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五星戦隊ダイレンジャーの第39話 - (2014/07/12 (土) 09:15:52) の1つ前との変更点
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&bold(){&ruby(ごせい){五星}戦隊ダイレンジャーの第39話}
リュウレンジャーこと亮の仇敵である魔拳士・陣は、亮を庇ってゴーマ怪人の攻撃の餌食となった。
陣はザイドスに捕われ、牢屋の中に閉じ込めらている。
ゴーマの戦闘員コットポトロが見張りについているが、陣が身動きしていないのに気づく。
驚いたコットポトロが牢を開けると、たちまち陣がコットポトロを倒す。
一方でダイレンジャーとゴーマの間には停戦協定が結ばれ、亮たちは草野球を楽しんでいる。
一同「さぁ、来い!」「行くぞ!」「よっしゃ!」
亮 (なぜだ……? あのとき、なぜ陣は俺を庇った?)
脱走に成功した陣は、傷を負った身のまま、町はずれをフラフラとさまよう。
陣 (生き延びてやる…… 何としても。そして倒す! ザイドス、亮!)
#center(){|&big(){&bold(){魔拳 落日に散る}}|}
ゴーマの牢獄では、ザイドスが陣の脱走に気づいている。
ザイドス「フン、無駄なことを。奴の体はすでに、俺のもの」
一方の亮たち。
亮が考え込んでいる間に、ボールが頭上を飛んで行く。
将児「おぉい、亮!」
亮「……えっ? あぁ! いけねぇ、いけねぇ。ボール、ボール……」
亮がボールを捜して、木々の間を歩き回る。
傷だらけでの陣が、気を失って倒れている。
陣が目覚める。
そこは亮の自宅のベッドの上で、そばに亮が付き添っている。
亮「気がついたか?」
陣「……貴様!?」
陣が身を起こそうとして、傷の痛みに顔をしかめる。
亮「まだ動かないほうがいい」
陣「貴様が…… 俺を助けたのか?」
亮「あぁ。どうやら俺とお前は、切っても切れない縁があるみたいだな。ま、あんまり嬉しくはないけどさ」
陣「ふざけるな! うっ……! 貴様に助けられて、喜ぶ俺だと思っているのか?」
陣がベッドから飛び出して、痛々しい様子で、必死に拳法の構えを取る。
陣「戦え、亮! 今、この場で! うぅっ!? うっ……」
亮「陣……!」
亮はダイレンジャー本部で、一同に事情を話している。
将児「どういうつもりなんだよ、亮!? あんな奴を助けるなんて!?」
&ruby(かず){知}「そうですよ。あいつは、あなたの命を何度も狙った奴なんですよ!?」
亮「それだけじゃない…… 陣は、俺の命を救ってくれたこともある! だから……」
亮の自宅。
ベッドの上の陣に、亮が食事を運んでくる。
亮「で~きた! できたぞぉ、お待ちどうさん! 体力をつけるには、とにかく食べるのが一番! もちろん、味も保証付きだぜ。なんたって、こっちはプロだからな。ほら」
陣は無言で、粥の椀を払いのける。
亮は一瞬ムッとするが、平静を装い、床に散った粥を片づけ始める。
亮「あ~ぁ、やっちゃった。しょうがねぇなぁ」
陣「……」
亮は勤め先の中華料理店で、夜遅くまで働いている。
店員「亮ちゃん、今日も残業組?」
亮「はぁ、知り合いがケガしちゃって…… ちょいと、金がいるんスよ」
店員「そっか。じゃ、お先に。お疲れさん」
亮「お疲れ様でした。おやすみなさい!」
その頃、夜道を歩く1人のOLの前に突如、怪物が出現する。
「キャァァ──ッッ!?」
翌日。亮が車椅子の陣を押しつつ、駅を訪れる。
目の前には階段。
亮「すいません! どなたか手伝ってくれませんか? あの、すいません!」「すいません、お願いします!」「あの……」
必死に懇願する亮に構わず、大勢の客が通り過ぎて行く。
陣「無駄だ。みんな、自分のことばかり考えている。人なんてそんなもんだ」
亮「だったら…… 人の分まで、自分が優しくなればいい!」
亮は陣を背負い、片手で車椅子をつかみ、息を切らしながら階段を昇ってゆく。
亮「はぁ、はぁ、はぁ……」
陣「……」
