未来ロボ ダルタニアスの最終回


地球から銀河の解放を目指して飛び立った
アダルスとダルタニアスは
ついにドルメンの本拠地ザール星の攻略に成功し
そして、自らダルタニアスを迎え撃った
ドルメンもまたダルタニアスの前に敗れ去り、
その正体をさらけ出すこととなった。

だが、なんと、長い間
剣人(けんと)たちを苦しめてきたドルメンの正体は
今は亡きエリオス帝国皇帝パルミオンに
生き写しであった──




ドルメンの悲劇



剣人「ば、馬鹿な…… 信じられねぇ。ドルメンが、ド、ドルメンが……」
隼人「ドルメンが、我が父パルミオン皇帝だというのか!?」
アール「まさか、まさかぁ!? パルミオン皇帝陛下はザールに攻められた折、確かにお亡くなりになったはず!?」

雲間から太陽が覗き、日の光を浴びたドルメンは苦しみ、醜い姿に変貌してゆく。

ドルメン「うわ、うわぁぁ…… ぐぅぅ……っ ああぁぁ……っ!」
剣人「ク、クローンだ! ドルメンはパルミオン皇帝じゃねぇ、皇帝のクローンだぁ!」
隼人「クローン!? ドルメンはクローンだったのか!」
アール「信じられぬ。パルミオン皇帝陛下にクローンがいたとは……」
ドルメン「フフフ…… 驚くにはおよばん。これがエリオスの真の姿だ! お前たちが命を賭けて再興しようとしているエリオス帝国の、忌わしい歴史をとっくりと教えてやろう」

ダルタニアスのいる要塞上から光線が放たれ、ダルタニアスは縛り上られ、動きを封じられてしまう。
さらに要塞の一部が分離・変形し、ダルタニアスを上回る超巨大ベムボーグ(巨大兵器)となり、ドルメンが搭乗する。

剣人「野郎、まだ戦うつもりか!?」
ドルメン「楯剣人よ、今こそ思い知るがいい。エリオスの栄光の裏に秘められた、我々クローンの無惨な歴史を!」

ベムボーグが、身動きできないダルタニアスに剣を叩きつける。

剣人「ぐわっ!」
隼人「剣人!?」
ドルメン「どうだ、楯剣人!? さぞや苦しかろう? だが、それで良いのだ。苦しんで苦しんで苦しみ抜け! そして我々クローンの怒りを思い知れぃ!」
剣人「ぐはっ! がはぁっ!」
ドルメン「食らえ、ダルタニアス! 何がエリオス帝国だ、何が宇宙の平和だ!」

ダルタニアスが深手を負って、がっくりと膝を突く。

ドルメン「フフフ、まだ早いぞ、楯剣人。これぐらいではまだまだ足りぬわ! エリオス帝国繁栄の名のもとに、常に時の皇帝の身代りとなり、闇から闇へ葬り去られたクローンの苦しみには、まだまだ遠くおよばぬ!」
アール「やめろ、やめぬか! 剣人様は何も預かり知らぬこと!」
ドルメン「黙れぇ! 知っておろうが、おるまいが、楯剣人がエリオス王家の血をひくことに変わりはない! 今や忌わしい事実を明かしてやる! あの憎むべきエリオス王家……」

エリオス王家の闇の歴史を、ドルメンが語り始める。

誰が思いついたかは知らん。
だがエリオス王家では、
王位継承者が生まれるたびに、
その細胞から影武者として
クローンが作られていた。

エリオス皇帝の血筋を絶やさず、
その王座を守るためだ。

そして成長すれば、ケダモノのように
飼い殺しの生活を強いられたのだ。
万一、王位継承者が負傷でもすれば、
クローンは情け容赦なく
その身を切り刻まれる。

そして皇帝が死ねば、王座を守るため、
廷臣たちに操られなければならない。
だがそれも次期皇帝が決まるまでのこと。
皇帝が代われば、
前皇帝のクローンなど無用の長物──

ドルメン「わかったか、ハーリン。これが帝国繁栄のカラクリだ!」
隼人「あぁっ……!」
ドルメン「食らえ、ダルタニアス! 貴様、わしの痛みを知れぇ!」
剣人「がああぁぁ──っ!!」
一同「お兄ちゃん!」「兄貴ぃ!」「剣人!」「剣人様ぁ!」

ダルタニアスが、攻撃を受け続ける。
さらに要塞が上空へと浮かび上がり始め、その先は太陽である。

アール「(まなぶ)、脱出方法は!? ダルタニアスが脱出する方法はないのか!?」
学「は、博士! これ以上追うのは危険です! 太陽の引力に引き込まれて、アダルスまで脱出不可能になります」
アール「何じゃとぉ!?」
ドルメン「思い知ったか、ダルタニアス! あとは地獄の業火が焼き尽くしてくれる! さらばだ、楯剣人!」

