俊介「いったいなんなんだ、あれは……」
洋平「あっ、また動き出したぞ!」
ターボロボを失った力たちの前に突如として現れ、巨大ジンバを一撃のもとに葬った謎の巨大要塞。
それが、各部から蒸気を吹き出しながら再び変形していく。
要塞の下部に設けられたハッチが、5人を出迎えるかのようにゆっくりと開いた。
俊介「力……」
力「よし…… 行ってみよう」
要塞の中は倉庫、あるいは工場、はたまたメカの格納庫のような佇まい。そして1人の人影も見当たらない。
力「ここは……」
直後、突然物音が響く。身構え、音のした方向へ向かう5人。
音の正体は、クレーンの揺れる音。
誰がなんのためにこの要塞を作ったのか、わからないままの5人に、背後から何者かが近づいてきた。
背後に気配を感じて、5人が一斉に振り向く。
男「何をしている?」
キャップとジャケット、サングラスの空軍ルックでキメたその男の正体は──
太宰博士「君たち、急ぐんだ!」
5人「博士!」
太宰博士がサングラスを取り去る。
太宰博士「詳しいことは後で話す。あれに乗り込むんだ」
博士の指さす先には、青と白のツートンカラーで彩られた大型戦闘機が駐機している。
洋平「ぶったまげた~……」
はるな「あれは?」
俊介「すごいぜ……」
力「博士、あれは?」
太宰博士「巨大戦闘機・ラガーファイター。みんな、急ぐんだ!」
5人「はい!」
6人がラガーファイターに乗り込む。
エレベーターでラガーファイターのコクピットへ上がった力たちだが、コクピットはまだ配線がむき出しのままになっていて、座席すら存在しない。
太宰博士が設計図を広げながら言う。
太宰博士「ご覧の通り、ラガーファイターはまだ完成してないんだ」
力「しかし博士、いつの間にこれを……」
太宰博士「ターボロボと一緒に作ったんだが、こっちはまだ未完成だった。しかし予期せぬ強敵の出現でターボロボは合体不能になり、こいつが必要になったんだ」
太宰博士の言葉を受けて、先ほどの敗北の光景が大地の脳裏をよぎる。
巨大ジンバの猛攻にさらされ、傷つき、動かなくなった愛車・ターボトラック──
太宰博士「今攻められたら…… このラガーファイターが完成しない限り、とても耐えきれん」
大地「博士、完成させるのに、どれくらいかかるんですか?」
太宰博士「わからない…… とにかく、時間が欲しい」
その頃暴魔城では、ジャーミンがまたもラゴーンから折檻を受けていた。
ジャーミンの呻きが暴魔城の外にまで響き渡る──。
ラゴーン「ええ~い、ジャーミン!! ヤミマルはターボロボを倒した。暴魔百族にも入れぬ半端者に先を越されて、いったいお前はそれでも、最高幹部と言えるのか!?」
暗闇暴魔ジンバが敗れた挙げ句、流れ暴魔ヤミマルの操り人形にされた醜態に、ラゴーンの怒りは更に増していた。
ジャーミン「もう一度…… チャンスを……」
ラゴーンに触手で首を絞められ吊るされ、ジャーミンが悶え苦しんでいる。
ズルテン「ら、ラゴーン様!」
ラゴーン「黙れ!!」
ズルテンが怯えながらもラゴーンをなだめようとするが、ラゴーンはそれを一蹴し、触手から電流を放ってジャーミンをさらに痛めつける。
ゴミのように捨てられ、床に這いつくばるジャーミン。どうにか体を起こし、ラゴーンに意見する。
ジャーミン「ラゴーン様! ターボロボは、ヤミマルに先を越されましたが…… ターボレンジャーは、必ずやこの私が…… 倒してご覧に入れます……!」
ズルテン「かっとび暴魔ズルテンもお供します!」
ラゴーン「わかっておろうな? 失敗したら二度と生きて戻ってくることは許さぬぞ!?」
ジャーミン「……はっ!」
ラゴーンからの最後通告に、ジャーミンが首を垂れる。
一方、ターボレンジャーの要塞では力たちがラガーファイターの整備に加わったが、難航している。
大地だけは1人、置き去りにされたターボトラックのもとへ向かい、再び乗り込もうとしていたが、ターボトラック内部のメカニズムが爆発してその行く手を阻む。
タラップから落下し、地面を転がる大地。そこにジャーミンとズルテンが出現。
ズルテン「でゅふふ、なんてザマ!」
大地「ジャーミンっ……!!」
