破裏拳ポリマーの最終回
破裏拳ポリマーこと鎧 武士は、警視長官の鬼虎こと、実父・鬼河原虎五郎に連れ出されてしまった。
ポリマーとなるためのヘルメット、ポリメットは手元にない。
ポリメットの秘密を知るのは、車探偵長の飼い犬、男爵のみ。
男爵 (武の奴、とうとう鬼虎長官に見つかっちまって、無理やり連れてかれちゃった。これから一体、どうなんのかねぇ?)
武士と鬼虎長官を乗せた車が夜道を行くが、突然の急停車。
犯罪組織・海亀党の兵士たちと、そのスパイのコウモリ男が立ち塞がっている。
コウモリ「待っていたぞ、破裏拳ポリマー! 最後の決着をつけてやる!」
海亀党「おとなしく出て来い!」
武士たちが車を降りる。
鬼虎「自分たちのほうからノコノコ出て来るとは、いい度胸だな。海亀党のバカどもめ!」
コウモリ「強がりはやめろ、やめろ。破裏拳ポリマーの命も、今日限りだ」
鬼虎「ポリマー、ポリマーと、さっきから一体、何を言っとるんだ、お前たちゃ?」
武士「ポリマー? えっ、どこ?」
コウモリ「すっとぼけるのはやめろ! お前の正体は、この俺がちゃんと知っとるわい!」
鬼虎「ハッハッハ! いやぁ、このわしが破裏拳ポリマーに間違えられるなんて、光栄じゃのう! わしって、そんなにカッコいいかのぉ?」
コウモリ男が武士に詰め寄る。
コウモリ「破裏拳ポリマー、とぼけていないで正体を現せ」
鬼虎「た、武士がぁ!? バカなことを言うな! これはわしの倅の武士だ!」
コウモリ「こいつは面白い。親父も息子の秘密を知らなかったわけか。どうした? オヤジの目の前でポリマーに転身してみろ」
武士 (こいつら、本当に俺の正体を見破ったのかな? こいつは面倒なことになったぞ)
コウモリ「さぁ、どうした? 親父の前でポリマーになってみるがいいぞ」
武士「フン! どこにそんな証拠があるんだい? いい加減にしてくれよ」
コウモリ「とぼけんのもいい加減にしな! まぁいいさ。やれ!」
鬼虎「た、武士!?」
一方の車探偵事務所。
途方に暮れている車探偵長、テル、そして男爵。
車「出るのは溜め息ばかり……」
テル「武士がいなくなったら、なんだか寂しくなっちゃったわね」
車「鬼虎の計略にまんまとハメられた、この俺が馬鹿だったよ……」
テル「そうよ。家出するなんて、よっぽどの深いわけがあるはずだわ。それを探偵長ったら」
車「……だ、だって、鬼虎の奴が重要犯人だなんて言うもんだからして、つい」
テル「ねぇ、探偵長。連れて行かれるときの武士の顔、見た? すごく嫌がってた」
車「そりゃそうさ。武士はこの偉大なる名探偵、車 錠様の助手となって大いに腕を磨き、鬼虎の鼻を明かそうとしていたに違いないんだからな!」
テル「そうよ! 結果的には、探偵長が武士の夢を壊したのよ」
車「あぁ~、そうか! 将来を背負って立つという少年の偉大な夢を、俺は壊したのか!? 許せよ、武士……」
テル「それじゃ、すぐ武士を奪い返しに行きましょうよ! 探偵長、それが武士に対するせめてもの思いやりっていうものよ」
車「よし、行こう!」
鬼虎長官の部下のデレット刑事が現れる。
車「あら、どうしたんですか?」
デレット「長官と武士くんが、海亀党に連れ去られたんだ」
テル「何ですって!?」
車「だから武士は、ここに置いとけばよかったんだ! バーロー!」
デレット「引き渡したのは君だよ!?」
テル「早く海亀党から、2人を助け出さなくちゃ!」
