浮かべ、ステップのテンポを加速させる。

「優雅に、華麗に、よりしなやかに……!」

 魔弾の舞踏はまだまだ続く。
 輪舞(ロンド)の終わりはいつとも知れず。




 その舞を、少女と同様にステップを踏みながら、異形の怪人が賞賛する。
 計七人に分身したディケイドの行動を把握し的確に対処するその采配は、中学生とは思えぬほどの冴えを見せていた。
 基本となるのはやはり魔法少女としての力と経験だが、それを後押ししているのは鹿目まどかの言葉だろう。
 友愛、あるいは親愛とは、時としてそこまで人を強くするものなのかとメズールは感嘆する。

 その間にも襲い来るディケイドの攻撃を、足で、マントで、時には液状化することで対処する。
 メズールが完全態でもないのに液状化能力を使えるのは、当然ちゃんとした理由がある。
 参加者達の命を握り、同時にメダルの格納も可能としている首輪には、実はメダルとの融合を促進する機能が付いているのだ。
 これにより参加者であれば誰もがメダルの器となりうる可能性を持ち、同時に取り込んだコアメダルと同調しやすくなっている。
 力を制御できていたはずのオーズが暴走したのも、コアを取り込んで間もないまどかが僅かながら力を引き出したのも、全てその機能に起因していた。

 その事を知ってかは判らないが、メズールは液状化能力を有効に使い、二対一の状況で対抗していた。
 彼女が完全に液状化してこの場から逃げないのは、少しでもセルメダルを節約するためだ。
 欲望により百枚は超えているとはいえ、長時間液状化すればすぐに増加分はなくなってしまう。
 ただでさえメダルの消費が大きい能力なのだ。瞬間的な使用ならともかく、能力を全開にするのなら最低でもセルが二百枚は欲しい。

「―――あら」
 マミの放った魔弾により、いつの間にか背後に回りこんでいたディケイドに気づく。
 即座に後ろ回し蹴りと共に高圧水流を噴射し、ディケイドを蹴り飛ばす。
 攻撃自体は防御されたが、とりあえず距離を開けることには成功した。

 マミの援護には、少なからずメズールも助けられている。
 彼女が敵であるはずの自分を援護するのは、ディケイドの行動を完全に阻止するためだろう。
 もしメズールを狙うように見せかけて別の人を狙われれば、彼女一人では対処しきれないからだ。

「精々頑張りなさい。私がうまく逃げられるように、ね」
 ディケイドの攻撃を捌きながらくるくると踊り続けるマミを眺め、メズールはくすりと微笑する。
 彼女の援護には一応自分も助けられているので、二人くらいは引き付けてやろうと場違いな慈愛を浮かべながら。




 一方、仮面ライダー龍騎へと変身した智樹はというと。

「うおわッ……!」
 仮面の横を掠め飛んだ弾丸に悲鳴を上げながらも、迫り来るライドブッカーの一撃をドラグセイバーで受け止める。
 が、すぐにディケイドの圧力に押され、膝を突きそうになる。
 そこに飛来したマミの魔弾がディケイドを撃ちぬき、出来た隙に即座にディケイドから距離を取る。
 しかし、逃げた先にも別のディケイドが回り込んでくる。

「ひぃい――!」
 振り下ろされたライドブッカーを仰け反って回避し、続く一撃を地面に倒れ付して回避する。
 そこを狙うように放たれた銃撃は、地面を転げ回ることでやり過ごす。
 だがそれで逃げ続けられるはずもなく、転げまわる先にさらに別のディケイドが待ち構える。

「ノォ―――ウッ!」
 銃撃に追われてる今、止まる事など出来る筈もなく、袋の鼠のように追い詰められる。
 そのままどうすることも出来ず、ディケイドの攻撃範囲に入る――直前、待ち構えていたディケイドが、炎弾を受けて吹き飛ばされる。
 同時に龍騎を銃撃していた方も、マミの魔弾に撃たれ攻撃を中断させた。

「アナタ、大丈夫?」
「大丈夫じゃねぇよッ! 何なんだよアイツ、マジで殺しに来てんぞ!」
「それが彼の使命らしいからね。アナタ、理由知らない?」
「俺が知るかーッ!! 何で支給された道具使っただけで狙われなきゃなんねぇんだよ!」
「そうよねぇ」
 龍騎の怒りの絶叫に、ファイヤーエンブレムは困ったように呟く。
 それは目的自体は明確でありながら、理由だけがわからないディケイドの使命に対する困惑だ。

