仮面ライダーアマゾンズ(シーズン1)の最終回

アマゾンオメガこと水澤悠は、駆除班の一員として、リーダーの志藤たちと共にアマゾンを狩り続ける。
しかし悠は、見境なしにアマゾンを狩る野座間製薬のやり口、アマゾンとしての自分の生き方に、次第に疑問を抱き始めていた。

野座間製薬は、特殊ガスによりアマゾンたちを一気に殲滅する計画「トラロック」を発動させた。
その最中、駆除班の一員であるアマゾンのマモルは食人の本能に目覚め、チームの仲間である三崎を襲っていた。
仲間を襲ったことに混乱したマモルは、一同のもとを逃走。悠はマモルを追い、ガスの満ちる雨の中を駆け出す。


駆除班の志藤と望が必死に、悠たちを捜す。

望「マモル──っ! 悠──っ!」
志藤「くそっ! この数じゃ、どうにも……」

対アマゾン用の特殊ガスを含んだ雨が降り続ける。人間態アマゾンの女性の1人が、力なく倒れている。

女性「助……けて…… 助けてぇ……」

常人と何ら変わらない姿の彼女が、雨水を浴び、全身がドロドロに溶けて消滅してゆく。

望「もしかして、マモルと悠も? なんかさぁ、何もここまで……」
志藤「よせ! 今さらそっち側に立つんじゃねぇ! 抜き差しならなくなるぞ。悠みたいにな」


マモルに左腕を食いちぎられた三崎は、福田の運転する駆除班の車で運ばれている。

三崎「はぁ、はぁ…… 福さん、マモちゃんは?」
福田「いいから黙ってろ! もうすぐ病院だ」
三崎「無事かなぁ…… もし無事なら今頃…… ひ、1人で泣いてるよ……」



Last Episode




雨の中。悠が街外れで、泣き崩れているマモルを見つける。

悠「マモルくん! 早く、早く逃げて! 逃げるんだよ、マモルくん!」
マモル「うっ、うっ…… ぼ、僕、三崎くん、食べちゃったぁ……」
悠「……うん」
マモル「美味しかったぁ……」
悠「そっか……」

物陰から美月が、その様子をじっと見ている*1

マモル「どうしよう、チームなのに…… うっ、うっ…… どうしよう……」
悠「マモルくん、とにかく早く! まだ覚醒してない!」
マモル「もう、戻れない…… 戻ったら、また食べちゃう……」
悠「いいよ! 食べてもいいよ!」
マモル「……?」
悠「だって、それがアマゾンでしょ? 正直、人を食べていけない理由なんてわかんない! そのせいで、アマゾンが生きてちゃいけない理由なんてわかんない! だって、生きるっていうのは──」

(仁『そして生きるっていうのは、他の誰かの命を食らうってことだ』)

悠「他の誰かを食べるってことだよ!」
マモル「……でも、三崎くん食べたのは嫌でしょ」
悠「うん…… もしかすると、全部の理由がそこから見つかるのかも。でも今は…… 何でもいいから、死んじゃ駄目! 早く行こう! 早く!」


野座間製薬の水澤令華と、秘書の加納。

加納「トラロック、終了です」
令華「……悠は?」
加納「連絡とれません。恐らくは──」

令華が悲痛な表情で、声を震わせる。


美月は雨の中、悠に渡そうとしたアマゾンズレジスター*2を携えたまま、呆然と立ち尽くしている。


3週間後、志藤たち駆除班のマンション。志藤が一同に、報酬を配る。
悠とマモルの姿はない。

志藤「最後のギャラだ」
望「本当に解散するのかよ……」
志藤「トラロックで死んだ『ムシ』はカウントされてねぇが、協力したってことで、上乗せされてるはずだ。それから一也、お前には別で見舞金も入ってる。その程度じゃ、割に合わねぇだろうがな」
一同「……」
志藤「もういいだろ? 潮時だよ」