その日の夜。
公園のカップルのもとに、またしても昨晩と同じ怪物が現れる。
「うわぁっ!」「助けてぇ!」「逃げろぉ!」
怪物が女性を噛み殺し、血塗れの口を手で拭う──
あくる朝。
陣がベッドで目覚めると、傍らでは残業明けの亮が、仕事着のまま寝ている。
亮「グー、グー…… ラーメン、餃子、お待ち…… 毎度…… ムニャ……」
陣は、険しかった表情を思わず緩める。
しかし、自分の手に染み付いた血に気づく。
袖をまくると、自分の腕が白い異形の形に変貌しかかっている。
陣「こ……、これは、一体!?」
亮「ふわぁ~ぁ…… あっと、ごめん。包帯替える時間だった」
陣がとっさに腕を隠し、布団をかぶる。
陣「放っといてくれ!! 俺は…… 俺は!」
亮「陣……!?」
亮は陣を車椅子に乗せ、公園へ連れ出す。
亮「どう? 気持ちいいだろう。たまには、外の空気も吸わなくちゃ」
陣「なぜだ? どうして俺に、ここまでする?」
亮「お前だって、俺を助けた」
陣「違う! 前にも言ったはずだ。俺は貴様を自分の手で倒したい。だから貴様を助けた。それだけのことだ」
亮「……そうだったな。本当言うとな、自分でもよくわからないんだ。ひょっとしたら、俺はお前と同じ理由で、お前を助けたのかもしれない」
陣「……」
亮「『お前を倒すのは俺だ』。そう思っていたのかもしれない…… 1人の、拳士として」
陣「1人の…… 拳士として?」
亮は真剣な眼差しで頷く。
陣「亮、頼みがある」
亮「……?」
陣「もし俺が拳士でなく、心をなくした怪物となったとき、そのときは! お前の手で、俺を殺してくれ!」
亮「えっ!?」
陣「急所は、ここだ!」
陣が自分の胸を指差す。
亮「何を言ってる? どういう意味だ!?」
陣「……うぅっ!? ……あぁっ、あ……」
亮「陣……!? おい、陣!」
陣「うわぁっ! うっ! うぅっ……」
陣が急に苦しみだし、その手が鉤爪に変る。
亮「陣、陣!?」
陣「忘れるな、俺との約束!」
陣は、心配そうな亮を突き飛ばし、フラフラと走り去って行く。
亮「陣──!」
昨晩までの怪物が白昼同道、人々に遅いかかる。
大五や将児たち4人が駆けつける。
大五「逃げろ!」
将児「バケモノ! これ以上、好き勝手な真似はさせねぇぞ!」
一同「みんな、行くぞ!」「気力転身!!」
4人がダイレンジャーとなり、怪物に挑む。
テンマ「大輪剣! ハァッ!」
テンマレンジャーの一撃が決まり、怪物の右腕から血が噴き出す。
怪物が逃げて行く。
テンマ「待ちやがれぇ!」
一方で亮は、必死に陣を捜し回っている。
亮「陣──! 陣──!」
陣がうずくまっている。
亮「陣!」
陣「……」
大五たち「亮──!」「亮!」
そこへ、大五や将児たちが駆けて来る。
陣が右腕に傷を負っている。
さきほど将児が怪物を攻撃した箇所と同じ──
将児「亮、こいつは!?」
陣が突然、人が変わったように亮に襲いかかる。
一同「亮!?」
陣「う、うっ、あぁ──っ!?」
亮「陣……!?」
陣の姿が、あの怪物の姿へと変わる。
亮「馬鹿な…… これは一体!?」
そこに、ザイドスが現れる。
ザイドス「ダイレンジャー!」
大五「ゴーマ!?」
ザイドス「もはや、そいつは陣ではない。奴が脱走する前に、奴の体に&ruby(がろうき){飢狼鬼}の細胞を埋め込んでおいたのだ。完全に陣は飢狼鬼となった。今や陣としての心を失い、俺の言葉だけを聞く操り人形だ」
亮「何だとぉ!?」
ザイドス「ダイレンジャーを倒すのだぁ!」
亮「やめろ、陣! お前は拳士、操り人形なんかじゃない!」
大五「ザイドス……! 停戦したはずじゃなかったのか!?」
ザイドス「えぇ~? 何だって~?」
陣の変貌した怪物──飢狼鬼が亮たちに襲いかかる。
一同「うわぁぁ!」「オーラチェンジャー!」
やむなく5人が転身し、ダイレンジャーとなる。
リュウ「やめろ、陣! 陣──!」
シシ「無駄だ! 今の奴に、言葉が通じるか!?」
飢狼鬼の容赦ない攻撃が、ダイレンジャーたちに降り注ぐ。
一同「うわぁぁ──っ!」
(陣『俺が心をなくした怪物となったとき、そのときはお前の手で! 急所はここだ!』)
