宇宙の騎士テッカマンブレードIIの第1話


謎の異星人“ラダム”との
2度に渡る戦いを経て、
人類はついに、彼らのテクノロジー
“テックシステム”を自らのものとした。

即ち第一次ラダム戦役において
“素体”化された人をベースにして
人類の手によりテッカマンへと
再フォーマットする技術を
確立したのである。

おりしも度重なる敗北(?)に業を煮やした
“ラダム”はついに大艦隊を地球に派遣、
太陽系外周で連合宇宙軍と今
交戦状態に入った。

ラダムを制する者はテッカマンのみ。
ラダム撃退の為、再結成された
新生スペースナイツは、
今、新たなテッカマンの創造に
着手しようとしていた。

「時に……
連合地球暦203年……」




スペースナイツ本部。
主人公の少女ユミ・フランソワが、大荷物を抱えて地下通路を歩いている。

ユミ「あっれぇ~? また迷っちゃったのかなぁ? 変だなぁ、どこで間違っちゃったんだろう…… あれぇ、ここも行き止まり? もうイヤぁ!」

行き先をふさぐ壁にもたれ、床に座り込む。
その壁面が突然、左右に開く。

ユミ「きゃあっ!? 痛ったぁ……」

ユミが派手にひっくり返り、荷物が床に散らばる。
壁の向こうには部屋が広がっており、誰かが座っている。
サングラスに遮られて、素顔は見えない。

ユミ「す……すいません! ちょっと、道に迷っちゃって…… こんなとこに部屋があるなんて知らなくて、そ、それで…… それで……」

ユミが慌てて、床に転がった荷物を拾う。
男性が無言のまま、それを手伝う。

ユミ「ありがと…… ごめんなさい!」

ユミは頭を下げて、立ち去る。

ユミ「ふぅ、びっくりしたぁ…… でも、一体あの人……?」


ユミが去った後、男性が壁面の機器を操作する。
スクリーンにユミの写真が表示されている……



EPISODE-1

VIRGIN-FLUSH




太陽系の外惑星、天王星宙域。
連合防衛軍の宇宙艦隊と、ラダム獣との戦いが繰り広げられている。

「オペラ・ランドマーク師団、消滅しました!」「F-13ブロック、外壁破られました! 隔壁を閉じます!」
「ファング、前に出るな! 巻き添えを食うぞ!」

「やはり、無理なんでしょうか…… 彼らがいなければ」
「馬鹿者! 戦艦乗りたる者が民間人に頼ってどうするか! 心配するな、参謀長。もうすぐ力強い味方が来る。我が軍最強の奴らが」
「では、あのヴェーキング隊が?」
「うむ、フォボスを出撃した。至急、全艦に通達せよ」
「はっ! (軍最強のソルテッカマン部隊、ヴェーキング隊…… 彼等が来たところで、この戦況では焼け石に水…… 我々にできるのは、このウラヌス宙域に奴らを足止めするくらいか。やはり、ラダムには彼らでなければ対抗できぬのか…… テッカマンでなければ!)」


地球、スペースナイツ本部。
宙を舞う新生ブルーアース号と共に、地球製テッカマン候補生2人の演習が行われている。

ユミ「わぁ…… 素敵!」

やがてブルーアース号が基地に帰還する。

本田「よぉし、始めろ!」

前作に引き続きチーフメカマンを務める本田の合図で、ユミたちメカマン一同が整備に走る。
ブルーアース号α号パイロット、ゴリアテ・バージナルが、ユミを呼び止める。

ゴリアテ「ちょっと、話があるんだが」
ユミ「は、はぁ……?」

テッカマン候補生の1人、ナターシャ・パブロチワ。

ナターシャ「あなた? α号の通信関係メカマンは」
ユミ「は、はい」
ナターシャ「どうしてあなたを呼んだのか、わかる?」
ユミ「さぁ……?」

ナターシャがユミに、機械を投げ渡す。

ナターシャ「何、これ?」
ユミ「何って、テッカマンとの通信用コミュニケーション・パッド…… あぁっ!」
ナターシャ「前の訓練で故障したから直しといて、って言ったわよね?」
ユミ「す、すいません!」
ナターシャ「すいません? それで済ませるつもり!? 私たちは、あなたたちメカマンに命を預けてるのよ! ちょっとしたミスが命を失うの、わかる!? あなたもメカマンなら、自分の仕事に責任を持って欲しいわ!」
ユミ「ご、ごめんなさい……」
ナターシャ「ごめん、ごめんって!」
本田「すまんな、俺の監督ミスだ。俺の方から言っとくから」

