その果実に関する伝説は数多く存在する。
黄金のリンゴ。不老不死の果実アンブロシア。
そして、アダムとイヴの食べた知恵の実──。
禁断の果実を手にする者は、大いなる力を得るだろう。
しかし、選ばれるのは戦い、勝ち残った最後の一人だけ。
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伝説を示すリンゴの絵から光が浮かび上がり、リンゴの形となって空間を飛んだ後、逆光の中に立つアーマードライダーのシルエットになる。
劇場版 仮面ライダー鎧武
サッカー大決戦!黄金の果実争奪杯!
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異世界植物ヘルヘイムに侵蝕され、荒廃した沢芽市で、仮面ライダー鎧武オレンジアームズ(葛葉紘汰)はヘルヘイムが生み出す怪物・インベスの群れと戦っていた。
鎧武「とどめだ! はあっ、りゃー!」
鎧武が刀型の武器「大橙丸」でインベス達を薙ぎ払う。
辺り一帯のインベスがいなくなったのを確認し、鎧武は変身を解除して紘汰に戻った。
紘汰(オーバーロードが攻めてきてからずっと、沢芽市は封鎖されたままだ。ヘルヘイムの侵蝕も止まらない。この世界を救うために、俺は……)
インベスをこちらの世界に呼び込んだ一因である巨大企業・ユグドラシルコーポレーションの本拠地「ユグドラシルタワー」を睨む紘汰。
いつの間にか、そんな紘汰の背後に一人の少年が立っていた。
紘汰が少年に近付く。
紘汰「おい、こんな所にいたら危ないぞ」
少年「ねえ、あれは何?」
少年が指さしているのはサッカーボールだった。
紘汰「何って……ただのサッカーボールだろ」
少年「『サッカー』……何なの、それは?」
紘汰「もしかして……サッカーを知らないのか?」
紘汰がボールを蹴る。
紘汰「こうやって、手を使わずにボールに運んで……。よっと!」
紘汰がボールを蹴り上げ、壁に当たって跳ね返ったボールを受け止めた。
紘汰「相手のゴールにシュートを決めたら1点。こんな風に、互いに点を取り合って競うスポーツだ」
少年「なるほど。戦いのルールなんだね。……それで負けた方はどうなるの? 命を取られるのかい?」
紘汰「はは、そんなワケないだろ。どうにもならないよ」
少年「いや……それじゃどうして戦うの?」
紘汰「どうして? そうだな……楽しいからじゃないか?」
少年「楽しい?」
紘汰「ああ。試合に勝てたら嬉しいし、負けたら悔しいけど次こそは頑張れる。それで充分じゃないか?」
紘汰が少年にボールを渡した。
少年「そうなんだ……そんな戦いもあるんだ」
ボールを両手で弄びながら見つめる少年。
紘汰「おっと、話し込んでる場合じゃないな。またインベスが現れたらまずい。俺が安全な場所まで送る──」
紘汰が振り返ると、少年はいなくなっていた。
紘汰「あれ?」
少年は離れた場所にいた。
紘汰「ちょっ、危ないって!」
紘汰は少年を追いかけるが、すぐに見失ってしまう。
紘汰の耳に、何かが聞こえてきた。
紘汰「あれ? 何か聞こえる……」
紘汰はその音が聞こえてきた方に向かう。
音はいつの間にか、鎧武の名を呼ぶ声援となって聞こえていた。
紘汰(歓声? そんなはずは……)
暗闇の中を進む紘汰。
闇を抜けると、そこは廃墟となったはずの沢芽市ではなく、満員の観客が声援を送るスタジアムだった。
紘汰「ええ──っ!? 何だこれ……? 今の沢芽市にこんなに人がいるわけ……」
?「紘汰! どこ行ってたの?」
紘汰のチームメイト・高司舞が駆け寄ってくる。
だが、なぜか舞は、スポーツチームの監督かマネージャーのような恰好をしていた。
紘汰「舞!」
舞「もう始まっちゃうよ! 早く着替えて!」
紘汰「ああっ、ちょっと! 状況がよく分かんないんだけど……」
舞「忘れたの? チームバロンが、私達チーム鎧武に勝負を挑んできたじゃない!」
紘汰「勝負?」
ピッチでは、チームバロンのキャプテン・駆紋戒斗が名乗りを上げていた。
戒斗「サッカーだ!」
とりあえずユニフォームに着替えた紘汰だが、まだ状況が呑み込めていない。
紘汰「戒斗!? おい、お前、どうしたんだよその格好!」
戒斗「貴様の方こそ何を呆けてる。今日こそは決着を付けると言ったはずだ」
?「そうだぞ」
そこに現れたのは、インベスとなってしまい、第1話で紘汰に倒されたはずの角居裕也だった。
裕也「今日は大切な試合じゃないか」
紘汰「裕也……どうして……」
裕也「おいおい、どうしたんだよ紘汰? お前ちょっと変だぞ」
紘汰「いや、そんな……だって!」
裕也「お前が頼りなんだ。しっかりしてくれよな」
裕也が離れていった。
紘汰「どうなってんだ、一体?」
最終更新:2021年08月22日 17:08