高速戦隊ターボレンジャーの第39話

暴魔城の最奥に忍び込む2つの影があった。流れ暴魔ヤミマルとキリカだ。
その部屋の中では、6人のウーラー兵によって、怪しく光る宝石が守られている。

ヤミマル「ついに見つけたぞ、暴魔城の(いのち)(いし)! 暴魔城と暴魔百族の、命の源……」
キリカ「いよいよ私たちの夢がかなう時が来たのね」
ヤミマル「ラゴーンもターボレンジャーもみんなおしまいだ。俺たち流れ暴魔の天下となるのだ!」

互いの顔を見合わせてほくそ笑む2人──。



ラゴーンの最後



力が道を歩いていると、すれ違った女性が突然腹を押さえてうずくまった。

力「君! ……どうしたんだ?」

思わず駆け寄る力。女性が振り向く。
だが、その顔は──

力「……っ! 月影 小夜子……!!」

さらに上空から、暴魔蝙蝠ドラグラスに乗ってヤミマルも現れる。
力を踏みつけるドラグラス。
そこに大地たち4人が駆けつけてきた。

大地、洋平、俊介、はるな「力ーっ!!」
キリカ「スカーレットビーム!!」

小夜子は素早くキリカに変身し、手にした剣から光線を撃って4人を吹き飛ばすと、ヤミマルとともにドラグラスに乗って飛び去る。
ドラグラスは、まだ力をつかんだまま──。


一方、その様子は、ターボビルダー基地にも届いていた。

太宰博士「力っ!」
シーロン「いったい力はどこへ!?」


力が暗闇の中を落下している。
やがて地面にたたきつけられる力。周囲は一面の闇。
力が辺りを見渡していると、空間に突然光がともり、そこには暴魔大帝ラゴーンがいた。
力は暴魔城の大広間に連れてこられたのだ。

ラゴーン「お前は、炎 力!?」
力「何者だ!?」

続いて場に現れたのはヤミマルとキリカ。力が身構える。

力「……っ! ヤミマル!」
ヤミマル「暴魔大帝ラゴーン様さ」
力「何、ラゴーン?」

ラゴーンを指さす力。

力「貴様がラゴーンか!!」
ヤミマル「さてラゴーン様、お手並みを拝見いたしますかな」
ラゴーン「ヤミマル、何を企んでおる?」

ヤミマルは何も答えず、キリカと互いの手のひらを重ね合わせる。
2人の掌の間に赤い糸が走る。
そして腕を突き出し糸を放つと、糸は蜘蛛の巣状の結界となって力とラゴーンを閉じ込めてしまった。

キリカ「見たか、ヤミマル・キリカの赤い糸のバリア!」
ヤミマル「ひとたびこの中に入ると、2人のうちどちらか1人が死ぬまで、決して破れることのない悪魔のバリアなのさ」
力「なんだとぉ!?」

ラゴーンが口から火炎弾を吐き、結界を破ろうとするが、びくともしない。

力「レッドターボ!!

力も変身してGTソードで結界を切りつけるが、やはり無傷。

キリカ「赤い糸のバリアは、どちらかが死ぬまでは破れないと言ったはずよ!」
ヤミマル「かと言って、長居し続けると、2人の命を吸い取ってしまう!」
レッドターボ「ぬうっ……」
ラゴーン「おのれ、謀ったな!」
ヤミマル「今頃気づいても遅いぜ!!」

ヤミマル、ラゴーンとレッドターボに背を向け、拳を握って勝利をかみしめる。

ヤミマル「この時が来るのを待ち続けていたのだ。さぁ戦え…… 戦え!! お前たちは戦わざるを得ないのだ」

ラゴーンを睨むレッド。

レッドターボ「行くぞ、ラゴーン!!」

そう言って飛び掛かるが、ラゴーンは火炎弾を吐いて迎撃。
墜落するレッドをあざ笑いながら、ヤミマルとキリカは大広間を後にする。


命石の部屋にヤミマルとキリカが突入。警備のウーラー兵を軽々となぎ倒し、命石に近づいてゆく。
そこに偶然ズルテンが現れる。

ズルテン「あらっと!? どうしてお前たちがここへ!?」
ヤミマル「知れたことよ。こいつをいただくためさ」

ヤミマルが命石を奪い、中空にかざすと、命石から激しく光が発せられ、暴魔城が揺れ始めた。
ズルテンは転倒し、ウーラー兵たちも、そしてレッドターボも身動きが取れない。