 ディケイドは明らかに龍騎を破壊しにきている。
 彼らにもこちらの話は聞こえているはずなので、智樹が本来の龍騎の変身者じゃないのは既に伝わっているはずだ。
 それでもなお殺しに来るということは、ディケイドの狙いは“仮面ライダー”そのものであって、その変身者は関係ないのだろう。

「まぁ愚痴を言ってもしょうがないわ。とにかく頑張りましょう」
「くっそーッ」

 二人のディケイドが、龍騎とファイヤーエンブレムを挟み込むように距離を詰めてくる。
 他の五人の内二人はマミの方へ向かい、別の二人はグリードと争い、残る一人は姿が見えない。
 マミの方へ向かう二人は、次々と放たれる魔弾を躱しながら、徐々に距離を詰めていく。
 しかし彼女に届く前にルナティックの炎がその行動を遮り、その間にマミは十分な距離を確保する。

 マミもファイヤーエンブレムもルナティックも、主力となる人間は全員が遠距離系だ。距離を詰められればあっという間に競り負ける。
 近距離をこなせる龍騎は、変身した智樹が戦いとは無縁な少年であったため、ディケイドの相手にはならない。精々囮がいいところだ。

 ディケイドは明らかにに対多の状況に慣れている。もし誰か一人でも欠けていれば、今頃倒されていたのは想像に難くない。
 だがらといって、そう簡単に諦めるつもりは智樹にはない。たとえ倒すことが出来なくても、最後まであがき続けるだけだ。

「お話は終り。来るわよ!」
「ッ………!」

 二人のディケイドがライドブッカーを構え、龍騎達へと襲い来る。
 それに対し絶対に死んでなるものかと、龍騎はドラグセイバーを手にディケイドを睨みつけた。




 そんな彼らの抵抗を、ディケイドは苛立たしく感じていた。
 イリュージョンを使用した時点でコアメダルを使用し、既にセル50枚分の余裕は得ていた。
 だがそれも、こうも抵抗されては無意味になってしまう。
 とっとと終わらせようとライダーカードを使おうにも、カードを取り出そうとする度に何かしらの妨害が入る。

 その妨害が特に顕著なのは、龍騎と共に現れた黄色い少女だ。
 彼女は次から次へと取り出したマスケット銃で、こちらの行動を的確に阻害してくる。
 一発一発は威力が低く、またマスケット銃は単発であるため隙もある。
 だがそれを補えるほどに大量のマスケット銃を取り出されえは、攻撃の隙を縫うのも難しい。

 加えて先ほど、分身の一人が倒された。
 早く龍騎達のうち誰かを倒さなければ、今度はこちらが追い詰められるだろう。
 だが分身はそれぞれの相手に集中していて、他事に回すのは難しい。。
 となると、必然少女自身を狙うことになるわけだが――――

「いい加減しつこいヤツだ。少しは休んだらどうなんだ?」
「その言葉はそのまま君に変えそう。大人しく裁きを受け、永遠の安息を得たまえ」
「それこそお断りだ。俺にはまだやるべき事があるからな」

 ルナティックの放つ蒼炎が、少女とディケイドの間を分断する。
 ヤツとてオーズとの戦いで受けたダメージがあるだろうに、それを押してここまでの戦いをするとは恐れ入る。
 だがそろそろ代用分のセルも半分を切るだろう。多少の無茶をしてでも、決着を付けさせてもらう。

 ライダーカードを取り出そうとライドブッカーを開く。と同時に殺到する無数の魔弾と蒼い炎の矢。
 それを、分身を盾にすることで防ぎきる。

「――――――ッ!!」
「む…………!」
 それに少女とルナティックが息を呑むが、攻撃がやむ様子はない。
 すぐに規定値を超えたダメージを受けて分身が消え、

《――ATTACK RIDE・CLOCK UP――》

 その瞬間、ディケイドの勝利が確定した。


 時間が止まったと錯覚するほどに加速する時間。
 目前まで迫っていた魔弾は空中に停止しているかの如く。
 揺らめく蒼炎は凍りついたように動きを止める。
 今のディケイドにとって、己以外の全てが遅過ぎた。