ユミの胸元から、素体テッカマンの証・クリスタルのペンダントが覗いている。

ナターシャ「!? あなたも素体だったの?」
ユミ「はい……」
ナターシャ「……行くわよ、ゴリアテ」

ナターシャがゴリアテと共に立ち去る。

ユミ「ごめんなさい、おやっさん……」
本田「そう思ったら次の仕事で取り返せ。分かったな? 大ボケユーミ」
ユミ「……はいっ!」

ユミが元気の良い返事と共に、整備に走る。

本田「やれやれ、あんなガキが部下だなんて、時代も変わったもんだ……」

もう1人のテッカマン候補生であるダービット・フリューゲルを、β号パイロットのアニタ・ブラニガンが迎える。
何人もの女性がダービットに群がり、黄色い声援をあげている。

本田「と思ったら、こっちはアイドル・テッカマンか」
女性たち「キャーッ!」「ダービット──!」「素敵ぃ!!」
アニタ「お疲れ、ダービット」
ダービット「チッチッ、疲れるのはこれからさ」」
女性たち「キャーッ!」「ダービットー!」

ダービットが、女性たちの1人の肩に手を回す。

ダービット「行こう!」
女性「はい……」
他の女性たち「あぁ──」「いいなぁ……」「ダービットぉ……」

ダービットが、残念がる女性たちを尻目に、女性を連れて立ち去ろうとする。

ダービット「あ、やべぇ!」

ダービットはその女性を突き飛ばし、慌てて敬礼を決める。
そこに現れたのは前作でのスペースナイツ隊員、現在はチーフに昇格した如月アキ。

本田「どうしたい、チーフ?」
アキ「ユミ・フランソワっていうのは、どの子かしら?」
本田「大ボケユーミかい。あいつなら、ほれ」
アキ「あの子が…… ユミ・フランソワ」


ユミは整備を終えた無人の格納庫で、物思いにふけつつ、おもむろにポーズを決める。

ユミ「テッカマンブレードぉっ!! なぁんて、ハハハ…… 私も、テッカマンになりたいなぁ……」

声「ユミちゃんなら、大歓迎だな。アハハ」
ユミ「え!?」

γ号パイロットのハヤト・カワカミが顔を出す。

ハヤト「ははは、冗談だよ」
ユミ「ハヤトさぁん!? もう、見てたなら声かけて下さいよぉ!」
ハヤト「はは、ごめん」
ユミ「……でも、まだ決まってないんですか? 3人目のテッカマン候補生」
ハヤト「うん。上の方に早くしてくれとは掛け合ってるんだけどね。『最重要機密につき返答はできん』だってさ。けどユミちゃん、そんなに好きなの? テッカマンのこと」
ユミ「うん! だって、私がスペースナイツに入ったわけの一つだもん」
ハヤト「一つ? じゃあ、ほかには?」
ユミ「それはヒ・ミ・ツ! 『最重要機密につき返答はできん』です! あははっ!」

そこにアキが現れる。

ユミたち「チ、チーフ!?」
アキ「ちょうど良かったわ。ハヤト・カワカミ、ユミ・フランソワとγ号に搭乗しなさい」
ユミたち「ラーサ!」
ハヤト「……ユミちゃんがぁ!?」
ユミ「私がぁ!?」