リュウ「許せ…… 陣!」
リュウレンジャーがスターソードを手にして突進。
意を決し、飢狼鬼の胸に突き立てる。
飢狼鬼が苦痛にあえぐが、まだ倒れない。
シシ「駄目だ、浅い!」
しかし飢狼鬼はスターソードに手をかけ、自らの胸に深く突き立てる。
リュウ「陣!?」
ザイドス「飢狼鬼!?」
飢狼鬼が、苦悶の声を漏らす。
その体に、次第に陣の姿がだぶる。
陣「俺は拳士! 貴様の思い通りにはさせんぞ…… ザイドスぅ!!」
ザイドス「このままでは、飢狼鬼が自滅する……」
飢狼鬼目がけ、ザイドスが妖力を吐きかける。
大爆発と共に、飢狼鬼と陣が分離する。
陣が、転身の解けた亮と共に、地面に叩きつけられる。
亮「陣!?」
無数のコットポトロたちが現れ、ダイレンジャーたちと乱戦となる。
亮「大丈夫か、陣」
陣「あぁ……」
亮たちもまた、コットポトロたちに取り囲まれる。
亮「やれるか、陣!?」
陣が力強く頷き、亮とともに立ち上がる。
亮「行くぞぉぉ!!」
亮と陣が生身のまま、コットポトロたちを蹴散らす。
亮「気力転身!!」
陣「魔性降臨!!」
亮がリュウレンジャーに転身、陣が魔拳士に変身し、コットポトロたちを一掃する。
ザイドス「おのれぇ、陣!」
陣「ザイドス、貴様だけは許せん! 行くぞぉ!!」
陣がザイドスに挑みかかる。
ザイドスの猛攻をかわしつつ、必殺拳の構えをとる。
陣「&ruby(ひょうが){豹牙}流奥義・邪神&ruby(ふうけん){風拳}! ハァァッ!」
必殺の連打が炸裂する。
しかしザイドスが、とどめの一撃を受け止め、逆に妖力を吐きかける。
至近距離での強烈な妖力が、陣の体をまともに直撃する。
陣「うわあぁぁ──っっ!!」
一方でリュウレンジャーは4人と合流し、飢狼鬼を追いつめる。
一同「天宝来来の玉、セット!」「セーフティロック解除!」「スターソード・オン!」
リュウ「みんな、胸の傷を狙うんだ!」
一同「おぅ!」「ファイヤ──ッッ!!」
最強武器であるスーパー気力バズーカの砲撃を食らい、飢狼鬼が爆発四散する。
転身を解いた亮たち。
陣たちの戦いの場にザイドスはおらず、陣が倒れているのみ。
亮「陣!?」
陣が傷の痛みをこらえ、立ち上がる。
陣「拳士として……」
亮「……拳士として」
陣が拳法の構えをとり、亮もそれに応えて構える。
陣「うぅおおぉ──っっ!!」
亮「はいぃぃ──っっ!!」
2人が激突する。
拳と拳、蹴りと蹴りの激しいぶつかり合い。
陣の攻撃をかわし、亮が正拳を繰り出す。
勝負あった──かと思われたが、亮は陣の顔面寸前で拳を止める。
陣「甘いな…… どこまでも甘い奴だ、お前って奴は。これだけは憶えておけ。拳士は、非情を乗り越えることも必要だと」
陣が背を向ける。
亮「どこに行くんだ? その体で……」
陣「寄るな! 俺は俺でいたい! これ以上お前のそばにいたら、俺が俺でなくなってしまう」
亮を制止して陣が歩き出し、亮を振り向く。
陣「世話ばかりかけちまったな、亮。……ありがとう」
夕日に照らされた砂漠を、陣がフラフラと歩く。
ザイドスが現れる。
そして、地平線を埋め尽くすほど、コットポトロたちの大群。
ザイドス「やれぇ!」
陣の弾いたコインが宙を舞う。
敵を一掃した後、落ちて来るコインを受け止める得意のアクション。
襲い来るコットポトロたちを、陣が次々に蹴散らす。
コットポトロの銃撃隊が、陣目がけて、一斉に銃撃を放つ。
陣の受け止めるはずのコインが、地面に落ちる──
#center(){&big(){&bold(){つづく}}}
リュウレンジャーこと亮の仇敵である魔拳士・陣は、亮を庇ってゴーマ怪人の攻撃の餌食となった。
陣はザイドスに捕われ、牢屋の中に閉じ込めらている。
ゴーマの戦闘員コットポトロが見張りについているが、陣が身動きしていないのに気づく。
驚いたコットポトロが牢を開けると、たちまち陣がコットポトロを倒す。
一方でダイレンジャーとゴーマの間には停戦協定が結ばれ、亮たちは草野球を楽しんでいる。
一同「さぁ、来い!」「行くぞ!」「よっしゃ!」
亮 (なぜだ……? あのとき、なぜ陣は俺を庇った?)
