DOGDAYSの第11話

シンクはミルヒを背負い、崩れゆくキリサキゴボウから逃れようとしていたが―――
シンク(まずいな・・・砦に戻るには足場から離れすぎてる。でも、何とかして姫様を安全な場所まで・・・)


?「姫様!姫様――!」
「勇者様―――」

シンク「この声・・・」
ミルヒ「リコ!エクレール!」

リコッタとエクレールが乗ったハーランが来た。

エクレール「遅くなりました姫様!」
リコッタ「ただいま到着!であります!」


EPISODE 11 「夜空に花が舞うように」



シンクとミルヒを乗せて、ハーランが離れていく。

シンク「エクレ、無事でよかった」
エクレール「当然だ。すぐ戻ると言っただろう」
ミルヒ「リコも本当に・・・」
リコ「はいであります!」

リコ「ここに来る途中で、ちょうど落下中のエクレを見つけて合流したのでありますよ。
で、姫様と勇者様のピンチと聞いて」

シンク「なるほど」
リコ「ハーラン!あと一息、頑張って欲しいであります!」


森の奥、地面に突き刺さった妖刀が刀身を蠢めかせていた。。
そこにダルキアンが来た。

ダルキアン「それにしても、我らの姫君と勇者殿に脅かされる。妖刀の贄となった魔物をああも見事に退治なされるとは」

ユキカゼとタツマキも来た。
ユキカゼ「拙者は存知あげておりましたよ。姫様もシンクもああ見ても、ちゃんと出来る子だと」
ダルキアン「そうであったな。さて、ここからは拙者らのお役目でござる!」
ユキカゼ「はい!」


妖刀は刀身をユキカゼとダルキアンに伸ばすも、二人はかわしていく。

ユキカゼ「浮世に仇なす外法の刃・・・封じて回るが我らの務め」
ユキカゼと集まったオンミツ達の持つ短刀が光りだし、
地面に紋章が浮かんだ。

ユキカゼ「大地を渡って幾千里。浮世を巡って幾百年」
「天狐の土地神ユキカゼと討魔の剣聖ダルキアン!」
「流れ巡った旅の内、封じた禍太刀・・・」

妖刀が刀身を伸ばしてきたが、ユキカゼとダルキアンは紋章の盾で防ぎ、その後ろに無数の光の剣が浮かんだ。

ユキカゼ「五百と九本!」

ユキカゼ「天地に外法の華は無し!」

光の剣が妖刀に突き刺さり、動きを止めた。

ユキカゼ「朽ちよ!禍太刀!」

ダルキアンの刀に、光の剣が集まり、巨大な光の刀を象った。

ダルキアン「神狼滅牙、天魔封滅!!」

ダルキアンの光の刀の一撃が、妖刀を飲み込んだ。

その中で妖刀が砕けちり、
そこから吹き上がった桃色の光が暗雲を吹き飛ばした。

キリサキゴボウの体が完全に崩壊し、土塊に戻った。


ダルキアン「うん、無事にすんだか」
ユキカゼ「はい御館様、封印刀の中にしっかりと封印しました」
ダルキアン「うむ」

ダルキアンが光の刀を消した。

ダルキアン「砦にいらっしゃる姫様達に報告にゆかねばな」
ユキカゼ「はい!拙者が行って参ります」
ダルキアン「ああ」
ユキカゼ「オンミツ一同!付いて行きたいもの拙者につーづけ!」


砦にミルヒ達が戻った。
ミルヒ「と言う訳で、私はこの子の母親に頼まれて、それで妖刀のことを聞いて」
シンク「エクセリードとパラディオンが力を貸してくれて、今に至る」
ユキカゼ「なるほど、そうでござったか」

ユキカゼが傅いた。
ユキカゼ「姫様、改めてお見事にございます。魔物の多くは呪いに見舞われた悲運の存在。
それをただ、退治するのみならず、拙者の同胞を救って下さいました」
ミルヒ「いいえ、私一人では何も・・・シンクやレオ様のお陰です」

ユキカゼ「勇者殿もお見事にござる。後でうんとなでてあげるでござるよ」
シンク「はは、ありがとう」
エクレール「むう」
リコ「うふ」

ミルヒ「ねえユキカゼ、この子の母親はやっぱり、もう・・・」
ユキカゼ「姫様がお会いになったその子の母親は、魔物の血肉に取り込まれた中、我が子を思う一心で心を繋いでいたものと思われます。魔物としての五体が滅び、この子が助かった今、母狐の魂は天に還ったのではと・・・」
ミルヒ「そうですか・・・」
シンク「姫様、その子狐。拙者がお預かりしても宜しいでしょうか?」
ミルヒ「あ、はい」
ミルヒは子狐をユキカゼに渡した。
ユキカゼ「元気になるまで我が家で面倒見たいと存じます」
ミルヒ「はい、お願いします」

