古代怪獣ゴメスが、街中に出現する。
建物が砕け、人々が逃げ惑う。
音声『セブンガー、着陸します。ご注意ください』
警官「ロボットが着陸します! 逃げて!」
地球防衛軍日本支部の対怪獣部隊ストレイジの巨大ロボット・セブンガーが、空から着陸する。
音声『着陸地点の民間人、避難完了!』
ストレイジの新人隊員ナツカワ ハルキも、現場に駆けつける。
ハルキ「こちらハルキ。セブンガー、現着!」
セブンガーには、ストレイジのエースパイロットのナカシマ ヨウコが搭乗している。
ヨウコ「これより、攻撃を開始する」
ストレイジ統合基地で、隊長のヘビクラ ショウタ、開発班科学者のオオタ ユカが、その様子をモニターしている。
ユカ「目標は20メートル級の古代怪獣ゴメス。新生代第3期頃より生息が確認されている、原始哺乳類だって~! すっげぇ~!」
ヘビクラ「一応、確認。現在セブンガーのバッテリーは、1分ものが3本。実用行動時間は3分間だ。手短にお引き取り願え」
ヨウコ「了解」
ゴメスがセブンガーに背を向ける。
ヨウコ「待ちなさぁい!」
ハルキ「ヨウコ先輩、北西に大きな公園があるんで、そこに誘導してください! 位置情報、送ります!」
ヨウコ「了解」
誰かのペットらしき、犬がいる。
ハルキ「えっ! 駄目駄目! ストップ、ストップ!」
ハルキがとっさに、犬を抱き上げる。
ハルキ「こんなとこにいちゃだめだよ」
ゴメスが、ハルキのそばに近づいている。
ハルキ「わぁ、まずい!」
ハルキが犬を抱いたまま、建物の陰に隠れる。
ハルキ「危なかったなぁ」
ゴメスがまたも、ハルキのそばに現れる。
セブンガーが駆けつけ、ゴメスに一撃を見舞う。
ヨウコが、足元のハルキに気づく。
ヨウコ「えっ!? ちょっと、なんでこんなとこにいんのよぉ!?」
ハルキが必死に逃げるが、ゴメスが次第に迫る。
ハルキ「ヤバい!」
ヨウコ「危ない!」
セブンガーが、渾身のパンチを繰り出す。
ゴメスが倒れ、その動きを止める。
セブンガーもハルキを避けようとし、バランスを崩して転倒、派手に建物を砕く。
音声『ゴメス、活動を停止』
ヨウコ「ハ~ル~キ~!!」
ハルキ「押忍……」
ストレイジ統合基地。
クリヤマ長官が、ヘビクラとハルキを叱りつけている。
クリヤマ「なんて体たらくだよ! こんなだから、うちはどんどん予算を削られるんだぞぉ~!!」
ヘビクラ「すいません、長官! こいつも随分反省しているようですし、な、ハルキ?」
ヘビクラが密かに、隣のハルキの尻をつねる。
ハルキ「うっ……!?」
ヘビクラ「ほら、今にも泣きそうです」
クリヤマ「あのビルはなぁ、お前…… あ、痛、痛」
クリヤマが腹をおさえ、ユカが緑色のジュースを勧める。
ユカ「長官。これ、良かったらどうぞ」
クリヤマ「何だね、これ」
ユカ「バナナにコマツナにモロヘイヤ。おなかにも優しいんで、飲んでください」
クリヤマ「マズそうだな…… お、美味いや、これ。──とにかくだ! 今後、気を付けるように!!」
ヘビクラ「了解!!」
ハルキ「押忍!!」
クリヤマ「頼んだよ。ったく、もう! 元気はいいんだがなぁ……」
クリヤマが去る。
ヘビクラ「おい、ハルキ。『何に代えても命を守りたい』っていうその心意気は、俺、好きだよ。大好きだ。でもさ、せっかくだから命だけじゃなくて、規律の方も守ってくれないと」
ハルキ「……じゃ、あの犬を放っといたらよかったんですか?」
ヘビクラ「万が一、セブンガーがお前を踏んじまったらどうする? ヨウコは一生、消えないトラウマを背負うとこだぞ」
ハルキ「押忍……」
ヘビクラ「ま、いいや! じゃ、速やかに瓦礫の撤去任務、行って来い」