ハヤトの操縦するγ号が、素体テッカマンとなったユミを上に乗せ、空を行く。

ユミ「キャアァ──ッ!」

ユミが振り落とされそうになりつつ、必死に機上からジャンプする。

ユミ「やったぁ! ……あれ?」

ユミが風圧で後方へ飛ばされ、γ号にへばり付く。

ハヤト「わ、わ、わ!?」

γ号はその衝撃でバランスを失って、海へ。
γ号は墜落寸前で上昇するものの、ユミは海中に没する。

ハヤト「ユミちゃん!?」
アキ「γ号。ユミを回収、帰還せよ」
ハヤト「ラーサ」


ユミたちは、スペースナイツ基地の格納庫に帰還する。

ハヤト「けど、びっくりしたね。突然γ号に乗せられたりして」

ユミが更衣室でテックセットを解除しようとするものの、更衣室のドアが開かない。

ユミ「あれぇ? やだぁ…… これ開かなぁい」
ハヤト「電源、落としちゃったのかな?」
ユミ「えぇっ、そんなぁ!? あ、あの…… そのぉ…… ハ、ハヤトさん……」
ハヤト「は、はい?」
ユミ「もとの姿に戻るから…… あっち向いて……もらえる……?」
ハヤト「!? は、はい!」

ハヤトが慌てて後ろを向く。
ユミがテックセットを解除し、全裸姿となる。
ハヤトが後ろ向きのまま、服を投げ渡す。

ハヤト「み、見てないからね!」
ユミ「う…… うん」


天王星宙域。
宇宙艦隊とラダムの戦いが依然、続いている。

「爆発!」「第三砲塔、大破!」「動力部シールド、限界です!」
「これまでか……」
「艦長! ヴェーキング隊、到着しました!」「本当か!?」「攻撃に移ります!」「うむ」

地球艦の脇をすり抜け、別の艦艇が到着する。

「ラダム艦を沈めた者には柏葉剣付きバルザック章を授与する。全員、ソルテッカマンの名を汚すことなく戦え! 以上だ!」

ソルテッカマン部隊が次々に出撃する。

「撃てぇ──っ!!」


スペースナイツ本部の司令室。
アキのもとに、ナターシャやダービットたちが集結している。

アニタ「何ですか? 緊急集合って」
ハヤト「チーフ、まさかラダムが!?」
アキ「いいえ、その件ではありません。ナターシャ、ダービットに続く3人目のテッカマンが決定したからです」
ダービット「決まったんですか?」
ハヤト「やっと?」
ナターシャ「誰なんです?」
アキ「それは……」

扉が開き、ユミが顔を覗かせる。

ユミ「あのぉ……」
ハヤト「ユミちゃん! なんでこんなところに!?」
ユミ「えっ? だって……」
アキ「紹介します。彼女はユミ・フランソワ。3人目のテッカマンです」
一同「……!?」
ユミ「私が…… テッカマンに!?」
ナターシャ「チーフ! 彼女の選出理由を教えて下さい!」
アキ「私の独断です。不服でしたら、志願を取り下げてもらっても結構です」
ナターシャ「……!」
ダービット「ま、いいんじゃない? 華は1人でも多い方がいい」
ナターシャ「私も…… 異存ありません」
アキ「ラダムはすぐそこまで来ています。よって、早速レクチャーに入ります」

モニター画面に、3人の戦闘用テッカマンの姿が表示される。

アキ「これが、あなたたちのデータをもとにした変化後をシミュレートしたものです。そしてこの中の1人には、私たちが新たに開発したリアクター・ボルテッカを装着してもらいます」
ユミ「リアクター…… ボルテッカ?」
アキ「このボルテッカは、従来のそれにクリスタルフィールドの力を加えたものです。ボルテッカの発射と同時に、目標に向けクリスタルフィールドを形成します。これにより、命中時に発生する対消滅エネルギー、クリスタルフィールドを利用して、空間から新たな反物質を形成します」

