戦え!! イクサー1の最終回


かつての回想。クトゥルフの宇宙船「クトゥルフの月」が宇宙を行く。
クトゥルフの長、サー・バイオレット。

バイオレット「果てしのない旅。この宇宙をさすらい、もう何年になるのか? それが母なる星を失った、私たちの定めだとわかっていても、あまりにも長い…… でもわが娘たちに、故郷の大地を与えてやりたい。安らぎの地を」

船内には大勢のクトゥルフの民が、冷凍睡眠状態で眠り続けている。

バイオレット「そのためなら…… 思うまい、許されぬことを。この船で果てていくのも、クトゥルフの定めであろう」

突如、船が激しく揺れる。

バイオレット「な、何事!?」
音声『大変です! 突然強力なエネルギーが船を包んで、動きが取れません!』

声「叶えてやろう──」

窓の外に、光の球と化したビッグゴールドの姿がある。

ビッグゴールド「叶えてやろう、お前の望みを── サー・バイオレット──」



ACT-3 完結編


戦いを拒んでいた渚は、自分同様にクトゥルフに親を殺された幼い少女・小夜子を守るため、戦いに身を投じる決心をした。
一方でクトゥルフでは、イクサー1(ワン)打倒のための人造人間・イクサー2(ツー)が完成していた。
イクサー2とセピアの乗った巨大ロボ・イクサーΣ(シグマ)が、イクサー1と渚の乗ったイクサーロボと対峙する。

イクサーΣの攻撃が、次々にイクサーロボに炸裂する。

渚「きゃあっ!」
イクサー1「渚、落ち着いて!」

イクサーロボがパワーを込める。

イクサー2「来るぞ、セピア」
セピア「はい!」

イクサーロボがビームを放つが、目に見えないバリアによって阻まれ、イクサーΣは無傷。

イクサー1「こ、こんな!?」

空から激しい稲妻が閃き、イクサーロボの右肩を射抜く。
切断された右腕が地面に落ち、イクサーロボはガックリと膝をつく。

分身であるイクサーロボの大ダメージに、イクサー1自身も右腕を押さえて苦悶の声を漏らす。

イクサー1「うっ、うぅっ……!」
渚「イクサー1!? イクサー1!」

イクサー2「ハハハハ! そんなチャチな力で、このイクサーΣが倒せると思っているのか!? なぶり殺しにしてやる。セピア! お前の怨み、晴らすが良い!」
セピア「見ていて、コバルト。勝つのよ、私たちは!」

イクサーΣの強烈なパンチ。地面に倒れ伏したイクサーロボを、さらにイクサーΣが踏みにじる。

イクサー2「ハハハハ! どうだ、イクサーロボ!」

イクサーロボのボディに、次第に亀裂が走る。
地上では、小夜子が渚の戦いの様子を見守っている。

小夜子「あっ、お姉ちゃん! お姉ちゃぁん、お姉ちゃぁん!! 渚お姉ちゃぁん!!」
渚「……さ、小夜ちゃん!? ダメぇ! 小夜ちゃん、出て来ちゃいけない!」
小夜子「負けないで、お姉ちゃぁん! 負けないでぇ!」
イクサー2「何だ?」
セピア「子供!? どうしてこんなところに?」

イクサーΣが、小夜子の方へと歩き出す。

セピア「イクサー2、相手は子供です。それより、イクサーロボにとどめを!」
イクサー2「殺す!」

イクサーΣが小夜子を目がけ、脚を振り上げる。

渚「やめてぇぇ──っっ!!」

その脚が振り下ろされる。小夜子の姿が足の下に消え、地面が砕ける。

セピア「あぁっ……!?」
イクサー2「フン!」
渚「さ、小夜ちゃん……!? 小夜ちゃああぁぁ──ん!!」

満身創痍のはずのイクサーロボが、立ち上がる。

イクサー2「フン、くたばり損ないが。くらぇぇっ!!」

イクサーΣがパンチを繰り出すが、イクサーロボはそれを左手のみで受け止める。

イクサー2「バ、バカな!?」

イクサーロボの全身にパワーが漲り、掴まれたイクサーΣの腕に、次第に亀裂が入る。
とっさにイクサーΣが、もう片方の腕のパンチでイクサーロボを吹き飛ばし、間合いを取る。

イクサー2「イクサーロボ、決着をつけてやる! セピア!」
セピア「……は、はい!」
イクサー2「どうした!? 精神を集中させろ!」
セピア「は、はい、イクサー2」

