ウルトラマンZの第1話

古代怪獣ゴメスが、街中に出現する。
建物が砕け、人々が逃げ惑う。

音声『セブンガー、着陸します。ご注意ください』

警官「ロボットが着陸します! 逃げて!」

地球防衛軍日本支部の対怪獣部隊ストレイジの巨大ロボット・セブンガーが、空から着陸する。

音声『着陸地点の民間人、避難完了!』

ストレイジの新人隊員ナツカワ ハルキも、現場に駆けつける。

ハルキ「こちらハルキ。セブンガー、現着!」

セブンガーには、ストレイジのエースパイロットのナカシマ ヨウコが搭乗している。

ヨウコ「これより、攻撃を開始する」

ストレイジ統合基地で、隊長のヘビクラ ショウタ、開発班科学者のオオタ ユカが、その様子をモニターしている。

ユカ「目標は20メートル級の古代怪獣ゴメス。新生代第3期頃より生息が確認されている、原始哺乳類だって~! すっげぇ~!」
ヘビクラ「一応、確認。現在セブンガーのバッテリーは、1分ものが3本。実用行動時間は3分間だ。手短にお引き取り願え」
ヨウコ「了解」

ゴメスがセブンガーに背を向ける。

ヨウコ「待ちなさぁい!」
ハルキ「ヨウコ先輩、北西に大きな公園があるんで、そこに誘導してください! 位置情報、送ります!」
ヨウコ「了解」

誰かのペットらしき、犬がいる。

ハルキ「えっ! 駄目駄目! ストップ、ストップ!」

ハルキがとっさに、犬を抱き上げる。

ハルキ「こんなとこにいちゃだめだよ」

ゴメスが、ハルキのそばに近づいている。

ハルキ「わぁ、まずい!」

ハルキが犬を抱いたまま、建物の陰に隠れる。

ハルキ「危なかったなぁ」

ゴメスがまたも、ハルキのそばに現れる。
セブンガーが駆けつけ、ゴメスに一撃を見舞う。
ヨウコが、足元のハルキに気づく。

ヨウコ「えっ!? ちょっと、なんでこんなとこにいんのよぉ!?」

ハルキが必死に逃げるが、ゴメスが次第に迫る。

ハルキ「ヤバい!」
ヨウコ「危ない!」

セブンガーが、渾身のパンチを繰り出す。
ゴメスが倒れ、その動きを止める。
セブンガーもハルキを避けようとし、バランスを崩して転倒、派手に建物を砕く。

音声『ゴメス、活動を停止』
ヨウコ「ハ~ル~キ~!!」
ハルキ「押忍(オス)……」



ご唱和ください、
我の名を




ストレイジ統合基地。
クリヤマ長官が、ヘビクラとハルキを叱りつけている。

クリヤマ「なんて体たらくだよ! こんなだから、うちはどんどん予算を削られるんだぞぉ~!!」
ヘビクラ「すいません、長官! こいつも随分反省しているようですし、な、ハルキ?」

ヘビクラが密かに、隣のハルキの尻をつねる。

ハルキ「うっ……!?」
ヘビクラ「ほら、今にも泣きそうです」
クリヤマ「あのビルはなぁ、お前…… あ、痛、痛」

クリヤマが腹をおさえ、ユカが緑色のジュースを勧める。

ユカ「長官。これ、良かったらどうぞ」
クリヤマ「何だね、これ」
ユカ「バナナにコマツナにモロヘイヤ。おなかにも優しいんで、飲んでください」
クリヤマ「マズそうだな…… お、美味いや、これ。──とにかくだ! 今後、気を付けるように!!」
ヘビクラ「了解!!」
ハルキ「押忍!!」
クリヤマ「頼んだよ。ったく、もう! 元気はいいんだがなぁ……」

クリヤマが去る。

ヘビクラ「おい、ハルキ。『何に代えても命を守りたい』っていうその心意気は、俺、好きだよ。大好きだ。でもさ、せっかくだから命だけじゃなくて、規律の方も守ってくれないと」
ハルキ「……じゃ、あの犬を放っといたらよかったんですか?」
ヘビクラ「万が一、セブンガーがお前を踏んじまったらどうする? ヨウコは一生、消えないトラウマを背負うとこだぞ」
ハルキ「押忍……」
ヘビクラ「ま、いいや! じゃ、速やかに瓦礫の撤去任務、行って来い」
ハルキ「押忍!」


