キャスター「次のニュースです。なんとISを動かせる男性が発見されました。原因はまだ不明ですが事態を重く見た政府は起動させた少年・織斑一夏くんを―――」
少女、篠ノ之箒がシャワーを浴びていた。
箒(一夏とまた会える―――春から・・・また同じ学び舎で過ごせるんだ―――)
一夏「さよなら箒」
箒(あの日交わした最後の別れの‘挨拶‘)
箒「さよなら一夏――――」
(明日の‘おはよう‘がない本当の別れの言葉)
箒(5年と15日ぶりの‘おはよう‘が言える――――一夏にまた会える――――)
2ヶ月後―――
真耶「全員揃ってますね――――それじゃあSHRを始めますよ―――私が副担任の山田真耶です―――それでは皆さん1年間よろしくお願いしますね」
一夏(俺の名は織斑一夏。今日は高校の入学式、新しい世界の幕開けの日だ――――だがしかし、クラスメイトは全員女なのだ)
真耶「・・・じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」
一夏(これは想像以上にきつい・・・幼なじみの箒が同じクラスなのがせめてもの救い・・・・)
箒は一夏から目を背けた。
一夏(!?そ、そんな・・・)
箒(い・・・・いかんいかん。一夏と同じクラスで過ごせると思うとつい緩んでしまう――――高校生になったのだ。大人びて凜としたところを見せないと・・・)
真耶「・・・・くん」
一夏(な・・・なんでものすっごい形相で睨まれたんだ?)
真耶「・・・・くん、織斑一夏くんっ!」
一夏「はっ、はいっ!?」
真耶「あっあの・・・お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる?怒ってるかな?ゴメンねゴメンね!でもね、あのね、自己紹介「あ」から始まって今「お」の織斑くんなんだよね。だからね?ご、ゴメンね?自己紹介してくるかな?ダ、ダメかな?」
机の上に身を乗り出した真耶の胸が乗っている。
一夏「いやあのそんなに謝らなくても・・・っていうか自己紹介しますから」
真耶「ほ、本当?本当ですか?本当ですね?や、約束ですよ、絶対ですよ!」
一夏「えー・・・・えっと、織斑一夏です、よろしくお願いします」
クラスメイトたち「それだけ?」「からの――――?」
一夏「えっ、ダメ?」
その場へ、一夏の姉の千冬が来た。
一夏(げっ、千冬姉っ!?)
真耶「あ、織斑先生、もう会議は終わられたんですか?」
千冬「ああ、山田くん、クラスへの挨拶を押しつけてすまなかったな」
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を1年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。
私の言うことはよく聞き理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は若干十五歳を十六歳までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが私の言うことは聞け――――いいな」
クラスメイトたち「キャ――――!」
「千冬様!本物の千冬様よ!!」
「ずっとファンでした!」
「私お姉様にあこがれてこの学園に来たんです!北九州から!」
「私はさいたま!」
「千冬様にご指導頂けるなんて嬉しいです!」
「私・・・お姉様のためなら死ねます!」
千冬「・・・毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスだけに馬鹿者を集中させてるのか?」
「で?挨拶も満足にできんのか、お前は」
一夏「いや千冬姉、俺は―――――」
千冬は出席簿で一夏の頭を叩いた。
千冬「学校では織斑先生と呼べ」
一夏「・・・・はい織斑先生」
クラスメイトたち「え・・・・?織斑くんってあの千冬様の弟・・・・?」
「それじゃあ世界で唯一男で「IS」を使えるっていうのも関係して・・・・」
「ああ、いいなあっ、代わってほしいなあっ」
一夏「やば・・・バレた」
一夏(そうIS――――正式名称、インフィニット・ストラトス。人間が直接着込む強化武装みたいなそれは――――現行の戦闘兵器はISの前ではただの鉄クズに等しく、世界の軍事バランスは崩壊―――ISが世界を支配することになる。そしてこの学園が作られた)
建前
ISの操縦者育成を目的とした教育機関であり、その運営および資金調達には原則として日本国が行う義務を負う。ただし、当機関で得られた技術などは協定参加国の共有財産として公開する義務があり、また黙秘、隠匿を行う権利は日本国にはない。
また当機関内におけるいかなる問題にも日本国は公正に介入し、協定参加国全体が理解できる解決をすることを義務づける。また入学に際しては協定参加国の国籍を持つ者には無条件に門戸を開き、また日本国での生活を保護すること。
実際
A国大統領?「アナタたち日本人の作ったISのせいで世界は大混乱デース。責任もって人材管理と育成のための学園をツークリーナサーイ。運営資金はモチローン?自分たちで出してくださいネ――――」
一夏「ヤクザだな・・・A国」
(しかしこの万能最終兵器(IS)女性にしか装備が出来ない。だからこうしてIS学園に集まるのは女性しかいないのだが――――世界初、唯一男でISに適合することが判明して俺の人生は変わった。ある日黒服の男たちがやってきて「君を保護する」とか言ってIS学園入学所を置いていったんだ。ISなんて男の俺には関係ないことだったのに――――)
ここでチャイムが鳴った。
千冬「さあSHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが基本操作は半月で体に染み込ませろ。いいか?いいなら返事をしろ、よくなくても返事しろ。私の言葉には返事をしろ」
一夏(おお・・・なんという鬼教官。目の前の姉は人の皮を被った悪魔だろうか?)