ラゴーン(もしやヤミマルめ、暴魔城の命石を!? そうか…… そういうことか……!!)

なおも突撃するレッド。
ラゴーンは口からガスを吐いてレッドを吹き飛ばすと、剣を取り出し、触腕を伸ばして切りつけてきた。
強化スーツが切り裂かれ、火花が散る。


一方、命石を奪ったヤミマルとキリカはドラグラスで地球に戻ってきていた。
地上に降り立った2人の前に、ターボビルダーとともに大地たちが立ちはだかる。

大地「待て!! ヤミマル、どこへ行く気だ!!」
ヤミマル「聞くだけ野暮だぜ」
はるな「力は…… 力はどうしたの!?」
ヤミマル「暴魔城へご招待したのさ」


暴魔城内では、ラゴーンが一方的にレッドターボを痛めつけ続けている。
ラゴーンの伸びる触腕に身動きを封じられ、攻撃も届かず、いたぶられるレッド。


洋平「ラゴーンと!?」
ヤミマル「驚くのはまだ早い! その2人が戦っている間に、ラゴーンもレッドも、暴魔城もターボビルダーも、みんな滅んでしまうのだ!」
はるな「えっ……!?」
大地「なんだと!?」

キリカが命石を取り出す。

キリカ「見よ、暴魔城の命石! これが暴魔城を招き寄せ、お前たちのターボビルダーに激突させるのさ!!」

ついに明かされた恐るべき企てに、思わず顔を見合わせる4人。

太宰博士「流れ暴魔ヤミマルにキリカ…… なんという恐ろしい奴らだ……」

シーロンは何も言わずに顔を伏せる。

俊介「ヤミマル、キリカ、この先は一歩も通さんぞ!!」
4人「ターボレンジャー!!

4人が変身。

ヤミマル「5人そろわぬターボレンジャーなど、俺1人で十分だぜ!! 行くぞっ!!」

ヤミマルが面頬を装着し、槍をふるってターボレンジャーを襲う。
イエローを投げ飛ばすと、今度は斧を取り出し、飛び掛かりながらブルーとイエローを切りつけ、岩を蹴って方向を変え、ピンクとブラックにすれ違いざまのキックを喰らわせる。
最後は銃を連射し、吹き飛ばされた4人は崖を転がり落ちていった。
そんな4人をひとしきり嘲笑った後、ヤミマルがキリカを促す。
命石を天高く掲げるキリカ。

キリカ「命石! 呼べ、暴魔城を!!」

命石の力で、暴魔城が地球を目指して動き始めた。
ズルテンが大広間に現れる。

ズルテン「た、た、大変ですラゴーン様! ヤミマルとキリカが命石を…… あっちっ!!」

赤い糸のバリアにうっかり触れたズルテンが感電。火花が散る。

ズルテン「……このままでは、暴魔城がターボビルダーにぶつかります~!」
レッドターボ「なんだと!?」
ラゴーン「うろたえるな、ズルテン!! それぐらい気づかぬわしだと思っているのか!?」

レッドターボを絞め上げながら、ラゴーンがズルテンを一喝。

ラゴーン「愚かなヤミマルめ、このわしがレッドごときを持て余すとでも思っているのか。レッド、お前の命もここまでだ!!」

手にした剣でとどめを刺そうとするラゴーンに、レッドがターボレーザーを発砲する。思わずレッドを落としてしまうラゴーン。
すかさず触腕を伸ばしてレッドを再び捕らえようとしてくる。
レッドが触腕の1本を抱え、GTソードで切断した。続いて剣を握っていた触腕も切り落とす。
ラゴーンの悲鳴が響く。