 クロックアップの効果を得たのは使用した本体だけだが、停止した時間の中では一人でも十分過ぎる。
 ディケイドはその場から数歩ずれて魔弾の射線から外れ、ライドブッカーの銃口をグリードへと向け引き金を引き捲くる。
 撃ち手と同様時間の軛から解き放たれた弾丸は、狙い違わずその肢体を撃ち抜き、水の飛沫だけを飛び散らせた。

「チッ……液状化能力か」
 偶然か直感か、グリードはクロックアップの直前に己が肉体を水に変えていたのだ。
 ああなってはエネルギー攻撃以外の一切が通じない。
 だが加速できる時間は有限だ。無駄な攻撃をしている余裕はない。

 ディケイドは龍騎の元へと駆け寄り、無抵抗な体を蹂躙する。
 腹を膝で蹴り飛ばし、頚部に肘を打ち込み、顎をアッパーで打ち上げ、踏み付けて地面へと叩きつけ、

「これで終わりだ」
《――FINAL ATTACK RIDE・De De De DECADE――》
 空高くに跳躍し、出現した十枚のエネルギープレートを通過し、ようやくバウンドを始めた龍騎へとディメンジョンキックを叩き込み――――
 着弾の衝撃で舞い上がった粉塵が、その結末を覆い隠す。

 以って事は終わった。
 時間は正常に動き出し、少女の放った魔弾は空を穿ち、蒼炎は揺らめきを取り戻す。
 一切の防御行動を取れなかった龍騎にディケイドの攻撃から逃れる術はなく、直撃を受けて生きていられる道理はない。
 だが。

「痛ってぇ――――ッ!! 体中が痛てぇッ!
 いったい何なんだ! 何が起きたんだよ!」
 ディケイドのすぐ近くには、事情も解らぬまま激痛にのた打ち回る龍騎の姿があった。

「フン………悪運の強いヤツだ。それとも、お前の機転を褒めるべきか?」
 不機嫌そうに鼻を鳴らしながら、彼なりの賛辞を口にする。
 ディケイドの視線の先には、エンジンブレートを両手で構えた青年がいた。

 戦いの最中、マミの結界に守られていた竜はじっと回復に努めていた。
 だがそれだけではなく、マミ以上にディケイドの行動を観察していたのだ。
 そしてディケイドが加速した直後、ディケイドではなく龍騎を狙ってジェットによるエネルギー弾を発射したのだ。

 クロックアップによって加速したディケイドを狙い打つのは困難だ。
 だが、奴の目的は“仮面ライダー”だとわかりきっている。
 ならば、必然的にディケイドが狙うのは龍騎となる。
 竜はその判断に智樹の命運を賭けたのだ。

 結果として竜の放ったエネルギー弾は、ディメンジョンキックが当たる直前に龍騎に命中し、その体を弾き飛ばして直撃を回避させた。
 そして龍騎へと当たらずに終わったディケイドの必殺技は地面へと着弾し、粉塵を巻き上げるだけに終わったのだ。


 だが、今回はそれでどうにかなったが、次はそうは行かない。
 そう思いながらディケイドは再びライダーカードを引き抜く。

「―――ティロ・フィナーレ!!」
 だがドライバーへとカードを挿入する前に、ディケイドへと特大の魔弾が放たれる。
 ディケイドはその砲撃を咄嗟に回避するが、続く二色の炎による追撃に反撃の機会を失う。

《――ACCEL――》
 その間に、竜がアクセルへと変身してバイクモードへと変形する。
 数こそ減ったが、ディケイドの分身はまだ残っている。
 またあの超加速を行われては、今度は龍騎を守れない。
 故に、また超加速が行われる前に撤退するべきだと判断しての行動だ。

「私が時間を稼ぐから、アナタ達は先に逃げなさい!」
 それを見たファイヤーエンブレムがマミ達に指示を出す。
 仮面ライダーさえいなくなれば、ディケイドも無駄な戦いはしないはずだと。
 その意図を理解したマミは彼の言葉に頷き、リボンで龍騎を回収しながらアクセルの背に飛び乗った。

 だが、ディケイドが龍騎の離脱を認めるはずがない。

「させるか!」
 既にオーズに逃げられているのだ。ここで龍騎までも逃がしては、この戦いが無駄になってしまう。
 ディケイドは分身にファイヤーエンブレム達を攻撃させ、自身はアクセルを追いかけるためにドライバーを展開する。
 だが、ライダーカードを挿入する直前に、ディケイドへと投げつけられた物があった。