千冬「何か不服か?織斑」
一夏「滅相もありません」
一夏(あー・・・参った・・・ギブ。入学式初日から授業とか勘弁してくれよ――――)
箒「・・・・・ちょっといいか」
一夏「・・・・・箒?」
箒「話がある。廊下でいいか?」
一夏と箒は廊下に出たが後ろに3人のクラスメイトがついていた。
一夏(これじゃ教室内とあんま変わらないな・・・)
「そういえば去年、剣道の全国大会で優勝したってな、おめでとう」
箒「・・・・・っ。なんでそんなこと知ってるんだ!?」
一夏「なんでって新聞で見たし・・・・・」
箒「なっ、なんで新聞なんか見てるんだっ!?」
一夏「あーあと」
箒「な、なんだ!?」
一夏「久しぶり、6年ぶりだけど箒ってすぐわかったぞ。ほら、髪型一緒だし」
箒「え・・・・よ、よくも覚えているものだな・・・・」
一夏「いや忘れないだろ。幼なじみのことくらい」
箒(相変わらず口調が男っぽいというかサムライって感じだな。初志貫徹、日進月歩、日々鍛錬、頑固一徹――――篠ノ之箒は小学校の頃からそうだった)
箒「・・・・」
一夏(少し成長したって・・・少しくらい・・・・――――・・・・)
箒の唇は艶やかになり、胸も大きく突き出ていて、脚もむっちりとしていた。
一夏(6年たつと結構成長するもんだな・・・)
「――――でも、すぐ箒ってわかったぞ。リボンも同じだし」
箒(よかった!一夏も私を覚えていてくれた!――――いかん、嬉しさの余りつい顔がにやけて・・・これでは一夏にはしたない女だと思われてしまう!引き締めねばっ!)
「わ・・・私もすぐ一夏だとわかったぞ!」
一夏(幼なじみに対してなんて形相で睨むんだよっ)
ここでチャイムが鳴った。
一夏「俺達も戻ろうぜ」
箒「わ、わかってる」
一夏(参ったな、やっぱり少しも変わってない)
箒(いかん・・・・あんな笑顔向けられたらどんな顔をして答えたらいいのかわからないではないか――――一夏は私の剣道の優勝を知っていてくれたのだ。みっともない様など見せるわけにはいかぬ)
三時間目。
真耶「――――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は刑法によって罰せられ――――」
一夏「・・・・・」
(お・・・俺だけか?俺だけなのか?みんなわかるのか?このアクティブなんちゃらとか広域うんたらとかどういう意味なんだ?というかこれ全部覚えないといけないのか・・・)
真耶「織斑くん何かわからないところがありますか?わからないところがあったら訊いてくださいね。なにせ私は先生ですからっ!」
一夏「先生!」
真耶「はい織斑くん!」
一夏「ほとんど全部わかりません」
真耶「え・・・・ぜ、全部ですか・・・?え、えっと・・・織斑くん以外で今の段階でわからないっていう人はどれくらいいますか」
クラスメイトは誰も手を上げなかった。
千冬「・・・織斑、入学前の参考書は読んだか?」
一夏「まだで―――――」
千冬が再度出席簿で一夏の頭を叩いた。
千冬「必読と書いてあっただろうが、馬鹿者。今週中に覚えろ、いいな」
一夏「い、いや――――この分厚さはちょっと・・・」
千冬「やれと言っている」
一夏「はい、やります」
千冬「ISはその機動性・攻撃力・制圧力と過去の兵器を遙かに凌ぐ。そういった「兵器」を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる――――そうしないための基礎知識と訓練だ。理解ができなくても覚えろ、そして守れ。規則とはそういうものだ。今のままのお前達ではなんとかに刃物の状態だ。それを鬼に金棒にして送り出すのがこの学園の役目だ。しっかり3年間ついてこい」
一夏「は・・・はい・・・」
クラスメイトたち「「「キャ――――千冬さま-どこまでもついていきます――――♡」」」
HR。
千冬「さて―――――再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないとな」
クラスメイトたち「はいっ織斑くんを推薦します」
「さんせー!」
「私もそれがいいと思います!」
「せっかく唯一の男の子だもんねっ、盛り上げないと!」
千冬「では候補者は織斑一夏・・・他にはいないか?自薦他薦は問わないぞ」
一夏「ちょっ、ちょっと待った。俺はそんなのやらな――――」
千冬「他薦された者に拒否権などない。選ばれた以上は覚悟しろ」
ここで金髪ロールのクラスメイト、セシリアが異議を申し立てた。
セシリア「待ってください!そのような選出は認められません!大体男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!」
