ウルトラマンメビウスの第1話

M78星雲、ウルトラの星。宇宙警備隊の大隊長・ウルトラの父と、若きウルトラ戦士、メビウス。

ウルトラの父「今より君は── 『ウルトラマン』だ」
メビウス「ウルトラマン……?」
ウルトラの父「あの星では、我々をそう呼ぶ。聞いているだろう? 兄弟達から」
メビウス「逢えるのですね、あの星の知性体に」
ウルトラの父「人間達にな。彼らと触れ合うことで、君も兄弟達のように、大切なものを手に入れると、私は信じている」
メビウス「大切なもの……?」
ウルトラの父「君自身にしか、見つけられない事だ」
メビウス「わかりました。行きます、ウルトラの父!」
ウルトラの父「若き勇士よ、行くが良い! かけがえのない星、地球へ!」



運命の出逢い

宇宙斬鉄怪獣
ディノゾール
登場



日本。

風船を手にした幼い少女が歩いている。風船が手からするりと抜けて、空高く舞い上がってゆく。
がっかりした少女が、とぼとぼと歩いて行く。

ふと振り返ると、1人の青年が、空に舞い上がったはずの風船を手にし、優しい笑顔を携えている。
主人公、ヒビノ・ミライ。

ミライ「はい」
少女「ありがとう!」

少女は風船を受け取り、嬉しそうに駆け去ってゆく。

ミライ「ありが……とう」


怪獣防衛隊GUYSの日本実働部隊、CREW GUYS JAPANの総監補佐官トリヤマ・ジュウキチがゴルフを楽しんでいる。
そばにはマル補佐官秘書が付き添っている。
そこへ、上司の総監代行ミサキ・ユキから通信が入る。

トリヤマ「何、宇宙怪獣が確認された!? ま、間違いないんですね、ミサキ女史!?」
ミサキ「GUYS総本部からの報告です。レジストレーション・コードは『ディノゾール』。各国GUYSに待機命令が出されました」
トリヤマ「あぁ…… 何たる不幸! 残りわずかな任期中に、四半世紀ぶりの怪獣襲来とは!」
マル「正確には、25年と2週間ぶりです」
トリヤマ「聞いていない事は答えんでも良い! ですが地上百キロ以上は、GUYSスペイシーの管轄の筈?」
ミサキ「怪獣要撃衛星V-77が、攻撃準備に入っています」


高台の公園に立つCREW GUYS JAPANのアイハラ・リュウ。
帰ってきたウルトラマンこと、ウルトラマンジャックが残した人生訓「ウルトラ5つの誓い」を復唱している。

リュウ「一つ、腹ペコのまま学校に行かぬこと! 一つ、天気のいい日に布団を干すこと! 一つ、道を歩くときは車に気をつけること! 一つ──」
ミライ「──他人の力を頼りにしないこと!」

振り向くと、ミライが自分に合せて誓いを述べている。リュウが笑い、共に最後の誓いを言う。

2人「一つ、土の上を裸足で走り回って遊ぶ事!」
リュウ「……驚いたなぁ、知ってる奴がいたなんて。これ、俺の上司の口癖だぜ」
ミライ「えっ?」
リュウ「小っちゃい頃に、友達に教わったんだと。なんでも、ウルトラマンが残した言葉らしいんだけどな」
ミライ「はい! 僕もそう聞いています」
リュウ「ハハッ、笑っちまうよなぁ。ウルトラマンなんて、もうとっくに伝説だし、今やこの星は、俺達が守ってるんだからな!」

リュウが胸の「CREW GUYS」の紋章を指す。

リュウ「ウルトラマンかぁ…… 今はどこで、何やってるんだろうなぁ?」

突如、街灯の電球が砕け、2人目がけて倒れてくる。とっさにミライがリュウを庇い、2人は難を逃れる。

リュウ「何だよ、一体?」

そこへ隊長のセリザワ・カズヤからの通信が入る。

リュウ「はい、アイハラです」
セリザワ「リュウ。非番のところを悪いが、すぐに来てくれ。V-77が攻撃態勢に入った。急げよ」
リュウ「……何か、嫌な感じだな。じゃ、またどっかで逢おうぜ」


宇宙の彼方から宇宙斬鉄怪獣ディノゾールが、地球を目指して飛来してくる。
攻撃衛星のV-77が攻撃を開始するが、逆にディノゾールの一撃で破壊される。


トリヤマ「V-77が消滅!? そんな、あり得ないでしょう!?」
ミサキ「事実です。GUYSスペイシーの依頼を受け、総本部は以降の対応を、CREW GUYS JAPANへと──」
トリヤマ「ちょ、ちょっと待ってください! か、各国GUYSの精鋭達を差し置いて、なぜ、わざわざ我々が!?」
ミサキ「現在の軌道だと、ディノゾールは70パーセント以上の確率で、日本上空へ到達します」


