CANAAN(漫画版)の最終回

カナンと宿敵アルファルドが、ビルの屋上で決戦を繰り広げている。
アルファルドの策略で共感覚を失ったカナンに、アルファルドの攻撃が容赦なく降り注ぐ。

カナン「はぁ　はぁ」
アルファルド「どうした?　まるでなっちゃいないぞ」
カナン「くッ……」

アルファルド「いくら化け物のような力を失ったからといって　これじゃあ…なァ　張り合いがないぞ」
カナン「はぁ　はぁ　アル…ファルド」
アルファルド「違う　私はそんな名(アルファルド)じゃあない　私の名前は　カナン　あの日──　シャムがそう名付けた　だから　私の名はカナンだ」
カナン「カナン…　私と…　同じ……」
アルファルド「違う　私は極限(カナン)だ　シャムの理想どおりに強くなり　シャムの理想どおり過去を我が物とした　だがお前は──　人を超えた性能を持ち　シャムの理想とは別の所にいる　お前はカナンではない　ただの化け物だよ　…いや　もう　そうですらないんだったな　カナンでもなく　化け物でもないまま　みじめな存在として消えろ」

カナンが屋上の淵から突き落とされる──

一方でマリアは取材のために、カメラを手に街中を奔走している。

ユンユン「ん　疲れたッスか　マリア?」
マリア「ううん　…カナン　大丈夫かなって」
ユンユン「カナンなら心配ないッスよ　暴動寸前のこっちより　よっぽどしっかりやってるはずッス」
マリア「うん　そうだよね」
御法川「大沢!　あっちを取材に行くぞ!」
マリア「はい!　ユンユン　ここはよろしくね」
ユンユン「まかせるッス!」

御法川「大沢　お前はカナンをひとり戦いに行かせてしまったとか思ってるなら　それは勘違いだぞ」
マリア「え?」
御法川「カメラを持っている限り　お前は最前線にいるんだ　カナンとは違う戦場のな」
マリア「……はい!」

カナンは屋上から突き落とされたが、腕のベルトをアルファルドの腕に絡みつけ、宙吊りになって踏みとどまる。

アルファルド「往生際の…　悪い…!!」
カナン「私は…　カナンだ」
アルファルド「……　まだ言うか…!!」

カナンが腕のベルトに力を込め、屋上に舞い戻る。

アルファルド「チッ」
カナン「私を…その名(カナン)で呼んでくれる人たちがいる　友達がいる　その繋がり(ヒカリ)がある限り…　私は　希望(カナン)だ」
アルファルド「…戯れ言を!!」

戦いが再開される。
カナンがアルファルドの銃撃をかわして、突進する。
アルファルドが飛びのくが、一瞬にしてカナンが追いつく。

アルファルド「なッ…」

2人のナイフが激しくぶつかり合う。

アルファルド「……」「なぜお前が戦える!?　共感覚もなくなった　ただの人間のお前が!!」
カナン「そうだ　ただの人間だよ　お前と同じな」

アルファルドが銃を構えるが、それより早くカナンの銃が火を吹く。

アルファルド「この動き…!!　人間用の戦い方も仕込まれていたのか」
カナン「ああ　慣れるまで時間はかかったが」
アルファルド「……　シャム…　いいだろう　お前を倒して　シャムの亡霊を撃ち抜く!!」

アルファルドが銃を放つ。
硝煙がやむと、カナンの姿は消えている。

カナン「本当に…　シャムと同じなんだな…　いや　シャムの理想とする兵士そのものなんだ」
アルファルド「そうだ　憎悪から生まれ　憎悪を飼い馴らす　極限(カナン)だ　お前(化け物)とは違う」

(シャム『お前は　俺たちとは違う──』)

カナン「そうだな　──違う　私はシャムやお前のように憎しみに──　過去に囚われてはいない　──死んでいない　失った光があった　大切なものが手から離れていった　だけど」

カナンが物陰から飛び出し、一瞬にしてアルファルドを床にねじ伏せ、銃を突きつける。

カナン「私は生きている　だから大切な人たちと出会えたんだ　私は化け物でも　極限でもない　ただの人間　カナンだ」

アルファルド「…ク　クハ　ハハ　ハハハ　ただの　ただの人間か　ただの人間に私は負けたのか」
カナン「──ああ　そうだ」

カチッ、という音。
突然、ビルが激しく揺れ始める。

アルファルド「それを認めるワケには…　いかないよなァ」

ビルが崩壊し始め、アルファルドが宙に身を投げる。

カナン「……」

あの日──
「蛇」の仕掛けで
多くのビルが爆破されましたが
ユンユンたちの誘導で
多くの人たちが避難しており
被災者は最小限で済みました

日本に帰った私たちは
上海での記事や写真を発表したり
逆取材を受けたり 大変でした
みのさんはさすが
当然のように振る舞ってました

そして　私は──

マリアが家の玄関で、大慌てで出発の支度をしている。
妹のひとみが、呆れ顔で見ている。

マリア「わ──　飛行機に遅れちゃう」
ひとみ「もー　お姉ちゃん　だから言ったのに」
マリア「うﾞぅ　お説教は今度ねー!!」

ひとみ「今度はシンガポールだっけ?　忙しいよね　そこで知り合いと合流するんでしょ?」
マリア「うん」

傷だらけのカナンを迎えるマリアの写真──

「大切な友達なの」

(終)