科学忍者隊ガッチャマンIIの最終回


総 裁 Ⅹ の 滅 亡




宇宙の悪魔・総裁Xのソーラーシフト計画は今、
地球のみならず火星・金星と、
太陽系規模で展開されようとしていた。
科学忍者隊の決死の活躍にもかかわらず、
各地に異常現象が発生し、
地球滅亡のときが刻一刻と迫っていた。

そして、総裁Xに母の命を奪われたゲルサドラは、
裏切者としてギャラクターに追われ、
とある島へ不時着していた。

同じころ、ドクター・ラッフェルを失った
コンドルのジョーは、補充するエネルギーもなく
生と死の間をさまよっていた。



ジョー (俺はギャラクターを滅ぼさないうちは死ねない…… 俺はXを倒す。俺しかXを倒せる者はいない。この体が総裁Xに迫るとき、すべては終わる…… だが、今は一時的にでもエネルギーを補わなければ……)

サイボーグであるジョーはエネルギーが尽きかけ、歩くこともおぼつかない。
ようやく発電所を見つけ、その中で電線を引きちぎり、自分の身体に押し当てる。

ジョー「うぉぉっ! うぅぅっ!」


その頃、ギャラクターに追われて
不時着したゲルサドラは──

ゲルサドラの乗って来た脱出機は墜落で壊れており、もはや飛ぶことはできない。

ゲルサドラ「えぇい、忌々しいポンコツめ」

懐から血が滴る。岩盤に人影が映る。

ゲルサドラ「も、もしや」
声「ハハハハハ! ゲルサドラ、とうとう見つけたぞ!」

大鷲の健が現れる。

ゲルサドラ「ガッチャマン!?」
健「ゲルサドラ!」
ゲルサドラ「ま、待ってくれ、ガッチャマン。私の話を聞け。パンドラは、私の母だった。己の愚かさが自分の母を殺したのも同じだ。私はその償いをしたい」
健「ならば言え。総裁Xの本拠地はどこだ?」
ゲルサドラ「総裁Xの本拠地?」
健「そうだ」
ゲルサドラ「総裁Xの弱点は、この私が一番よく知っている。ガッチャマン、私を連れて行け!」
健「ゲルサドラ……」

健の背後からギャラクター隊員が銃を構えるが、ジョーの羽根手裏剣が突き刺さる。

ジョー「ゲルサドラ、俺が連れてってやるぜ!」
健「ジョー!」
ジョー「そのギャラクターを尾行して、ここまで来たんだが、もう用はねぇぜ。立派な道案内がいるようだからな」
健「ジョー、体は大丈夫なのか?」
ジョー「健。俺はな……」
健「ジョー……」
ジョー「俺は総裁Xを倒すために、地獄から甦った男だ。う、うぅっ……!」
健「ジョー!?」

健の隙を突き、ジョーは健を殴って気絶させる。

ジョー「許せよ、健。お前は科学忍者隊には、なくてはならねぇリーダーだ。悪く思うな。ゲルサドラ、この俺を隕石山とやらへ案内しろ」


隕石山。
そこは、海抜3千メートル、
大氷河の面影を今なお残す、白銀の頂だった──

ジョーとゲルサドラが、隕石山の奥へ進む。
やがて目の前に、巨大な機械の館が出現する。

ジョー「これが……!?」
ゲルサドラ「そうだ。総裁Xの本拠地だ」
ジョー「行こうぜ、ゲルサドラ」

2人が内部に侵入する。
大勢の隊員たちが働いている。

「第2次ソーラーシフト計画、スタンバイ! 総員、配置につけ!」「異常なし!」「よし!」

ジョーたちの進む目の前も、隊員たちが行く手を塞いでいる。

ゲルサドラ「ここは私に任せてくれ」

ゲルサドラが何食わぬ顔で、隊員たちの前に堂々と姿を現す。

ゲルサドラ「ホホホ、お役目ご苦労」
敵隊員「ゲルサドラ様!? 確か、あなたは……」

隊員たちの虚を突いてジョーが飛び出し、一瞬で隊員たちを蹴散らす。
だがゲルサドラにもいつの間にか、胴にナイフが深々と突き刺さっている。

ゲルサドラ「うっ、うぅっ…… やられた……」
ジョー「ゲルサドラ!?」


気絶していた健が、目覚める。

健「はっ…… ジョー、ジョー!?」

地面に、ゲルサドラの血痕が点々と滴っている。

健「血だ! ジュン、ポイント01202、ニューゴッドフェニックス急行せよ!」


ジョー「ゲルサドラ! ゲルサドラ、しっかりしろ!」
ゲルサドラ「ジョ、ジョー…… Xを倒すのだ。そ、総裁Xは、あの扉の向こうだ」
ジョー「ゲルサドラ、俺は……」
ゲルサドラ「わかっている…… ジョー、私に構わずに行くのだ」
ジョー「よし!」