ズルテン「あぁ~っ、ら、ラゴーン様ぁ~~っ!!」
レッドターボ「……ラゴ──ンっ!!」
ラゴーン「おぉぉのぉれぇぇぇぇっっ!!」

ラゴーンは切り落とされた触腕の断面から火花を放ち、とどめを刺そうと迫るレッドを近づけさせない。
ついにレッドのスーツが爆発する。
勝ち誇るラゴーン──

ズルテン「ひぇぇ~っ、ターボビルダーにぶつかっちゃうよ~っ」


地球では、ヤミマルとキリカが暴魔城の到来を今か今かと待ち続けている。

ヤミマル「さぁ来い暴魔城! みんな吹っ飛ばしてやるんだ! 生き残るのは俺とお前…… 2人で世界を支配するのだ」

一方、ターボレンジャーの4人は、傷つきながらも崖から這い上がってきていた。
空が急激に暗くなる──成層圏に突入しようとしている暴魔城が、太陽の光を遮ったのだ。

シーロン「きゃっ、暴魔城が!」
太宰博士「力……」

暴魔城内では、ラゴーンの火花攻撃にレッドが攻めあぐねている。
だが──

レッドターボ「ラゴーン、覚悟ぉっ!! いやあぁぁぁ──っっ!!」

意を決してラゴーンの懐に飛び込み、GTソードを突き立てる!
苦しみ、うめきながらも両手でレッドの首を締めるラゴーン。
とうとう地球に到達した暴魔城がターボビルダーに接近していく中、レッドがGTソードをさらに深く押し込んでいく。
やがてラゴーンの体が爆発。吹き飛ばされたレッドの変身が解ける。

ズルテン「あぁ、負けた…… ラゴーン様が負けた……」

暴魔城の動きが突然止まった。赤い糸のバリアも消滅。
息も絶え絶えの力。

力「……勝ったぞ……!」

その時、青白い光が暴魔城の中から這い出し、触手のように動いてキリカの手から命石を奪い取る。

キリカ「命石が、暴魔城へ!」
ヤミマル「なぜだ!?」

案の定、光の触手を放ったのはラゴーンだった。
命石を奪い返したラゴーンは、その身に命石を取り込み、レリーフのようだった今までの姿から一変して人型に変化を遂げる。

ラゴーン「暴魔城は誰にも渡さん…… 暴魔城と暴魔百族を守るために生き返らん……」

ラゴーンが口から破壊光線を吐き、力を吹き飛ばす。その威力は先ほどまでの比ではない。
直後、暴魔城から巨大化したラゴーンが降り立ち、ヤミマルとキリカを睥睨する。

キリカ「あれは!?」
ヤミマル「まさかラゴーンが……」
ラゴーン「愚か者…… 暴魔大帝ラゴーンを侮るな!!」

そこにターボレンジャーの4人も駆けつける。
ターボレンジャーは、ついにラゴーンの正体を見た。

イエローターボ「あれがラゴーン……」
ブラックターボ「レッドはいったい、どうしたんだ!?」

巨大ラゴーンの破壊光線で、ヤミマルとキリカが爆炎の中に消える。
暴魔城は再び宇宙へと後退していった。
続いてターボビルダーを破壊しようと迫る巨大ラゴーン。

ブルーターボ「あぁっ!」
ピンクターボ「ターボビルダーが危ない!」
ブラックターボ「ターボロボ!」

ターボビルダーからターボロボが出撃し、巨大ラゴーンに立ち向かうが、レッドを欠くターボロボは動きに精彩がない。
空中前転からのターボロボパンチも、巨大ラゴーンが胸を張っただけで難なくはじき返されてしまう。