志藤が荷物を手にして玄関に立つが、一同は動かない。

志藤「じゃあな」


野座間製薬の令華たちと、会長の天条隆顕。

天条「水澤くん。トラロックの成功、おめでとう」
令華「ありがとうございます」
天条「それで、3週間経って、その後の様子はどうだね?」
令華「はい……」

令華の失脚を目論んだ橘本部長が同席している。

天条「気にすることはない。今後のために、話を聞きたいというだけのこと」
橘「勉強させてもらうよ」
令華「ではまず、駆除した実験体の数ですが、回収した腕輪は3000弱。過去の駆除と合計しますと、約3分の2が駆除できたことになります」
橘「素晴しい~! つまり残った実験体の数は、たったの千匹だぁ!」
令華「まだ未回収の腕輪が相当数あると思いますので、そこまで残っているとは──」
天条「いや、残っていていいのだよ。そうあるべきだ! 個体差こそ面白いのだから。で、水澤くんの作ったアマゾンは、その中に入っているんだろうね?」
令華「それは…… わかりません」
天条「捜したまえ! ほかの生き残りもすべて」
令華「はい。もちろん調査はするつもりです」
橘「いや。しかしそれは一体、誰が? 確か、駆除班はもう解散したとか?」
令華「ご心配なく! 調査班は残っておりますので」
橘「あぁ~、それは良かった」


調査班の車が、海岸道路を行く。

『こちら調査班。これよりエリアに入ります』

衝撃音と悲鳴が響く。


志藤たちの去った無人の部屋に、調査班からの通信が響く。

『はぁ、はぁ…… こちら調査班! 生き残りの実験体が…… うわぁ──っっ!!』


それぞれの事情で金銭を必要としていた駆除班一同は、私生活に戻っていた。
志藤は、夜のバーで酒を煽っている。
加納が隣の席に着く。

店長「いらっしゃい」
加納「ビール」
志藤「何の用だ?」
加納「携帯が誰も通じなくなっていて。唯一あなたの周辺事情だけ、わかっていましたので」
志藤「あんたんとこの本部長に、紹介してもらうんじゃなかったな」
加納「でも、名医だったかと。お子さんの手術は、いかがでしたか?」
志藤「さぁ? もう、ずっと会ってないんでね。やりとりは金だけだ」
加納「なるほど。ではもう一度、稼ぎませんか?」
志藤「ゴ、ゴホッ! ……はぁ?」
加納「実は、生き残りの実験体を捜していた調査班が、あるエリアで行方不明になりました」
志藤「……」
加納「数十匹の識別コードをキャッチしています。やはりトラロックの生き残りは、相当数いるかと」
志藤「そいつは大変だな」
加納「『駆除班に行っていただきたい』── 本部長からの伝言です」
志藤「断る。そんな物騒なとこ、冗談じゃねぇ」
加納「あなたがたなら、慣れたものかと」
志藤「慣れるかよ!? 一度離れるとな、自分たちがどんだけヤバい仕事してたか、わかる。あんなもん、毎日のように見てたとはな……」
加納「ギャラは1体につき──」
志藤「断ると言ったんだ!」
加納「そうですか? 残念です」

加納がビールを一気に飲み干し、席を立つ。

加納「ごちそう様でした。あぁ、そう言えば、その場所で『M』らしきアマゾンの目撃がありました。これを落として行ったと」

志藤の顔色が変わる。
加納の手に、マモルが一同がチームの証として作った、五円玉のネックレスがある。


望は自分の育った孤児院で、優しい笑顔をふりまき、孤児たちと遊んでいる。

望「よぉし! 今日はみんな、何がしたい?」
子供A「サッカー!」
望「サッカーでいいの? 何がしたい?」
子供B「鬼ごっこ!」
望「鬼ごっこにする? 時間を分けて、両方する?」

望が視線に気づく。
志藤が五円玉のネックレスを掲げている。


福田は養護施設で、認知症の母を訪ねている。
母は息子を目の前にしても、目はおぼろげに空を見つめている。

母「いつもお世話になってます、先生……」
福田「寒くない? 母さん」

窓の外を見ると、志藤が五円玉のネックレスを掲げている。


三崎は借金取りに絡まれている。

三崎「ちょ、ちょっと、待ってくださいって、ちょっと! 半分以上返したじゃないですか!? 腕、1本減ったんスからね」
借金取り「義手、これ? いいねぇ。あのさぁ、1本くれよぉ!」
三崎「わぁ、ちょっとぉ! そんなことしたらぁ!」

そこに望が現れて借金取りを叩きのめし、三崎に五円玉のペンダントを示す。

三崎「あれぇ?」


志藤たちは結局、駆除班としての活動に戻る。
一同の車が海岸道路を行く。

加納『残っているのは、トラロックを生き抜いた実験体です。ガスは効きませんので、こちらからの援護は期待しないでください。それから、もし悠くんが生きていたら『保護してください』との本部長からの伝言です』