モニター画面に表示されるリアクターボルテッカの仕組みに、一同の視線が注がれる。

アキ「それが新たなボルテッカとなって、次の目標を破壊するのです。即ち、クリスタルフィールドを形成することで、目標がある限り連鎖的に標的し続けるのです。これだけの兵器である以上、そのコントロールには強靭な精神が必要です。よって検討した結果、リアクター・ボルテッカの装着者は……ナターシャ、あなたにお願いします」
ナターシャ「ラーサ!」

ナターシャが、ダービットを見やる。

ナターシャ「悪いわね」
ダービット「フッ、いいさ。最強のテッカマンなんて、ガラじゃないからね」
ユミ「ナターシャさん、おめでとうございます!」

ユミが握手を求める。
ナターシャは苛立ちを押さえるように、きびすを返して立ち去る。

アキ「テッカマンのフォーマットは2時間後に開始します。メンバーは医療チェック後、テックプラントに集合、以上です」


テックプラント。
ユミたち3人が素体テッカマンとなり、テックシステムのポッドの前に立つ。
アキたちがコントロールルームで、それを見つめる。

本田「時代も変わったもんだ…… ラダムの連中の技術を、こっちが使う羽目になるなんて」
アキ「始めて」

ユミたちがポッドに入り、テッカマンのフォーマットが開始される。

アキ「彼らが完全なテッカマになるまでの10時間…… それまで、天王星のラダムがあのままならいいのだけど……」


天王星宙域。
ソルテッカマンの砲撃で、ラダムが次々に撃破されてゆく。

「よし、囲みが開いたぞ!」「全機、敵艦に攻撃を集中せよ!」「──なんだ、あれは!?」

敵陣から一際大柄なラダム獣が出現する。
ラダム獣の上部から、人型の上半身が生えており、その手には槍が携えられている。
その姿はまさしく──

「テッカマン!?」

それはまさしく、異星人のテッカマンであった。
異星人テッカマンの猛攻撃により、ソルテッカマンが、そして地球艦が次々に撃破される。

続けざまに異星人テッカマンの放ったミサイルが、空間を超えて太陽系内に次々に放たれる。
太陽系の惑星群、地球の衛星軌道上のオービタルリング、さらには地球上へミサイルが降り注ぐ。

その爆発の衝撃はスペースナイツ基地にまで及ぶ。
コントロールルームにハヤトたちが駆け込んで来る。

アキ「現状は!?」
スタッフたち「爆発の衝撃波でシステムに異常!」「このままでは3人が!」
ユミたち「うぅっ……!?」
ハヤト「ユミちゃん!?」
アニタ「ダービット!?」
ゴリアテ「ナターシャ!?」
アキ「緊急回線オープン! 3人の安全を確保して!」
スタッフたち「ラーサ!」
ハヤト「ユミちゃん! しっかりするんだ、ユミちゃん!」


ユミの脳裏に映る、いつかの光景。
幼いユミが、麦畑の中を走る。
夕陽に彩られた空を、一筋の白い光が駆ける。
その光の中に浮かび上がる、テッカマンブレードの姿。
ユミが、彼方へと飛び去ってゆくブレードを追いかけてゆく。

(ハヤト『ユミちゃん!』)
(アキ『ユミ!』)
(本田『ユミ!』)


医療室。
ユミの目が開かれ、視界に一同の姿が映る。

ユミ「わ…… 私……?」
ハヤト「良かったぁ……」
本田「心配させやがって」

ユミ同様にベッドに寝かされていたナターシャ、ダービットが目を覚ます。

ゴリアテ「大丈夫か、ナターシャ?」
アニタ「たまには1人寝もいいでしょ?」
ダービット「ハン……」
アキ「目覚めたようですね」
ユミ「チーフ!」
アキ「あなたたちのテッカマン化計画は、90パーセント成功しました。よって、あなたたちはすでにテッカマンとしての機能を持っています。ただ……」
ユミ「ただ?」
アキ「ラダムのミサイルの影響で、コンピューターに狂いが生じ、ナターシャ」
ナターシャ「はい?」
アキ「あなたに備わるはずだったリアクターボルテッカのデータがユミ、あなたに伝わったのです」
ユミ「わ、私にぃ!?」
ナターシャ「……!?」
アキ「回復したばかりで気の毒だけど、緊急事態です。ラダム機動艦隊は天王星部隊を撃破。一気に地球近くへとワープして来ました。よって、スペースナイツはただちにブルーアース号で出動、迎撃に向かいます」
一同「ラーサ!」