渚はコクピットの中で、号泣している。

イクサー1「渚…… このパワーは一体!?」
渚「さ、小夜ちゃん……」

イクサーΣが渾身のビームを放つ。イクサーロボもビームを放ち、双方の威力が空中で激しく衝突する。
イクサーロボの力の方が勝り、押し戻されたビームがイクサーΣに炸裂する。

イクサー2「セピアぁ──っ!?」
セピア「コバルト、ごめんなさい……」

間髪入れずに、イクサーロボの2撃目のビームがイクサーΣに炸裂する。
イクサーΣが大爆発──!! 爆炎の中からイクサー2が脱出し、彼方に飛び去る。

イクサー1「イクサーΣ、おそろしい敵だった……」
渚「うぅっ、うぅっ……」
イクサー1「渚、あの子は無事です」
渚「えっ?」
イクサー1「私のリングが守っています。安心して」
渚「本当? 本当なの?」
イクサー1「はい」
渚「ありがとう! ありがとう、イクサー1! 大好きよ!」
イクサー1「渚……」


イクサー1の言う通り、小夜子は気絶しているものの、イクサー1に託された腕輪を付けており、バリアに守られて無傷。

渚「小夜ちゃん、良かった…… 本当に良かった、小夜ちゃん……」
イクサー1「渚、小夜ちゃんを安全なところへ」
渚「安全なところ?」
イクサー1「まだ地球全体が、モンスターたちの支配下になったわけではありません。彼らの手が及んでこないところへ、小夜ちゃんを運ぶのです。早くクトゥルフの侵略を止めないと…… 渚、クトゥルフ、いえ、ビッグゴールドと戦ってくれますね?」
渚「うん、わかってる。渚、がんばる」


イクサー2は、地球上に造られたクトゥルフの要塞・ノヴァへと帰還し、傷を癒している。

イクサー2「80パーセント回復か…… それにしても、なぜセピアは乱れたのだ? 勝てるはずの戦いだったのに、イクサーロボのパワーはどこから? つまりあの地球人、加納渚の方がセピアより優秀だということ。渚、欲しい…… イクサー1になら、いつでも勝てる。でも、この屈辱は晴らさねば。レッダス、ブルーバ。一緒においで。フフ……」

一方、サー・バイオレットはビッグゴールドに謁見している。

バイオレット「お許しください、ビッグゴールド。まさか、このようなことになろうとは…… ビッグゴールド」
ビッグゴールド「もう、良い── サー・バイオレット」

かつての回想。宇宙をさすらうサー・バイオレットの前に、ビッグゴールドが現れる。
ビッグゴールド「叶えてやろう、お前の望み── サー・バイオレット──」
バイオレット「ち、違う! このようなことを、望んではいない!」

船内に眠っていたクトゥルフの民が、次々に戦士に作り変えられてゆく。

バイオレット「違う! 私は、私は……!」

ビッグゴールドの粛清を受け、サー・バイオレットが倒れる。

バイオレット「ビッグゴールド── うぅっ……」
ビッグゴールド「我が母、サー・バイオレット。人間とはわからぬもの── 必勝を期して造り上げたイクサーΣが、あのように敗れるとは── 私は地球へ行く。イクサー1と、あの渚という人間に勝つために──」


小夜子「お姉ちゃん、絶対に帰って来てね!」
渚「大丈夫よ、小夜ちゃん。必ず迎えに来るから、待っててね。行ってきます!」
小夜子「お姉ちゃん、がんばってね!」
渚「小夜ちゃん……」

人里離れた山の中腹に、渚とイクサー1。イクサー1は依然、痛々しく右腕を押さえている。

渚「痛むの?」
イクサー1「えぇ、少しだけ」
渚「手当しなくちゃ。どうしたらいいのかしら?」
イクサー1「心配しないで。それに私には、あなたち地球の薬は効かないと思います」
渚「でも……」
イクサー1「ありがとう、渚」
渚「ねぇ、イクサー1」
イクサー1「はい?」
渚「あなたは宇宙人なの? どうして、私たちのために戦うの?」
イクサー1「私は、クトゥルフに造られた人造人間です」
渚「人造人間……?」
イクサー1「どうして戦っているのか、私にもよくわかりません。それは、渚が教えてくれるのだと思います。私の選んだ、あなたが」
渚「よく、わからないわ」
イクサー1「ごめんなさい、渚……」

