いよいよ明日から夏休み。 僕には一つ、でっかい計画があるんだ! それはね…… 今日、郵便受けに入ってた、切手も消印もない葉書。
ラビ『大地くん、お元気ですか── なんちゃって。どうだ、元気か? 俺のほうはギンギンに元気元気ってとこだ。 魔法の勉強ってのが、かったりぃけどよ。 いよいよ、約束の日だな。 1年前に決めたとおり、月で逢おうぜ。 待ってるからな!』 グリグリ『大地、ぼくも行くグリ~!』
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小学校の下校時間。『
魔動王グランゾート』の主人公・遥 大地が、愛用のジェットボードで学校を飛び出す。
大地「月だ! ヒャッホ──っっ!!」
月を目指すスペースシャトルの機内。客室では大地が、母宛ての手紙を書いている。
お母さん。目の前に、大きな月が迫っています。 去年の夏みたいに、楽しい旅になればいいんだけどな。 これも、メイばあちゃんたちが地球に遊びに来た帰り、ラビがくれたチケットのおかげです。 |
回想。TV『魔道王グランゾート』最終回で地球を訪れたV-メイたちは、見物を終えて帰途についていた。
メイ「行くよ、ラビ!」 ラビ「わかった、わかった!」
ラビが大地にこっそりとチケットを手渡す。
ラビ「これは、1年間有効のシャトルのチケットだ。これで来年の夏、月に来いよ。3人でまた逢おうぜ。じゃあな!」
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大地「いいとこあんだよなぁ、ラビって。もうすぐ、みんなに逢えるんだ……!」
宇宙の彼方から赤い光球が飛来。大地たちのシャトルのそばをかすめ、月へと飛んで行く。
大地「あぁっ! なんだろう、今の!?」
月の内側の世界・聖地ルナでは、ラビが地上に出ようと企んでいた。
ラビ「行くぞぉ……」
それをグリグリが見つける。
グリグリ「ラビ、ラビ!」
ラビ「わぁっ!? こらっ!」
大声を聞きつけ、母サユリが現れる。
サユリ「マリウス! 午後の魔法の勉強は、まだ終わっていませんよ」
グリグリ「ラビ、大地に逢いに行くグリよぉ~」
ラビ「こらぁ!」
サユリ「マリウス。ラビルーナと外の世界は本来、交わってはならないのですよ」
ラビ「わかってるよぉ! でも、大地たちと約束したんだ。1年後の今日、月で逢おうって。ねぇ~、ちょっとだけ。いいだろ、母さん?」
サユリ「……日暮れまでですよ」
ラビ「やったぁ~っ! ありがとう、母さん!」
ラビは魔法陣に立ち、呪文を唱える。
ラビ「ドーマ・キサ・ラムーン──…… ドーマ・キサ・ラムーン──……」
グリグリ「ぼくも行くグリぃ~!」
ラビ「わぁっ!? お前はダメだぁ!」
ラビが光に包まれ、ラビのもとへ飛び込んだグリグリとともに姿を消す。
目を細めて見送るサユリ。そこにV-メイが現れる。
メイ「サユリさんもやっぱり、人の親だね」
サユリ「メイ様! 申し訳ありません……」
メイ「いいさ。あの子たちはね、私たちには押さえつけることのできない力で結び合ってるんだ。誰も止められりゃしないよ」
その頃、大地は月面の空港に到着していた。
係員「次の人」
大地「はぁい!」
係員「君、1人?」
大地「はい」
係員「チケットを見せて」
大地が係員にチケットを渡す。
係員「ん? ……チケットを見せてごらん」
大地「え、チケットってそれだけど?」
係員「えぇっ? これのどこがチケットなんだい?」
いつの間にかチケットは、落書き同然の紙切れに変っている。
大地「あぁ~っ!? あれぇ? だって、これ…… (あ! まさかラビのヤツ、魔法でこのチケットを!?)」
係員「チケットがないってことは、密航者ってことかな」
大地「え……!?」