CREW GUYS戦闘機ガンクルセイダーの編隊が空を行く。先頭の機体にはセリザワとリュウが乗っている。

リュウ「ついにこの日が来たか……!」


上空の編隊を見上げるミライ。彼を、謎の女性が見つめている。
女はミライと目が合うと、妖しげに舌なめずりをし、一瞬にして姿を消す。


トリヤマはゴルフ場を発った車の中から、ガンクルセイダー編隊へ指示を送っている。

トリヤマ「V-77を破壊したディノゾールの武器は、口から伸びる断層スクープテイザー。初めての実戦だが、諸君ならやれると、私は信じとるからね!」


大気圏外でガンクルセイダー編隊が、怪獣ディノゾールを迎え撃つ。

リュウ「ディノゾール、確認! ……あれが、怪獣か (守るんだ。この星を、俺達の手で)」
セリザワ「全機、攻撃開始!」
一同「GIG!」

しかしガンクルセイダーの攻撃はまったく通じず、逆にディノゾールの反撃の前に次々に撃墜されてゆく。

リュウ「そんな……!?」


みやま保育園。保育士のアマガイ・コノミがピアノを奏で、子供たちが元気に歌っている。


病院の診察室。サッカー選手のイカルガ・ジョージが診察を受けている。

医師「うん。軽い練習なら、始めてもいいだろう」
ジョージ「……グラシアス!」

その病院の廊下を、医学生のクゼ・テッペイが、母ケイコに連れられて歩いている。

ケイコ「大学で一生懸命勉強して、立派なお医者様になってくださいよ、テッペイさん。いずれはお父様の跡を継いで、あなたがこの病院の院長を務める事になるんですからね」

その横を、ジョージがすれ違って行く。

テッペイ「今の……?」


2輪ロードレースチーム。選手のカザマ・マリナと、監督のカドクラ。

カドクラ「今期の成績には、スポンサーも満足している。もちろん、俺もだ。来期もよろしく頼むぞ、マリナ」
マリナ「はい!」
カドクラ「このままいけば、全日本も夢じゃない。いや、俺はその先まで行けると思ってる」
マリナ「その先って…… 世界選手権!?」


トリヤマの車は故障で足止めを食らい、マルが必死に修理にあたっていた。カーラジオが怪獣来襲を報せる。

『一帯には、敷設以来初めてとなる怪獣警報が鳴り響き、怪獣の降下予測地点周囲5キロには避難勧告が発令されています』

トリヤマ「まだ終わらんのか、マル!?」


避難する大勢の人々。コノミもほかの保育士たちとともに、園児たちを連れて避難している。

コノミ「先生達ついてるから、大丈夫だからね!」
園児「先生、ユメちゃん達は?」
コノミ「え? ……先生に任せといて! お願いします」
他の保育士「わかりました」「コノミ!? コノミ!」

コノミは園児たちをほかの保育士たちに任せ、自分はきびすを返して駆け出す。


ミライは岩場で、先の謎の女と対峙している。無数の岩が宙に浮き、弾丸となってミライを襲う。


バイクに乗ったマリナが、避難中の人混みに差し掛かる。コノミが警官に制止されている。

コノミ「まだ残ってるんです!」
警官「戻ってください!」
コノミ「お願いします、みやま保育園に行かせてください! あの子達にもしもの事があったら! お願いします!」

その様子に足を止めたジョージ。同じく立ち止まったテッペイと目が合う。
ジョージは、足元に転がってきたサッカーボールを、華麗なフォームでキック。
火の玉となったボールが警官の帽子を吹き飛ばし、傍らのコンクリート壁に突き刺さる。