渚が立ち上がり、イクサー1を元気づけるように、笑顔で手を差し伸べる。

渚「行きましょう、ビッグゴールドをやっつけに!」
イクサー1「えぇ、渚!」

イクサー1が、その手を握り返そうとしたとき──
イクサー2が、ロボット兵士のレッダスとブルーバを引き連れ、現れる。

イクサー2「その必要はなくてよ!」
イクサー1「イクサー2!?」
イクサー2「渚、私が連れて行ってあげる。お母様のところへ」
イクサー1「まさか、渚を!?」
イクサー2「お姉様の遊び相手は、この2人! レッダス、ブルーバ、行け!」

レッダスがイクサー1に挑み、その隙にブルーバが渚を当身で気絶させる。

イクサー1「あっ、渚!?」
イクサー2「またお会いしましょう、お姉様。生きていたらね。フフフ…… ハハハハ!」
イクサー1「待てぇ! イクサー2!!」

イクサー2が、渚を捕えたブルーバと共に姿を消す。イクサー1の前には依然、レッダスが立ち塞がる。
負傷しているイクサー1は、レッダスの猛攻を前に苦戦を強いられる。

イクサー1「うぅっ……! 負けない、渚を救わなければ!」

反撃のエネルギー弾で頭部を射抜き、レッダスを倒す。
しかしイクサー1自身も息を切らし、その場に倒れてしまう。


要塞ノヴァの中の一室で、渚が目覚める。

渚「……こ、ここは?」
イクサー2「ようこそ、渚。私たちの要塞へ」
渚「どうして、私を?」

微細な電撃が、渚の体を舐め回すように走り回る。

渚「な、何よ……!?」

ビッグゴールドが現れる。

イクサー2「お母様!」
渚「ビッグゴールド……!?」
ビッグゴールド「地球人もクトゥルフも、生物的には大差がない。この娘も同じ── それが、なぜイクサー1と接触すると、あれほどのパワーが出せるのか? わからぬ──」
渚「地球を元に戻して! 私たちが何をしたというの!? ビッグゴールド!」
ビッグゴールド「教えてやろう、加納渚。これが私──」

ビッグゴールドの背後に、巨大な機械の姿が見える。

渚「……機械?」
ビッグゴールド「機械、それが私の源── 遥かな昔、私は人間と共に生き、そして死んだ。だが私の源は大宇宙をさまよい、再び命を得たのだ。その無の意識に心を与えた者、一つはクトゥルフの長サー・バイオレット。そして今一つは、我が敵イクサー1──」
渚「イクサー1……!?」
ビッグゴールド「その敵とも、じきに決着がつく。今ここでお前の命を絶ってしまえば、もはやイクサー1など──」
イクサー2「お待ちください。この娘、私に」
ビッグゴールド「欲しいと? 我が子よ」
イクサー2「はい」
ビッグゴールド「良かろう。好きにするが良い」
イクサー2「ありがとうございます、お母様」


衛星軌道上、地球防衛軍の宇宙ステーション。

「地球との交信は、途絶えたままか?」
「はい。すでに48時間が経過していますが、まだ」
「司令、やはり基地はエイリアンに?」
「うむ。FJ-IIIの発進準備は?」
「完了しています」
「発進だ! 月の裏側のエイリアンを叩く!」
「FJ-III、発進せよ!」「了解!」

地球防衛軍の宇宙戦艦FJ-IIIが、ステーションから発進する。

「か、艦長、強力なエネルギー反応が接近してきます!」
「何、どういうことだ!?」
「それが、空間から突然発生して、このままでは本艦もステーションも、回避できません!」
「粒子砲で迎撃せよ!」
「間に合いません!」

宇宙を突き進むビッグゴールドの前に、FJ-IIIも宇宙ステーションも、粉々に砕け散る。


渚は要塞ノヴァの中で、捕われの身となっている。

イクサー2「どう、渚? 決心はついて?」
渚「け、決心って?」
イクサー2「おバカさんね。私のものになることよ」
渚「あ……あなたのもの?」
イクサー2「パートナー。私のパートナーになってイクサー1を倒し、地球、いえ、宇宙を支配するの」
渚「嫌! 絶対に」
イクサー2「可愛い渚、そんなこと言っていいのかしら? 弱虫な人間たちは、ほら」

