忍風戦隊ハリケンジャーの第49話

忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャーの第49話


御前様こと覚羅(かぐら)が宇宙忍群ジャカンジャの上忍サンダールの前に最期を遂げた数日後──
ハリケンジャー3人はシュリケンジャーに、手荒な特訓を受けている。

シュリケン「どうしたどうしたぁ! それでジャカンジャを倒すつもりか!? この星を守るつもりか!?」
レッド「倒したいよ! 守りたいよ……でも……」

変身を解く鷹介(ようすけ)たち。

鷹介たち「俺たちだって……」「だけど、御前様を…… 奪われてしまった!」「俺たち、守れなかった! 守れなかったんだ!」


おぼろ研究所。

館長「あぁ、御前様……」
おぼろ「お父ちゃん……」


特訓の場には、霞一甲(いっこう)一鍬(いっしゅう)の兄弟も居合せている。

七海(ななみ)「教えてもらいたいこと…… まだまだたくさんあったのに」
一甲たち「その上、メダルは2つともジャカンジャの手に」「どうすればいいんだ…… これから我らは!?」
シュリケン「腕を磨き、技を高める。それしかない! 振り向くな、BOYたち。次はYOUたちだ、ゴウライジャー! 来い!」



巻之四十九
使命と天空忍者




宇宙忍群ジャカンジャの本拠地、寄生要塞センティピード。

タウ・ザント「邪悪なる意思からの最後のメッセージにより、今すべてがわかった── 『アレ』によってこの星が、いや、宇宙がどうなるのか、すべてが見えた!」
サタラクラ「だったらタザやん、早いとこカラクリシステムで弓と矢を出して『アレ』を!」
タウ・ザント「その前にこのタウ・ザントが、嘆きと怒りの弓矢を射るにふさわしい姿にならねばならぬ」
ウェンディーヌ「ふさわしい姿?」
フラビージョ「大っきくなるってこと?」
サンダール「タウ・ザント様。そのためになすべきこと、このサンダールに何なりと……」
サタラクラ「あっ、ちょっと待ったぁ! ハ──イハイハイハイ! ボキが手を上げてまぁ~す! どう、タザやん?」
タウ・ザント「いいだろう── お前に頼むとしよう」
サタラクラ「御意! ぎょい? ぎょい~ん!」
ウェンディーヌ「サタラクラ、『アレ』が生まれると思ったら急に……」
フラビージョ「感じ悪いねぇ~」
タウ・ザント「サンダール、サーガインが遺したメダルのデータを」
サンダール「はっ、ここに」


おぼろ「ジャカンジャの手に怒りと嘆き、2つのメダルが揃った…… すぐにでも『アレ』を発生させて、何の不思議もないはずや」
館長「直接奴らの懐に飛び込んで、タウ・ザントが弓矢を引くのを阻止できれば」
おぼろ「ジャカンジャの要塞は次元の歪みでシールドされてる…… 突撃不可能や。敵の出方を待つしかない。あの子らも、それに備えてトレーニングするしかないんや」

警報音。

おぼろ「また流星群や!」
館長「おぼろ!?」
おぼろ「大至急、解析や!」


特訓中のゴウライジャー。
変身を解除された一甲たちが、地面に転がる。

鷹介たち「一鍬!?」「一甲!?」
シュリケン「悲しんでる暇はないぞ! 忍者は命令に従い、生きてこそ忍者! 迷うな、振り向くな、前を見よ!」
鷹介たち「俺たちは傀儡(くぐつ)じゃない!」「怒りだって、涙だってあるんだ!」「御前様がいなくなったっていうのに…… いくらなんでも冷たすぎるよ!」
シュリケン「……甘い、甘過ぎる! 鍛え直してやる!」

シュリケンジャーが攻撃を放つが、鷹介たちは危うく変身して防ぐ。

シュリケン「超忍法、空駆け!」
レッド「何っ!?」

シュリケンジャーが、レッドの空駆けと同様に宙を舞う。
館長たちもその様子を、モニターで見ている。

館長「い、今のは空駆け!? シュリケンジャーが疾風(はやて)の技を!?」
おぼろ「うるさいなぁ、お父ちゃん!」
館長「あ、いやその…… うぅむ……?」


一方の要塞センティピードでは、サタラクラがタウ・ザントから新兵器を受け取っている。

サタラクラ「『ジャキュームガン』? いい出来じゃん、タザやん!」
サンダール「同士サーガインの残したデータのおかげだな」
タウ・ザント「頼むぞ── サタラクラ」
サタラクラ「おまかせ~! おまかせおまかせ、おまかせぇ~っ!」


