パラサイト・イヴ2のエンディング

あれから、ちょうど一年が過ぎようとしている。
その後、私的組織に機密をもらしていたとして、FBIの一部の幹部とMISTの上級捜査官は、FBI自身の手によって、ことごとく逮捕された。
しかし、地下実験施設を運用していた謎の組織と、そのプロジェクトの全ぼうについては、国家機密あつかいとなり、結局 私たちに何の説明もないまま、かん口令だけが しかれてしまった。
その後、事件は、カルト団体による武装蜂起と、その鎮圧のための軍事行動として一般に公募された。
例によって、まるで臭いものにフタをするように、ネオ・ミトコンドリアの存在は、再び闇に葬られたのだ。
ただ、私たちも黙って指をくわえていたわけではない。

逮捕されたボールドウィンに代わり、上級捜査官の任についたルパートは、ジョディと協力して、MISTの活動内容およびNMC情報の一般公開を目指して、密かに準備を進めている。

日本の生物学者マエダ博士の提唱した『超人論』という仮説がある。
ネオ・ミトコンドリア遺伝子の特定に成功し、その潜在的保有者の誕生確率と10年後の発症確率を算出。
その結果、むしろネオ・ミトコンドリア遺伝子の保有者こそが、次なる人類の進化を方向づけるのではないか、とする異端の説だ。

ピアースは、この仮説を元に、マエダ博士と協力しながら、ネットを駆使して遺伝子保有者の発見に努めている。
二人は、どことなく似ているから、息もぴったりのようだ。
私みたいに、寄生者に力を与えつつも共生することこそが、ネオ・ミトコンドリアにとっても、結局合理的な繁栄方法のはずである、というのが彼の持論。
だから、発症前に保有者を教育することで、意志を奪われる危険を回避する気らしい。
幼い頃いじめられていたピアースは、ネオ・ミトコンドリアの保有者が、魔女裁判のように迫害されることを怖れているのだ。
彼は、やっと生涯の目的を見つけたと、はりきっている。
今の彼からは、以前のたよりなさなど、全く感じられなくなった。ジョディも一安心だろう。

イヴは、ルパートがうまくFBI幹部にかけあってくれたお陰で、好奇の目にさらされることも無く、妹として私が引き取ることになった。
先月から通い始めたジュニア・ハイスクールでも、楽しく過ごしているようだ。
もう過去の辛いことなど、すっかり忘れたかのように明るく振る舞っており、早くも学校では人気者らしい。
ネオ・ミトコンドリアの力も、今は全く失われてしまったように見える。

ダグラスさんは、あの爆発で負傷して入院していたが、今はすっかり元気になり、ドライフィールド再建に取りかかっているようだ。
先月届いた手紙には、値段を記したライフル・スコープの写真が入っていた。

皆それぞれ、あの事件を自分なりに消化し、新しい道を歩き始めている。
でも、あの日以来、カイルだけは行方不明のままだ。
仕事のかたわら彼を探しつづけているが、行方は全くわからない。
それどころか、傷痕が無ければ、彼が実在したのかどうかさえ疑わしくなるほど、彼に関して 何の手掛かりも得られなかった。
ひょっとしたら、あの後、何らかのトラブルに巻き込まれたのか、それとも私とイヴを救ってくれたのは、夢だったのだろうか…いずれにしろ、私はこれからも彼を探し続けるだろう。
決して、あきらめないことを教えてくれたのは、彼自身なのだから。

明日は久しぶりに休暇をとって、イヴを自然史博物館に連れていってやることにしている。
ピアースが休館日に入れるように、特別に計らってくれたのだ。
知識欲旺盛なイヴは、もう明日のことで頭がいっぱい。興奮して、しゃべり続けながら寝てしまった。
明日は彼女の質問攻めに、私の知識を総動員しなければならないだろう。

September 1. 2001 PM 7:16
Nature Museum, New York

2001年9月1日 午後7時16分
ニューヨーク 自然史博物館

自然史博物館で楽しんでいるアヤとイヴ。
その後ろに現れたのは…

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最終更新:2016年05月21日 18:59