ハルキ「押忍!」
宇宙空間。
怪獣・狂暴宇宙鮫ゲネガーグと、ウルトラの国の新戦士・ウルトラマンゼットが、戦いを繰り広げている。
ゲネガーグがゼット目がけて、攻撃を放つ。
ウルトラマンゼロが飛来し、それを阻む。
ゼロ「危ねぇから、手ぇ出すな!」
ゼット「また半人前扱いして…… 俺も宇宙警備隊ですよ、師匠」
ゼロ「お前を弟子にとった憶えはねぇ。その俺からしたら、お前なんて3分の1人前だ」
ゼット「さ、3分の1ぃ!? ウルトラショック!」
ゲネガーグが口から弾丸の如く、小惑星を放つ。
ゼット「こいつ、小惑星を飲み込んでやがる!」
ゲネガーグはさらに、ゼロにも小惑星攻撃を放つ。
ゼロ「その手は食うか!」
その小惑星の中から、次元を操る怪獣、四次元怪獣ブルトンが出現する。
ゼロ「ブルトン!? マジかよ!」
ブルトンが次元を歪め、ゼロが中に飲み込まれてゆく。
ゼット「師匠!?」
ゼロ「しゃあねぇ! ゼット、これを持って行け!!」
ゼロが変身アイテム・ウルトラゼットライザーと3枚のメダルを放り、ゼットがそれらを受け止める。
ゼット「これは……!?」
ゼロ「奴が飲み込んだメダルは、お前が取り返せ! 頼んだぞぉ!!」
ゼロの姿が、次元の彼方に消える。
ゼット「師匠ぉ──!!」
一方の地球上。
ハルキはセブンガーに乗り、戦いの跡の瓦礫撤去にあたっている。
ユカ「ハルキ、杉原区に宇宙から隕石が接近中。って…… この動き、隕石じゃない。怪獣!?」
ハルキ「怪獣?」
空から隕石の如く、ゲネガーグが地上に落下する。
街の人々が逃げ惑う。
ハルキ「セブンガー、起動!」
音声『セブンガー、着陸します。ご注意ください』
ハルキのセブンガーが、ゲネガーグの前に降り立つ。
ハルキ「なんだ、こいつ、でけぇな…… とにかく、攻撃してみます!」
ユカ「ちょっと待って。同じ場所にもう一つ、高熱源体が接近中!」
ヘビクラ「今日は賑やかだな、おい」
巨大な光が、空から地上に降り注ぐ。
ハルキ「な、何何何!?」
光の柱の中から、ウルトラマンゼットが姿を現す。
ハルキ「巨人!?」
ユカ「50メートル級のヒューマノイドタイプのエイリアン!? すっげぇ~!!」
ウルトラマンゼットとゲネガーグの戦いが始まる。
ハルキ「現場では、怪獣と巨人が戦っています!」
ヘビクラ「見てるよ。危険そうだから、手を出すな」
ハルキ「でも、周辺に被害が出ています。やれるだけ、やらしてください!」
ヘビクラ「おい! ……って言って、やめるお前じゃないか。十二分に気をつけろ!」
ハルキ「押忍!」
ヘビクラ「押忍じゃなくて了解!」
ハルキ「押忍! いや、了解!」
音声『実用行動時間、残り2分』
ハルキ「どう見ても、こっちが敵だよなぁ!」
ハルキがセブンガーを操り、ゲネガーグに立ち向かう。
ゲネガーグの攻撃で、セブンガーが吹っ飛ばされ、建物に叩きつけられる。
ゼットがゼブンガーを救い、ゲネガーグに一撃を見舞う。
ハルキ「あんた誰なんだよ!? ……頭で考えてもしょうがねぇ! あんた、味方なんだよな!? なら『せぇの』で行くぞ! せ──の、チェストぉ!!」
セブンガーとゼットの同時パンチで、ゲネガーグが大きく後ずさりする。
ゲネガーグが反撃を放ちつつ、走り去る。
ハルキ「逃げる気かぁ!?」
ヨウコ「セブンガー、ハルキ、応答して!」
ハルキ「ヨウコ先輩!」
ヨウコ「怪獣は進行方向予想、広域避難所に向かってる。急いでそこを守って!」
ハルキ「押忍!」
小学校に設けられた避難所に、ゲネガーグが近づいてゆく。
避難している人々が逃げ惑う。
ハルキ「行かせねぇぞ!!」
セブンガーが追いつき、ゲネガーグを阻む。
