地獄少女Rの最終回
残酷な美少女・藤堂まりや。幸せな人々を仲たがいさせ、地獄通信を利用させ、地獄に堕ちる様を楽しむ。
その真相── 6年前、まりやの10歳の誕生会、家族や友人たちが祝福する中、火事が発生した。
家族や友人たちは、まりやを見捨てて真っ先に逃亡し、以来、まりやはすべてを憎悪するようになった。
人々は誰もが裏切ると思い込むまりやに、まりやを愛する少年・創一は、「人々が誰もが裏切るかどうか確かめるために、何があっても裏切らない本当の愛を捜す」との名目のもと、様々な人々を仲たがいさせるゲームを続けていた。
そんな彼女が人面蜘蛛により、閻魔あいに代る新たな地獄少女に任命された──
人面蜘蛛『おまえが新たな地獄少女となるのだ あい… おまえは 地獄少女としての役目を教えてやれ』)
あい「いくよ 依頼者が待ってる まりやにも教えないと…」
輪入道たち「お嬢…」
あいが、地獄流しの標的の男を追いつめる。
標的「ひ… ひぃっ!!」
あい「闇に惑いし哀れな影よ…… 人を傷つけ貶めて… 罪に溺るる業の魂… いっぺん… 死んでみる?」
あいの漕ぐ舟に乗せられ、男が三途の川を流れてゆく。
舟には骨女、そして藤堂まりやも乗っている。
まりや「わ── かっこい──♡ こーやって流してたんだ── この人 浮気がバレて彼女に流されたんだっけ こんな人って山ほどいるもんね たいへーん くすくす」
骨女「これからはあんたがやるんだよ できんのかい?」
まりや「へーき へーき おわったなら帰るね──」
骨女「あっ ちょっと…」
まりやの姿が消える。
骨女「あの子 だいじょうぶかねぇ…」
あい「覚えてもらわないとこまるわ… あの子に もう時間がないから…」
まりやが気づく。そこは病院のベッドの上。創一がそばに寄り添っている。
創一「まりや 地獄はどうだった」
まりや「…うん… 楽しそうだよ… ゲホゲホッ …はやく… 地獄少女になって… 自由に… 動きたいなぁ…」
創一「地獄少女になったら ぼくを地獄に流してくれ」
まりや「それ… このまえもいってたよね…… 心配しなくてもだいじょうぶだよ… 怨まれることいっぱいしたし… いつか だれかに…」
創一「いや…… ぼくは まりやに怨まれることをしたんだ」
まりや「え…?」
創一「六年前の まりやの家の火事… あれは ぼくがやったんだよ」
まりや「え…?」
創一「火をつけたのも 地獄通信を使ったゲームも すべてうまくいってよかったよ」
まりや「創…一…? なんで… そんなこと…」
呆然とする表情のまま、まりやが事切れる。
創一「これで… まりやは生まれかわることができる」
「むかえにきたわ」
まりやが気づくと、そこは病院ではなく、あいや輪入道、一目連、骨女たちがいる。
まりや「地獄少女… そっか!! わたし死んだんだ」
あい「これからは あなたが地獄少女よ」
あいの姿が消える。代って、まりやが花模様の着物姿へと変ってゆく。
まりや「わ── 着物だ── かわい──っ♡ さっそくお仕事いこーよっ」
輪入道「…あの子 だいじょうぶか?」
一目連「いちばん信頼してた男が すべての元凶だったってのに… あんなヘラヘラして… なにかんがえてんだか」
人面蜘蛛「平静をよそおってはいるが… その内はいかりや憎しみで満ち満ちているはずだ この世への怨みと憎しみに満ちたまま死んだ魂… それが地獄少女になる条件だからな」
地獄流しを依頼した依頼者のもとへ、まりやが骨女とともに現れ、藁人形を渡す。
まりや「はいっ どーぞ!! この糸引けばいーよっ わたしが地獄に流してあげる!」
骨女「ちゃんと説明しな!!」
まりや「え──っ めんどくさ──い 憎いんでしょ? 地獄に流したんでしょ? だったらホラ はやく!!」
依頼者「ひ……」
依頼者は恐怖に引きつりつつ、まりやに押し切られて糸を引く。
「怨み 聞き届けたり」
標的「ひっ ひぃっ 助けてくれ──っ!!」
まりや「くすくす バカだなぁ…… ふたまたかけたりするからだよ── なんかいわなきゃいけないんだっけ? えっと── 闇になんとか…って まっいっか 死んじゃえ!!」
標的「ぎゃああああ」
標的の男が、炎に包まれる。
まりや「あとはてきとーにやっといて──」
一目連「おい!!」
まりや「地獄少女になるまえから 人間ってこんなもんだってわかってたし なんか… ぜんぜん楽しくないなー」
(まりや『みんな かんたんにうらぎるよね──』)
(創一『オレはぜったいにうらぎらないよ』)
まりや「創一だって… ずっとわたしのこと…」
(創一『地獄少女になったら ぼくを地獄に流してくれ』)
一目連「おい つぎの依頼だ」
次の標的の名は「藤堂 創一」──
創一の家のそば。依頼者は、まりやによって恋人を失った少女・ミズホ。
ミズホ「ふふ… 大切な人をうばわれる苦しみ… あの女にも思い知らせてやる……!!」
そこへ、まりやが現れる。
まりや「ミズホさんっ」
ミズホ「な… なんで あんたが…」
まりや「ミズホさんがよんだんでしょ? この糸引いて! そーすれば創一を地獄に流せるよ!!」
ミズホ「えっ…!? なにいって… あの人 あんたの大切な…」
まりや「だって── 創一も地獄に流してくれっていってたし だからホラッ はやく!!」
ミズホ「ひ…」
ミズホが顔をひきつらせつつ、藁人形の糸を引く。