ラガーファイター内部──
はるな「Aコード、E回路に接続」
太宰博士「間違えるなよ?」
洋平と俊介は、お互いの腕に絡まった配線をほどくのに悪戦苦闘している。
洋平「あやとりやってる場合じゃないんだよ!」
俊介「こんなことで敵が攻めてくるまでに、完成できるのかよ~?」
力「そういえば、大地は?」
はるな「──大地!? 大地が!!」
ラガーファイター内に持ち込まれたコンピューターを見ていたはるなが声を上げる。
モニターに注目する力たち。大地がジャーミンに鞭で打たれている映像が映っている。
力「大地の奴、こんな時に!」
ジャーミンに蹴られ、吹き飛ぶ大地──
太宰博士「行くんだ! ラガーファイターは私に任せろ」
力、洋平、俊介、はるな「はい!」
4人がターボレンジャーに変身して現場へ急行する。
大地はジャーミンとズルテンに一方的に攻撃され、ボロボロに傷ついている。
そこへ4人が到着。
レッドターボ「待てっ!」
ジャーミン「ターボレンジャー!!」
ジャーミンの注意がそれた隙に、またターボトラックに乗り込もうとする大地だが、もはやタラップをつかむこともままならないほど疲弊している。
ターボレンジャー「大地!」
ジャーミン「はぁーっ!!」
大地に駆け寄ろうとする4人をジャーミンが阻む。
ジャーミンの口から放たれる火炎弾の直撃を受けて吹き飛ぶ4人。
ズルテン「やったぃー!」
ジャーミン「お前たちも地獄へ送ってやる! 今こそこの肉体の秘密を見せてやる……」
ジャーミンの全身から暴魔特有の邪悪な気が噴き出す。
ジャーミン「我が身に封印せし暴魔獣、我が命を得て大復活するのだ! 我が分身にて最後の暴魔獣…… クロコボーマ!!」
ズルテン「あらららら、なんと体の中から!」
そしてジャーミンの口から吐き出された紫色のオーラが背後に結集し、黒子のように幕で顔を覆った暴魔獣・クロコボーマとなった。
ターボレンジャー「ターボレーザー!!」
ジャーミンを狙って4人が一斉に射撃。それをクロコボーマが盾となって阻む。
ターボレンジャー「ああっ!」「なんだ!?」
ジャーミン「フフフフフ、クロコボーマは私の黒子に徹する暴魔獣。どんな攻撃もすべて自分の体で引き受けてくれるのだ」
ズルテン「でゅふふ、こりゃ~すごい! これでターボレンジャーもくたばるってんだぃ!」
イエローターボ「Bボーガン!!」
イエローの放った矢が刺さっても、クロコボーマは平然としている。
ピンクターボ「えいっ!」
ピンクがWステッキでクロコボーマを殴りつけるが、クロコボーマはWステッキを軽々と受け止めてアッパーで反撃。
垂直に殴り飛ばされ、落下するピンク。
レッド、ブルー、イエロー「ピンク!」
ジャーミン「やれ、クロコボーマ!!」
クロコボーマが鞭を振るい、4人を薙ぎ払う。
ズルテン「大霊界へ行け、ターボレンジャー!」
自分は戦っていないのに調子に乗るズルテン。そこにターボトラックから煤が浴びせられる。
ズルテン「あらぁっ!?」
ジャーミン「!?」
レッドターボ「トラックが!」
イエローターボ「動き出したぞ!?」
ジャーミン「ターボトラックが動くなんて!」
ターボトラックを動かしているのはもちろん大地。ターボトラックの中から取り出した機械を小脇に抱えている。
大地「走れ! 走れ、ターボトラック!!」
大地がアクセルペダルを力いっぱい踏み込むも、ターボトラックの反応は鈍い。動いているだけでも奇跡的な状態なのだ。
レッドターボ「いったい、あいつは何を考えているんだ!!」
ジャーミン「覚悟!! 喰らえ、はぁーっ!!」
ジャーミンの口から放たれる火炎弾の直撃を受けてまたも吹き飛ぶ4人。
ジャーミン「ターボトラックを復活させるものか!」
ターボトラックを追いかけるジャーミン。
ターボトラックはガタガタと走っている。
大地「走れぇっ!! 走れ──っっ!!」
ターボトラックがだんだんとスピードを上げていく。
大地(さぁ来い、ジャーミン……)
そこに上空から、暴魔戦闘機ガーゾックの編隊が襲来。その中の1機にはジャーミンが乗っている。
ジャーミン「ターボトラックごと吹き飛ばしてやる」