茫然とする警官をよそに、コノミは保育園を目指して駆け出す。

テッペイ「流星シュート!? やっぱり、イカルガ・ジョージだ!」
ジョージ「行くぜ、アミーゴ」
テッペイ「え、僕も!?」

コノミを追うジョージ。虚を突かれたテッペイも決意を固め、ジョージに続く。

ケイコ「あ、ちょっと!? テッペイさん、テッペイさん!」

コノミのそばに、マリナのバイクが並ぶ。

マリナ「乗って!」
コノミ「……はい!」


リュウ「隊長、もう俺達だけしか!」

ディノゾールはついに大気圏に突入。リュウたち以外のガンクルセイダーはすべて撃墜。
リュウたちもディノゾールを追うものの、やがて主翼を斬り落とされてしまう。

リュウ「隊長、脱出してください! 俺がこいつで、ディノゾールに突っ込みます!」
セリザワ「命を粗末にはさせん」

セリザワがレバーを引く、リュウのシートだけが機外に射出され、パラシュートで降下してゆく。

リュウ「隊長──っ!?」
セリザワ「リュウ…… GUYSを頼んだぞ!」

そしてセリザワは単身ディノゾールに特攻し機体── 大爆発。

リュウ「くっそぉ……!」


トリヤマ「……全滅だと!?」


一方でミライは依然、謎の女を追う。木の枝がナイフのように撃ち出され、ミライの頬を掠め、血が滴る。

ミライ「正体を現せ!」

しかし背後の空間が歪み、女は虚空へと姿を消してしまう。


特攻を受けてなお無傷のディノゾールが、ついに地上に降り立つ。その暴挙で、街やビルが次々に破壊される。


保育園に辿り着いたコノミたち。コノミが目指していたのは、園のウサギ小屋。

ジョージ「『この子達』って、こいつらの事か!?」
マリナ「あったわ!」

マリナが運んできた段ボールに、一同がウサギを積みにかかる。


リュウは地上に降り立ち、ディノゾールを必死に銃撃するが、逆にディノゾールの攻撃で次々に火の手が上がる。

避難する人々の中へやって来たミライ。テッペイの母ケイコが警官に制止されている。

ケイコ「まだ息子が! まだ帰って来てないんです! あの、テッペイさんが!」

それを見たミライが、ケイコの行こうとしているほうへ駆ける。


ミライが保育園へやって来ると、コノミたちがウサギ相手に奮闘している。

ジョージ「こいつら、チョコマカと!」
ミライ「逃げてください! 怪獣が迫ってます! 早く逃げて!」
コノミ「この子達はみんなで大事に育ててるんです!」
ジョージ「突っ立ってるなら手伝いな!」
ミライ「……はい!」

コノミ「この子で全部です。ありがとうございました!」
ジョージ「急げ!」

避難しようとした一同。マリナが鋭敏な耳で物音を感じ取り、立ち止まる。

ジョージ「どうした!?」

ディノゾールの攻撃でビルが切断され、破片が舞う。

ジョージ「危ない!」

一同の足元の地面が斬り裂かれる。ジョージが動体視力でそれを見切り、一同を突き飛ばして難から逃れる。

ミライ「早く逃げて!」

一同が避難。1人立ち尽くすミライが左腕を構えると、炎のような真紅のブレスレットが出現する。

ミライ「メビウ──ス!」

光の柱が立ち昇り、ウルトラマンメビウスが登場する。ミライがメビウスの人間態だったのである。

リュウ「マジかよ……!?」

大歓声と拍手をあげる人々、携帯のカメラを向ける人々。幼い子供を抱いた父親。

「あれ? パパが小さいさい頃に見たって言ってた……」
「あぁ、ウルトラマンだ!」

ディノゾールの先制攻撃。とっさにメビウスが、そばのビルの後ろに隠れる。
攻撃が炸裂し、ビルが切断されて崩れ落ちる。

リュウ「ビルを盾にしやがった!?」

なおも続く攻撃を、メビウスは軽やかにかわす。メビウスが無傷な一方、次々に町が破壊されてゆく。
カラータイマーが点滅を始め、危機を報せる。
必殺光線のメビュームシュートが炸裂──! ディノゾールは火花を吹いて倒れ、その動きを止める。

怪獣を倒したメビウスの雄姿に、人々は歓喜の声をあげる……が。

リュウ「馬鹿野郎!」

1人だけ罵声を飛ばすリュウに、メビウスが振り向く。

リュウ「何て下手くそな戦い方だ。周りを見てみやがれ!」

周囲のビル街はあらかた破壊され、一帯の街はもはや壊滅状態と化している。

リュウ「それでもウルトラマンかよ!? 何も守れてねえじゃねえか! 俺だってそうだ…… 何も守れなかった……」

泣き崩れるリュウを、メビウスはじっと見つめている。


コノミ「……あれ、あの人は?」


やがてメビウスは地を蹴って飛び上がり、空の彼方へと飛び去る。


その夜。リュウはミライと出逢った公園で1人、項垂れている。

ミライ「やっぱり、ここだったんですね」

GUYSの制服に身を包んだミライ。

リュウ「お前…… まさかGUYSに?」
ミライ「一緒に戦わせてください。あなたと一緒に戦いたいんです!」
リュウ「何やる気満々みたいな顔していやがる!? もうGUYSなんてな、必要ないんだよ!」

リュウはミライを怒鳴りつけ、隊員証を投げ捨てようとするが、どうしても捨てることができない。

ミライ「行きましょう、フェニックスネストへ。あなたを待っている人がいます」


GUYS日本支部基地フェニックスネストへ、ミライとリュウがやって来る。
司令室のスクリーンに、新たな戦闘機が映し出されている。

リュウ「あれは?」

隣にGUYSの新隊長、サコミズ・シンゴが並ぶ。

セリザワ「GUYS本部は、統合攻撃戦闘機・ガンフェニックスの配備を決定した」
リュウ「あんた誰?」
セリザワ「本日づけで新生GUYSの隊長に任命された、サコミズだ」
ミライ「僕は新生クルー、第1号」
リュウ「新生クルー? 何でお前が? ……っていうか、お前誰だよ!?」
ミライ「ヒビノ・ミライです。よろしくお願いします!」


(続く)

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最終更新:2017年03月12日 12:35