ハルキ「おい、巨人! あそこの小学校を守るぞ! 手を貸してくれ!! ……って、言葉が通じるわけねぇか!」
ゼットがゲネガーグの尾を捕える。
ハルキ「日本語、通じるのかよ!? いいね!」
音声『実用行動時間、残り30秒』
ハルキ「ヤバい、バッテリーが切れる!」
ゼットの胸のカラータイマーも点滅し、エネルギー切れを知らせる。
ハルキ「えっ、あんたも!?」
ユカ「怪獣の体温が急上昇してます。注意して!」
ハルキ「なんかヤバい!」
ヨウコは地上で、人々の避難を指示している。
ヨウコ「逃げてぇ! 早く! 逃げてください!」
ゲネガーグが一際強力な熱線を放ち、セブンガーとゼットが炎に包まれる。
ハルキ「わああぁぁ──っっ!!」
ヨウコ「ハルキぃぃ──っっ!!」
ゼット「起きなさい、地球人──」
ハルキ「ここは……?」
ハルキが気がつくと、そこは真っ暗な未知の空間。
巨大なゼットの姿がある。
ハルキ「あんたは!?」
ゼット「私はウルトラマンゼット。申しわけないが、お前は死んだ」
ハルキ「死んだ!? 嘘だろ!?」
ゼット「ついでにどうやら、私もウルトラヤバいみたい」
ハルキ「あんたも? どうすんだよ!? このままじゃ避難所が!」
ゼット「一つだけ手がある。私とお前が一つになれば、もう一度戦える。手を組まないか? 私もお前の力が、必要なのでございます」
ハルキ「……?」
ゼット「言葉、通じてる?」
ハルキ「あ、いや、通じてんだけど、言葉遣いがちょっと変、っていうか……」
ゼット「え、マジ? 参りましたな。地球の言葉はウルトラ難しいぜ」
ハルキ「ま、いいや。とにかく、あんたと手を組めば、あいつを倒して、皆を守れるんだな!?」
ゼット「あぁ、守れる!」
ハルキ「なら、やる!」
ゼットの姿が光と化し、ウルトラゼットライザーとなって、ハルキの手に収まる。
ゼット「さぁ、そのウルトラゼットライザーのトリガーを押します」
目の前の空間に、光の扉「ヒーローズゲート」が展開する。
ゼット「その中に入れ」
ハルキがゲートをくぐると、そこはゼットの体内の空間、インナースペース。
光が舞って、ハルキの手に1枚のカードが現れる。
ハルキ「何これ?」
ゼット「その『ウルトラアクセスカード』を、ゼットライザーにセットだ」
ハルキ「押忍……」
音声『Haruki ! Access granted !』
ハルキの腰に、ホルダーが現れる。
ハルキ「何だ、これ?」
ホルダーの中には、歴代ウルトラマンを描いた3枚のメダルがある。
ハルキ「メダル?」
ゼット「ゼロ師匠、
セブン師匠、
レオ師匠のウルトラメダルだ。スリットにセットしちゃいなさい。師匠たちの力が使えるはずだ」
ハルキ「師匠、一杯いるな」
ハルキは指示に従い、メダルをゼットライザーに装填する。
ゼット「おぉ、ウルトラ勘がいいな! じゃあ次は、メダルをスキャンだ!」
ハルキ「あ、あのさ、急いでんだけど」
ゼット「安心しろ。ここの空間は時間が歪んでるから、ここでの1分は、外での1秒だ」
ハルキ「そうなの? こうすりゃいいんだな」
音声『Zero !』『Seven !』『Leo !』
ゼット「よし。そして、俺の名前を呼べ!」
ハルキ「名前…… 何だっけ?」
ゼット「ウルトラマンゼット!」
ハルキ「ウルトラマンゼット?」
ゼット「いえ、もっと気合い入れて言うんだよ!」
ハルキ「気合い?」
ゼット「そう。いいか、ウルトラ気合い入れて行くぞ!」
ゼット「ご唱和ください! 我の名を!! ウルトラマンゼーット!!」
ハルキ「ウルトラマン・ゼ──ット!!」
ハルキがゼットライザーを高々と掲げる──が、何も起きない。