ガーゾックが光線を発射して地上を攻撃。ターボトラックが爆発の中を突っ切る。
大地「さぁ来い、ジャーミン! かかってこい!! これでも喰らえっ!!」
ターボトラックがキャノン砲で反撃。ガーゾックを次々と撃ち落としていく。
ジャーミン「小癪な!! お前の運命も時間の問題だ!!」
大地「こっちだ! 俺の心臓はここだ!!」
ガーゾック編隊の攻撃はなおも続く。
ジャーミンの攻撃で変身が解けた4人が、固唾を飲んで大地を見守る。
力「……そうか! 大地は囮になろうとしているんだ!! ターボトラックに敵の目を引き付け…… その間に、ラガーファイターを完成させようとしているんだ」
大地「ターボトラック…… こんなことでへこたれるんじゃないぞ!! なんだ、このくらい…… がんばれ! がんばるんだ!!」
コクピットの中の大地は血まみれになっている。
そして要塞内では、太宰博士がラガーファイターの整備を完了しようとしていた。
太宰博士「大地…… すまん! あと少しだ…… がんばってくれ!!」
太宰博士がコクピット内の計器のスイッチを入れていく。
しかし、敵の猛攻についにターボトラックは限界を迎え、機能を停止してしまった。
ターボトラックのコクピットが爆発する。
大地「すまない、ターボトラック…… こんな目に遭わせて……! ラガーファイターを完成させるためには、他に方法はなかったんだ! 許してくれ……」
失神する大地。
ジャーミン「ハハハ、とどめだ! 思い知らせてやる!」
ジャーミンのガーゾックが巨大ミサイルを取り出す。
辛くも目を覚ました大地は、ターボトラックのキャノン砲発射スイッチに手を伸ばすも、それをつかむことができない。
ジャーミン「覚悟!!」
ジャーミンがターボトラックに照準を合わせる。
太宰博士「危なーいっ!!」
その時、ターボトラックに乗り込んできた太宰博士が、キャノン砲の発射スイッチを押した!
キャノン砲の一撃がジャーミンのガーゾックを粉砕する。
ズルテン「ジャーミン様ーっ!!」
太宰博士「大地! 大丈夫か!?」
大地「……博士……」
太宰博士が大地を抱き起こす。
太宰博士「ありがとう! 君のおかげで、ラガーファイターが完成した」
大地「! ……よかった……」
うなずく大地。
太宰博士「君とターボトラックのおかげと言うべきだね。つらかったろう…… ターボトラックを、こんな目に遭わせて……」
大地「……いいえ……」
太宰博士「わかってるんだよ。君がどれだけ、このターボトラックを愛しているか…… 任せてくれ。ターボトラックは、私が治す!!」
大地「ありがとうございます…… 博士……!」
うなずく太宰博士。
太宰博士「早く、ラガーファイターへ」
4人のもとへ向かう大地に、満身創痍のジャーミンとクロコボーマが立ちはだかった。
大地「ジャーミン!!」
力たちも大地に駆け寄る。
ジャーミン「貴様らを倒すまでは…… 貴様らを倒すまでは…… 死なん……!!」
大地「行くぞっ!!」
力、洋平、俊介、はるな「おう!!」
5人「ターボレンジャー!!」
5人がターボレンジャーに変身。
一方のジャーミンは、醜い蛇の素顔へと変わってゆく。
ジャーミン「湧け…… ウーラァァ──ッッ!!」
ジャーミンの絶叫を受けて戦闘員・ウーラー兵が出現。
ターボレンジャーとジャーミンの最後の戦いが始まった。
ブラック以外の4人がそれぞれの固有武器や技でウーラー兵を迎え撃つ。
ブラックはジャーミンと、顔を覆っていた幕をはぎ取ったクロコボーマを同時に相手取っていた。
ジャーミンが鞭でブラックの首を絞め、クロコボーマと前後から火炎弾を浴びせる。
ターボレーザーから分離させた剣でクロコボーマの胴を貫き、返す刀でターボレーザーを発砲するブラック。直撃を受け、ジャーミンと、同調しているクロコボーマの顔から同時に緑色の血しぶきが噴き出す。
すかさずクロコボーマの腹から剣を引き抜いて、向かってきたジャーミンを切りつけると、固有武器・Tハンマーを取り出し──
ブラックターボ「ハンマーブレイク!!」
十字に振り下ろされたTハンマーが、ジャーミンとクロコボーマを切り裂く!
