駆除班の前に突如、怪人態として現れた悠が、獣のように唸りつつ、コウモリアマゾンを襲う。
三崎「状況がわかるまで、手を出さないほうがいい」
志藤「ったく、何なんだ? このアマゾンの大安売りは」
鷹山仁の変身した異形の戦士・アマゾンアルファは、その戦いを傍観している。
前原「変ですよ。あの未確認の2匹、識別コードがキャッチできない」
志藤「何だと!?」
望「腕輪がない……」
三崎「聞いてねぇな……」
そして、駆除班の一員・大滝は、怪人態のトンボアマゾンに変身してしまっていた。
志藤「淳、竜介の識別コードのランクは?」
前原「Bです」
志藤「竜介…… 竜介!」
望「竜介さん……」
悠がコウモリアマゾンの翼を引きちぎり、さらに大ジャンプからの蹴りで頭蓋を砕く。
コウモリアマゾンが絶命し、液化して消滅する。
さらに悠がアマゾンアルファにも矛先を向ける──が、急に力が抜け、ふらつき始める。
アルファ「お前、まさか…… 食ってないのか? そのままじゃ、もたんぞ」
志藤たちが一斉に銃を向け、彼らを威嚇する。
志藤「動くなぁ! お前たち、実験体か? なんで腕輪を付けてない!? 答えろ!」
三崎「まだ意思の疎通はできるみたいだな。その状態なら、駆除じゃなくて捕獲という手もあるぞ!」
望「駆除のほうがいいなら、そう言えよな」
モグラ「大滝くん! 大滝くん…… 君も、アマゾンだったんだね」
トンボアマゾンは人間の理性も見せず、マモルことモグラアマゾンに襲いかかる。
望「マモル!?」
モグラ「大滝くん!? やめてぇ!」
一同「志藤さん!」「やめろぉ!」「竜介さん! 俺たちのこと、わからないんですか!?」
志藤たちの注意が逸れた隙に、アマゾンアルファは悠を捕え、駆け出す。
三崎「待て!」
仁の同居人・七羽の車が駆けつけ、アマゾンアルファは悠をさらったまま、車に飛び乗って逃走する。
それに志藤たちが気を取られている内に、今度はトンボアマゾンが逃げ去る。
前原「竜介さん!?」
志藤「竜介を追うぞ! 福!」
一同は福田の運転する車に乗って、トンボアマゾンを追う。
志藤「調査班、調査班! 車を追ってくれ! ナンバーは──」
マモル「大滝くん、なんで……」
三崎「なんでかなぁ。まぁ、マモちゃんのせいじゃないからさ。な?」
前原「竜介さんが俺たちを、攻撃するはずがない……」
福田「識別コード、発信源、このあたり!」
一同が車を降り、トンボアマゾンを探す。
トンボのはめていた腕輪が捨てられている。
前原「志藤さん…… 逃げました」
望「そっか。腕輪が発信源ってこと、当然、知ってるよな」
志藤「オヤツ食い始めるのも、時間の問題かもな」
三崎「まぁ、聞かない決まりだけど…… やっぱ、知りたくなるよね。『ムシ』、っていうか…… 『アマゾン』って、何?」
一同「……」
志藤「俺も知りたいね…… 今度ばかりは! 一旦、戻るぞ」
トンボアマゾンは人間態・大滝に戻り、傷ついた体を引きずって、林の中を彷徨っている。
大滝「何でだよ……? 俺なら大丈夫と、マモルみたいにうまくやっていけると! ただ人間として、生きたかっただけなのに…… もう、駆除されるしかないのか? でも、あいつらにだったら……」
マンションに戻った志藤たちは、本部長・水澤令華の秘書である加納と通信を取っている。
加納「未確認のアマゾン2体の映像は、こちらでも受信済みです。もちろん、本部長にも」
志藤「説明しろぉ!! アマゾンのこと!!」
加納「今まで通りに何も聞かずに、駆除することはできませんか?」
前原「できるわけねぇだろぉ!! 1人は仲間なんだぞ!?」
三崎「まさか、知ってたのか?」
加納「それはないですし、無理です。腕輪の信号はアマゾン態になったときの、言わばアラームで、普段は反応しませんから」
志藤「つまり、外されたら追跡不可能か…… だったら足で捜してやるから、とにかく話せぇ!!」