大地は係員に、空港の奥へと連れて行かれる。
係員「まったく…… 本当に、家出して来たんじゃないんだな?」
別の係員が通りかかり、その係員に声をかける。
「おい、305便のシャトルのこと、聞いたか?」
「いや、なんのことだい?」
「乗客が月面近くで、謎の光が月に向かって走るのを見たって……」
その隙に大地は逃げ出し、ジェットボードで空港を飛び出す。
大地「ラビのヤツ、憶えてろよぉ~っ!!」
一方でラビもグリグリとともに、月面の砂漠に到着。
ラビ「ハァックション! 誰か俺のこと、噂してんな。ん──、やっぱりこっちの空気のほうが肌に合うぜ! あ、そうだそうだ」
いつものように、ウサギ耳をターバンに隠す。グリグリもそれを真似る。
ラビ「お前はいいよ。……ああっ!?」
突如として大地が揺れ、空から降り注いだ赤い光が、地面に突き刺さる。
聖地ルナに、双子の邪動戦士、ゼラガーとバラドーが現れる。
ゼラガー「見ろ、バラドー。ここがルナだ。なんと醜き街よ」
バラドー「これしきのものを支配できんとは、シャマン殿は遊んでいたとか思えん」
ゼラガー「ならば我らの手で、死の世界に変えようぞ。ジャハ・ラド・クシード── ジャハ・ラド・クシード──」
たちまち付近の家々が燃え上がり、人々が逃げ惑う。
バラドー「ジャハ・ラド・クシード── ジャハ・ラド・クシード──」
人々「わぁぁ──っっ!?」
逃げ惑っていた人々が、たちまち氷漬けとなる。
ゼラガーたち「ハハハ…… ハハハハハ!」
サユリ「メイ様!?」
メイ「邪悪な力を感じる…… 今までに感じたことのない力だよ!」
声「ハハハハハ!」
メイ「誰だい!?」
新たな敵、グルンワルドが現れる。
グルンワル「我こそは邪動族の王カノープスの子、グルンワルド」
メイ「邪動族だって!?」
サユリ「下がりなさい!」
そこに、ゼラガーとバラドーも現れる。
ゼラガー「グルンワルド様、準備が整いましてございます」
バラドー「虫ケラどもに、死を!」
メイ「あんたたち、一体何をしようって言うんだい!?」
グルンワルド「フフフ、それは今にわかる。そしてそのときが、お前たち耳長族が滅びるときだ。ハハハハハ!」
聖地ルナの光の塔がメイたちを取り囲んで閉じ込めてしまい、そのまま天井を突き破り、地上へと出現する。
ラビ「あれは……!? 光の塔がなんで、なんで月面に出ちまったんだよ!?」
グルンワルド「我こそはグルンワルド! この地に住む者に告ぐ。これよりこの地は邪動族の支配となる。希望はない。恐怖と絶望、それがこれからのお前たちに与えられた定めなのだ。ハハハハハ!」
メイ「まさか!? あのグルンワルドとかいう邪動族は、この光の塔を使って……!?」
サユリ「メイ様!?」
メイ「もしそうだとしたら、とんでもないことが起こるよ。この月を、いや、宇宙すべてを破壊する力が生まれようとしているんだ!」
ラビ「母さぁん!! 母さぁ──ん!!」
ラビが光の塔へ向かって駆け出す。
サユリ「マリウス!? マリウスを感じます!」
メイ「本当かい? 手を貸しとくれ!」
かつて大地たちが魔動王グランゾートらの召喚に用いた魔動器。
メイ「外に出られなくても、2人の力を合せれば、これをあの子のもとまで送れるはずだよ」
サユリ「はい」
ラビの目の前に、メイたちが送り込んだ魔動器が現れる。
ラビ「あぁっ! これは、魔動器じゃねぇか!?」
グリグリ「あぁ~! 誰か来るグリ!」
ラビ「えっ、大地とガスか?」
砂嵐が巻き起こり、怪しげな2つの人影が現れる。とっさにラビが、魔動器をグリグリに渡す。
ラビ「グリグリ、これを持って下がってろ!」
グリグリ「はいグリ!」
ゼラガーとバラドーの2人が、ラビに迫る。
ゼラガーたち「フフフフフ……!」
最終更新:2016年05月16日 02:35