シュリケンジャーがかつて、覚羅に初めて出逢った頃の記憶──

覚羅「そなたの名前と顔、そして命……
本日ただ今より、この覚羅が預かる」
シュリケン「もとより覚悟の上。
全身全霊で、お使いを!」

館長「憶えておるか、おぼろ?」
おぼろ「ん、何や?」
館長「十年前、将来の疾風流を背負って立つに違いないといわれた忍者が、空忍科にいた。200年出なかったハリケンジャーになるのも、あやつだろうと……」
おぼろ「……その話、タブーのはずやで」
館長「わかっとる。突然の失踪、疾風流としては掟に従い、抜け忍として破門にするしかなかった……」
おぼろ「お父ちゃん、なんで急にそんなことを?」
館長「いや…… あやつ、今頃どこで何をしているのかと思ってな」


サタラクラが、街中に現れる。

サタラクラ「ワッハハハハ! さぁて、行くよぉん!」

サタラクラがジャキュームガンを向けると、通行人たちの体からエネルギーが吸い込まれ、人々は次々に倒れてゆく。
七海のマネージャーの(はせ)、鷹介の上司・かなえの姿もある。

馳「ち、力が抜けるぅ…… か、買いに行かなくちゃ、ナナちゃんの新曲……」
かなえ「な…… 何これ? 新人サボリがちだから、説教しなくちゃ……」


おぼろ「みんな、ジャカンジャや! ついに動き出しよったで!」
シュリケン「了解! 行くぞ、BOYたち!」


サタラクラがジャキュームガンで吸収したエネルギーが、背負ったタンクへ貯められてゆく。

サタラクラ「ワ──ッハハハハ! 人間どもの生体エネルギーを吸い取り、その中から嘆きと怒りのエネルギーを抽出して、タザやんにこのボキがプレゼントするんだもんねぇ~!」

カブトライジャー、クワガライジャーの2人が現れる。

カブトたち「そういうことか! そいつをよこせ!」「みんなから奪ったエネルギーを返せ!」
サタラクラ「や~だよ! こぉんな楽しい物、誰が渡すかって!」
カブトたち「待てぇ!」

ハリケンジャー3人、そしてシュリケンジャーも駆けつけ、退路を塞ぐ。

レッドたち「待ちやがれ! 逃がさないぞ、サタラクラ!」「ここから先は、通さん!」
サタラクラ「あららららら、囲まれちゃったぁ! ヒィ~ッ!ああっ、やややばい~っ!」

タウ・ザントの放った稲妻が天を裂き、ハリケンジャーたちに降り注ぐ。

一同「うわぁっ!?」
サタラクラ「サンキュー、タザや~ん!」
タウ・ザント「心配するな── どんなことがあろうと、そのジャキュームガンが奪われることはない」
サタラクラ「だよねぇ~、タザやんの加勢があれば」
タウ・ザント「そうではない!」

ジャキュームガンが光に包まれ、サタラクラの左腕に融合し、一体化する。

サタラクラ「ボ、ボキちゃんの手に、ジャキュームガンがあぁー!? わぁっ、ど、どうなってんだ、タザやん!?」

タウ・ザント「お前のその腕が斬り落とされでもしない限り、ジャキュームガンはエネルギーを吸い続ける── このタウ・ザントのために」
フラビージョ「怖~い!」
ウェンディーヌ「タ、タウ様……」
サンダール (誰でも良かった!? サタラクラが手を上げなければ、このサンダールがあぁなっていたということか……おのれ!)

一方、おぼろ研究所では。

おぼろ「流星群が解読できた! メッセージから、『アレ』の正体がわかったで!」
館長「な、何!? それで!?」
おぼろ「『アレ』は…… 『アレ』の正体は、すべてを飲み込み無に返す、巨大な穴や!」
館長「何!?」

レッド「巨大な穴!?」
おぼろ「ブラックホールみたいなもんや。成り立ちは違うけど」
一同「そんなものが発生したら!?」「この星は……!?」
おぼろ「あっちゅう間に飲み込まれて、消えてしまう!」
一同「その引金が、あの怒りと嘆きの弓矢!?」「それをタウ・ザントが!?」
おぼろ「でも、その前に『弓矢を射るにふさわしい力を得よ、姿を得よ』。これが最後のメッセージや。その準備でサタラクラが……」
レッド「弓矢を射るにふさわしい力……姿!?」
サタラクラ「そういうことだったの、タザやん!? でも、ワーッハハ! ボキもちょこっとは、遊ばせてもらお~! 感じる感じる、エネルギーがぁ!」
レッド「油断するな!」