脱走に成功した陣は、傷を負った身のまま、町はずれをフラフラとさまよう。
陣 (生き延びてやる…… 何としても。そして倒す! ザイドス、亮!)
#center(){|BGCOLOR(darkgray):COLOR(white):CENTER:&br()&big(){&big(){&bold(){魔拳 落日に散る}}}&br()&br()|}
ゴーマの牢獄では、ザイドスが陣の脱走に気づいている。
ザイドス「フン、無駄なことを。奴の体はすでに、俺のもの」
一方の亮たち。
亮が考え込んでいる間に、ボールが頭上を飛んで行く。
将児「おぉい、亮!」
亮「……えっ? あぁ! いけねぇ、いけねぇ。ボール、ボール……」
亮がボールを捜して、木々の間を歩き回る。
傷だらけでの陣が、気を失って倒れている。
陣が目覚める。
そこは亮の自宅のベッドの上で、そばに亮が付き添っている。
亮「気がついたか?」
陣「……貴様!?」
陣が身を起こそうとして、傷の痛みに顔をしかめる。
亮「まだ動かないほうがいい」
陣「貴様が…… 俺を助けたのか?」
亮「あぁ。どうやら俺とお前は、切っても切れない縁があるみたいだな。ま、あんまり嬉しくはないけどさ」
陣「ふざけるな! うっ……! 貴様に助けられて、喜ぶ俺だと思っているのか?」
陣がベッドから飛び出して、痛々しい様子で、必死に拳法の構えを取る。
陣「戦え、亮! 今、この場で! うぅっ!? うっ……」
亮「陣……!」
亮はダイレンジャー本部で、一同に事情を話している。
将児「どういうつもりなんだよ、亮!? あんな奴を助けるなんて!?」
&ruby(かず){知}「そうですよ。あいつは、あなたの命を何度も狙った奴なんですよ!?」
亮「それだけじゃない…… 陣は、俺の命を救ってくれたこともある! だから……」
亮の自宅。
ベッドの上の陣に、亮が食事を運んでくる。
亮「で~きた! できたぞぉ、お待ちどうさん! 体力をつけるには、とにかく食べるのが一番! もちろん、味も保証付きだぜ。なんたって、こっちはプロだからな。ほら」
陣は無言で、粥の椀を払いのける。
亮は一瞬ムッとするが、平静を装い、床に散った粥を片づけ始める。
亮「あ~ぁ、やっちゃった。しょうがねぇなぁ」
陣「……」
亮は勤め先の中華料理店で、夜遅くまで働いている。
店員「亮ちゃん、今日も残業組?」
亮「はぁ、知り合いがケガしちゃって…… ちょいと、金がいるんスよ」
店員「そっか。じゃ、お先に。お疲れさん」
亮「お疲れ様でした。おやすみなさい!」
その頃、夜道を歩く1人のOLの前に突如、怪物が出現する。
「キャァァ──ッッ!?」
翌日。亮が車椅子の陣を押しつつ、駅を訪れる。
目の前には階段。
亮「すいません! どなたか手伝ってくれませんか? あの、すいません!」「すいません、お願いします!」「あの……」
必死に懇願する亮に構わず、大勢の客が通り過ぎて行く。
陣「無駄だ。みんな、自分のことばかり考えている。人なんてそんなもんだ」
亮「だったら…… 人の分まで、自分が優しくなればいい!」
亮は陣を背負い、片手で車椅子をつかみ、息を切らしながら階段を昇ってゆく。
亮「はぁ、はぁ、はぁ……」
陣「……」
その日の夜。
公園のカップルのもとに、またしても昨晩と同じ怪物が現れる。
「うわぁっ!」「助けてぇ!」「逃げろぉ!」
怪物が女性を噛み殺し、血塗れの口を手で拭う──
あくる朝。
陣がベッドで目覚めると、傍らでは残業明けの亮が、仕事着のまま寝ている。
亮「グー、グー…… ラーメン、餃子、お待ち…… 毎度…… ムニャ……」
陣は、険しかった表情を思わず緩める。