扉を抜けると、そこは機械に満ちた空間。

ジョー「総裁X、どこだ!? 出て来い!」
総裁X「コンドルのジョー。さすがは科学忍者隊、よくここまで来たな」
ジョー「長かったぜ、総裁X。やっとお前を倒す日が来たな」
総裁X「フフフ、この私を倒すだと?」
ジョー「そうだ。お前の正体が何であろうと、必ず倒してみせる」
総裁X「フハハハハハ!」


ニューゴッドフェニックスが健たちを乗せ、空を行く。

健「あれだ!」

本部基地内にニューゴッドフェニックスが突入する。
基地内各所が、火を吹く。

『非常事態発生、非常事態発生!』

隊員たちが、基地内を駆ける。そ
の前に、健たち4人が現れる。

健「あるときは1つ、あるときは5つ、実体を見せずに忍び寄る白い影! 科学忍者隊ガッチャマン!」

襲い来る隊員たちを、健たちが次々に蹴散らす。

ジュン「健、ここは私たちが何とかするわ。だから、ジョーを!」
健「よし!」

健が奥へと突き進み、やがて総裁Xの部屋へたどり着く。
ゲルサドラが倒れている。

健「ゲルサドラ!?」
ゲルサドラ「ガ、ガッチャマン…… ここだ。ここが、総裁Xの部屋だ」
総裁X「フフフフフ! ガッチャマン、とうとうここまでやって来たな!」
健「総裁X、今日こそ貴様の正体を暴いてやる!」
総裁X「フフフ、お前の哀れな仲間もそう言った」

ジョーが倒れている。

健「ジョー!?」
ジョー「近づくんじゃねぇ…… Xは、俺でなければ……」
総裁X「よく聞け、ガッチャマン。宇宙の偉大なスペースブレイン・総裁Xは、不死身なのだ!」

壁が開き、総裁Xが現れる。
その本体の姿は、電子頭脳。

ゲルサドラ「総裁……」
健「お前が総裁Xか……」
総裁X「そうだ。私が総裁X、宇宙の支配者だ! 従がって人間に滅ぼされることなど、ありえないのだ!」
健「総裁X。お前は俺たち人間の力を、侮っている。人間には、愛と勇気と知恵がある。それは何物にも負けはしない!」
総裁X「フフフ、まだ私の恐ろしさがわからぬらしいな。間もなく太陽はソーラーシフト計画によって移動するであろう。もはや()なんぴと{何人}であれ、ジャマはできぬのだ。フフフ、私は宇宙の支配者だ。ハハハハハ!」
ゲルサドラ「くッ…… 総裁……」

ゲルサドラが力を振り絞り、壁のスイッチを入れる。
床が展開する。
総裁X本体は、床下深くから伸びる塔の上部にそびえ立っており、塔の中央部が赤く光っている。

総裁X「何をする、ゲルサドラ!? この期におよんで、無駄な抵抗は許さぬ!」
ゲルサドラ「ガッチャマン、あれだ。あそこが奴の弱点だ。上部が頭脳なら、あそこは奴の心臓。全体の中枢装置だ」
総裁X「ゲルサドラ、余計なことを言うでない」
ゲルサドラ「ガッチャマン。総裁を倒すには、あれしかない」
総裁X「裏切者ぉ!」
健「危ないっ!?」

光線が閃き、ゲルサドラに命中する。

健「ゲルサドラ!?」
ゲルサドラ「わぁぁ──っっ!?」

床下に落ちたゲルサドラが、床面に叩きつけられる。
そこへジュンたちも合流する。

健「ゲルサドラ……」
総裁X「ガッチャマン、もう抵抗はやめるがいい。お前が死ぬだけだ!」
一同「健!」「兄貴!」
ジョー「うぅっ…… け、健……」
総裁X「やめろ、ガッチャマン、死を早めるだけだぞ」
ジョー「やめろ、健!」
ジュン「健!」