ベムボーグが、要塞から飛び立つ。

隼人「け、剣人!?」
アール「学、まだか!? まだコンピューターから回答は出ないのか!?」
学「うーん…… あぁっ!」
アール「どうした!? 答は出たのか!?」
学「出たには出たのですが…… 見てください、博士」
アール「おぉっ…… ま、またもか!?」

激しい太陽熱で、ダルタニアスの足元から蒸気が吹き上がる。
要塞が次第に溶け、燃え上がる。

アール「剣人様、剣人様! 聞こえますか、剣人様? 剣人様、しっかりしてください!」
剣人「うぅっ……、はっ、じ、爺さん!?」
アール「気がつかれましたか、剣人様。よぉくお聞きください。そこから脱出する方法は、ただ一つ! いいですか? 超空間エネルギーです。最後に残された超空間エネルギーで、太陽エネルギーを吸収するのです!」
剣人「た、太陽エネルギーを……?」
アール「そうです! それを利用して脱出するのです! 危険なことはわかっております。しかし、もはやこの方法しかないのです!」
剣人「……わかった。太陽に向けて、超空間エネルギー発生装置を働かせればいいんだな!?」
アール「はい…… 心よりご無事をお祈り申し上げます!」
熊寅「おぉっと、いけねぇ! 敵だぁ! 見ろ、敵の奴がこっちへ向かってくるぜぇ!」

ベムボーグが、アダルス宇宙船目がけて突撃して来る。

ドルメン「ダルタニアスの次はハーリン、お前だ! ともに地獄へ行けぃ! フハハハハ!」
次郎「兄貴ぃ……」
アール「剣人様ぁ!」

ドルメンの攻撃が、アダルス宇宙船を襲う。
要塞が次第に、太陽へ近づいて行く。
太陽熱で要塞の一部が砕け、ダルタニアスの縛めの一部がほどける。

剣人「しめた! 超電磁イレーサー!」「超空間エネルギー、解放!

ダルタニアスが縛めをすべて解き、さらに最期の切札・超空間エネルギーを発動させる。
太陽エネルギーが吸収されてゆき、膨大な光があふれる。

ドルメン「何だ、あれは!? 何が起こったのだ!?」

ダルタニアスさえ破壊しかねないエネルギーの衝撃に、剣人と弾児(だんじ)は歯を食いしばって耐える。
すさまじいエネルギーにより、要塞がついに大爆発する。

学「は、博士!?」

巻き起こる爆風の中から、光球が飛び出す。

隼人「おぉっ……!」

光球が燃え盛るライオンの姿となり、その中から、炎に包まれたダルタニアスが現れる。

ドルメン「こ、これは……!?」
一同「剣人さぁん!!」「お兄ちゃん!」「兄貴ぃ!」「剣人様!」
隼人「剣人!」
ドルメン「ダ、ダルタニアス…… ダルタニアス!?」
剣人「ドルメン、見ろ! ダルタニアスは地獄の業火から舞い戻った! お前のために、どれだけの人々が苦しんだことか! 今こそたっぷりと思い知らせてやるぜぇ!」
ドルメン「おのれぇ、ダルタニアス!」
剣人「火炎──剣──!!
ドルメン「小癪なぁ! 今一度、地獄の底へ叩き落してやる!」
剣人「ドルメン、覚悟! 火炎──剣──!!

ダルタニアスの振るう火炎剣が、ベムボーグに炸裂する。

ドルメン「ぐわぁっ! おのれ、ダルタニアス!」

ダルタニアスは、ドルメンの反撃をかわし、二度、三度と火炎剣を見舞う。

ドルメン「おのれ、小賢しきダルタニアス! お前ごときに……」
剣人「とどめだぁぁっ!」

渾身の火炎剣が、ベムボーグを貫く。

次郎「やった……」
アール「おぉっ……!」
ドルメン「うぅっ、小癪なぁ…… 勝ったからとて、このわしを討ち取ったからとて、それですべてが終わったとは思うな!」
剣人「な、何だとぉ!?」
ドルメン「この世界にクローンがいる限り、いや、クローンを必要とする世界が存在する限り、我々の憎しみと悲しみが消え去ることはない! いつかまた、反逆の炎が燃え上がるときが来る!」

火炎剣に斬り刻まれたベムボーグが、炎に包まれる。

ドルメン「フハハハハハハハ!!」

剣人たちをあざ笑うかのような高笑いを残し、ベムボーグが空の彼方へと飛んでいく。

そして、大爆発──

剣人「クロッペン…… 見えるか? ドルメンの最期だ…… お前と同じクローンだったんだ、ドルメンは…… 弾児! おい、聞こえるか? 弾児!」
弾児「剣人、聞こえてるぜ」
剣人「戦いは終わった。俺たちは勝ったんだ!」
弾児「あぁ…… 後味の悪い勝利だぜ」

隼人 (ドルメン、人の世を呪った弱き者よ…… クローンとして生まれなければ、このような最期は遂げずに済んだものを……)