加納「わかりました」
それまで通信で話していた加納が、一同の前に姿を現す。
加納「今回の件を受けて本部長も、あなたたちにある程度説明する必要があるだろうと、私が説明役に任じられました」
志藤「ったく、勿体ぶりやがって……」
令華の娘、美月の学校。
携帯を手にしている美月を、同級生たちがからかう。
「あっ、美月ちゃん、誰に電話してるの?」「チクっってんじゃないだろうな?」「言ったらどうなるか、わかってるよね?」
野座間製薬で、令華が電話を受ける。
令華「どうしたの?」
美月「お母さん? あの、悠が帰って来たか、気になって」
令華「いいえ、まだよ」
美月「何かあったんじゃ…… 悠、今まで外に出ることなんかなかったし、やっぱり警察に!」
令華「落ち着いて、最後まで聞きなさい。家に帰っていないだけで、会社の人間が見つけてくれたの」
美月「えっ?」
令華「ただ、体調も良くないし、少し研究所に入院させるわ。あなたは何も心配しないで、授業に集中しなさい。いいわね?」
美月「……はい」
令華の目の前のスクリーンには、怪人態となった悠の姿が映っている。
令華 (完全に目覚めるには、まだ時間がかかる…… でも、もう眠らせることはできない)
志藤「アマゾン……細胞?」
加納「まぁ、通称です。実際は我が社の研究で生れた、ウィルスサイズの人工生命の集合体です。高度なものではなく、持っているのはタンパク質、特にヒトのものを好むという単純な習性のみです」
三崎「ヒトの、だと?」
加納「えぇ。言ってみれば、人食い細胞です。それを人型にまで成長させたのが、実験体『アマゾン』。あなたたちのいう『ムシ』です。2年前、研究所で起きた事故が原因で、大量の実験体がこの町で野放しになっているのが現状です」
アマゾンアルファこと、仁のマンション。
人間態に戻った悠に、仁は他のアマゾンと同じ腕輪をはめる。
腕輪の内側に無数に飛び出した針が、悠の肌を刺す。
悠「うわあぁっ!? あぁっ……!?」
仁「憶えてるか!? どうしてここにいるのか」
怪人態となった自分の姿が、悠の脳裏に甦る。
悠「うぐぁっ!? ぼ、僕…… な、なんで、あんな……」
仁「なんでって、お前がアマゾンだからに決まってんだろ?」
悠「ア…… アマゾン?」
仁「お前、まさか知らなかったのか? 自分のこと」
悠「な…… 何のことですか? ア、アマゾンって何ですか?」
仁「プッ! へぇ~っ! ハハハハッ! こいつは驚きぃ! じゃ、何の情報も持ってねぇわけだ! 連れて来る意味なかったなぁ!」
悠「ど、どういうことですか? あなた、一体……」
仁「あ──、あのな、面倒だから簡単に言うぞ。お前はな」
七羽は、台所で鍋に向かっている。
七羽「は──い、できあがり! 仁、お椀!」
仁「はいよっ!」
台所に向かった仁が、スープを盛った椀を運んでくる。
仁「お──、いい匂い! 熱熱熱! ほい、取りあえず食え! 俺たちに必要なタンパク質だ」
悠「タンパク質……?」
仁「あぁ。いいか? 俺もお前も、ヒトのタンパク質をかっ食らう細胞、アマゾン細胞っていうんだがな」
仁は自分の胸を指す。
仁「そいつを、こん中に飼ってる。あ! お前、ヒトを食いたくなったこと、ないか?」
悠「そ、そんなこと、あるわけないじゃないですか!」
仁「あ、そう。コントロールはされてたんだな。でも、腕輪はなかったし…… 薬でも飲んでたのか?」
悠「薬…… ちゅ、注射を」
仁「なるほどねぇ。って、お前、素直だな。ハハハハ! その腕輪も注射みたいなもんだ。自動的に薬が注入される。で、薬が切れたらアマゾンになって、食事を開始するってわけだ」
悠「食事……?」
仁「人食いだよ。一度アマゾン細胞が覚醒したら、もう薬は効かない、制御不可能だ。お前は間に合ったから──」
七羽「仁さ──ん、トリ!」