志藤「相変らず、簡単に言ってくれる……」
望「ここに、マモルも?」
志藤「もしかしたら、な。覚醒してるかどうかもわからねぇ」
三崎「してたら?」
志藤「……」
福田「あのときはまだ、してなかった」
志藤「とにかく、捜し出してからだ。行くぞ」
福田「識別コード反応、前方から1匹!」

早速、1体のアマゾンが襲ってくる。

志藤「来たぞ」
福田「左手、2匹!」

アマゾンたちが出現する。
志藤たちが応戦、三崎も片腕のまま応戦の末、どうにかアマゾンたちを倒す。

福田「新手の『ムシ』、18匹!」
志藤「あぁ!?」
福田「囲まれてます!」

さらに四方八方から、十体以上のアマゾンたちが現れ、志藤たちを囲い込む。

志藤「ったく、マジかよ!?」

志藤たちは徐々に押され、退路を失ってゆく。

志藤「くそぉ!」

そのとき。
疾風の如く横切った影が、アマゾンたちを次々に斬り裂き、志藤たちを救う。
攻撃の主は── アマゾンオメガ。

志藤「悠……!」

野座間製薬で、令華たちもその光景をモニターしている。

令華「悠!」

アマゾンオメガの体には、これまでの激闘の証のように、おびただしい傷跡が刻まれている。
志藤たちを取り囲むアマゾンたちを、アマゾンオメガが一掃する。
変身を解除し、悠が姿を現す。

志藤「悠、お前……」
悠「すみません、何も言わずに」
志藤「何があった?」
悠「……」
志藤「暴走は、してないらしいな。取りあえず、戻れ。本部長命令だ」
悠「それはできません」
三崎「なんで?」

悠が遠くを見やる。
ボロボロの服装の人々、十数人が現れる。

三崎「もしかして、あの人たちって?」

悠が頷く。
志藤たちがとっさに、武器を手にして身構える。

悠「待って! まだ覚醒してません!」
望「お前、あいつら『ムシ』だぞ?」
悠「そう。僕もね」
志藤「結局、『守りたいものを守る』か?」
悠「今はそれが、僕の戦う線引きです」

人間態アマゾンたちが何かに気づき、おびえ出す。
悠は身構える。

アマゾンの1人「き、来た!」
志藤「悠!?」

彼方から、鷹山仁が現れる。
トラロックのガスの影響か、顔の半分が焼け爛れている。

志藤「鷹山!?」

左手に、黒ずんだ肉塊を抱えている。

望「なんだ、あれ?」
仁「よう、駆除班の皆さん。相も変らずボロボロか」
三崎「あんたに言われたくねぇな」
仁「さて。今日は何匹だ?」
悠「しつこいですね、仁さん」
仁「お前ら全部殺さないと、俺もゆっくり死ねないんだよ」
悠「僕も、あなたが狩りを辞めない限り、ゆっくり生きられない!」
仁「言うようになったな」

仁が、左手に持っていた肉塊にかぶりつき、その肉を頬張る。

志藤「『ムシ』だ……」
三崎「おぇっ!」
仁「殺したもん食って、何が悪い?」

悠が怒りに満ちた目で、仁を睨みつける。
呼吸が次第に、獣のように荒くなってゆく。

仁「ウゥゥッ…… アァ──マァ──ゾォォーン!!
悠「ウオオォ──っ! アァマゾォォ──ン!!

仁がアマゾンアルファに変身、悠がアマゾンオメガに変身。
戦いが始まる。

望「志藤さん! どうすんだよ、これ?」
三崎「どっちの味方すんの!?」

拳と蹴りのぶつかり合いの末、アマゾンアルファがアマゾンオメガを地面に叩きつける。
倒れ伏したオメガを残し、アマゾンアルファは他のアマゾンたちに矛先を向ける。

オメガ「やめろぉぉ!」

人間態のままで抵抗もしないアマゾンを、アマゾンアルファが容赦なく、次々に倒してゆく。
だがそこに、マモルことモグラアマゾンが割って入る。

三崎「マモちゃん、生きてたか!」
望「マモルぅ!」
志藤「マモル……」

モグラアマゾンが必死に抵抗するが、アマゾンアルファには敵わない。
地面に叩きつけられ、変身が解除され、人間態・マモルとなる。
なおもマモルは獣のように唸りつつ、アルファを威嚇する。