デレット「あぁ、それが奴らの隠れ家どころか、手掛かりがまったくなくて、それで、ここに来れば何かつかめるんじゃないかと思ってね」
車「うぅむ、それは困ったな。いくら俺が名探偵でも、隠れ家がわからんとなると手が出せんわ」
男爵 (ポリメットを届けようにも、これじゃどうしようもないや。武士の奴、ひどい目に遭ってるだろうなぁ……)
海亀党のアジトでは、海亀党将軍とコウモリ男のもと、武士が水ぜめの拷問に遭っている。
鬼虎「武士! 大丈夫か、武士!? がんばれ! 負けるんじゃないぞ! 武士……」
将軍「苦しむがいい、破裏拳ポリマーよ。そろそろ正体を現してはどうだ?」
鬼虎「この、わからず屋のトンチキ野郎! わしの倅だと言っとるのがわからんのか!? 倅に触るな! 痛めるなら、このわしをやれ! 倅には何の罪もないんじゃ! 武士、今にポリマーが助けに来てくれるぞ!」
コウモリ「そいつは無理だ。ポリマーはここにいるんだからな!」
鬼虎「ふざけるな! 今までもピンチのときには、必ずポリマーが助けに来てくれたんじゃ! 今にほえ面かくなよ!」
コウモリ「そしたら仕返しに秘密兵器を使って、世界をあっと言わせてやるわい!」
鬼虎「わかったぞ! お前たち、アイアンショット博士から奪ったシラン元素を、そんなものに使おうとしていたのか!?」
将軍「今頃わかったか。地獄へ送る前に、秘密工場を拝ませてやるとするか」
海亀党を乗せた巨大メカが、武士たちを捕えたまま出発。
アジトが爆破される。
将軍「これで、わが海亀党の手掛かりはなくなった。ところでコウモリ、あいつは本当にポリマーなのか?」
コウモリ「はい、間違いありません。私がこの目で、確かに見たんですから」
将軍「しかし、あれだけ痛めつけられても、転身しそうなもんじゃが」
コウモリ「そこが破裏拳ポリマーの手です。油断すれば、こっちが危ないですぜ、将軍」
将軍「お前が見たときと今と、どこか違うところはないか?」
コウモリ「違うところ? ──あっ、そうだ! あのとき奴は確か、ヘルメットをかぶってましたぜ」
将軍「ヘルメット?」
コウモリ「はい、間違いありません。奴はあのとき、赤いヘルメットをかぶってました」
将軍「うぅむ、そのヘルメットに転身の秘密が隠されているのかもしれんな」
コウモリ「恐らく、あの探偵事務所に置きっぱなしかと思いますが」
将軍「行け、コウモリ! そのヘルメットを手に入れれば、破裏拳ポリマーかどうか、はっきりする」
コウモリ「はい、必ずや盗み出してご覧にいれます! お任せを!」
夜の車探偵事務所に、コウモリ男が忍び込む。
部屋では、車探偵長と男爵が眠っている。
テーブルの上にはポリメットが置きっぱなし。
コウモリ (あれだな。フフフ)
コウモリ男が、ポリメットをまんまと手に入れる。
車「俺は車だぁ~!」
コウモリ男が寝言で驚いた拍子に、ポリメットを床に落とし、その音で男爵が目を覚ます。
コウモリ「しまった!」
男爵「ウ──ッ、ワンワン!」
コウモリ「くそぉ! このワン公め、ジャマする気か!?」
ポリメットを拾って逃げようとするコウモリ男に、男爵が飛びかかり、その拍子にポリメットが男爵の頭にかぶさる。
男爵 (こいつめ! ポリメットを盗みに来たところを見ると、武士の行方を知ってるな?)
コウモリ「よこせぇ! 待て待てぇ!」
男爵は部屋を逃げ回りつつ、車探偵長の体を踏みつける。
男爵 (起きろ、起きろ! ボケ、マヌケ!)
