織絵、桐生、そしてトリックの証拠を見つけてしまった緒方の3人を殺した犯人は、有森だった。
金田一にトリックを暴かれ、自分の過ちを諭された有森は、
自らの仕掛けたボーガンの矢を受ける事を選んだ・・・
金田一「有森~~!!」
金田一が有森を抱きかかえた。
金田一「しっかりしろ有森!!」
美雪「は・・・早く手当てを!!」
有森「・・・いらん・・・助かりたくない、俺は・・・関係のない緒方先生まで手にかけてしまったんだ・・・このまま・・・冬子のいる所に・・・といっても・・・こんな俺が天国なんて行けるわけねぇか・・・フフ・・・」
金田一「なに言ってんだよ!!」
有森「『復讐』という地獄の炎に身を焼いていたのは、俺の方だったんだよ。俺は醜い素顔を仮面で隠して生きている『怪人』そのものだったんだ・・・!!」
金田一「そんなんじゃねえよ・・・!たしかに『オペラ座の怪人』は間違った思い込みで次々と人を殺した。でも『怪人』のクリスティーンに対する思いは純粋な愛そのものだったんだ!!」
有森「・・・・金田一・・お前とは・・・もっと違った形で・・・会いた・・か・・・」
有森が息を引き取った。
金田一「あ・・・有森~~~~~~!!」
「なんで・・・なんでこんなことになっちまうんだよ・・・どんな理由があったとしても、お前のやってしまったことは許されることじゃないかもしれない・・・」
早乙女「うう・・・」
美雪「早乙女先輩・・・」
金田一「でも・・・でもよォ・・・本当にこんな終わり方しかなかったのかよ!?有森ぃ~~~~・・!!」
金田一は涙を流していた。
神矢「有森・・・・」
仙道「・・・・・」
剣持「ちっ」
こうして・・・孤島のホテル『オペラ座館』でおきた殺人劇は、静かに幕をおろしたのだ。
美雪「あの島で過ごしたのはたった四日間だったのに、まるで何か月もいたみたいね・・・」
金田一「ああ・・・」
「!」
美雪と金田一の傍に、剣持の乗るパトカーが来た
剣持「よう!お二人さん:
金田一「剣持のオッサン!!」
剣持「乗れよ!学校まで送ってやるぜ!ちょいと話もあるんだ」
剣持「例の『オペラ座館』の劇場、明日とり壊されるようだ」
金田一「明日?」
剣持「それがまあ、調べていくうちにいろいろわかったことがあってな。実は四年前、あの劇場の舞台の上で、黒沢オーナーの一人娘が服毒自殺してたんだな」
金田一「え!?」
美雪「オーナーの娘さんが自殺!?」
剣持「ああ、なんでも劇団員だった恋人に捨てられたらしい。その恋人をとった女は当時上演中だった芝居の共演者で、その芝居ってのがなんと『オペラ座の怪人』だったそうだ。なんとも奇妙な偶然だと思わんか?―――ひょっとしたらあの劇場は・・・呪われてたかもしれんな」
黒沢(この劇場もいろいろありましたからね・・・いいことも・・・そうでないことも・・・)
美雪「あの時、オーナーの言ってた『そうでないこと』って、このことだったのね」
金田一「ああ・・・」
剣持「それと昨日、有森の家を捜索した。奴は両親が離婚して、アパートに一人暮らしになったばかりのようだな」
金田一「両親が離婚・・・・」
美雪「そんなことはじめて聞いたわ!!」
剣持「離婚したのはつい最近のことらしい。お前の推理通り、奴のアパートから例のエンジン付きゴムボートもみつかったよ。それから・・・こんなもんも出てきた」
剣持が一枚の封筒を取り出した。
「自殺した月島冬子の遺書だ」
金田一(月島の遺書!?)
剣持「有森のアパートの山積みになった新聞だのチラシだのの間にはさまっとった。手紙の封は切られてなかったよ。月島冬子が自殺した後、有森の奴はアパートにはほとんど戻ってなかったようだ」
金田一「・・・・」
金田一が手紙の封を開けた。
月島「―――有森君・・・・この手紙があなたの元へ届く頃、私はこの世に生きていないでしょう。昨日のこと以来、私の心はこの顔と同じように醜くなりつつあります。そうなる前に私は命を絶つつもりです。私・・・少しでも天国に近い所へ行きたいから・・・
それから最後に一つだけお願いがあります。有森君もどうかあの三人を憎まないで。
いつかまた同じ天国で暮らせるように・・・・・」
金田一「・・・・」
剣持「有森って奴もその手紙を見てりゃあ、あんなことはしなかっただろうさ・・・」
金田一「・・・ああ」
美雪「あの・・・・早乙女先輩は、何か罪になったりするんですか?」
剣持「月島を呼びだしたことについて、ちょっと聞いただけだ。月島が硫酸をかぶったのはやっぱり事故だからな」
美雪「よかった」
金田一「死んだ日高や桐生、そして早乙女・・・・三人とも外面は普通にとりつくろってたけど、その『仮面』の下では、月島に対する罪悪感におびえていたのさ。結局、今回の事件は―――悲しいすれ違いが生んだ事件だったMMだ」
美雪「・・・・」
金田一「なあ剣持のオッサン」
剣持「ん?」
金田一「この手紙、俺にくれないかな~~~~!?」
剣持「・・・・ああ・・・もって行きな」
金田一と美雪はパトカーから降りた。
金田一「んじゃどーも」
美雪「わざわざありがとうございました」
剣持「まったく・・・あいつたった一人で事件を全部解決しちまいやがった。金田一耕助の孫ってのは伊達じゃないようだ。金田一一、たいした‘男‘だぜ」
美雪「・・・?はじめちゃん?どこ行くの!?もうじき始業ベル鳴るわよ!」
金田一「おう、オレ今日学校サボるわ」
美雪「ちょ・・・ちょっと!ダメよ!!どこ行くつもり!?またゲーセンとか・・・」
金田一「有森の墓参りだよ!月島の手紙届けてやろうと思ってな!」
美雪「あっ・・・」
ここで始業ベルが鳴り出した。
金田一「美雪、お前もいっしょにくるか!?」
美雪「・・・・うん!」
(もオ、その日・・・私は生まれて初めて学校をサボりました)
(ちょっぴりドキドキしたけど、それはうしろめたかったからじゃなくて・・・もしかしたら・・・)
(続く)
最終更新:2018年06月02日 23:07