ジャキュームガンの貯めたエネルギーが、サタラクラ自身の体に漲ってゆく。

タウ・ザント「おのれ、サタラクラ! せっかく集めたエネルギーを── 許さんぞ!」
サンダール「(ここはやはり……) タウ・ザント様、後はこのサンダールにお任せを」

サタラクラ「サタやん影分身!」
レッド「分身したぞ!?」
サタラクラ「行っくよ~君たち!」

サタラクラが数体に分身して、ハリケンジャーたちを次々に攻撃する。
ハリケンジャーとゴウライジャーは強烈な連続攻撃の末、変身を解除されてしまう。

サタラクラ「ダーッハッハハ! そいじゃ、そろそろ仕上げをっ!」

サタラクラは、鷹介たち一同の生体エネルギーも吸い取りにかかる。

一同「うわぁっ! ぐぅっ!」
サタラクラ「やったぁ! やったもんね、ボキちゃん! おなかいっぱいだもんねぇ!」

サタラクラの背後に突如、サンダールが降り立つ。

サンダール「サタラクラ……」
サタラクラ「あ? おぉ、サンちゃん!」
シュリケン「うっ…… サンダール!」

シュリケンジャーの脳裏に、覚羅がサンダールに倒された光景がよぎり、拳がわなわなと震える。

サタラクラ「サンちゃん、加勢ならもっと早くぅ~! さぁ、一緒に奴らを地獄にぃ!」

サタラクラが背を向けた次の瞬間、サンダールがその背のタンクを切り落とす。

サタラクラ「あり?」
サンダール「ご苦労だった、サタラクラ」
サタラクラ「あらら……?」
サンダール「だが命令を無視し、エネルギーを無駄遣いした報いは、受けてもらうぞ」
サタラクラ「そんなサンちゃぁん、ちょっと遊んだぐらいでぇ~」

サンダールの剣が一閃する。
サタラクラの仮面が真っ二つとなり、サタラクラが崩れ落ちる。

サタラクラ「そんな、馬鹿な……」
サンダール「フフフ……」
シュリケン「サ…… サンダールぅ……!」

シュリケンジャーが力を振り絞って立ち上がり、人が変わったように猛然とサンダールに斬りかかる。

シュリケン「サンダール! 貴様のような腐りきった奴の(やいば)に、御前様が倒されたかと思うとぉ!」
鷹介たち「はっ…… シュリケンジャー!?」「やっぱり、御前様のことを……」「シ、シュリケンジャー……」
サンダール「ほざけぃ! フン!」
シュリケン「サンダール! 貴様だけは…… 貴様だけは、絶対に許さぁぁん! 大逆転、フェイスチェンジ! 行くぜぇぇっ!」

シュリケンジャーがファイヤーモードに変身。
サンダールの猛攻が降り注ぐ中、捨て身で突進する。

シュリケン「うおぉぉ──っ!! 天空斬っっ!!」
サンダール「宇宙忍法、縄頭蓋(ジョーズガイ)!」

シュリケンジャーの剣技をかわし、サンダールの反撃が炸裂する。

シュリケン「うぉぉっ!?」
鷹介たち「シュリケンジャー!?」
シュリケン「く、来るなぁぁっ!」
サンダール「フフフ……」
シュリケン「超忍法! 飛打、千本ノック!!」

シュリケンジャー得意の野球忍法も、サンダールに跳ね返される。

サンダール「とどめだ!」

サンダールの振り下ろした剣が、シュリケンジャーに叩きつけられる──

シュリケン「わああぁぁ──っ!! 」
サンダール「御前とやらもこの星も、お前に守れるものなど何もない……」

シュリケンジャーが倒れ、サンダールが悠然と消え去る。
鷹介たちが駆け寄る。

鷹介たち「シュリケンジャ──っ!」「シュリケンジャー、しっかりしろ!」「シュリケンジャー!」
シュリケン「だ、大丈夫だ…… どこで、どのように果てようと…… 十年前、シュリケンジャーとして選ばれたときからの…… 我が宿命……」

館長「はっ、十年前!? ままま、まさか、あやつは!?」
おぼろ「な、何やて……!?」

シュリケン「よ、よく聞け…… ハリケンジャー、ゴウライジャー…… 忍者は…… 名を捨て、顔を捨て、命令に従い、生きてこそ、忍者…… う、クッ!」
鷹介「シュリケンジャー!?」
シュリケン「だ、だが…… 花の名を、忘れても……」