ダルタニアスは、最後の決戦に勝利を収めた。
アダルスの一同が、剣人たちのもとへ駆けて来る。

おちゃめ「剣人兄ちゃぁ──ん!!」
剣人「おぉ──い!」
おちゃめ「剣人兄ちゃぁん!!」
剣人「おぉい、みんなぁ──!」
一同「兄貴ぃ──!」「剣人さぁ──ん!」「剣人! おぉい、剣人ぉ!」
熊寅「やったな、剣人! 大したもんだぜ、えぇ、おめぇって奴はよぉ!」
剣人「これでやっと、一息つけるぜ!」
アール「剣人様、剣人様ぁ!」
剣人「やぁ、爺さん」
アール「剣人様…… 長い間の苦労が今、報われました!」
早苗「剣人くん……」
アール「さぁ剣人様、隼人様がお待ちかねです」


アダルス宇宙船内。
医務室のベッドの上の隼人のもとへ、剣人たちがやって来る。

剣人「親父……」
隼人「剣人……」
剣人「俺たちの役目は終わったぜ。これからは、親父の出番だな」
隼人「うむ。お前たちには長い間、本当に苦労をかけてきた。だが、真の戦いはこれからだと思っている。荒廃した各惑星を復興し、銀河共和国連邦を建設するためのな」
アール「な、何ですとぉ!?」
隼人「銀河はもはや、1人の皇帝によって支配される時代ではない」
アール「し…… しかし、隼人様。長い間の苦労が実り、勝利を収めた今となって、そのような……」
隼人「アール博士、あなたには大変すまないと思っている。しかし私は、エリオス帝国を再興するのが目的でここまでやって来たのではないのだ」
アール「し、しかし…… しかしそれでは、お、お約束が……」
隼人「この世界は、1人の人間が所有するべきものではない。そこに住む人々すべてのものだ。人が人を支配することのない、上下の差も、身分の差別もない、平等な社会を作ること。それが私の理想だ」
剣人「ヤッホー! やったぜ、親父! そうこなくっちゃなぁ!」
アール「し、しかし…… そ、そんな……」
隼人「みんな、よく聞いてくれ。本当に苦しいのはこれからかもしれん。共和国の建設は、武力でも権力でもない──」


全快した隼人が、エリオス王子ハーリンとして、国民たちに向かって演説をする。

隼人「──すべての人々の協力、そして、目的に向かって進む勇気と情熱こそが、今は一番必要なのである! 私はここに、銀河共和国連邦の発足を宣言する!」

演説を聴く大勢の人々から、割れんばかりの歓声が贈られる。
アール博士が、残念そうな顔で隼人を見上げている。
剣人がポンと、肩を叩く。

剣人「爺さん、元気出せよ。ちょっとばっかり方向が変わっただけじゃねぇか。今までの爺さんの苦労が無駄になったわけじゃねぇんだからさ! な?」

明るく振舞う剣人に、アール博士も笑顔が戻る。

アール「銀河の平和に繋がるのでしたら、このアール、もはや何も言うことはありません」


そして、剣人たちの旅立ちのときが来る。

剣人「じゃあな、親父。あとは任せたぜ」
アール「やはり…… 地球へお戻りになるのですか?」
剣人「あぁ。あんなちっぽけな星でも、俺たちにとっては故郷だからな」
隼人「剣人、地球も荒れ果てているぞ」
剣人「心配するなって。今までだって、みんな自分たちの力でやってきたんだぜ。それに、俺たちには何たってダルタニアスがついてるんだ」
おちゃめ「あたしだってついてますよ!」
熊寅「あ、あっしもついてやすからね、へい!」
剣人「へ? じょ、冗談じゃねぇな! ガキじゃあるまいし! さぁってと、いつまでいたってキリがねぇ。そろそろ行こうか!」

剣人がおちゃめを肩車してアダルス宇宙船へ駆け込み、一同が続く。

おちゃめ「うわぁ~い!」
一同「あ、俺も!」「俺も!」「待ってよぉ!」
アール「やれやれ、なんだか心配になってきましたなぁ……」

アダルス宇宙船が空へ飛び立つ。
隼人とアール博士は、いつまでもそれを見送り続ける。


地球を目指すアダルス宇宙船の中では、剣人たち一同が星の海を見つめ、思いを馳せる。

剣人「さぁってと! いつまでも、しんみりしちゃいられねぇぜ! いいな、1日も早く地球を元通りの静かで平和な星にするんだ! 俺たちみんなの力でなぁ!」
一同「おぉ──っ!」

剣人「おちゃめ!」
おちゃめ「はい!」
剣人「次郎!」
次郎「おぅ!」
剣人「田之助!」
田之助「ほいな!」
剣人「学!」
学「はいっ!」
剣人「早苗!」
早苗「えぇ!」
剣人「弾児!」
弾児「まかしとけ!」
剣人「おっさん!」
熊寅「ほいきた!」

剣人「よぉし、みんなぁ! 明日へ向かって、出発だぁ──っ!!」
一同「おぉぉ──っっ!!」


おわり

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最終更新:2023年10月16日 11:48