足元に怪物が出現。触手が伸びて渚を縛り上げ、その先端が渚の顔に迫る。

渚「あ!? あ…… あ……!」
イクサー2「ねっ? あなたも、パパやママのようになりたいのかしら?」
渚「や、やめて……」
イクサー2「早くOKしないと、本当にその触手が体に入り込むのよ」
渚「嫌よ! 死んだって言うことなんか、聞かないから」
イクサー2「何!?」
渚「こ、殺すなら、ひと思いに殺せばいいじゃない!」
イクサー2「そう…… じゃ、殺してあげる、渚」
渚「あ、あぁ…… た、助けてぇぇ!! イクサー1──!!」

(渚『イクサー1──!!』)

イクサー1は依然、山中で倒れている。
渚の声に応じたかのように、空間を裂き、光と共に、右腕を欠いたままのイクサーロボが出現する。
イクサー1がイクサーロボに収容され、コクピット内で目を覚ます。

イクサー1「……イクサーロボ? 渚が、渚が呼んでいるのですね!? イクサーロボ、私に最後の力を!!」

イクサーロボが、要塞ノヴァを目指して飛び立つ。


イクサーロボが、要塞ノヴァを目がけて突撃する。
しかしバリアに阻まれ、イクサーロボの装甲が砕け、火花と煙が吹き上がる。

イクサー1「うっ、うぅっ…… イクサーロボ・フルパワ──ッッ!!」

イクサーロボが全身にエネルギーを漲らせ、要塞に激突する。
バリアを突き破り、さらに壁面を突き破り、要塞内に突入する。
煙を吹いて動かなくなったイクサーロボから、イクサー1が降り立つ。

イクサー1「イクサーロボ、長い間よく戦ってくれました」
(渚『助けてぇ! イクサー1──!!』)
イクサー1「はっ、渚の声が!?」

ブルーバと怪物たちが出現する。
イクサー1がビーム剣を構えるものの、ビームの刃が消えてしまう。

イクサー1「はっ、エネルギーが!?」

エネルギーが尽きてあわやというとき、なぜかブルーバや怪物たちが引退き、姿を消す。
暗がりの中から、渚が現れる。

イクサー1「渚! 渚、無事で……」

安堵するイクサー1を目がけ、渚がエネルギー弾を放つ。

イクサー1「あぁっ!? ど、どうして……!?」

イクサー2も現れる。

イクサー2「お姉様! 私のパートナー、加納渚よ。ハハハハ!」
イクサー1「そ、そんな…… 私の聞いた渚の声は? 確かに渚の声が!」
イクサー2「どう、イクサー1? あなたも彼女に殺されなら、本望でしょ? 渚、とどめを刺しておやり!」

渚が感情の欠片すら見せずに、拳をイクサー1に向け、狙いを定める。

渚 (イクサー1!)
イクサー1「渚!?」
渚 (ごめんなさい、イクサー1。私、もうダメなの! 自分でもどうすることもできない…… だから、だから撃って! 私を殺して!)
イクサー1「渚……!?」
渚 (早く! このままじゃ本当に、あなたを殺してしまう!)

イクサー1が、震える拳を渚に向ける。

イクサー2「おもしろい。撃てるのか、イクサー1?」
イクサー1「あぁっ…… で、できない…… 渚、私にはあなたを撃つなんて、そんなことできない!」
渚 (イクサー1! あなたがいなくなったら、地球はどうなるの!? お願い! 戦って、イクサー1!!)
イクサー1「渚……! 渚ああぁぁ──っっ!!」

絶叫とともにイクサー1の放ったエネルギー弾が、渚を貫く。

イクサー2「あぁっ!?」
イクサー1「渚!?」

倒れた渚を、イクサー1が助け起こす。渚の顔は、元の表情に戻っている。

渚「イクサー1、ありがとう…… 勝ってね。きっと、勝ってね……」
イクサー1「渚……」

イクサー1の腕の中で、渚が事切れる。
悲しみに暮れるイクサー1の体に、渚の心が入り込み、これまでにない力が漲ってゆく。

イクサー1「はっ!? これが、これが…… これが『シンクロ』!!」

怪物たちがイクサー1を目がけて襲いかかる。
イクサー1から漲る強烈なエネルギーの前に、怪物たちが1匹残らず掻き消える。
ブルーバも襲いかかるが、イクサー1は難なく、一刀の元にブルーバを斬り捨てる。

