仮面ライダー龍騎の第49話

旧神崎邸に閉じ込められた優衣の脳裏に、幼い日の記憶が甦る。

優衣 (あの日…… 苦しくて、寒くて…… そして……)

幼い優衣が室内で倒れ、兄の士郎が駆け寄る。

「優衣、優衣!? ダメだよ、逝っちゃダメだ! 俺を1人にしないで! 優衣、優衣!」

優衣「そうだ…… 私、あのとき……」

鏡の中に、幼い優衣の姿が浮かび上がり、語りかける。

「消えちゃうよ」

優衣「いや…… いやぁ──っっ!!」

龍騎・ナイトと、オーディンの戦い。優衣の叫びに気を取られたオーディンの隙を突き、龍騎が突撃。

『ファイナルベント』

さらにナイトの飛翔斬で、オーディンが爆発四散。どうにか勝利を収めた真司と蓮が、神崎邸に駆け込む。

真司たち「優衣ちゃん!」「優衣!」
優衣「私…… 私……」

優衣がそばの鏡を叩き割り、涙声で崩れ落ちる。真司たちが駆け寄る。

真司たち「優衣ちゃん!」「しっかりしろ!」
優衣「私…… 死んじゃってたんだ……」
真司「……え?」
優衣「本当の…… 私は……」

幼い日の記憶。

士郎「優衣、優衣! お父さん、お母さん、開けて! 優衣が大変なんだ! 開けてよ! ……優衣! ダメだよ、逝っちゃダメだ! 俺を1人にしないで! 優衣ぃ──っ!」

絶叫する士郎。
そこへ、鏡の中の優衣の鏡像が語りかける。

優衣の鏡像「私がそっちへ行っていい? お兄ちゃんと一緒にいていい?」

士郎が、事情を飲み込めないまま頷く。

優衣の鏡像「でも、大人になったら消えちゃうよ。20回目の誕生日に消えちゃうよ。それでもいい?」
士郎「……いい。俺を1人にしないで……」

鏡の中の優衣が、鏡面から現実世界へと現れる。
その衝撃で、家中の鏡、ガラスが次々に砕け散る。
衝撃で倒れこむ士郎。
優衣の鏡像が、現実の優衣の体に融合する。

やがて目覚めた優衣が、家中の異変に気づき、おびえて泣き出す。

士郎「俺が絶対…… 守る!」

蓮「お前は…… ミラーワールドの人間だっていうのか?」

神崎士郎が現れる。

士郎「そうだ。俺と優衣が作り出した鏡像だ」
優衣「お…… お兄ちゃん……」
士郎「だが、それが何だ? お前はお前だ。こうして生きている」
優衣「違ぁう!」
真司たち「優衣ちゃん!」「優衣!」
優衣「私、本当は……最初からいない!」
真司「優衣ちゃん……」

優衣の言葉に呼応するように、優衣の体が蒸発を始める。

真司「おい、優衣ちゃん!?」
士郎「待て! まだ存在は続いている! 優衣、お前は存在している! 意識を持て! 大丈夫、俺が必ず助ける! この戦いに得られる最後の命を、お前にやる!」
優衣「もういいよぉ! お兄ちゃん!」
士郎「優衣!」
優衣「これでいいんだよ…… そうでしょ?」

涙をあふれさせながら、優衣が真司たちに答を求める。

真司「……」
蓮「優衣……」
士郎「逝くな……」
優衣「ねぇ、お兄ちゃん…… もし、もしもう一度絵が描けたら…… モンスターなんかがいる世界じゃなくて、2人だけの世界じゃなくて…… みんなが幸せに笑ってる笑顔を…… お兄ちゃんと、一緒に……」

優衣が手を伸ばす。士郎がその手を握り返そうとするが、触れることなく、手が消え去る。
そして、優衣の体が、完全に消滅する──

士郎「優衣…… ……まだだ! まだ2日ある! 優衣は助かる! 決着をつけろ! 最後の1人になるまで、戦え!」
真司「神崎……! お前、兄貴のクセに優衣ちゃんの気持ちがわかんないのかよ…… 優衣ちゃんはなぁ、お前のために戦いを止めたいって言ってたんだぞ! お前が幸せそうじゃないからって!」
士郎「……」
真司「優衣ちゃんはもう…… こんな戦い、望んでないんだよ!」
士郎「……戦え」
真司「神崎ぃ!」
士郎「戦えぇぇ!!」