「なっ………!」
 それを見て驚きに目を見開き、思わず投げられた物体をキャッチする。
 ディケイドに投げつけられた物。それは、仮面ライダー龍騎へと変身するためのデッキだった。

「それが欲しけりゃくれてやるよ! バーカバーカッ!!」
「桜井君!」
 龍騎へと変身していた少年はそう言って、少女に怒られる。
 その間にもアクセルは加速しながら走り去り、間もなく姿を消した。

「――――――」
 その光景に、ディケイドは思わず立ち尽くす。
 彼の目的はあくまでも仮面ライダーの破壊であり、人殺しではない。
 だがターゲットとしていた少年が仮面ライダーでなくなったことで、次の行動を見失ったのだ。

「さて、後はアンタだけよ」
「裁きの時だ。己が行いを悔い改め、タナトスの声に身を委ねよ」
「ちょっとルナティック、殺しはなしよ」
 ディケイドはその声に我に返り、辺りを見回す。
 前方ではファイヤーエンブレムが両手に炎弾を発生させ、背後ではルナティックが炎の矢を装填したボウガンを構えている。
 ついでに言えば、いつの間にかグリードも姿を消していた。

「…………無駄骨、か」
 コアメダルは一枚入手したが、五十枚近く消費してしまったため、差引きはゼロだ。
 加えて二度も仮面ライダーを逃がしたとあっては、破壊者としては敗北もいいところだろう。
 分身はまだ残っているが、仮面ライダーがいない以上戦う意味はまったくない。
 残った分身に二人を銃撃させ、その間にライダーカードを使用する。

《――ATTACK RIDE・INVISIBLE――》
「な……ッ! チィ、逃げやがったか」
 インブジブルによってディケイドが姿を消すと同時に、残っていた分身も消失する。
 それにより、ディケイドが逃げたと理解したファイヤーエンブレムは、舌打ちをして悔しがる。

「―――――――」
「ってアンタどこ行くのよ」
 ルナティックもディケイドを完全に見失ったことを理解すると、両手から蒼炎を噴射させ飛び去る。
 ファイヤーエンブレムは咄嗟にルナティックへと声をかけるが、その時には既に姿が見えない。

「もう、何なのよ!」
 一人残されたファイヤーエンブレムは、その勝手さに思わず悪態をついた。


        ○ ○ ○


 ディケイドの追跡がないことを確認して、竜は息を吐いて変身を解いた。
 それと同時に、顕界となった疲労とダメージに膝を突く。

「大丈夫ですか? えっと……」
照井竜だ」
「照井さん、ですね。私は巴マミです」
「俺は桜井智樹だ。一応よろしく」

 簡単な自己紹介をしたあと、マミは竜の肩を担ぐと、建物の壁へと凭れ掛けさせる。
 そして竜の体に手を当て、簡単な回復魔法をかける。

「これは?」
「傷を癒す魔法です。どうも効きが悪いですけど、少しは楽になると思います」
「そうか……すまない、礼を言う」
「いえ、魔法少女として当然のことですから」
「当然のこと、か」
「はい」

 マミの言葉に、竜は仮面ライダーについて考える。
 竜の知る仮面ライダーとは、Wの様な人々の平和を守る人間を指す。
 だから復讐者であることを選んだ竜は仮面ライダーの名を捨てた。
 しかしディケイドは、自らを仮面ライダーと名乗った上で、全ての仮面ライダーを破壊すると宣言した。
 その矛盾は何なのかと考えて、小さく頭を振って考えることを止める。
 ヤツの事を考えてもどうしようもない。今はこれからのことを考えるべきだ。

「お前達はこれからどうする?」
「私は鹿目さんと合流しようと思ってますけど………」
「だったら行き先はキャッスルドランだな。そこに人を待たせている。鹿目もそこに向かうだろう」
「そうですか。じゃあ一緒にここに向かいましょう。桜井君も、それで良い?」
「俺は別にかまわねぇぞ。それより早く休みてぇ……」

 智樹が情けないことを口にするが、争い事とは無縁だった少年が急にこんなことに巻き込まれれば、そう思うのも無理はないだろう。
 そう思い、マミは苦笑しながら竜の肩を抱いて立ち上がる。