大爆発──!!
ターボレンジャー「ビクトリー!!」
しかし、ジャーミンは執念で再び立ち上がってきた。
ブラックターボ「ジャーミン!!」
ジャーミンが最後の力を振り絞り、口から邪気でできた蛇を吐き出すと、その蛇が巨大化してクロコボーマになる。
それと同時にジャーミンが絶叫と共に倒れ伏し、爆散した。
姫暴魔ジャーミンは今度こそ最期を遂げた。
ブラックターボ「ラガーファイターへ急ぐんだ!」
レッドターボ「ラガーファイター!?」
ブラックターボ「博士が完成させてくれたんだ」
ターボレンジャーはいったん要塞へ戻り、ラガーファイターに乗り込む。
レッドターボ「ラガーファイター、発進!!」
要塞の上部ハッチが開き、ラガーファイターが出撃。ガーゾック編隊がこれを迎え撃つ。
レッドターボ「ファイタービーム!!」
ラガーファイターの機体下部に装備されたレーザー砲が火を噴き、ガーゾックを一掃。
レッドターボ「変形シフト・ターボラガー!!」
ラガーファイターが4つのブロックに分かれ、人型ロボットへと再合体・変形してゆく。
レッドターボ「セットアップ! ターボラガー!!」
ターボレンジャーの2号ロボ・ターボラガーが巨大クロコボーマの前に舞い降りた。
レッドターボ「キックオフ!!」
ラグビーボール型爆弾・バトルボールを取り出し、巨大クロコボーマめがけて蹴りつけるターボラガー。
敵がひるんだところに連続パンチを見舞い、吹き飛ばす。
掌から破壊光線を放って反撃する巨大クロコボーマ。ターボラガーは空へ飛び、きりもみ回転しながらパンチを見舞う。
レッドターボ「ビッグラガーガン!」
ピンク、イエロー「発射!!」
今度は両肩のキャノン砲で巨大クロコボーマを攻撃。
レッドターボ「ラガージャンプ!!」
最後に大きく飛び上がり──
レッドターボ「スクリューラガーキ──ック!!」
エネルギーを込めた両足蹴りで巨大クロコボーマを粉砕した!
その頃、太宰博士もターボトラックの修理を終えていた。
だが──ターボトラックのコクピットに入ってきたのは、大地でも力たちでもなく、ヤミマル。
ヤミマル「貴様が太宰博士か」
太宰博士「ヤミマル……!」
ヤミマル「初めまして」
ヤミマルが太宰博士に剣を突き付ける。
そんなことはつゆ知らぬ5人がターボトラックに駆け付けた時、すでにコクピットはもぬけの殻となっていた。
大地「博士……?」
大地が、シートの上に落ちた博士のキャップと、流星の刺繡が入ったハンカチを認める。
大地「これは!」
力「あっ! しまった…… 博士はヤミマルに!」
暴魔城──
ラゴーン「ヤミマル…… なかなかやるではないか…… あれほどの優れ者、欲しいものじゃ」
ラゴーンが腕を組んで感嘆する。
ラゴーン「う~ん…… 欲しい」
危機感に顔を引きつらせるレーダ。
力たちは手分けして太宰博士とヤミマルを探したが、一向に見つかる気配はない。
俊介「ダメだ。この辺りにはどこにもいない」
大地「博士……!」
大地が博士のキャップを握りしめる。
新しい仲間・ターボラガーが 加わったのもつかの間、太宰博士は、 ヤミマルに連れ去られてしまった!
果たして、太宰博士の運命は? ターボレンジャーは、この危機を 切り抜けることができるのであろうか!?
|
5人「博士────っっ!!」
最終更新:2024年03月25日 18:50