健が総裁Xの心臓部をめざし、一気に床下へ飛び込む。
総裁Xからの光線が閃き、スーツの翼が裂ける。

健「わぁぁっ!」

健がバランスを崩して落下し、床下に叩きつけられる。

ジュン「健──!」

健が銃を抜く。
だが目に見えない力で銃が健の手から奪われ、総裁X本体にくっつく。

健「しまった!」
総裁X「それまでだ、ガッチャマン。お前の勇気に免じて、命は助けてやろうと思ったが、気が変った。死にたい奴は死ぬがいい」

ビームの連射を、健が必死に避ける。

健「くそっ、あそこを何とかしなきゃ!」

健が小型爆弾を取り出す。
銃と同じく、爆弾が総裁X本体に引き寄せられ、ビーム砲が爆発する。

健「今だ!」

健が総裁X本体をよじ登って心臓部を目指すが、別のビーム砲が健を狙う。

ジュン「健、危ない!」
総裁X「死ね、ガッチャマン!」

健が一気に、心臓部目がけてジャンプする。
だがビームが、ついに健を捉える。

健「うわぁぁっ!」

ビームを食らいながらも、健は必死にバードソーサーを放ちつつ、床面に叩きつけられる。

ジョー「総裁X、死ねぇ! うおぉ──っっ!!」
ジュン「ジョー!?」

ジョーが力を振り絞って駆け出し、総裁X内部へと飛び込む。

ジョー「うおぉぉ!? うおぉぉ!?」

体内のブラックボックスが作動、凄まじい火花が飛び散る。

総裁X「私ハ・総裁X── 宇宙ノ偉大ナ・スペースブレイン── 敵対シテイルプロキシマ系013・001・太陽ヲ移動サセ── 恒星爆弾ニ必要な条件ハ・データ04──敵対シテイルプロキシマ系013・001・太陽ヲ衝突サセ── 太陽ヲ──」

総裁Xが凍りついたように機能を停止し、崩壊してゆく。
そして突如、火を吹き始める。

ジュン「ジョ──っ!!」

総裁X本体が大爆発し、一同が吹っ飛ばされる。

一同「うわあぁぁ──っっ!」


そしてギャラクター本部基地も大爆発する。
キノコ雲が、もうもうと立ち昇る。


「健、健!」「兄貴!」「しっかりしろ!」

気を失っていた健が目覚める。
ジュンたちが基地外で、健を介抱している。

健「うぅっ…… ジュン、竜、甚平(じんぺい)……」
甚平「やったぁ、気がついた! さっすが、兄貴の体は丈夫だぜ!」
竜「危なかったぞい、健!」
ジュン「やったのよ。健、見て!」

ギャラクターの本部は粉々に壊滅し、総裁Xの胴の心臓部には、健のバードソーサーが突き刺さっている。
そばには、ジョーもいる。

健「ジョー?」
ジョー「俺のボンバーが反応する前に、Xの機能はお前によって封じられ、俺が飛び込んだときには、もはや勝負はついてたってことらしい」
健「ジョー……」
ジョー「おかげでまた、死に損なっちまったぜ……」
竜「そうだ、ゲルサドラは?」

地面に服の破片が散らばっており、ゲルサドラの仮面が破れて落ちている。


素顔の露わとなったゲルサドラが、ボロボロの姿で雪の中をさまよう。

ゲルサドラ「ママ…… ママ……」

やがて丘を越えると、そこには一面緑に覆われた大地と、花畑が広がっている。

ゲルサドラ「おぉ……! 地球がこんなに美しいとは、知らなかった…… こんな美しい地球を、醜い姿に変えようとしていた私の罪は、とても償いきれるものではない」

美しい大地に目をみはりつつ、ゲルサドラが涙ぐむ。

ゲルサドラ「もし許されるなら、今度生まれてきたら、この償いをしたい…… この美しい地球のために働きたい…… それまでこの地球は、このままでいるだろうか?」

雲の隙間から日の光が差し込み、空の彼方から、亡き母パンドラの声が響く。

パンドラ「安心なさい…… 私のサミー。ガッチャマンがいる限り、地球は変らないわ」
ゲルサドラ「ママ……」
パンドラ「さぁ。いらっしゃい、サミー。ママのそばへ。もう、あなたの苦しみは終わったの」
ゲルサドラ「ママ……!」

空へ手を差し伸べるゲルサドラが、力尽きて倒れ、事切れる。
ゲルサドラのミュータント化が解け、成人姿の体がみるみる、元の幼い少年・サミーの姿へと戻ってゆく。

光の中、サミーの幻が母パンドラと手を取り合い、空へと昇ってゆく。
遺されたゲルサドラの敗れた服も、いつしか風に飛ばされ、どこかへと飛んでゆく。


健 (俺たちは、この地球を救うことはできた。だが、ゲルサドラを助けてやることができなかった。許してくれ、ゲルサドラ……)


ニューゴッドフェニックスで帰途につく一同に、南部博士からの通信が入る。

南部『諸君。かろうじて、この地球は救われた。これは、君たち科学忍者隊の力によるものだ。よく、この危機を救ってくれた』
甚平「しかし、もう一度メインビーム砲を発射されたら、全世界はどうなっていたか、わからなかったよなぁ」
竜「まったくだ。ゾッとするわい」
南部『今までに、こんな敵に遭ったことはなかった。総裁Xは太陽を移動させ、武器としてプロキシマ系のある星に衝突させようとしたのだ』
健「博士。ジョーのことを、頼みます」
南部『国際科学技術庁の力を信じてくれ』
健「ジョー……」
ジョー「健……」
南部『Gタウンは、君たちの帰還を待っているぞ!』

健たち5人を乗せ、ニューゴッドフェニックスが、夕陽の空を帰って行く。


隕石山の激戦の跡。
粉々に散らばった総裁Xの機械片の中、一つの破片が怪しく光り始める……


(終)


※ 最後の伏線はそのまま次作『科学忍者隊ガッチャマンF』へ続きます。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年09月08日 07:27