宇宙空間。
怪獣・狂暴宇宙鮫ゲネガーグと、ウルトラの国の新戦士・ウルトラマンゼットが、戦いを繰り広げている。

ゲネガーグがゼット目がけて、攻撃を放つ。
ウルトラマンゼロが飛来し、それを阻む。

ゼロ「危ねぇから、手ぇ出すな!」
ゼット「また半人前扱いして…… 俺も宇宙警備隊ですよ、師匠」
ゼロ「お前を弟子にとった憶えはねぇ。その俺からしたら、お前なんて3分の1人前だ」
ゼット「さ、3分の1ぃ!? ウルトラショック!」

ゲネガーグが口から弾丸の如く、小惑星を放つ。

ゼット「こいつ、小惑星を飲み込んでやがる!」

ゲネガーグはさらに、ゼロにも小惑星攻撃を放つ。

ゼロ「その手は食うか!」

その小惑星の中から、次元を操る怪獣、四次元怪獣ブルトンが出現する。

ゼロ「ブルトン!? マジかよ!」

ブルトンが次元を歪め、ゼロが中に飲み込まれてゆく。

ゼット「師匠!?」
ゼロ「しゃあねぇ! ゼット、これを持って行け!!」

ゼロが変身アイテム・ウルトラゼットライザーと3枚のメダルを放り、ゼットがそれらを受け止める。

ゼット「これは……!?」
ゼロ「奴が飲み込んだメダルは、お前が取り返せ! 頼んだぞぉ!!」

ゼロの姿が、次元の彼方に消える。

ゼット「師匠ぉ──!!」


一方の地球上。
ハルキはセブンガーに乗り、戦いの跡の瓦礫撤去にあたっている。

ユカ「ハルキ、杉原区に宇宙から隕石が接近中。って…… この動き、隕石じゃない。怪獣!?」
ハルキ「怪獣?」

空から隕石の如く、ゲネガーグが地上に落下する。
街の人々が逃げ惑う。

ハルキ「セブンガー、起動!」
音声『セブンガー、着陸します。ご注意ください』

ハルキのセブンガーが、ゲネガーグの前に降り立つ。

ハルキ「なんだ、こいつ、でけぇな…… とにかく、攻撃してみます!」
ユカ「ちょっと待って。同じ場所にもう一つ、高熱源体が接近中!」
ヘビクラ「今日は賑やかだな、おい」

巨大な光が、空から地上に降り注ぐ。

ハルキ「な、何何何!?」

光の柱の中から、ウルトラマンゼットが姿を現す。

ハルキ「巨人!?」
ユカ「50メートル級のヒューマノイドタイプのエイリアン!? すっげぇ~!!」

ウルトラマンゼットとゲネガーグの戦いが始まる。

ハルキ「現場では、怪獣と巨人が戦っています!」
ヘビクラ「見てるよ。危険そうだから、手を出すな」
ハルキ「でも、周辺に被害が出ています。やれるだけ、やらしてください!」
ヘビクラ「おい! ……って言って、やめるお前じゃないか。十二分に気をつけろ!」
ハルキ「押忍!」
ヘビクラ「押忍じゃなくて了解!」
ハルキ「押忍! いや、了解!」
音声『実用行動時間、残り2分』
ハルキ「どう見ても、こっちが敵だよなぁ!」

ハルキがセブンガーを操り、ゲネガーグに立ち向かう。
ゲネガーグの攻撃で、セブンガーが吹っ飛ばされ、建物に叩きつけられる。
ゼットがゼブンガーを救い、ゲネガーグに一撃を見舞う。

ハルキ「あんた誰なんだよ!? ……頭で考えてもしょうがねぇ! あんた、味方なんだよな!? なら『せぇの』で行くぞ! せ──の、チェストぉ!!」

セブンガーとゼットの同時パンチで、ゲネガーグが大きく後ずさりする。
ゲネガーグが反撃を放ちつつ、走り去る。

ハルキ「逃げる気かぁ!?」
ヨウコ「セブンガー、ハルキ、応答して!」
ハルキ「ヨウコ先輩!」
ヨウコ「怪獣は進行方向予想、広域避難所に向かってる。急いでそこを守って!」
ハルキ「押忍!」