イクサー2「イクサー1、それも渚の力か?」
イクサー1「それがわかれば、もう戦う必要はないでしょう? イクサー2」
イクサー2「結局、渚には勝てなかった。でもお姉様には、イクサー1には勝つ!」
イクサー1「……」
イクサー2「私は、私はそのためだけに造られた、イクサー1を殺すためだけに造られた、イクサー2だ!!」

イクサー2がエネルギー弾を発射。大爆発が起きるが、瞬時にイクサー1はイクサー2の背後に移動する。

イクサー1「おやめなさい、イクサー2」
イクサー2「お姉様。私を倒さなければ、お母様は出てこないわよ」

脂汗を滲ませるイクサー2、対照的に冷静そのもののイクサー1。
イクサー2がビーム剣を振るうが、それより先にイクサー1の剣が、イクサー2を斬り捨てる。

イクサー2「お姉様…… 私も渚のようなパートナーが、欲しかった……」

イクサー2が事切れる。


イクサー1が瞬間移動で、ビッグゴールドのいる広間へ現れる。

ビッグゴールド「見事だ、イクサー1。いや、渚の、人間の力か── 渚の感情は、私には計算できないものだった。しかし、お前にはわかったようだな、イクサー1──」
イクサー1「ビッグゴールド、お前を倒す!!」
ビッグゴールド「良かろう。我々は一つの宇宙より生まれし分身── いずれが真の姿か、決着をつけるときが来た!!」

イクサー1がビッグゴールドを目がけ、エネルギー弾の連射で先制攻撃。
ビッグゴールドが光球と化し、どんどん膨れ上がってゆく。

ビッグゴールド「死ねぇぇ! イクサー1──!!」

強烈な電撃が、イクサー1を襲う。

イクサー1「ああぁぁ──っ!! ……行きますよ、渚ぁぁ!!」

巨大な光の柱と化したビッグゴールドの中に、イクサー1が飛び込む。

ビッグゴールド「おのれ── イクサー1──!!」

ビッグゴールドとイクサー1が巨大な光と化し、際限なく膨れ上がってゆく。
光の中にビッグゴールドの苦悶の顔が浮かび、そして消えてゆく。

要塞ノヴァが火を吹き、消滅してゆく。


宇宙空間。渚を抱いたイクサー1が、地球を見つめている。

イクサー1「渚、私たちは勝ちましたよ。ゴールドは、私と一つになりました。渚のおかげで、私たちもあなたと同じ、人の心を持つことができたのです。これから私は、クトゥルフと一緒に旅に出ます。彼らを見守っていかなければならないのです。あなたの、一番願っていたことを叶えます! 渚とお別れするのはつらいけど…… 地球を、元通りに! 平和な星に!」


加納家の朝。渚が居間に降りる。父は新聞を読み、母は台所に向かっている。

渚「おはよっ! ひどぉい、ママ。どうして起こしてくれないの!?」
母「まったく、いつまで寝てるの? 呼びましたよ、いつもの時間に」
渚「うっそぉ!?」
父「昨夜も深夜映画だろう?」
渚「おはよう、パパ。昨日はね、ゾンビの館2。怖かったよぉ~」
父「ほぉ、録画したか?」
母「ちゃんと食べていきなさいよ、渚!」
渚「あっ、いい。遅刻しちゃうから。行ってきまぁ~す!」
父「はい、行ってらっしゃい!」


平和な住宅街を、渚が走る。
小夜子が母と仲睦まじく散歩しているものの、渚は一瞥もせずに通り過ぎる。

並木道。イクサー1が寂しげな視線で、渚を見つめている。

渚 (な、何だぁ!? この格好)

イクサー1がかすかに微笑む。

渚「あっ、どうも……」

愛想笑いしつつ、渚が走り去る。

渚 (ふぅ~、朝っぱらからよくやるよ)

級友・まみがいる。

渚「あっ、おはよう、まみ!」
まみ「遅~い! 渚、遅刻だぞ!」
渚「まだ間に合う、あきらめるな!」
まみ「参ったなぁ……」
渚「ほら、急げ急げ!」

まみと共に走り去る渚を、イクサー1が寂しげに見送る。


イクサー1「さようなら、渚……」

イクサー1が光と化して空へ飛び去り、そして地球を離れ、宇宙の彼方へと飛び去ってゆく。


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最終更新:2017年11月06日 06:15