創一「よかった…… 地獄少女になれたんだね」
「怨み 聞き届けたり」
窓の向こうの創一の姿が、忽然と消える。
ミズホ「え…? 消え…た…?」
まりや「うん だって 地獄に流したし」
相変らず、まりやは笑顔。
ミズホ「…なに へらへらしてんのよ… これじゃ… なんのために… あんたどうかしてるんじゃない!? 人の気持ちとか愛情とか なにもわかんないのね!! かわいそうな子!! この… バケモノ!!」
まりや「そーだよ しらなかったの?」
ミズホまでもが、炎に包まれる。
まりや「ぜんぶ創一がわるいんだもん 最初からわたしのこと裏切ってたなんて…」
「おい!!」
骨女「なんてこと…地獄少女の力を使って…」
輪入道「こんな かってはゆるされねぇぞ!!」
まりや「怨んだり… 怨まれたり… 怨みのない人間なんていないってわかったから みんな地獄に送っちゃえばいいよ」
まりやの放つ炎が、輪入道たちをも襲う。
一同「うわああっ」
声「やめなさい」
消えたはずの、閻魔あいが現れる。
骨女「お…」
輪入道「お嬢……!!」
まりや「…なに? 消えたんじゃなかったの?」
あい「あなたはいま 信じていた彼にうらぎられたと思いこんで混乱しているだけよ」
まりや「……なにいってんの…? 創一がぜんぶわるいんじゃない…… そのせいで… わたしはいっぱい つらい思いして…!!」
あい「きなさい 彼は地獄よりもひどい場所にとらわれているわ」
あいに連れられて、やって来た場所では、人面蜘蛛のもとで創一が捕われ、全身を棘で串刺しにされ、血まみれになっている。
まりや「創一…」
人面蜘蛛「あい… きさま よけいなまねを…」
あい「ずいぶんまえから まりやに目をつけてたみたいだったから… おかしいと思っていたのよ 六年前のあの日から あなたが計画していたのね…」
6年前の惨劇の日── 創一が、まりやの家へと急ぐ。
創一「まりやちゃんのお誕生会におくれちゃう…!!」
そこへ、人面蜘蛛が現れる。
人面蜘蛛「その女が好きか?」 創一「えっ…」 人面蜘蛛「だが残念だな その女は十六歳で死ぬ運命だ」 創一「そんな…!! まりやちゃんを助けてよ!!」 人面蜘蛛「一つだけ方法がある… 地獄少女になれば… 死んだあとも永遠に存在しつづけることができる」 創一「ど… どうすればいいの!?」 人面蜘蛛「地獄少女になる条件は この世に強い怨みと憎しみを抱いて死ぬこと… まりやが十六歳で死ぬそのときまでに 怨みと憎しみの心をうえつけつづけ 絶望させるのだ その方法は……」
創一「そ… そんな…!! ひどいよ!! たくさんの人を犠牲にしなきゃいけないなんて…」 人面蜘蛛「いいのか? まりやがいなくなっても……」 創一「……っ 犠牲になった人の命は… ぼくも地獄におちてつぐなう… だからおねがいだよ!! まりやちゃんを助けて!!」 人面蜘蛛「いいだろう……」
創一の目の前で、まりやの家が炎に包まれる。
人面蜘蛛「六年後が楽しみだな……!!」
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骨女「地獄のクモが裏で糸を引いていたなんて…」
人面蜘蛛「
御景ゆずきのときに失敗したからな… こんどは生前から地獄少女としての教育をほどこそうと思ったんだよ」
創一「…ま… まりや……?」
まりや「創一!!」
創一「よかった… 地獄少女になれたんだね…」
まりや「…ずっと… クモなんかのいいなりになって… 自分を犠牲にしてまで… こんな…」
(創一『なにがあっても裏切らない ほんとうの愛を見せてあげるよ』)
まりやの目に、初めて涙があふれる。
まりや「ホント… バカなんだから…… 創一…… わたしは……」
創一の体に棘が食い込み、みるみる血が広がってゆく。
まりや「創一!!」
人面蜘蛛「創一の魂は完全に消滅させてやる…!! 地獄におちるよりも重い罰だ!! おまえは地獄少女の役目をはたせ!!」
まりや「いやよ… わたしは… ずっと創一のそばにいるわ!!」
人面蜘蛛「なにぃ……? そんなわがままがゆるされると思っているのか!! 藤堂まりや!!」
あいがそこに立ちふさがり、人面蜘蛛に一撃を加える。
人面蜘蛛「ぐぉっ……!? あい… きさま… なんのマネだ…!!」
あい「心をすてきれないまりやに地獄少女はつとまらないわ それに… あなたたちは多くの怨みを生みだしてしまった 地獄でちゃんと罪をつぐなってもらう」
まりや「創一といっしょなら… 地獄もわるくないわね」
あい「この怨み… すべて地獄へ流します」
無数の花びらが舞い散り、まりやと創一の姿が消えてゆく。
「ありがとう 地獄少女…」
人面蜘蛛「くそ… まあいい… 今回だけは見のがしてやる……」
人面蜘蛛が姿を消す。
骨女「お嬢は… これからどうするんだい?」
あい「……わたしは…」
時は流れ、どこかの学校。1人の少女が陰湿なイジメに遭っている。
“地獄通信て しってる?”
“午前0時にだけアクセスできるサイトで”
“そこに憎い相手の名まえをかきこめば”
“地獄少女が地獄に流してくれるんだって…”
少女が携帯で、地獄通信にアクセスする。
黒い髪のセーラー服の少女が現れ、少女に藁人形を渡す。
藁人形に巻かれた糸が解かれる──
「いっぺん… 死んでみる?」
最終更新:2017年06月25日 18:14