覚羅「花の名を忘れても、
花の美しさを、人は知っている」
シュリケン「御前様……」
覚羅「私も忘れぬ。未来永劫──
だから迷うな、振り向くな、
前を見よ。シュリケンジャー」

鷹介たち「花の名を…… 忘れても……」「花の…… 美しさを……」「人は…… 知っている」
シュリケン「あぁ…… だから、戦える…… 命を、懸けられる…… 忍者を…… 全うできる! 御前様が、教えてくれた……」
鷹介たち「俺は…… 俺たちは!」「シュリケンジャー……」

シュリケンジャーの手が、弱々しく宙を泳ぐ。
鷹介たち5人が咄嗟に、その手を握り返す。

鷹介たち「シュリケンジャー……」「シュリケンジャー……」
シュリケン「みんな……」

その時、倒れたはずのサタラクラが起き上がる。
仮面が割れ、自身の忌み嫌っていた素顔が露わになっている。

サタラクラ「よくも、ボキの仮面を割ってくれたなぁ! 嫌いだ嫌いだぁ! ハリケンジャーもゴウライジャーもシュリケンジャーも、ジャカンジャも大っ嫌いだぁ!!」

サタラクラが不気味なエネルギーを全身に漲らせて巨体化する。
シュリケンジャーが、フラフラと立ち上がる。

鷹介たち「シュリケンジャー!?」
シュリケン「くッ……! こいつは俺に任せろ! サンダールを追え!」

シュリケンジャーの放ったシュリケンボールを、鷹介が受け止める。

鷹介「これは!?」
シュリケン「それで敵要塞へのルートが開ける。スイッチを押すのはお前たちだぁ! 行け、ハリケンジャー、ゴウライジャー!!」
鷹介「シュリケンジャー!?」
一甲「鷹介!!」

鷹介をがシュリケンジャーに続こうとするが、一甲が制止し、無言で頷いて背を向ける。
一鍬も、そして鷹介たちも、感情を堪えて駆けだす。

鷹介たち「うおぉぉ──っ!」

シュリケンジャーが最後の力を振り絞り、天空神に乗り込む。

シュリケン「くッ…… 飛翔変形……! 天空神、推参! この星の敵、宇宙の敵…… ジャカンジャ、許さぁぁんっ!!」

カラクリ巨人モードとなった天空神が、巨大サタラクラに挑む。
強烈な光線攻撃を浴びつつ天空神が突進。

シュリケン「うぅおおぉぉ──っっ!! 天空忍者シュリケンジャーの力、今こそ見せてやる!!」
サタラクラ「な、何ぃ!?」

全身から火花を吹き出しつつ、天空神がサタラクラを捕える。

鷹介たち「あっ!?」
サタラクラ「う、嘘、冗談~!?」
シュリケン「御前様の仇を…… この星を、未来を! 頼むぞ、ハリケンジャー!! 頼むぞ、ゴウライジャー!!」

天空神のコクピットに激しい火花が飛び散り、煙が吹き出し、ついに炎に包まれてゆく。
サタラクラもろとも、天空神が大爆発──!

サタラクラ「わああぁぁ──っっ!!」
鷹介たち「シュリケンジャアアァァ──ッッ!!」「シュリケンジャー……」

鷹介たちが、ガックリと膝をつく。


フラビージョ「あぁ~ サタラクラ死んじゃったぁ~」

サンダールが、センティピードに凱旋する。

ウェンディーヌ「ちょっとあんた!?」
サンダール「お待たせしました、タウ・ザント様」
タウ・ザント「おぉ── ついに、ついに時は来た! フフフ……フハハハハ!」


鷹介たちが、海岸に立つ。

鷹介たち「行こう! シュリケンジャーが、命と引き換えに遺してくれたんだ!」「戦う意味と……」「敵の要塞へのルートを!」
一甲「応えられるのは……」一鍬「我らしかいない!」
一同「忍風シノビチェンジ!」「迅雷シノビチェンジ!」「ハリケンホーク!」

ハリケンジャーとゴウライジャーに変身した一同が、ハリケンホークに乗り込み、空へ飛び立つ。

レッド「必ず、俺たちの手でジャカンジャを! 見ててくれ、シュリケンジャー!!」


つづく


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最終更新:2022年04月29日 00:20