車「ぎゃあっ、痛ぇっ! ──あれ、あんた誰? 何の用? むっ、もしかして海亀党の仲間だな!? どんなにグッスリ寝ていても、針の音だけで目を覚ます名探偵・車 錠様の事務所に忍び込むとは、いい度胸だ!」
そこへ、テルも顔を出す。
テル「何を騒いでるの、探偵長? ……あら?」
コウモリ「くそぉ、出直してくるぜ!」
車「逃がすもんか! テル、逃がすな! 待てぇ!」
夜道を逃走するコウモリ男を、車探偵長たちが追う。
車「待てぇ! 俺に睨まれて逃げられた者は、1人もいないんだ! あきらめろぉ~っ!」
突如、コウモリ男が立ち止まる。
車「やい! 逃げようったって、もうダメだ。神妙にしろい!」
コウモリ「それはこっちの言うセリフだ。そのワン公のかぶってるヘルメットを渡せぃ!」
車「黙れ! さぁ、武士と長官の居所を喋ってもらおうか!」
地面を突き破り、海亀党の巨大メカが出現する。
車「出たぁ~っ!?」
さらに、海亀党の兵士たちが無数に降り立つ。
車「出たぁ! 逃げろぉ~!」
逃げ出そうとした車探偵長、そこにはデレット刑事と警官たち。
車「あっ、デレットさん、こんばんは」
デレット「海亀党め! やはり現れたな! 今日こそ、長官たちのところへ案内してもらうぞ!」
コウモリ「えぇい、ワン公のかぶってるヘルメットを奪えぃ!」
警官たちと海亀党の銃撃戦が始まる。
コウモリ男は男爵を追い、テルに突っかかる。
テル「きゃあっ!」
コウモリ「さぁ、ヘルメットをよこせ!」
テル「あっち行って! そんな顔、見たくないわ! 気持ち悪~い!」
海亀党「あっちだ! ヘルメットを奪え!」
男爵 (武士、待ってろよ)
警官たちの銃撃の嵐で、海亀党は身動きが取れない。
その隙に、男爵は海亀党たちから隠れつつ、彼らの巨大メカに忍び込む。
コウモリ「畜生! あのワン公め、逃げやがったな? 退けぇ!」
海亀党たちが巨大メカに乗り込む。
車「あっ、逃げるぞ! 卑怯者ぉ!」
すかさずテルがメカ目がけ、電波発信機を投げつける。
巨大メカが飛び立ち、夜空に消える。
車「う~む、残念、取り逃がしたか」
テル「大丈夫。行先は探知機が知らせてくれるわ」
車「偉いっ! さすがは俺の助手だ!」
テル「でも、海亀党がなぜ武士のヘルメットを狙ってきたのかしら?」
車「うぅむ、こいつはおかしいな。そういえばヘルメットは、確か男爵が…… あれっ? そういえば男爵の姿が見えないな?」
テル「どこ行ったのかしら?」
車「おぉ~い、男爵ぅ~!」
テル「まさか…… あの中じゃ!?」
巨大メカが、海亀党の兵器工場に到着する。
通路では武士と鬼虎長官が、海亀党たちに連行されている。
男爵 (武士、待ってろよ)
巨大メカから降りた男爵が武士を追おうとするが、目の前で扉が閉じてしまう。
将軍「この大馬鹿者め! それでは、あの小僧が本当に破裏拳ポリマーかどうか、わからんではないか!?」
コウモリ「申し訳ありません、将軍…… でも、あれだけ必死にヘルメットを守り通した奴らです。あのヘルメットが破裏拳ポリマーになる、その秘密を持ってることに間違いありません。どうです? 面倒だからいっそ、一思いに……」
将軍「うぅむ、怪しい奴は消すに限るな。よし、今夜中に2人を始末しろ!」
コウモリ「はい、お任せを」
武士と鬼虎長官は、牢屋に閉じ込められる。
鬼虎「お前にやっと逢うことができたと思ったら、この始末じゃ。残念だ……」
武士「それより、シラン元素を使った恐ろしい兵器を、この工場で造ってるんだ。なんとかしなきゃ」
鬼虎「わしたちがここにいることは、誰も知らんのだ。助かりっこない」
武士 (歳とったなぁ…… 昔の親父は、もっと迫力があったけどなぁ)
鬼虎「なぁ、武士。さっき海亀党の奴ら、変なことを言っとったな?」
武士「変なことって?」
鬼虎「ほ、ほら、つまりお前が、その何ちゅうか、『破裏拳ポリマーだ』とか何とか……」
武士「あぁ、そんなこと言ってたね」
鬼虎「それで? お前はその、まさか……?」
武士「あぁ、そう言えばポリマー、助けに来てくれないなぁ~?」