しかし、自分の手に染み付いた血に気づく。
袖をまくると、自分の腕が白い異形の形に変貌しかかっている。
陣「こ……、これは、一体!?」
亮「ふわぁ~ぁ…… あっと、ごめん。包帯替える時間だった」
陣がとっさに腕を隠し、布団をかぶる。
陣「放っといてくれ!! 俺は…… 俺は!」
亮「陣……!?」
亮は陣を車椅子に乗せ、公園へ連れ出す。
亮「どう? 気持ちいいだろう。たまには、外の空気も吸わなくちゃ」
陣「なぜだ? どうして俺に、ここまでする?」
亮「お前だって、俺を助けた」
陣「違う! 前にも言ったはずだ。俺は貴様を自分の手で倒したい。だから貴様を助けた。それだけのことだ」
亮「……そうだったな。本当言うとな、自分でもよくわからないんだ。ひょっとしたら、俺はお前と同じ理由で、お前を助けたのかもしれない」
陣「……」
亮「『お前を倒すのは俺だ』。そう思っていたのかもしれない…… 1人の、拳士として」
陣「1人の…… 拳士として?」
亮は真剣な眼差しで頷く。
陣「亮、頼みがある」
亮「……?」
陣「もし俺が拳士でなく、心をなくした怪物となったとき、そのときは! お前の手で、俺を殺してくれ!」
亮「えっ!?」
陣「急所は、ここだ!」
陣が自分の胸を指差す。
亮「何を言ってる? どういう意味だ!?」
陣「……うぅっ!? ……あぁっ、あ……」
亮「陣……!? おい、陣!」
陣「うわぁっ! うっ! うぅっ……」
陣が急に苦しみだし、その手が鉤爪に変る。
亮「陣、陣!?」
陣「忘れるな、俺との約束!」
陣は、心配そうな亮を突き飛ばし、フラフラと走り去って行く。
亮「陣──!」
昨晩までの怪物が白昼同道、人々に遅いかかる。
大五や将児たち4人が駆けつける。
大五「逃げろ!」
将児「バケモノ! これ以上、好き勝手な真似はさせねぇぞ!」
一同「みんな、行くぞ!」「気力転身!!」
4人がダイレンジャーとなり、怪物に挑む。
テンマ「大輪剣! ハァッ!」
テンマレンジャーの一撃が決まり、怪物の右腕から血が噴き出す。
怪物が逃げて行く。
テンマ「待ちやがれぇ!」
一方で亮は、必死に陣を捜し回っている。
亮「陣──! 陣──!」
陣がうずくまっている。
亮「陣!」
陣「……」
大五たち「亮──!」「亮!」
そこへ、大五や将児たちが駆けて来る。
陣が右腕に傷を負っている。
さきほど将児が怪物を攻撃した箇所と同じ──
将児「亮、こいつは!?」
陣が突然、人が変わったように亮に襲いかかる。
一同「亮!?」
陣「う、うっ、あぁ──っ!?」
亮「陣……!?」
陣の姿が、あの怪物の姿へと変わる。
亮「馬鹿な…… これは一体!?」
そこに、ザイドスが現れる。
ザイドス「ダイレンジャー!」
大五「ゴーマ!?」
ザイドス「もはや、そいつは陣ではない。奴が脱走する前に、奴の体に&ruby(がろうき){飢狼鬼}の細胞を埋め込んでおいたのだ。完全に陣は飢狼鬼となった。今や陣としての心を失い、俺の言葉だけを聞く操り人形だ」
亮「何だとぉ!?」
ザイドス「ダイレンジャーを倒すのだぁ!」
亮「やめろ、陣! お前は拳士、操り人形なんかじゃない!」
大五「ザイドス……! 停戦したはずじゃなかったのか!?」
ザイドス「えぇ~? 何だって~?」
陣の変貌した怪物──飢狼鬼が亮たちに襲いかかる。
一同「うわぁぁ!」「オーラチェンジャー!」
やむなく5人が転身し、ダイレンジャーとなる。
リュウ「やめろ、陣! 陣──!」
シシ「無駄だ! 今の奴に、言葉が通じるか!?」
飢狼鬼の容赦ない攻撃が、ダイレンジャーたちに降り注ぐ。
一同「うわぁぁ──っ!」