エクレール「後はレオ様か。お怪我の具合悪くないといいのだが」
シンク「うん」

病室で横になっていたレオにルージュが報告していた。
ルージュ「砦の防衛隊とビスコッティ二番隊の兵士達、負傷者は出てますが、死者や行方不明者は出ていません。魔物の様子が中継されていたため、各地の戦闘は停止中、両国民とも、レオ様やミルヒ姫様達の安否を心配しております」
レオ「そうか・・・ホールを開け、報道陣を呼べ。代表放送を行う」
ルージュ「はい」


リコッタ「心配するビスコティ・ガレット両国民に向けて、急遽行われた代表放送。
その内容は、レオ様による謝罪とこの日の戦を中止とするものでした。
中止の原因は巨大な魔物が現れたこと、それにより負傷者が出たこと、魔物出現の原因調査と安全確保のため」

レオ「魔物が現れた原因はまだ分からんが、今回は儂が調子に乗って国の宝剣を賭けようなどと言い出したことに対する天罰かもしれん。皆が楽しみにしてた大戦をこの様な形で終了せざるを得なかったこと、興行主として心から謝罪したい。すまなかった」
「次はこの様なことがない楽しい戦を、近機に用意する。無論ビスコッティ側ともきちんと協議をしてな」
「儂は今回のことを経て、領主としてより一層精進することを心に決めた。こんな頼りない領主であるが、ガレットの皆は今後も、儂についてきてくれるであろうか?」

ガレットの兵士達は歓声を上げた。
レオ「ビスコッティの皆も儂の戦に参加してくれるであろうか?」
ビスコッティの兵士達も歓声を上げた。

レオ「感謝する、ありがとう!」


リコッタ「レオ様の謝罪があって・・・そしてその日の夜には、中断した戦の埋め合わせも兼ねて、姫様の臨時ライブが開催されることになったのであります!」


アメリタ「まずは進行表どおりにこの位置に移動してください」
ミルヒ「はい」


天幕の外で、ロランとシンクが話していた。
ロラン「勇者殿、話はあらかたエクレールから聞いたよ。ありがとう、君のお陰で大事に至らず済んだ」
シンク「でもすみません、エクレールに怪我させちゃいました・・・」
ロラン「いや、あれも騎士だ。君が気に病むことじゃない。むしろ名誉の負傷と言う奴だ」
シンク「でも、フロニャルドって平和な世界だと思ってたんですが、あんな魔物もいるんですね・・・」
ロラン「そうだな。あれだけ大きなものは私も初めて見た。だが、聞いてるだろ。守護地域を一歩出れば、危険なことはそれなりにある。我々が日々行ってる戦も、そんな脅威と戦うための力を忘れてしまわない様に、という意味もあるのだよ」
シンク「はい!」
ロラン「傷つける力を振るうのは良いことでは無いが、戦わず蹂躙されるばかりでは、大切な人を守ることも出来ないからね」
シンク「・・・はい」

そこにエクレールが来た。
エクレール「兄上、お話中申し訳ありません。現場警備についてスタッフが相談をしたいと」

ロラン「ああ、分かった」
「では、また後でな。勇者殿」
シンク「あ、はい!」

ロランが離れていった。

シンク「エクレ、動き回って大丈夫なの?」
エクレール「問題ない・・・時に貴様、食事はすませたか?」
シンク「ううん、まだ」
エクレール「向こうに露店が出ている、食べに行くか?」
シンク「あー、いいねえ」

そんな2人の様を、リコッタとユキカゼが木に隠れていた。
リコッタ「おおー、何やら興味深げな展開でありますよー」
ユキカゼ「ござる」



エクレール「ほら」
シンク「ありがとう、これは?」
エクレール「ココナクッカだ。気軽に食べられるし、栄養もある」
シンク「へー、いただきまーす」


そんな2人の様を、リコッタとユキカゼが屋台の横に隠れて見続けていた。
リコッタ「うう・・・エクレが男の子を食事に誘えるようになるとは、リコッタ感激でありますよー」
ユキカゼ「雰囲気も悪くないでござるよー」


エクレール「お前に言わねばならぬ事があった。」
シンク「ん?」
エクレール「私一人では姫様を救うこと叶わなかった。お前の勇気と健闘に、ビスコッティ親衛隊長として敬意を表する・・・」
シンク「光栄であります、親衛隊長。でも、エクレも一人だったら一人だったで、きっと何とかしてたよ。僕よりずっと前から姫様を守っていた親衛隊長だもん」
エクレール「あ・・・・」

ユキカゼ「よーしそこでござる。もっとぐぐっと」
リコッタ「ぐーっと」

2人の肩が指で突かれた。

ショーン「はーい」
ベール「お二人そろって何されてるんですか?」

リコッタ・ユキカゼ「「あぁ!」」

ガウル「よう!シンク、垂れ耳」

シンク「あれ?」
エクレール「ガウル殿下」


シンク達が集まって、料理を食べ出した。

ガウル「しっかしお前ら、二人して大した活躍をしやがったな」
エクレール「いえ」
シンク「まあ、色々ありました」
ガウル「それに魔物騒動の会見の後、うちの姉上、憑きものが落ちたみたいにさっぱりしちまってな。詳しい事情はまだ聞いてねえけど、後で俺にも教えてくれるってさ」
シンク「そうなんだ」
ガウル「後、バナードに聞いたんだけど戦興業も元通りのペースに戻すらしいぜ」
シンク「それは何より」