車探偵長たちとデレットたちは、テルの探知機の電波を追い、ヘリコプターで武士たちの居場所を捜す。
テル「間違いないわ。この火山の中から発信してる」
ヘリコプターが火山火口へと降下し、工場に到着する。
格納庫に、海亀党の巨大メカがある。
車「いたぞ! やっぱりここだ。こっちだ!」
2人の見張りに守られている牢屋。
車「うぅむ、あそこが怪しいぞ。テル。香水を持ってるか?」
テル「あるわよ。どうするの?」
車「いいから貸してみろ」
テルの香水を、車探偵長が愛用の拳銃型水鉄砲に入れる。
テル「何すんの!? 高いのよ、その香水。水鉄砲の中に入れるなんて、もったいないでしょ!?」
車「みみっちいこと言うな! 金持ちの娘にしてからに。見てろ。行くぞ!」
牢屋の前に飛び出した車探偵長が、水鉄砲で見張りたちの顔を一撃。
香水で目が染みて苦しむ見張りたちを、当て身で気絶させる。
車「これで良し」
武士「探偵長!」
鬼虎「よくここがわかったな!? ヘボマヌケにしちゃ、上出来だ!」
デレット「長官!」
鬼虎「おぉ、君も来てくれたのか? よくやった!」
車「一つだけ断っておきますが、この場所を突き止めたのは、あくまでもこの車 錠様ですぞ。感謝してもらいたいですなぁ、長官」
鬼虎「おぉ、そりゃどうもありがとう。海亀党の奴らが嗅ぎつけて来んうちに、早くここから出してくれたら、もっと感謝するんだがね、車くん!」
見張りから奪った鍵で、牢屋が解き放たれる。
車「さっ、どうぞ!」
デレット「さぁ、早く、長官! ヘリコプターはあっちです。早く逃げましょう」
武士「父さん! その前に、秘密兵器を解体して行かなきゃ!」
車「で、でも武士、今はひとまず逃げてさぁ、応援を頼んで来たほうがいいんじゃないの? 早く逃げようよ」
武士「その前にもし奴らが兵器を使ったら、一巻の終わりですよ。探偵長?」
車「うぅ~、しかしなぁ、武士」
鬼虎「武士の言うとおりだ! 車くん、何なら君1人で逃げたまえ。わしゃ、倅と行動をともにする!」
車「……わかりましたよ。ちぇっ、親子で俺に逆らうんだから、もう。かなわねぇよな」
武士「行こう!」
一方で男爵は、扉を開こうと奮闘している。
男爵 (武士、待ってろよ。しかし、ここから出られなきゃ、わしゃ捕まったのも同じ…… よし、こうなったらほかに出口を捜してやる)
周囲のあちこちを捜す男爵。
とある部屋にたくさんの木箱がある。
男爵 (何じゃ、この箱は? ──おぉっ、ダイナマイト!?)
武士たちは、兵器の製造場所を突き止める。
巨大ミサイルが無数に乱立している。
一同「うわぁ~っ!?」
武士「これはすごい…… こんなものが世界にバラ撒かれたら、この世は終わりだ!」
鬼虎「こんなに多くちゃ、我々の手に負えんな。よし。解体班に連絡して、応援をよこしてもらいたまえ」
声「フフフフフ…… フハハハハハ!」
武士たちを取り囲む、無数の海亀党の兵士たち。
武士「し、しまった!?」
将軍「苦労して造った秘密兵器を、そう簡単に破壊されてたまるものか。その前に、お前たちの体を粉々に爆破してやるわい。奴らを処刑場へ連れて行けぃ!」
武士たちは処刑場へ連行され、はりつけにされてしまう。
将軍「スイッチ・オン!」
レーザー光線が発射され、光線の軌跡が次第に一同へ近づいてゆく。
将軍「レーザー光線で足を、手を、そして胴体を! 近づく死の恐怖を、たっぷり味わうがいい!」
車「ぎゃあぁ~っ! 死にたくなぁい! 助けてくれぇ~っ! ポリマー、どうしたんだよぉ!? 助けに来てくれぇ~っ!」
鬼虎「た、武士!?」
武士「……」
一方で男爵は、電線を咥えて来て、端をダイナマイトに接触させる。
男爵 (準備完了。武士、待ってろよ)
もう片方の電線の端を咥え、コンセントに差し込む。
電気の火花がでダイナマイトが引火し、大爆発する。
将軍「な、何事だ!?」
爆風で、男爵が処刑場にまでふっ飛ばされてくる。
武士「あっ、男爵!?」
男爵 (武士!)
コウモリ「ヘルメットだ! ヘルメットを小僧に渡すな! えらいことになるぞぉ!」
男爵 (武士ぃ~っ!)