(陣『俺が心をなくした怪物となったとき、そのときはお前の手で! 急所はここだ!』)
リュウ「許せ…… 陣!」
リュウレンジャーがスターソードを手にして突進。
意を決し、飢狼鬼の胸に突き立てる。
飢狼鬼が苦痛にあえぐが、まだ倒れない。
シシ「駄目だ、浅い!」
しかし飢狼鬼はスターソードに手をかけ、自らの胸に深く突き立てる。
リュウ「陣!?」
ザイドス「飢狼鬼!?」
飢狼鬼が、苦悶の声を漏らす。
その体に、次第に陣の姿がだぶる。
陣「俺は拳士! 貴様の思い通りにはさせんぞ…… ザイドスぅ!!」
ザイドス「このままでは、飢狼鬼が自滅する……」
飢狼鬼目がけ、ザイドスが妖力を吐きかける。
大爆発と共に、飢狼鬼と陣が分離する。
陣が、転身の解けた亮と共に、地面に叩きつけられる。
亮「陣!?」
無数のコットポトロたちが現れ、ダイレンジャーたちと乱戦となる。
亮「大丈夫か、陣」
陣「あぁ……」
亮たちもまた、コットポトロたちに取り囲まれる。
亮「やれるか、陣!?」
陣が力強く頷き、亮と共に立ち上がる。
亮「行くぞぉぉ!!」
亮と陣が生身のまま、コットポトロたちを蹴散らす。
亮「気力転身!!」
陣「魔性降臨!!」
亮がリュウレンジャーに転身、陣が魔拳士に変身し、コットポトロたちを一掃する。
ザイドス「おのれぇ、陣!」
陣「ザイドス、貴様だけは許せん! 行くぞぉ!!」
陣がザイドスに挑みかかる。
ザイドスの猛攻をかわしつつ、必殺拳の構えをとる。
陣「&ruby(ひょうが){豹牙}流奥義・邪神&ruby(ふうけん){風拳}! ハァァッ!」
必殺の連打が炸裂する。
しかしザイドスが、とどめの一撃を受け止め、逆に妖力を吐きかける。
至近距離での強烈な妖力が、陣の体をまともに直撃する。
陣「うわあぁぁ──っっ!!」
一方でリュウレンジャーは4人と合流し、飢狼鬼を追いつめる。
一同「天宝来来の玉、セット!」「セーフティロック解除!」「スターソード・オン!」
リュウ「みんな、胸の傷を狙うんだ!」
一同「おぅ!」「ファイヤ──ッッ!!」
最強武器であるスーパー気力バズーカの砲撃を食らい、飢狼鬼が爆発四散する。
亮たちが、転身を解く。
陣たちの戦いの場にザイドスはおらず、陣が倒れているのみ。
亮「陣!?」
陣が傷の痛みをこらえ、立ち上がる。
陣「拳士として……」
亮「……拳士として」
陣が拳法の構えをとり、亮もそれに応えて構える。
陣「うぅおおぉ──っっ!!」
亮「はいぃぃ──っっ!!」
2人が激突する。
拳と拳、蹴りと蹴りの激しいぶつかり合い。
陣の攻撃をかわし、亮が正拳を繰り出す。
勝負あった──かと思われたが、亮は陣の顔面寸前で拳を止める。
陣「甘いな…… どこまでも甘い奴だ、お前って奴は。これだけは憶えておけ。拳士は、非情を乗り越えることも必要だと」
陣が背を向ける。
亮「どこに行くんだ? その体で……」
陣「寄るな! 俺は俺でいたい! これ以上お前のそばにいたら、俺が俺でなくなってしまう」
陣が亮を制止して歩き出しつつ、振り向く。
陣「世話ばかりかけちまったな、亮。……ありがとう」
夕日に照らされた砂漠を、陣がフラフラと歩く。
ザイドスが現れる。
そして、地平線を埋め尽くすほど、コットポトロたちの大群。
ザイドス「やれぇ!」
陣の弾いたコインが宙を舞う。
敵を一掃した後、落ちて来るコインを受け止める得意のアクション。
襲い来るコットポトロたちを、陣が次々に蹴散らす。
コットポトロの銃撃隊が、陣目がけて、一斉に銃撃を放つ。
陣の受け止めるはずのコインが、地面に落ちる──
#center(){&big(){&bold(){つづく}}}