アキ「ブルーアース号、発進!」

スペースナイツ号が海中から飛び立ち、一気に宇宙空間を目指す。

アキ「今回は、あなたたちの最初の実戦です。訓練を生かした戦いを期待します」
一同「ラーサ!」
アキ「ただし、ユミは残りなさい」
ユミ「えぇ──っ!?」
アキ「あなたはまだ訓練不足です。2人の戦いをよく見ているように」
ユミ「ラーサ……」
アキ「攻撃開始!」
一同「ラーサ!」

ブルーアース号からアニタのα機、ゴリアテのβ機、ハヤトのγ機が分離する。
母体のマザー機には、アキとユミが残る。

アキ「γ機はα、βを支援して」
ハヤト「ラーサ!」
ダービット「テックセッタ──!
ナターシャ「テックセッタ──!

ダービットとナターシャが、戦闘用テッカマンに変身する。
α機から、ナターシャのテックセットしたテッカマンベスナーが現れる。
β機からは、ダービットのテックセットしたテッカマンゾマーが現れる。

ベスナー「テッカマンベスナー!
ゾマー「テッカマンゾマー!

ユミ「すってき~!」
アキ「2人の戦いをよく見ていなさい」
ベスナー「飛ぶよ!」
ゾマー「俺もだ!」
ゴリアテ「あいよっ!」
アニタ「いきなりかい!?」

ベスナーとゾマーが機体を蹴り、宙に飛ぶ。
無数のラダム獣たちが、テッカマンたちにより、次々に撃破される。

ユミ「ひゃあ~っ、あんなことできなぁい!」
アキ「そんなこと言ってられるのも、今だけよ」

ラダム獣が次々に退却してゆく。

ゾマー「引き上げか?」
ベスナー「気をつけて!」

ラダム艦から、異様な姿の異星人テッカマンが現れる。

ベスナー「何なの、あれ!?」
ゾマー「ラダム獣か!?」
ユミ「チーフ!?」
アキ「出てきたわね…… 異星人テッカマン」
ユミ「えっ!?」
アキ「ラダムに侵略され支配された、他の星のテッカマン!」
ユミ「異星人…… テッカマン!」

異星人テッカマンが、猛スピードで宙を舞う。

ゴリアテ「速ぇっ!?」
アニタ「スピードなら負けないよ!」

ベスナー「ダービット、ボルテッカを!」
ゾマー「当然っ!」
アキ「まだ早い!」
ユミ「え!?」
ベスナーたち「ボルテッカァ──ッ!!

ベスナーとゾマーが、最強攻撃のボルテッカを発射する。
異星人テッカマンを、激しい光が包み込む。

ゾマー「やったか!?」
ベスナー「えぇ!」
アキ「来るわ!」

閃光の中から、ボルテッカをかわした異星人テッカマンが飛び出す。

ベスナーたち「何!?」

ベスナーとゾマーの隙をつき、異星人テッカマンが2人を捕えて飛び去る。

ゴリアテ「ナターシャ!?」
アニタ「くそぉ!」

ブルーアース各機が異星人テッカマンを追撃する。
異星人テッカマンは攻撃をかわしつつ、ブルーアース号を目がけてボルテッカを放つ。

ユミ「ハヤトさん!? みんなぁ!」
ベスナー「うぅっ……!」
アニタ「射撃管制ユニット破損!」
ゴリアテ「β、追撃不能!」
ハヤト「γ、通信コンバータ破損!」

アキ (ここまでね…… こうなったら、私が……)

ユミ「駄目ぇぇ──っ!」

ユミがコクピットから飛び出す。

ユミ「私だって…… テッカマンだもん! みんなを助けるんだ! テックセッタ──!