「なら早くキャッスルドランへ向かいましょう。ほら、桜井君も手伝って」
「しょうがね。もう一分張りするか」
「すまないな、二人とも」
「気にすんなって。こっちも助けてもらったしな。
 まあ、やり方は無茶苦茶だったけど………」

 恨みがましく言いながらも、智樹はマミとは反対側について竜の肩を抱き、ゆっくりと歩き出す。
 竜は内心で改めて感謝をしながら、もう一つのこれからについて考える。

 現在ここにいる三人は、全員が戦える状態にない。
 厳密に言えばマミは戦えるだろうが、人二人を守りながらでは無理がある。
 これについては、キャッスルドランへと急ぎ、十分な休息を得ることでどうにかしよう。

 だが、今竜にとって重要なのは、まどかから貰い受けた新たな力だ。
 ガイアメモリ強化アダプターで強化変身したアクセルブースターは確かに強力な力だ。
 だが使いこなせなければ意味がない。この力で井坂への復讐を遂げるならば、最低でも使いこなす必要があるだろう。

“そのためにも、早急にメダルを確保しなければな”
 能力を制限されたこの殺し合いでは、訓練をするにもセルメダルが必要となる。
 だが己の欲望に従えばセルメダルが増えるというが、復讐心で動く自分は、どうにもセルメダルが増えにくい。

“さて、どうするか”
 そう思案しながら、竜はマミと智樹に支えられながらも歩みを進めた。
 彼の進む先にあるのが復讐の成就か、それとも別の結末かは、今はまだわからない――――


【一日目-午後】
【C-6/シュテルンビルト外縁】

【桜井智樹@そらのおとしもの】
【所属】無(元・白陣営)
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)
【首輪】140枚:0枚
【装備】なし
【道具】大量のエロ本@そらのおとしもの、ランダム支給品0~1
【思考・状況】
基本:殺し合いに乗らない。
 0.体中が痛い。早く休みたい。
 1.マミ、竜と一緒にキャッスルドランへ向かう。
 2.知り合いと合流したい。
 3.二度と変身はしない。
 4.いつかマミのおっぱいを揉んでみせる。絶対に。
 5.残りのエロ本は後のお楽しみに取っておく。
【備考】
※エロ本は三分の一程読みましたが、まだ大量に残っています。


【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ】
【所属】黄
【状態】疲労(中)
【首輪】65枚:0枚
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
【道具】基本支給品、ランダム支給品0~2(確認済み)
【思考・状況】
基本:殺し合いには乗らない。極力多くの参加者を保護する。
 1.智樹、竜と共にキャッスルドランへと向かい、まどかと合流する。
 2.他の魔法少女とも共存し、今は主催を倒す為に戦う。
 3.ディケイドを警戒する。
【備考】
※参戦時期は第十話三週目で、魔女化したさやかが爆殺されるのを見た直後です。


【照井竜@仮面ライダーW】
【所属】無(元・白陣営)
【状態】ダメージ(大:微・回復中)、疲労(大)
【首輪】35枚:0枚
【装備】{アクセルドライバー+アクセルメモリ、エンジンブレード+エンジンメモリ、ガイアメモリ強化アダプター}@仮面ライダーW
【道具】基本支給品一式、エクストリームメモリ@仮面ライダーW、ランダム支給品0~1(確認済み)
【思考・状況】
基本:井坂深紅郎を探し出し、復讐する。
 1.マミ、智樹と共にキャッスルドランへ向かい、まどかと仁美(メズール)と合流する。
 2.アクセルブースターの力を使いこなす。その鍛錬のためにセルメダルを集める。
 3.ウェザーを超える力を手に入れる。その為なら「仮面ライダー」の名を捨てても構わない。
 4.他の参加者を探し、情報を集める。
 5.Wの二人を見つけたらエクストリームメモリを渡す。
 6.ディケイド……お前にとっての仮面ライダーとは、いったい―――
【備考】
※参戦時期は第28話開始後です。
※メズールの支給品は、グロック拳銃と水棲系コアメダル一枚だけだと思っています。
※鹿目まどかの願いを聞いた理由は、彼女を見て春子を思い出したからです。

【ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW】
鹿目まどかに支給。
ガイアメモリに装着することで内包された「地球の記憶」を一時的にバージョンアップし、能力を3倍に増幅させることが可能なアイテム。
仮面ライダーアクセルが使用することにより、アクセルブースターへと強化変身できる。