士郎が外へ飛び出す。

蓮「まだ…… 戦いは有効ってわけだ」
真司「蓮……? お前まさか、続けんのかよ? おい、蓮!」

蓮も神埼邸を出、バイクで走り去る。

蓮「優衣……」


真司も神埼邸を出てくる。そこには、真司の変身を目撃していた令子が。

令子「城戸くん」
真司「……令子さん! どうして?」
令子「ねぇ、あなたが…… 『仮面ライダー』なの?」


枯れ木に囲まれた、どこかの池。無数のモンスターたちが蔓延っている。

あと2日

OREジャーナル。大久保編集長と、真司。

大久保「『ミラーワールド』に『モンスター』、そして『神崎士郎』。ま、大枠はつかんでる。だが、どうしても『仮面ライダー』ってのが何か、わからなかった……」
真司「……」
大久保「お前がそうなんだな? 真司」


北岡の事務所。吾郎が北岡の服を整理していた拍子に、カードデッキが転げ落ちる。

吾郎「すいません!」
北岡「あぁ、いいよいいよ。俺さぁ、本気でやめようと思ってるんだよね。ライダー」
吾郎「先生……?」
北岡「あぁ、別に病気のせいじゃないよ。なんか、疲れたっていうか、空しいっていうか…… それにほら、永遠の命がなくても、結構おもしろおかしく暮してるじゃない、俺? だからさ。どう思う、吾郎ちゃん?」
吾郎「俺は…… 先生が満足して毎日を送れるなら、それが一番いいと思ってますから」
北岡「ハハ、満足してるよ。吾郎ちゃんのおかげで」
吾郎「ありがとうございます」
北岡「よし! 決めた。ライダー引退記念に、令子さんを食事でも誘いますか!」

北岡が携帯を手にしようとし、取り落とす。
手を振るわせる北岡。吾郎はその様子を直視できず、気まずい空気が流れる。

北岡「あ…… ちょっと、手に力、入らなくて……」
吾郎「……退院したばかりですから…… 熱い紅茶でも、入れます」

吾郎が去り、北岡が窓の外を見つめる。

北岡「結構、もったよな……」


OREジャーナル。

大久保「そっか…… お前そんなこと、ずっとやってたのか……」
真司「俺…… 全然、答出せませんでした。今だって、優衣ちゃんが消えたこと……」
大久保「ハッ! 上等だよ、この野郎! いいんだよ、ンな答なんか出せなくて」
真司「えっ?」
大久保「考えてきたんだろ、今まで。お前のそのデキの悪い頭で必死に、よ。それだけで充分なんじゃねぇか? 俺はそう思うぜ」
真司「編集長……」
大久保「ただし、だ。何が正しいのか選べないのはいいが、その選択肢の中に自分のことも、ちゃんと入れとけよ」
真司「えっ?」
大久保「お前が信じるもんだよ」

大久保が胸をポンとたたく。

大久保「お前だって、ここんとこにしっかり芯がねぇと、話し合いにもなんねぇし、誰もお前の言うことなんか聞いてくんねぇだろ。な?」
真司「俺の、信じるもの……?」

ドアの隙間から様子を伺う令子。大久保が頷き、それを合図に令子が入室する。

令子「ただいま」
大久保「おぅ、お帰り」
奈々子「令子さん、ごちそうさまでした」
めぐみ「おいしいケーキだったね!」

電話が鳴る。

令子「もしもし。あ、北岡さん? ──明日の夜? ダメダメ。明日、取材が……」
北岡『え? そんなに仕事ばかりしてどうするんですか。じゃあ百万歩譲って、ランチならどうです?』
令子「ランチ? だからお昼も…… ちょ、ちょっと待って」

奈々子とめぐみが、慌てた様子で話に割り込もうとしている。

令子「何よ!?」
めぐみ「いや、OKしてみてもいいんじゃないかって思って……」
令子「なんで!?」
めぐみ「いや、たまには楽しいと思うし、気晴らしに1回くらいは……」
真司「島田さん、あの、北岡さんに何かあったんですか?」

廊下に出た奈々子が、真司に北岡の病状を打ち明ける。

真司「本当なんですか!? 北岡さんが……」
奈々子「令子さんには言わないでね…… ね?」

真司 (じゃあ、北岡さんがライダーになった理由って…… 自分が生きるために!? 北岡さんも戦ってたんだ…… それだって、絶対間違ってるとは言えない……)


(蓮『お前はそうやって、何でも飲み込もうとするから迷うんだ』)