ユミが変身し、テッカマンイーベルとなる。

イーベル「テッカマンイーベル!

イーベルがマザー機から飛び出すものの、すぐにバランスを失って宙を漂う。

イーベル「嫌ぁ~!」

イーベルがかろうじて、ハヤトのγ機上に辿り着く。

ハヤト「ユミちゃん!?」
アキ「γ、戻りなさい! イーベルはまだ……」

異星人テッカマンがイーベルに気づいて、ベスナーとゾマーを放り、イーベルへと矛先を向ける。

ハヤト「ユミちゃん、ランサー!」
イーベル「えぇっ? どうやって出すの?」
ハヤト「何ぃ!?」
ハヤト「うわぁ、敵の真正面だぁ!」
イーベル「きゃあっ!?」

目の前にラダム戦艦の編隊が迫る。

イーベル「どうすればいいのよぉ!? あんなデカイの、とっても…… そうだ、リアクターボルテッカ!」
アキ「まさか、あの子!?」

イーベル「リアクタ──・ボルテッカァ──ッ!!

イーベルのリアクターボルテッカが直撃し、異星人テッカマンが掻き消える。
さらにボルテッカが次々に連鎖し、ラダム戦艦が1機残らず消滅してゆく。

イーベル「やったぁ!」
ハヤト「ユミちゃん、もういいよ! 止めて」
イーベル「どうやって?」
ハヤト「何ぃ──!?」

ラダムを全滅させてなお、ボルテッカの光が際限なく膨らんでゆく。

ベスナー「大変!」
ゾマー「とにかく離脱だ!」

ベスナーたちがボルテッカを避けて飛び去る。
オービタルリングまでが、膨張し続けるボルテッカに飲み込まれ、砕けてゆく。

イーベル「や、やだぁ! なんでこうなっちゃうわけぇ!?」
ゾマー「早く止めろ!」
イーベル「どうやって!?」
ベスナー「精神コントロールよ!」
イーベル「そ、そんなこと言ったってぇ…… あぁん、わかんなぁい!」

アキが銃座で照準を定め、ビームを発射する。
ビームがイーベルの頭ギリギリをかすめる。

イーベル「……!?」

ボルテッカの光が、次第に消えてゆく。


地球。

ダービット「ユミが気絶すりゃ精神波もストップして、リアクターボルテッカも消滅ってわけか」
ハヤト「でも、もしあの弾が直撃していたら……?」
アニタ「そんなこと、考えなかったんじゃない? チーフは」
ゴリアテ「ま、いずれにせよ、ユミは最低でも……」

スペースナイツ司令室。

ユミ「謹慎~!?」
アキ「えぇ。命令違反、及び第2オービタルリングに与えた被害を考慮した上での決定です」
ユミ「そんなぁ!? そんな、私はただ、みんなを助けたいって、それだけで……」

ナターシャの平手打ちが、ユミの頬に飛ぶ。

ナターシャ「思い上がるのもいい加減にして! 誰があなたに助けなんか! あの力は私のものだった…… あんたみたいな能無しに、あの力を使うことなどできやしない!!」
ダービット「一理あるな、それも」
ユミ「ナターシャさん…… ダービットさん……」
ナターシャ「あなたに…… あなたにテッカマンである資格などないわ!!」


スペースナイツ基地の独房。
ユミが、薄暗い中で膝を抱え、すすり泣く。

(ナターシャ『あなたにテッカマンである資格などないわ』)


スペースナイツ地下、冒頭でユミが迷い込んだ部屋。ユ
ミの出会った男性のそばに、アキが寄り添う。

突如、男性が何かに気づいて宙を見上げる。
その額に、クリスタル型の光が浮かび上がる。


宇宙空間。
全滅したラダム艦隊の残骸が漂っている。
無数の残骸の向う、暗黒の宇宙の彼方から、巨大な艦隊の光が近づいてくる──


(続く)

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最終更新:2014年07月13日 06:51