小学校に設けられた避難所に、ゲネガーグが近づいてゆく。
避難している人々が逃げ惑う。

ハルキ「行かせねぇぞ!!」

セブンガーが追いつき、ゲネガーグを阻む。

ハルキ「おい、巨人! あそこの小学校を守るぞ! 手を貸してくれ!! ……って、言葉が通じるわけねぇか!」

ゼットがゲネガーグの尾を捕える。

ハルキ「日本語、通じるのかよ!? いいね!」
音声『実用行動時間、残り30秒』
ハルキ「ヤバい、バッテリーが切れる!」

ゼットの胸のカラータイマーも点滅し、エネルギー切れを知らせる。

ハルキ「えっ、あんたも!?」
ユカ「怪獣の体温が急上昇してます。注意して!」
ハルキ「なんかヤバい!」

ヨウコは地上で、人々の避難を指示している。

ヨウコ「逃げてぇ! 早く! 逃げてください!」

ゲネガーグが一際強力な熱線を放ち、セブンガーとゼットが炎に包まれる。

ハルキ「わああぁぁ──っっ!!」
ヨウコ「ハルキぃぃ──っっ!!」


ゼット「起きなさい、地球人──」
ハルキ「ここは……?」

ハルキが気がつくと、そこは真っ暗な未知の空間。
巨大なゼットの姿がある。

ハルキ「あんたは!?」
ゼット「私はウルトラマンゼット。申しわけないが、お前は死んだ」
ハルキ「死んだ!? 嘘だろ!?」
ゼット「ついでにどうやら、私もウルトラヤバいみたい」
ハルキ「あんたも? どうすんだよ!? このままじゃ避難所が!」
ゼット「一つだけ手がある。私とお前が一つになれば、もう一度戦える。手を組まないか? 私もお前の力が、必要なのでございます」
ハルキ「……?」
ゼット「言葉、通じてる?」
ハルキ「あ、いや、通じてんだけど、言葉遣いがちょっと変、っていうか……」
ゼット「え、マジ? 参りましたな。地球の言葉はウルトラ難しいぜ」
ハルキ「ま、いいや。とにかく、あんたと手を組めば、あいつを倒して、皆を守れるんだな!?」
ゼット「あぁ、守れる!」
ハルキ「なら、やる!」

ゼットの姿が光と化し、ウルトラゼットライザーとなって、ハルキの手に収まる。

ゼット「さぁ、そのウルトラゼットライザーのトリガーを押します」

目の前の空間に、光の扉「ヒーローズゲート」が展開する。

ゼット「その中に入れ」

ハルキがゲートをくぐると、そこはゼットの体内の空間、インナースペース。
光が舞って、ハルキの手に1枚のカードが現れる。

ハルキ「何これ?」
ゼット「その『ウルトラアクセスカード』を、ゼットライザーにセットだ」
ハルキ「押忍……」

音声『Haruki ! Access granted !』

ハルキの腰に、ホルダーが現れる。

ハルキ「何だ、これ?」

ホルダーの中には、歴代ウルトラマンを描いた3枚のメダルがある。

ハルキ「メダル?」
ゼット「ゼロ師匠、セブン師匠、レオ師匠のウルトラメダルだ。スリットにセットしちゃいなさい。師匠たちの力が使えるはずだ」
ハルキ「師匠、一杯いるな」

ハルキは指示に従い、メダルをゼットライザーに装填する。

ゼット「おぉ、ウルトラ勘がいいな! じゃあ次は、メダルをスキャンだ!」
ハルキ「あ、あのさ、急いでんだけど」
ゼット「安心しろ。ここの空間は時間が歪んでるから、ここでの1分は、外での1秒だ」
ハルキ「そうなの? こうすりゃいいんだな」

音声『Zero !』『Seven !』『Leo !』

ゼット「よし。そして、俺の名前を呼べ!」
ハルキ「名前…… 何だっけ?」
ゼット「ウルトラマンゼット!」
ハルキ「ウルトラマンゼット?」
ゼット「いえ、もっと気合い入れて言うんだよ!」
ハルキ「気合い?」
ゼット「そう。いいか、ウルトラ気合い入れて行くぞ!」

ゼット「ご唱和ください! 我の名を!! ウルトラマンゼーット!!

ハルキ「ウルトラマン・ゼ──ット!!