海亀党が男爵を追う。
男爵が渾身の力でポリメットを放り投げ、武士の頭にポリメットがかぶさる。
コウモリ「早くヘルメットを奪うんだ!」
鬼虎「た、武士!? お前、まさか!?」
レーザーは、車探偵長たちの体のすぐそばにまで近づいている。
テル「きゃあぁ~っ! 熱ぅい!」
車「たた、助けてくれぇ~っ!」
武士「最後まで正体は隠しておきたかったが…… 仕方ない!」
コウモリ「しまった!」
武士「転身! ポリマ──っっ!!」
声紋に反応し、ポリマー粒子がスーツとなって武士の体を覆ってゆく。
鬼虎「ああっ!?」
車「なななな、何と!?」
テル「た、武士がぁ!?」
破裏拳ポリマーとなった武士が、縛めを引きちぎり、海亀党に立ち向かう。
ポリマー「破ぁぁ裏ぃ拳──っっ!! うぅりゃあぁ──っ!!」
襲い来る海亀党に、ポリマーのパンチ、キックが炸裂。
ポリマー「破ぁ裏ぃ拳──っ!!」
将軍「撃てぇぇ!」
ポリマー「いやぁ──っっ!! 幻影ぇぇ──っ! 破裏拳──っっ!! おぉりゃあぁぁ──っっ!!」
銃劇の嵐をものともせず、ポリマーの大活躍が続く。
これまでの鬱憤を晴らすかのような大暴れで、次々に海亀党が蹴散らされてゆく。
将軍「えぇい、何をしておる!? 一度に攻撃をかけろぉ!」
ポリマー「ポリマーローラ──っっ!!」
ポリマーローラーの突進で、海亀党が一掃される。
ポリマー「おぉぉりゃああぁぁ──っっ!! でぇやあぁ──っっ!!」
最後にコウモリ男と将軍が壁面に叩きつけられ、とどめのキックの嵐が炸裂する。
こうして海亀党は最期を遂げ、車探偵長たちも解放された。
車「やったぁ~っ! お前がポリマーだったなんて、さすがの名探偵の俺も知らなかったよ! これで俺も有名になるぞ。何しろ、俺の助手がポリマーだったんだもんなぁ! ……でも俺の商売も、もう終わりだ。お前は鬼虎長官のところへ帰っちまうんだもんなぁ」
テル「武士がポリマーだったなんて……」
鬼虎「武士……」
ポリマー「父さん。俺、今まで隠していて、ごめんよ。これには、色々と……」
鬼虎「なぁに、いいさ。わしもお前にはずいぶん、助けてもらったからな。さて、話は後にして引き揚げるとするか。ポリマーくん」
ポリマー「えぇ。そうしますか、長官」
一同「アッハハハハハ!」
男爵 (やれやれ。やっと武士がポリマーだとわかってくれたか。もう、イライラしなくて済むわい)
数日後の車探偵事務所。
車探偵長が、旅支度をまとめている。
車「テル、色々と世話んなったなぁ…… ありがとよ。3年分の家賃、そのうちきっと払うかんな。じゃ、元気でな……」
テル「家賃なんか、いいわよ。餞別代りにあげるわ。それより…… 田舎へ帰って、どうする気?」
車「昔面倒を見た、田吾作でも訪ねるわ。じゃあな」
そこへ、武士が飛び込んで来る。
武士「ただいまぁ! あ、あれ? どうしたの、探偵長? その恰好は?」
車「それより武士! お前、今、何ってった? 確か『ただいま』って……?」
武士「えぇ。ここで助手をやること、許してくれたんだ。親父が。また、よろしくお願いしまぁ~す!」
車「ほ、本当か、おい!? バンザ──イ! こっちこっち!」
武士「探偵長!?」
車探偵長が、武士を探偵長である自分の座席に座らせる。
車「こっちだよ! 今日からお前が、いや、ポリマーくんが探偵長で、俺が助手になるよ。お茶でも入れましょうか、探偵長?」
武士「嫌だなぁ~。俺、気持ち悪いよ。今までどおりでいいよ」
テル「はい、お茶をどうぞ、探偵長」
武士「え……?」
テル「武士、大好きぃ!」
武士「い~っ!?」
男爵 (見ちゃおれんよ……)
車「我が探偵事務所も、これからは大繁盛するぞ! 年商10億! 盗聴機の調子も調整しておかなくっちゃあな。あぁ、忙しい忙しい!」
テル「武士ぃ~、部屋代なんかタダでいいから、ずっといてね。約束よ!」
武士「モテるのは嬉しいけど、これじゃ先が思いやられるよ…… あ~ぁ」
男爵 (やっぱり正体は隠してたほうが、働きやすかったかもね……)
最終更新:2014年07月14日 02:39