        ○ ○ ○


 【C-8】に位置するホテルの屋上に着地し、ルナティック――ユーリ・ペトロフは膝を突いた。
 正義のためにと無理を通してきた体が、ついに限界に達したのだ。
 それでもこんな場所で倒れるわけには行かないと、どうにかホテルの一室に潜り込み、備え付けのベッドに倒れこむ。
 ルナティックの仮面を外し、息を吐いて力を抜けば全身に激痛が奔る。

「これは……しばらくは動けないな」
 辛うじて骨折はしていないが、間違いなく皹は入っているだろう。
 無理をすれば、間違いなく後に響く。そうなれば正義を成すことも出来なくなる。
 近くに裁くべき悪がいるのであればともかく、そうでないなら休息を取るべきだ。
 そう結論付けて、静かにまぶたを閉じる。

 ……その途中で、二人の人間が脳裏に浮かんだ。

火野映司に……鹿目まどか―――”
 ワイルドタイガーと同じく、綺麗事のような正義を語る人間。
 火野映司が暴走した理由はわからないが、鹿目まどかと共にいる以上何かしらの影響があるはずだ。
 それを見届けることが叶わないのが残念だが、その行く末は大変興味深い。

“貴様らの正義……見極めさせてもらう”
 ワイルドタイガーとはまた違う正義に仄かな期待を寄せながら、ユーリは眠るように気絶した。


【1日目-午後】
【C-8/ホテル】

【ユーリ・ペトロフ@TIGER&BUNNY】
【所属】緑
【状態】疲労(大)、ダメージ(極大)、気絶
【首輪】60枚:0枚
【コア】チーター(一定時間使用不能)
【装備】ルナティックの装備一式@TIGER&BUNNY
【道具】基本支給品一式
【思考・状況】
基本:タナトスの声により、罪深き者に正義の裁きを下す。
(訳:人を殺めた者は殺す。最終的には真木も殺す)
 0.――――――――
 1.今は休む。
 2.火野映司の正義を見極める。チーターコアはその時まで保留。
 3.鹿目まどかの正義を見極める。もしまどかが庇った者が罪を犯したら、まどか諸共必ず裁く。
 4.人前で堂々とNEXT能力は使わない。
 5.グリード達とジェイク・マルチネスと仮面ライダーディケイドは必ず裁く。
【備考】
※ルナティックの装備一式とは、仮面とヒーロースーツ、大量のマントとクロスボウです。
※仮面ライダーオーズが暴走したのは、主催者達が何らかの仕掛けを紫のメダルに施したからと考えています。
※参戦時期は少なくともジェイク死亡後からです。


        ○ ○ ○


 人のいない街でライドベンダーから降車しながら、門矢士はこれからどうするかと考える。
 仮面ライダーオーズは完全に見失った。今から追いかけたところで、見つけることは困難だろう。
 加えてセルメダルの残量も、あの暴走したー図を相手にするには心許ない。

“それに、こいつの事もある”
 龍騎のカードデッキを手に取る。
 変身アイテムだけを破壊したところで、ディケイドの使命は果たされない。
 破壊するのはあくまでも仮面ライダーでなければならないのだ。

“となると、どいつか適当なヤツに渡して変身させ、そいつを破壊するか”
 それが一番妥当な処分の方法だろうと結論し、デイバックに放り込む。
 すると、デッキと入れ替わりで飛び出してきたものがあった。

「ちょっと、こんな所に押し込まないでよ!」
「…………ハァ」
 めんどくさいヤツが出てきた、と士はあからさまに溜め息を吐く。
 デイバックから出てきたのは、白い小さなコウモリ――キバーラだ。
 ユウスケと合わせてかつて一緒に旅をしてきた彼女は、士の道具として支給されていたのだ。
 彼女に関してはいろいろと思う所もあるが、今はそれを心の隅に捨て置く

「お前は引っ込んでろ」
「あ、ちょっとなにすん―――」
 士はキバーラを引っ掴み、デイバックへと放り込んですぐさま閉じる。
 同時にピタリと声も途絶え静かになる。

「はぁ……先に休めるところを探すか」
 キバーラの登場に疲れが表面化した士は、再び溜め息を吐いた。
 そうしてとりあえず後のことは後で考え、今は休憩を先にしようと決めたのだった。