ゼット「トリガー、トリガー最後に押すの。そう、そこ」
ハルキ「これか?」
音声『Ultraman Z !! Alpha Edge !!』
ウルトラマンゼットがハルキと一体化し、ゼロ、セブン、レオの力を得て飛び立つ。
ヨウコはゲネガーグを光線銃で威嚇しつつ、人々を避難させている。
ヨウコ「早く逃げて! こっちに来るな!」
ウルトラマンゼットが、3つの力を得た姿「アルファエッジ」となって降り立ち、ゲネガーグに蹴りを見舞う。
ユカ「うわぁ~、なんか、また出たぁ!」
ハルキ「おぉ……、すげぇ」
ゼット「息を合わせて戦うぞ、地球人!」
ハルキ「押忍!!」
ゼットが、ゼロ、セブン、レオ譲りの宇宙拳法を操り、ゲネガーグに次々に攻撃を繰り出す。
ゼット「おぉ、これが宇宙拳法秘伝の神業かぁ! ウルトラ強ぇぇ!!」
ゲネガーグの突進で、ゼットが建物を貫通し、空高く吹っ飛ばされる。
ゼットが空中で、必殺光線の構えをとる。
ゼット「ゼスティウム光線!!」
ゼットの放った光線と、ゲネガーグの放った熱線が、宙で激突する。
ゼット「チェストォォ──!!」
ゼットの気合いと共に、ゼスティウム光線の威力が勝り、ゲネガーグへ炸裂する。
ゲネガーグが大爆発──!!
地球上での初勝利をおさめたゼットが、空へ飛び立つ。
ユカ「すっごぉ! 何だったの、あれ? ……あれ? 隊長、どこ行くんですか?」
ヘビクラ「ん、ちょっとトイレ」
ゼット「あの怪獣から散らばったメダルを回収してくれ。あれはこの宇宙を救う希望なんだ。お頼み申し上げます」
ハルキ「いや…… 言葉遣い、やっぱ変だな。ってか、メダル? 何のことだよ…… ゼット? ゼットぉぉ!!」
変身の解けたハルキが、地上の瓦礫の中から立ち上がる。
足元には、2枚のメダルがある。
ハルキ「ゼットが捜してるメダルって、これか?」
ヨウコ「ハルキぃ! ハルキぃ!」
どこからかメダルが飛来して足元に落ち、ヨウコがそれを拾い上げる。
ヨウコ「何、これ?」
ハルキ「ヨウコ先輩!」
ヨウコ「ハルキ!? 生きてる? 幽霊じゃないよね?」
ハルキ「押忍…… 生きてるっすよ」
ヨウコ「でも、どうやって?」
ハルキ「ウルトラマンゼットが」
ヨウコ「ウルトラマンゼット?」
ハルキ「あ…… あの巨人が、ギリギリで助けてくれて」
ヨウコ「悪運、強いなぁ…… 本部、ハルキ、生きてました。本当、ケガ無いの? 痛いとこは?」
物陰から誰かが、ハルキたちの様子を密かに窺っている。
その人物の手にも、3枚のメダルがある──
防衛軍、怪獣研究センター。
研究員たちが、ゲネガーグの断片を収めたカプセルを運搬している。
「本日出現した宇宙怪獣…… あ、すいません。ゲネガーグの断片1番から39番、収容完了です」
「了解」
「うわ!」
その1人、生化学研究部員カブラギ シンヤが、カプセルの1個を倒してしまう。
他の研究員「おい、気をつけろ、カブラギ」
カブラギ「すいません、すぐ収容します」
他の研究員「ったく、どんくさい奴だなぁ」
カブラギ「すいません」
他の研究員たちが去る。
カブラギは1人、カプセルからこぼれた肉片の後片付けにあたる。
カブラギ「わぁ、最悪だよ。大丈夫かなぁ…… なんだよ、これ、気持ち悪ぃなぁ」
肉片の中から、寄生生物セレブロが飛び出し、カブラギの顔に取りつく。
カブラギ「わ、わぁっ!? 何だよ、これぇ!?」
カブラギが苦しんで暴れるものの、やがてセレブロに完全に寄生されてしまう。
その顔つきが怪し気に変わり、カプセルの中から、ウルトラゼットライザーと奇妙な光体を取り出す。
カブラギ「キエテ カレカレータ──」
最終更新:2022年07月08日 19:20