仁「はいよっ!」
仁が屋上へ上がる。
悠が続くと、仁は小屋で飼われているニワトリを抱え上げている。
仁「良かったなぁ。豪華トリ鍋が食えるぞ」
悠「えっ? それ、ペットじゃ?」
仁「何言ってんだ? 食うために飼ってるの。俺はアマゾンになる前から、自分で殺したものしか食わない。あぁ、ヒトは食ってねぇけどな」
仁がニワトリを抱えたまま、ナイフを握る。
それを見た悠が、おもわず口を押える。
悠「うっ、うぐぅっ!」
仁「あ、吐く? なら、そこの菜園にやってよ。栄養になるから」
悠「ブハァッ! ゲェ、ゲェッ! ゴホ、ゴホッ!」
仁「ハハッ! たっぷり頼むぞ!」
加納「──で、実験体に付いているその腕輪の有効期限は2年。つまり事故から2年経って、覚醒した実験体たちが、ヒトを食らい出したというわけです」
三崎「てめぇ…… 何サラッと言ってんだよ? それ、とんでもねぇ不祥事だろう!」
前原「こんな別会社作って、会社ぐるみで隠蔽ってことか?」
加納「ですが、公表したら大パニックですよ。隣の住人が人食い細胞の怪物かもしれないんですからね」
望「大体、どれくらいいるんだよ?」
加納「約4000」
望「……はぁっ!?」
加納「期限切れにも個体差がありますから、一斉に4000匹が動くことがないのが幸いです」
志藤「竜介は、期限が切れたってことか?」
加納「でしょうね」
着信音。
志藤がスマートフォンを手にすると、表示は大滝の名前。
志藤「竜介!?」
すかさず前原がパソコンを操作し、逆探知の準備をする。
前原「志藤さん!」
志藤「竜介!」
大滝「真さん…… すいません…… 本当は俺、アマゾンで……」
志藤「あぁ、いいから、そんなことはいい! お前、大丈夫なんだろうな? 今どこにいる? 場所を言え!」
大滝「はぁ、はぁ……」
志藤「竜介!」
一同「真さん! 竜介、まだマトモっすよ!」「だったらマモルみたいに、一緒にやっていけんじゃねぇの!?」
志藤「そうだ、竜介!」
加納「まぁ、無理でしょうね。一度目覚めたアマゾン細胞は、もう制御不能です。たとえ、腕輪を使っても」
一同「竜介!」「竜介さん!」「大滝くん!」「今どこにいるんすか!?」
通話が切れる。
前原「志藤さん…… 見つけました」
志藤「……行くぞ」
加納「ただ、あの緑と赤のアマゾンについては、まだわかりません。現状、対処保留とのことです」
仁は七羽と共に、鍋の準備を進めている。
スマートフォンが鳴り、駆除班の動きを報せる。
七羽「仁!」
仁「はいよ、はいよ! ──おぉ! 実験体、見つかったらしいな。そうだ、お前も行くか?」
悠「えっ?」
仁「アマゾン退治だよ。肝心なことを言ってなかったな。俺の目的はアマゾンを1匹残らず潰すことだ。当然、お前も入ってる」
悠「潰す……?」
仁「駆除だよ。ただなぁ、まだ人食いまでは行ってないしなぁ、協力するなら少し待ってやる」
悠「協力って、つまり実験体を──」
仁「そう、殺して殺して殺しまくる」
悠「……」
仁「嫌なら、お前が駆除されろ。何も傷つけず、自分の手も汚さない。優しい生き方だけどな、何の役にも立たないんだな」
悠「……」
仁「ま、考えとけ!」
仁は七羽にキスを残し、出かける。
悠は、部屋内に取り残される。
七羽「どうする? 仁は、やると言ったら本当にやるよ」
悠「いつか、僕が誰かを食べてしまうくらいなら、その前に駆除されても……」
七羽「……まったく! な──んか、あんた、仁と同じアマゾンなのに、全然違う。仁が『野生』なら、あんたは何ていうか…… 『養殖物』? だって、ほら、自分でゴハン採って来ないでしょ?」
悠「……」
七羽「私は、仁の生き方に共感して一緒にいるけど、でも、優しい生き方も悪いとは思わない。思わないけど…… そのままじゃあんた、すぐ死ぬから」
無言の悠に、七羽は仁と同じ変身ベルト、アマゾンズドライバーを手渡す。