アマゾンアルファがとどめを刺そうとしたとき── 銃弾が炸裂。
志藤たちが武器を手に、アマゾンアルファ目がけて突進して来る。

マモル「みんな!?」
アルファ「そいつは『ムシ』だぞぉ!!」

志藤たちは蹴散らされながらも、必死にアマゾンアルファを押さえつける。

アルファ「邪魔だぁ! おめぇらぁ!」

アマゾンアルファが力づくで志藤たちを振りほどき、モグラアマゾンに狙いを定める。

アルファ「死ねぇ!」

そこへアマゾンオメガが割って入り、再びアマゾンオメガとアマゾンアルファの戦いとなる。


美月が家を出て、どこかへと歩いている。

3週間前の雨の日の回想。
マモルと共に逃げようとする悠に、美月が追いすがる。

美月「悠! 私、悠の話してること全然わかんない! 人間を食べてもいいなんて、そんなの絶対に……」
悠「当然だよ! 美月は人間だから! でも僕は……」
美月「アマゾン!?」


アマゾンオメガとアマゾンアルファの戦いが続く。
激しい戦いの末、双方の腕の刃が一閃。
互いの刃が互いの体をえぐり、血しぶきが大きく吹きあがる。

双方ともに共に変身が解け、憔悴しきった悠と仁が倒れる。
仁がフラフラと立ち上がる。

仁「はぁ、はぁ…… 今日の狩りは、ここまでか…… ハハハ! 俺は何度でも来るからな! 最後の1匹を殺すまで! 人間を…… 守るために!」

悠もどうにか立ち上がり、マモルが肩を貸す。

マモル「大丈夫?」

望「マモル──っ!」
三崎「マモちゃん、戻ってきなよ! 全然大丈夫だからさぁ! 帰って…… 戻ってきなよ!」

一同が、五円玉のネックレスを掲げる。

(悠『全部の理由は、ここから見つかるのかも』)

マモルは顔をそむけ、悠と共に、人間態アマゾンたちのもとへ去って行く。

福田「忘れんなぁ! 俺たちがいることを!」


仁はフラフラと歩いた末、力尽きたようにガックリと、地面に崩れ落ちる。
そこへ、仁に別れを告げられたはずの七羽が現れる。

仁「あれ…… 1人旅は?」
七羽「来てほしかったんでしょ?」
仁「ハ、ハハ…… 七羽さんは何でもお見通しだ……」
七羽「まったく、バカなんだから……」

七羽が地面に座り込む。仁は笑顔で、膝枕に頭を預ける。


3週間前の美月の回想。

美月「アマゾン、それだけはわかった! 一緒に、家に帰って!」
悠「ありがとう…… でもやっぱり、戦う選択肢は、有りだ……」

悠は、すがりつく美月の手をふりほどき、突き飛ばし、去ってゆく。


野座間製薬の、天条会長と水澤令華たち。

天条「水澤くん。あの『第3のアマゾン』というのは、まさか──」
令華「ヒトにアマゾン細胞を移植したのが鷹山仁なら*3、アマゾン細胞にヒトの遺伝子を与えたのが、悠です。人工細胞の塊などではなく、ただのヒトでもない、より完璧な、新しい人間です」
天条「そしてその、与えた遺伝子というのは──」
令華「はい…… 私のです。あれは、私の子です」
天条「ヒトを食らうアマゾン、それを食らう鷹山仁、そしてその双方を食らう水澤悠! この街には新しい生態系が生まれたのだぁ!! まさに、この天条隆顕の見たかったものだぁ!!」
橘「会長…… まさかとは思いますが、2年前の事故は……?」
天条「ワハハハハハ!」


志藤「帰るぞ」
望「また解散?」
志藤「いや…… 駆除しなきゃ、食ってけねぇ」


エンディングとスタッフロールの後。

悠が波打ち際に立ち尽くす。

「うぅおおぉぉ──っっ!! アマゾォォン!!」

激しい叫びと共に、悠の姿がアマゾンオメガへと変わる。

美月が悠に渡そうとしたアマゾンズレジスターが、波打ち際に投げ捨てられている──。

そして、物語はそれから5年後を描く『シーズン2』へと続いていく…。

(終)

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最終更新:2022年08月29日 04:56

*1 美月は物語中盤で悠の変身を目撃し、駆除班からアマゾンの存在を知らされていた。

*2 アマゾン細胞の抑制剤を過剰投与することで、悠を令華たちのもとへ引き戻すためのもの。

*3 鷹山仁は野座間製薬でアマゾンを開発した人物の1人であり、アマゾンを自身で駆除するため、アマゾン細胞を自分自身の体に移植していた。