ブラックターボ「ターボカノン!!」

光線銃・ターボガンの連射で巨大ラゴーンを攻撃するターボロボ。だが巨大ラゴーンは微動だにしない。

ブラックターボ「よし、高速剣だ!」
ブルー、イエロー、ピンク「OK!!」

ターボロボの両目が輝き、高速剣が取り出される。
ジャンプして勢いをつけ、高速剣を振り下ろす──が、巨大ラゴーンの固い皮膚に、高速剣が折られてしまった。
腹から触腕を伸ばしてターボロボに巻き付け、電撃を浴びせる巨大ラゴーン。
固唾を飲んで戦いを見守る太宰博士に、シーロンが話しかける。

シーロン「博士! このままじゃ、みんなやられてしまいます!」
太宰博士「レッドがいてくれれば……」

その時、上空から、暴魔戦闘機ガーゾックが現れた。胴体着陸するガーゾック。
その中から出てきたのは──レッドターボ。
一直線にターボビルダーへ向かう。

太宰博士「レッド! 生きていたのか……!」
シーロン「力……」

今、レッドターボがラガーファイターに乗り込み、4人を助けに出撃した。


ラガーファイターの機体下部に装備されたレーザー砲が火を噴き、巨大ラゴーンを引きつける。

ブラックターボ「レッド!」
レッドターボ「行くぞみんな! スーパーシフトだ!」

ターボロボが巨大ラゴーンの触腕を振りほどき、上昇。
ラガーファイターから変形したターボラガーと合体してスーパーターボロボになる。

ブラック、ブルー、イエロー、ピンク「完成!
レッドターボ「スーパーターボロボ!!

ゆっくりとスーパーターボロボに歩み寄る巨大ラゴーン。

レッドターボ「スーパーミラージュビーム!!

それに対し、間髪入れずに必殺光線を放つが、巨大ラゴーンは全くの無傷。

レッドターボ「スーパーミラージュビームも、効かないとは……」
太宰博士「よーし。こうなったら、最後の大合体だ」
レッドターボ「……みんな、行くぞ!」
ブラック、ブルー「おう……」
レッドターボ「博士、行きます!」
ターボレンジャー「合体! スーパーターボビルダー!!

まず、ターボビルダーが要塞基地から戦闘形態に変形。
そしてスーパーターボロボがその中に納まり、合体を完了する。

レッドターボ「スーパーターボビルダービーム、スタンバイ!」

5人と太宰博士が計器を操作していく。

レッドターボ「……行くぞ! ファイヤー!!

スーパーターボビルダーの胸から、スーパーミラージュビームとターボビルダーのエネルギーを1つにしたT字型の光線が放たれる。
スーパーターボビルダービームは巨大ラゴーンを直撃。さしもの巨大ラゴーンも跡形もなく燃え尽きる。


そのころ、ヤミマルとキリカは暴魔城に戻り、ウーラー兵たちを押しのけて玉座についていた。

ヤミマル「ターボビルダーとレッドを倒せなかったのは残念だが、ラゴーンは死んだ!」
キリカ「これから暴魔を指揮するのは私たち2人」
ヤミマル「流れ暴魔こそ、人間と暴魔、2つの世界の支配者となるのだ!」

そこに物陰からズルテンが現れ、ウーラー兵を一喝する。

ズルテン「何をしてんだってんだ、ご挨拶せんか、ご挨拶を!」

どよめくウーラー兵たち。

ズルテン「へへっ、やっぱりこれからは、若者の時代ですよねってんだ! さぁさぁ、ご挨拶ご挨拶! ……これからもヨロシク」

うやうやしく頭を下げ、ゴマをするズルテン。ウーラー兵たちもズルテンに従う。
満足げに笑う、ヤミマルとキリカ──。



とどまるところを知らぬ、若き流れ暴魔2人の野望!

未来を賭けて、若者たちの新たなる戦いが始まる。
果たして、微笑むのは女神か? 悪魔か!?



ラゴーン(暴魔大帝ラゴーンは死せず……! むははははははは……!!)



つづく

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2021年03月18日 23:25