ハルキがゼットライザーを高々と掲げる──が、何も起きない。

ゼット「トリガー、トリガー最後に押すの。そう、そこ」
ハルキ「これか?」

音声『Ultraman Z !! Alpha Edge !!』

ウルトラマンゼットがハルキと一体化し、ゼロ、セブン、レオの力を得て飛び立つ。


ヨウコはゲネガーグを光線銃で威嚇しつつ、人々を避難させている。

ヨウコ「早く逃げて! こっちに来るな!」

ウルトラマンゼットが、3つの力を得た姿「アルファエッジ」となって降り立ち、ゲネガーグに蹴りを見舞う。

ユカ「うわぁ~、なんか、また出たぁ!」

ハルキ「おぉ……、すげぇ」
ゼット「息を合わせて戦うぞ、地球人!」
ハルキ「押忍!!」

ゼットが、ゼロ、セブン、レオ譲りの宇宙拳法を操り、ゲネガーグに次々に攻撃を繰り出す。

ゼット「おぉ、これが宇宙拳法秘伝の神業かぁ! ウルトラ強ぇぇ!!」

ゲネガーグの突進で、ゼットが建物を貫通し、空高く吹っ飛ばされる。
ゼットが空中で、必殺光線の構えをとる。

ゼット「ゼスティウム光線!!

ゼットの放った光線と、ゲネガーグの放った熱線が、宙で激突する。

ゼット「チェストォォ──!!

ゼットの気合いと共に、ゼスティウム光線の威力が勝り、ゲネガーグへ炸裂する。
ゲネガーグが大爆発──!!

地球上での初勝利をおさめたゼットが、空へ飛び立つ。

ユカ「すっごぉ! 何だったの、あれ? ……あれ? 隊長、どこ行くんですか?」
ヘビクラ「ん、ちょっとトイレ」

ゼット「あの怪獣から散らばったメダルを回収してくれ。あれはこの宇宙を救う希望なんだ。お頼み申し上げます」
ハルキ「いや…… 言葉遣い、やっぱ変だな。ってか、メダル? 何のことだよ…… ゼット? ゼットぉぉ!!」


変身の解けたハルキが、地上の瓦礫の中から立ち上がる。
足元には、2枚のメダルがある。

ハルキ「ゼットが捜してるメダルって、これか?」

ヨウコ「ハルキぃ! ハルキぃ!」

どこからかメダルが飛来して足元に落ち、ヨウコがそれを拾い上げる。

ヨウコ「何、これ?」

ハルキ「ヨウコ先輩!」
ヨウコ「ハルキ!? 生きてる? 幽霊じゃないよね?」
ハルキ「押忍…… 生きてるっすよ」
ヨウコ「でも、どうやって?」
ハルキ「ウルトラマンゼットが」
ヨウコ「ウルトラマンゼット?」
ハルキ「あ…… あの巨人が、ギリギリで助けてくれて」
ヨウコ「悪運、強いなぁ…… 本部、ハルキ、生きてました。本当、ケガ無いの? 痛いとこは?」

物陰から誰かが、ハルキたちの様子を密かに窺っている。
その人物の手にも、3枚のメダルがある──


防衛軍、怪獣研究センター。
研究員たちが、ゲネガーグの断片を収めたカプセルを運搬している。

「本日出現した宇宙怪獣…… あ、すいません。ゲネガーグの断片1番から39番、収容完了です」
「了解」
「うわ!」

その1人、生化学研究部員カブラギ シンヤが、カプセルの1個を倒してしまう。

他の研究員「おい、気をつけろ、カブラギ」
カブラギ「すいません、すぐ収容します」
他の研究員「ったく、どんくさい奴だなぁ」
カブラギ「すいません」

他の研究員たちが去る。
カブラギは1人、カプセルからこぼれた肉片の後片付けにあたる。

カブラギ「わぁ、最悪だよ。大丈夫かなぁ…… なんだよ、これ、気持ち悪ぃなぁ」

肉片の中から、寄生生物セレブロが飛び出し、カブラギの顔に取りつく。

カブラギ「わ、わぁっ!? 何だよ、これぇ!?」

カブラギが苦しんで暴れるものの、やがてセレブロに完全に寄生されてしまう。
その顔つきが怪し気に変わり、カプセルの中から、ウルトラゼットライザーと奇妙な光体を取り出す。

カブラギ「キエテ カレカレータ(いい気分だ)──」


(続く)

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最終更新:2022年07月08日 19:20