【1日目-午後】
【D-7/ラジオ会館周辺】

【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【所属】無
【状態】疲労(大)、ダメージ(中)
【首輪】60枚:0枚
【コア】サイ、ゾウ(二枚とも一定時間使用不能)
【装備】ディケイドライバー&カード一式@仮面ライダーディケイド、
【道具】基本支給品一式×2、キバーラ@仮面ライダーディケイド、龍騎のカードデッキ@仮面ライダーディケイド、ランダム支給品1~4(士+ユウスケ)、ユウスケのデイバック
【思考・状況】
基本:「世界の破壊者」としての使命を全うする。
 1.今は先に休める場所を探す。
 2.「仮面ライダー」と殺し合いに乗った者を探して破壊する。
 3.邪魔するのなら誰であろうが容赦しない。仲間が相手でも躊躇わない。
 4.セルメダルが欲しい。
 5.龍騎のデッキを適当なヤツに渡して変身させ、そいつを破壊する。
 6.最終的にはこの殺し合いそのものを破壊する。
【備考】
※MOVIE大戦2010途中(スーパー1&カブト撃破後)からの参戦です。
※ディケイド変身時の姿は激情態です。
※所持しているカードはクウガ~キバまでの世界で手に入れたカード、 ディケイド関連のカードだけです。
※アクセルを仮面ライダーだと思っています。
※ファイヤーエンブレムとルナティックは仮面ライダーではない、シンケンジャーのようなライダーのいない世界を守る戦士と思っています。

【キバーラ@仮面ライダーディケイド】
門矢士に支給
キバット族の白いコウモリ型モンスター。
普段は明るい性格を装っているが、時折冷酷な一面を覗かせることがある。
ライダーに変身する者に噛み付くことで、その能力を活性化させることが出来る。
鳴滝と同様に次元に干渉して他者を異世界に送る能力を持つが、このロワでは制限により使用できない。
詳しい条件は不明だが、彼女に認められることで仮面ライダーキバーラへと変身できる。


        ○ ○ ○


 誰もいなくなった戦場に一人残されたファイヤーエンブレムは、気を取り直してマミ達の後を追っていた。
 ディケイドからは逃げ切れただろうが、他にも危険な参加者がいないとも限らない。
 もしそんな人物と遭遇してしまえば、今の彼女たちでは苦戦を免れないだろう。
 そうならない為にも、急いで合流する必要があるのだが―――

「もう、あの子達ったら。どこに向かったのかしら」
 放置されていたライドベンダーですぐに追いかけたのだが、どれだけ走ってもマミ達の姿は見えない。
 追跡されていた場合に備えて方向転換したのだろうが、どこに向かうかぐらいはこっそり聞いておくべきだった。
 ちなみにもう一台あったはずのライドベンダーはいつの間にか消えていた。
 おそらく、ディケイドが乗っていったのだろう。


 そうこうしているうちに、いつの間にかオフィス街を抜ける。
 それと同時に、シュテルンビルトの海が視界に写りこんだ。

「……まぁ、たまにはこんな景色も、悪くないわね」
 本来なら船に乗らなければ見えない風景に、思わずバイクを止めて見入る。
 ヒーローとしての仕事は突発的なものが多いため、彼らの休暇は意外と少ない。
 そのため、バカンスでもないと見ないような風景とは縁遠かったのだ。

「けど、見るならやっぱりちゃんとした海でよね」
 こんな貼り絵みたいな風景では、風情も何もあったものではない。
 そう感想をつけて、目の前の光景に付加を下す。
 それよりも今はマミ達意を追いかけるほうが大事だ。

「さて、気を取り直してあの子達を探しま――――しょ……う?」
 ライドベンダーのハンドルを握りなおし、アクセルを回そうとした時だった。
 背後から飛来した赤い閃光が海に着弾し、水柱を作り出した。

 ただ、その直前。
 何か、衝撃を感じたような気が――――

「ゴ、フ………ッ!?」
 唐突に咳き込み、口から吐血する。
 吐き出した血の量が意外と少なく感じたのは、その大半が腹部から流れ出ているからか。
 ……そう、腹部だ。そこに穴が開いていて、そこから大量の血が流れ出ている。
 焼いて塞ぐ、なんてことが出来るほど小さな穴ではない。子供の腕くらいは入りそうな大穴だ。