セシリアの物言いに一夏もカチンと来ていた。
セシリア「わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであってサーカスをする気は毛頭ございませんわ!――――いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき。そしてそれはイギリスの代表候補生にして入試主席のこのわたくし、セシリア・オルコット以外ありえませんわ。ISの操縦にしても入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですし」
一夏「俺も倒したぞ、教官」
セシリア「は・・・・?あなたも教官を倒したって言うの!?わっ、わたくしだけだと聞きましたがっ?」
一夏「女子ではってオチじゃないのか?大体イギリスだって島国だし、大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」
(――――つい言ってしまった・・・今の世の中、ISのせいで女性はかなり優遇されている。でもだからといってその力を振りかざすのは違うだろう。力が粗暴ならそんなものはただの暴力だ―――そんなの俺は絶対認めない)
セシリア「あっ、あっ、あなたねえ!わたくしの祖国を侮辱しますの!?決闘ですわ!」
一夏「ISでか?いいぜ、四の五の言うよりわかりやすい」
セシリア「言っておきますけどわざと負けたりしたらわたくしの小間使い――――いえ奴隷にしますわよ?」
一夏「侮るなよ、真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」
セシリア「そう?なんにせよ丁度いいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」
一夏「――――ハンデはどのくらい付ける?」
セシリア「あら、早速お願いかしら?お好きなだけ付けてもよろしくてよ?」
一夏「いや、俺がどのくらいハンデ付けたらいいのかなーと」
クラスメイトたち「お、織斑くんそれ本気で言ってるの?」
「男が女より強かったのって大昔の話だよ?織斑くんは確かにISを使えるかもしれないけどそれは言い過ぎよ」
「ね――――」
「クスクス」
「ねー織斑くん今からでも遅くないよ?セシリアに言ってハンデ付けてもらったら?なにせ彼女は英国の代表候補生で専用のISだって持ってるんだよ?」
「そうそう」
「だよね―――」
一夏(みんな本気で笑ってる――――そりゃそうだろ。「今、男は圧倒的に弱い」腕力はなんの役にも立たない、確かにISは限られた一部の人間しか扱えないが女子は潜在的に全員がそれらを扱えるのだ。それに対して男は原則ISを動かせない。もし男女差別で戦争が起きよう者なら男陣営は三日と持たないだろう、それどころか3時間で制圧されかねない。ISは過去の戦闘機・戦車・戦艦などを遙かに凌ぐ超兵器なのだから。専用チューニングされた専用機持ちの代表候補生ともなれば、その国の最強の存在と言ってもさしつかえないだろう――――確かに男VS女なら男は圧倒的に女に敵わない)
「・・・・・じゃあ、ハンデはいい」
(―――――でも)
一夏「同じIS乗り同士の戦いだ。条件は五分だろ?」
千冬「――――さて、話はまとまったな。それでは勝負は1週間後の月曜放課後、第3アリーナで行う。織斑とオルコットはそれぞれ用意をしておくように」
学生寮。
部屋に向かう一夏の後を3人のクラスメイトがつけていた。
クラスメイト「織斑くんの部屋どこかな!?あっ、あそこかな!?」
一夏が振り向くと、クラスメイトたちは隠れた。
一夏「まったくストーカーかよ、俺は珍獣じゃないっての」
「えーとここか、1025室だな」
一夏はベットで横になった。
一夏「やっと落ち着けた・・・女子校の寮だからどうかって思ってたけど部屋の中なら静かなもんだな。しかし国立にしても随分立派な部屋だよな。まあ有望なIS操縦者=未来の国防を担う人材だからな・・・全寮制なのも納得だ」
(俺なんか何処ぞの遺伝子工学の博士まで研究させろって来たからな・・・・・)
一夏の方に誰かが来た。
?「誰かいるのか?―――ああ、同室になった者か。こんな格好ですまないな、シャワーを使っていた。私は、篠ノ之―――――」
一夏「――――箒」
来たのはバスタオル姿の箒だった。
箒「・・・・い、い、い、いちか・・・・?」
一夏「お、おう・・・・・」
箒「見るな――――――」
(続く)
最終更新:2018年10月21日 13:49