廃墟に潜伏している浅倉。警察の間で、無線連絡が取り交わされている。

『浅倉の潜伏先が判明。突入は明朝。抵抗著しい場合、射殺やむなし──』

最後の1日

神崎邸。士郎が、幼い頃に描いた絵を見つめている。

士郎「優衣……」


池に蔓延っていたモンスターたちが、一斉に飛び立つ。


街中のビル群の窓ガラスから、無数のモンスターたちが現実空間へと出現。次々に人々を襲い始める。
意変に気づいた真司と蓮が、街中に駆けつける。

蓮「逃げろ、早く!」
真司「逃げて!」
蓮「逃げろ!」

逃げ遅れた女の子がいる。

真司「大丈夫? 君、1人なの? お父さん、お母さんは?」
蓮「変身!」

蓮がナイトに変身し、ミラーワールドに飛び込む。
真司は女の子を抱き上げるが、次第にモンスターが迫る。

真司「早く逃げよう! ……あ、危ない!」

モンスターが、すぐそばまで迫る。とっさに真司が背を向け、自分を女の子の盾とする。

鈍い音──

真司が痛みを堪えつつ、モンスターを蹴散らす。

真司「逃げて! ……早くぅ! 逃げてぇ!!」

呆然とする女の子が、気迫に押されておずおずと逃げ出す。

真司が息を切らしつつ、カードデッキを取り出すが、デッキは地面に転がり、真司が血を吐き出す。
地面を這うように必死にデッキを握る真司。

(大久保『お前が信じるものだよ』)

真司「はぁ、はぁ…… 変……、身!!」


ミラーワールド。
蓮の変身した仮面ライダーナイトが、無数のモンスターたち相手に戦いを繰り広げている。
真司と龍騎となって参戦し、傷ついた体で必死にモンスターたちと戦う。

『ファイナルベント』

ドラゴンライダーキックでモンスターの群れを撃破するものの、そのまま倒れこんでしまう。

ナイト「城戸!? どうかしたのか? ……おい!? 城戸!」
龍騎「はぁ、はぁ…… 別に…… ちょっと、はりきりすぎた……」

息を切らしつつ、必死に立ち上がる龍騎。

『サバイブ』『サバイブ』

2人が龍騎サバイブ、ナイトサバイブとなってモンスターたちを蹴散らす。

『ファイナルベント』『ファイナルベント』

さらに最強技のドラゴンファイヤーストームと疾風断で、残るモンスターたちは一掃される。


現実空間に戻った真司。彼の救った少女が、恐る恐る様子を伺っている。母親らしき女性が駆け寄る。

「リナ!」「ママ…… ママ!」

母親と抱き合う少女。真司が安心したような笑みを浮かべ、傷ついた体でふらふらと立ち上がる。

真司「はぁ、はぁ…… やっと、ちょっとは答らしいものが、見つかったかもしれない…… でも、なんか俺…… ダメかもしれない……」

力が抜けて崩れ落ちる真司。

蓮「城戸!? おい! 城戸! おい、どうした!?」
真司「俺さぁ…… 昨日からずっと、考えてて…… それでも、わかんなくて…… でも、さっき思った…… やっぱり、ミラーワールドなんか閉じたい……! 戦いを、止めたいって……」
蓮「……」
真司「きっと…… はぁ、はぁ…… すげぇつらい思いしたり…… させたり、す、すると思うけど…… そ、それでも…… 止めたい……!」
蓮「……」
真司「それが…… 正しいかどうかじゃなくて…… はぁ、はぁ…… 俺も、ライダーの1人として…… 叶えたい願いが、それなんだ……」
蓮「……あぁ! だったら生きて、その願いを叶えろ! 死んだら…… 終りだぞ!」
真司「そうなんだよな……」

蓮が真司を抱き上げ、真司がその手を握り返す。

真司「蓮…… お前はなるべく、生きろ……」
蓮「お前こそ生きろ! 城戸、死ぬな…… 死ぬなぁ!!」
真司「お前が…… 俺に…… そんなふうに言ってくれるなんてな……」
蓮「おい……? おい!」
真司「ちょっと……」

真司の目が、静かに閉じる──

蓮「城戸……!? おい、城戸ぉ!! 城戸ぉぉ──っ!!」


浅倉の潜む廃墟。あちこちの物陰から、銃口が狙いを定めている。


北岡の事務所。吾郎が北岡の服を選んでいる。

吾郎「先生、今日の令子さんとのデートは、どっちの……」
北岡「吾郎ちゃん。俺…… やっぱり浅倉とは、ちゃんと決着つけてやんなきゃいけないと思うのよ」


蓮のもとには、神崎士郎が現れる。

士郎「時間がない。オーディンと決着をつけさせてやる。最後の仮面ライダーとして──」


(続く)

※ この続きは本家エンディングドットコム『仮面ライダー龍騎の最終回』をご覧下さい。

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最終更新:2022年07月06日 05:12