「――――――――」
 血液と一緒に体力も流れ出たのか、体を支えられずにライドベンダーから崩れ落ちた。
 その際に、首輪から大量のセルメダルが零れ落ちた。メダルが散らばる音は、まるで命が崩れる音のようだと思った。

「ごめんなさいね。私、熱いのは嫌いなの」
 少し遠くから、嘲るような声が投げかけられた。
 残った力を振り絞って顔を上げれば、そこには見知らぬ少女の姿がある。
 少女は倒れ付したファイヤーエンブレムへと近づくと、首輪を解さずにセルメダルを吸収した。
 その際少女の姿に、先ほど逃げたはずのグリードの姿が重なって見えた。

「アン……タ………逃げた、はず……じゃ…………」
「逃げたわよ。あなたの方が私のところにやってきたの」
「…………………」
 その言葉を聴いて、自分の不運と不注意を少し恨んだ。
 何のことはない。
 グリードの少女が自分を狙っていたのではなく、自分の方がのこのこと現れ、彼女に隙を晒してしまったのだ。

「あなたの支給品は貰うわね。もう必要ないでしょう?」
 グリードの少女はそう言って、答えも待たずに血に濡れたデイバックを奪い取る。
 ファイヤーエンブレムにはもう抵抗する力もない。
 ただ自分の支給品が、彼女のデイバックに移されていく様を見続けることしか出来ない。

「さて、この後はどうしましょうか。
 このまま包装まで単独行動をするか、鹿目まどかを追ってオーズを始末するか……。
 出来れば始末したい所だけど、照井竜もキャッスルドランに向かう可能性もあるのよね。
 そうすると余計な人間まで付いて来ちゃうし……五人も纏めて殺すのは一苦労だわ」

 もうファイヤーエンブレムを死んだものとして見ているのか、グリード少女が独り言を呟く。
 その内容は看過できるものではないが、もう彼には何も出来ない。グリードの少女を止めるには、何もかもが遅すぎた。
 そして行動方針を決めたのか、グリードの少女は先ほどまで彼が乗っていたライドベンダーに乗車する。
 その際彼の血で汚れていた車体を、水を操って洗車していたのはご愛嬌だろう。

「それじゃあバイバイ、ヒーロー。安らかに眠ってね」
 最後にそう言って、グリードの少女は走り去って行った。
 それを見届けて、ファイヤーエンブレムは空を見上げた。

「タイガー……みんな……、ごめんなさい…………」
 この空の下ではまだ他のヒーロー達が頑張っているはずなのに、自分は何も出来ずにここで死ぬ。
 そのことだけが、ただ悔しくて仕方がなかった――――。


ネイサン・シーモア@TIGER&BUNNY 死亡】

【1日目-午後】
【C-7/オフィス街付近】

【メズール@仮面ライダーOOO】
【所属】青・リーダー
【状態】健康
【首輪】195枚:0枚
【コア】シャチ:2、ウナギ:2、タコ:2
【装備】グロック拳銃(14/15)@Fate/Zero、紅椿@インフィニット・ストラトス
【道具】基本支給品、T2オーシャンメモリ@仮面ライダーW、ランダム支給品1~3
【思考・状況】
基本:青陣営の勝利。全ての「愛」を手に入れたい。
 1.このまま放送まで単独行動を続けるか、鹿目まどかを追ってキャッスルドランに向かい、オーズを始末する。
 2.まずはセルと自分のコア(水棲系)をすべて集め、完全態となる。
 3.可能であれば、コアが砕かれる前にオーズを殺しておく。
 4.完全態となったら、T2オーシャンメモリを取り込んでみる。
【備考】
※参戦時期は本編終盤からとなります。
※自身に掛けられた制限を大体把握しました。


【全体の備考】
※参加者達の首輪には、メダルとの融合を促進し、同調しやすくする機能があります。



058:Cにさよなら/トゥー・ザ・ビギニング 投下順 060:導きの令呪
057:義の戦(前編) 時系列順 061:目前のデザイア
056:戦いと思いと紫の暴走(前編) 火野映司 062:さらばAライダー/愛よファラウェイ
鹿目まどか
照井竜
ユーリ・ペトロフ 095:正義日記
門矢士 066:チープ・トレード
メズール 092:Mの侵略/増幅する悪意
ネイサン・シーモア GAME OVER
011:いつかは今じゃないだろ 巴マミ 062:さらばAライダー/愛よファラウェイ
桜井智樹



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最終更新:2014年05月17日 18:46