ショーン「まあ、戦も終わってゴタゴタも片づいて」
ノワール「魔物も退治されて」
ベール「ビスコッティとガレット両国に再び平和が、ってことで」
ユキカゼ「それなれば何よりでござるな」
リコッタ「ホントであります」

ガウル「戦は中途半端に終わっちまったが、まあ今回は結果的に良しってことだ」
シンク「だね、ホントに良かった」


リコッタ「ん?」
リコッタの服を、手紙を括り付けた犬が引っ張っていた。
リコッタ「おや、手紙でありますか?」

リコッタは手紙を読んだ。
リコッタ「なになに・・・?」

リコッタが立ち上がった。
エクレール「リコ、どうかしたか?」
リコッタ「・・・学院の皆が緊急で連絡を欲しいとのことで」
ベール「あら」

リコッタ「勇者様、ガウル様、自分はちょっと野暮用で出るであります」
シンク「はーい」
ガウル「行ってこーい」


アメリタ「ステージのセットはほぼ完成しています。セッティングは・・・」

メイド「あの姫様!姫様にお客様が!」

天幕の外にいたのは、レオだった。

ミルヒ「レオ様!」

2人は天幕から少し離れた所に出た。
レオ「すまんな、忙しい合間に」
ミルヒ「いえ」
レオ「今回は本当に悪いことをした」
ミルヒ「いえ、そんな・・・」
レオ「お前を危険な目に合わせたこと。戦興業を台無しにしたこと。いずれ、改めて謝罪はする。それに、ここ半年辛い目に合わせた」
ミルヒ「いえ・・・戦の日々や今回のことで、私は大事なことをたくさん学ばせていただきました。戦や危険に備えること、国民を守り導くことの難しさと大切さ・・・
レオ様のお陰で、私はもっともっと、立派な領主にならばならないと、心に深く誓うことが出来ました。だから・・・ありがとうです、レオ様」
「それにここ最近のレオ様がなされていたことは、私の身を案じてのことだと・・・」
レオ「ま、待て!誰に聞いた?」
ミルヒ「ビオレとルージュに・・・」
レオ「あの馬鹿ども~」
ミルヒ「あ、二人を叱らないで下さいね。私が無理に聞き出したのですから」

レオ「何と言う・・・わざわざ舞台前のお前を呼び出したのはその話をするためだったと言うのに~」
ミルヒ「ご、ごめんなさい・・・でもね、そのお話を聞いたとき本当に嬉しかったのですが、今の私はちょっと怒ってもおります」
レオ「ぬ?」

ミルヒ「未来は自らの手で決めるもの故、占いや星詠みに踊らされることなど愚かしいこと・・・とレオ様は仰いました」
レオ「その気持ちは変わらん」
ミルヒ「なのに星詠みばかりを気にされて、私に本当のことも告げずに私を守ろうとしてくださいました」
レオ「じゃから、それは・・・」

ミルヒ「レオ様に守ってもらってばかりだった小さなミルヒも今ではそれなりに大人になっています。信頼する臣下や友人もいます。ですからレオ様はご自分を殺してまで、私を守ろうなどとされなくていいんです」
レオ「いいや!お前は分かっておらぬ。幼い頃より儂を見守り慈しでくれたこと。
お前が儂にくれた優しさがどれだけ儂を支えておるか・・・お前にいなくなられたら・・・お前がいない世界など・・・」
ミルヒ「ごめんなさいレオ様、ミルヒはいなくなったりいたしませんから・・・」

そんな2人を、ロランとアメリタが見ていた。

ロラン「レオ様も領主として立派にやっておられるとは言え、まだお若い。我らも配慮が足りなかったかもしれないね」
アメリタ「はい、やはり騎士団長にバナード将軍と密にご連絡を取っていただけると」
ロラン「ああ、君にも手伝ってもらえるとありがたい」
アメリタ「はい」

レオ「ちっ、久しぶりに恥ずかしい所を見せた・・・」
ミルヒ「恥かしくないですよ」

天幕の方ではメイド達がミルヒを探していた。

レオ「すまん、時間を取らせた」
ミルヒ「いえ」
レオ「久しぶりにお前の歌を聞きたい。聞いていって良いか?」
ミルヒ「はい!一生懸命歌います!」


そして、ライブが始まった。


大盛況の中、シンクはいつの間にかにエクレールの手を掴んでいた事に気付いて、慌てて離した。


ユキカゼ「見えるでござるか、あの方がお前を救い、母君を悲しみから解き放ってくれた姫様にござるよ・・・」

シンク「え・・・っ、あっ」

子狐の体が光り、観客席の周囲から光の木々が生えてきた。


ダルキアン「これは・・・」
ノワール「その子狐の力?」
ユキカゼ「それもあろうが、それだけではござらんな・・・」

木の枝に母狐が乗っていた。
そして、母狐は光の道を出して、空へ去って行った。



そんな大盛況の中、リコッタは一人、涙を流していた・・・


(続く)

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最終更新:2021年07月05日 08:58