七羽「これ、仁が使ってるのと同じ。2本あるから、1本あげる。それは、あんたを強くしてくれる」
林の中を、駆除班の車が行く。
運転している福田が突如、車を停める。
志藤「おい。どうした、福?」
三崎「着いた?」
福田「駆除……するんですか? 大滝」
一同「……」
志藤「……いいから、出せ!」
福田「今まで『ムシ』、ただの害虫だと思っていました。けど大滝は、害虫じゃねぇ。2年間、ずっと一緒に……」
その大滝はボロボロの状態で、廃墟に潜んでいる。
大滝「どうして来ない……? はぁ、はぁ…… もう限界だ…… 早く、みんな…… 食いたいのに……」
そこへ仁が現れる。
仁「あ~あ、駆除班の制服が泣いてるよ」
大滝「腹が…… 減った……」
仁「そっかぁ。でも、食わせるわけにはいかないなぁ」
大滝が怪人態、トンボアマゾンに変身。
仁「アマゾン」
音声『Alpha』
志藤「……いいから、出せぇ!! お前ら、駆除班にはいた理由は何だ? 『世のため、人のため』か? 違うだろ? 金だ。俺も、一也も望も、淳もだ。そんな俺たちが、今さら『仲間はやれない』だの何だの言えるか? 駆除しなきゃ食ってけねぇ。それで、竜介を狩る理由は充分だ……」
悠はアマゾンズドライバーを手に、マンションの屋上に佇む。
七羽「ごはんは自分で採って来れなくても、せめて抵抗はしなさい。ちゃ──んと自分の力で、生きなきゃ」
駆除班が大滝のもとへ到着すると、すでに仁の変身したアマゾンアルファと、トンボアマゾンの戦いが始まっている。
三崎「あのアマゾン、また?」
志藤「こっちに向かってこない限り、気にするな。全員フル装備。竜介を…… 『ムシ』を、狩る!」
(仁『何も傷つけず、自分の手も汚さない。優しい生き方だけどな、何の役にも立たないんだな』)
悠の脳裏に甦る、緑色の怪物の姿。
悠「はぁ、はぁ…… あれは…… いつも見ていた、あれは…… 僕だ……! 本当の僕は……!」
アマゾンアルファたちの戦いが続き、トンボアマゾンは、次第に追いつめられてゆく。
トンボアマゾンが退こうとするが、前原が退路を塞ぎ、銃弾を撃ち込む。
前原「竜介さぁん! すいません、竜介さん…… 逃がすわけには……」
トンボアマゾンは銃弾を食らいながらも、前原に襲いかかる。
一同「淳──!?」
トンボアマゾンが前原の体を食い破り、血と肉片が飛び散る。
前原「お前に…… 食われるんだったら…… いいか……」
一同「わあぁ──っ!!」
駆除班一同が絶叫しつつ、無我夢中で銃を放つ。
マモル「うおぉ──っ!! 大滝く──ん!!」
マモルも制服を引き裂き、モグラアマゾンに変身する。
悠の脳裏で、緑色の怪物が戒めの鎖を引きちぎり、牢の金網を破る。
悠「はぁ、はぁ…… わ、わぁっ! わああぁぁ──っっ!!」
音声『Omega』
悠「うおおぉぉ──っっ!! アマゾオォォン!!」
蒸気と衝撃を放ちつつ、悠が変身する。
大きく跳躍し、ビル街や木々を蹴り、彼方へと飛び去る。
モグラアマゾンはトンボアマゾンに戦いを挑むものの、次第に劣勢に陥る。
アルファ「食った分、強くなってるか」
変身した悠が上空から舞い降りつつ、トンボアマゾンに一撃を見舞う。
望「また、新しいアマゾンか?」
アルファ「あのベルト、七羽か」
悠はアマゾンアルファと同じ異形の戦士、アマゾンオメガへと変身を遂げている。
アマゾンオメガとトンボアマゾンの戦いが始まる。
オメガの、理性を感じさせない荒々しい攻撃が、トンボアマゾンを追いつめてゆく。
音声『Violent Punish』
アマゾンオメガの腕の刃が一閃する。
トンボアマゾンが胴を真っ二つに切断され、絶命する。
オメガはさらに獣のように唸りつつ、アルファに矛先を変え、彼を威嚇する。
アルファ「ハッ! 面白ぇ。来な」
最終更新:2017年07月01日 05:52