人間界に修行にやって来た怪物くん。ある日、突然の怪物ランドへの帰国命令が出た。
帰国の日、怪物くんは親友のヒロシと最後の思い出を作るため、力いっぱい一緒に遊ぶ。
しかし、最後まで別れを言いだすことはできずにいた。
その夜。ヒロシは自宅アパートで、姉の歌子と共に夕食をとっている。
ヒロシ「やっぱりおかしいなぁ……」
歌子「どうしたの?」
ヒロシ「姉さん。怪物くん、もしかしたら怪物ランドに帰っちゃうのかも」
歌子「まさか! 帰るんだったら、真っ先にヒロシちゃんに教えてくれるはずでしょ?」
ヒロシ「そりゃ、そうだよね」
歌子「はい、お茶」
怪物屋敷。怪物くんが夜空を見上げている。
怪物くん「このままじゃ、なかなかうまく言い出せそうにないぞ。ヒロシ、ごめん。黙って行ってしまいそうだ……」
ドラキュラは、旅立ちの荷作りに励んでいる。
ドラキュラ「坊ちゃん! 坊ちゃま? どこ行ったんざます? まったく、この忙しいのに。あっ、そうか。ヒロシくんとお別れの挨拶をしているんざますか」
荷物の一つが、生き物のように動き出す。
ドラキュラ「ギャーッ! 何ざます、これは!?」
布を破って、オオカミ男が現れる。
ドラキュラ「オバケと思いきや、オオカミ男ざますか!?」
オオカミ男「フランケンの奴が張りきりすぎてね、あっしまで荷作りしたんでがんすよ」
フランケン「フンガ、フンガ、フンガ」
オオカミ男「何でがんす、毛皮のコートだと思ったんでがんすと!? 怒ったでがんす!」
オオカミ男がフランケンに飛びかかろうとして、フランケンの荷作りしていたドラキュラの棺桶を壊してしまう。
ドラキュラ「あ──っ!? その包みはもしかして、あたあた、あたくしのベッドざませんか!? このぉ!」
ドラキュラも加わり、3人が取っ組み合いの大ゲンカを始める。
怪物くん「みんな、やめろ──っ!!」
ドラキュラ「あ、坊ちゃん」
怪物くん「人間ランド最後の日ぐらい、静かにできないのか!?」
ドラキュラ「お察ししますざます。ヒロシくんにお別れを言って来たんざますね。うぅっ…… 『泣くなヒロシ、いつかきっとまた逢えるさ』」
オオカミ男「『本当に逢えるんだね、怪物くん。うぅ──っ』」
ドラキュラ「──なんて、涙に暮れたんざましょうね」
怪物くん「あいつには、言わないことにした……」
ドラキュラ「はい?」
怪物くん「ヒロシは泣き虫だから、さよならは言わない」
ドラキュラ「そ、そりゃあんまりざます。黙って帰ったら、ヒロシくんはもっと悲しむざます」
怪物くん「うん……」
フランケン「フンガ、フンガ」
怪物くん「えっ、もうそんな時間?」
時計の針は、出発時刻である0時へと近づいてゆく。
怪物くん「さようなら、ヒロシ……」
そして、ついに0時。ヒロシは寝床の中。
夢の中。野球選手のヒロシが、新聞記者のドラキュラ、オオカミ男、フランケンらにインタビューを受けている。
ドラキュラ「プロ野球本年度日本一、最高殊勲選手に選ばれましたヒロシくんにインタビューざます。おめでとうございます!」 ヒロシ「ありがとうございます」 ドラキュラ「この喜びを一番、誰に伝えたいざますか?」 ヒロシ「もちろん、怪物くんです!」 ドラキュラ「では、その怪物くんが、生まれ故郷の怪物ランドに帰ってしまうとすれば、あなたは泣くざますか? どうでしょう?」 ヒロシ「そ、そんなことが本当だったら、本当だったら…… 僕、泣きます!」
なぜか、カエルが登場する。
ドラキュラ「ではこれは何ざますか?」 ヒロシ「カエルです」
場面がクイズ番組に代り、回答者のヒロシに、プレゼントとして大量のカエルが贈呈される。
ドラキュラ「おめでとうございます! カエル1年分です、差し上げるざます!」 ヒロシ「えぇ~っ!?」 ドラキュラ「ほかの物とカエル?」 ヒロシ「カエル、替える!」 ドラキュラ「残念、替えれない!」 ヒロシ「そ、そんなぁ!?」 怪物くん「カエルの卵が孵ったぞ! 俺は泣かないで陽気に帰るぞ!」 ヒロシ「じゃあ本当に、怪物ランドに帰るの!?」
今度は裁判の場面となる。被告はヒロシ、裁判官は怪物くん。
怪物くん「静粛に! ヒロシ、お前は怪物くんが帰るときに泣くというのは本当か!?」 ヒロシ「はい、たぶん泣くでしょう」 怪物くん「それでは死刑!!」 ヒロシ「え~っ!? どうしてですか!?」 怪物くん「だって、日が暮れりゃ誰だって家に帰るだろう? だから死刑!」 ヒロシ「いやだあぁ! 泣かないから! 泣かないよぉ! 絶対泣かないから!」 |
ヒロシがうなされ、飛び起きる。
ヒロシ「はぁ、はぁ…… 夢か、良かった…… はっ、もしかしたら正夢!?」
怪物屋敷の門の前では、怪物特急モンスター号が出発の時を待っている。
怪物くんとお供たち3人、モンスター号の車掌が、屋敷の門の前に立っている。
ドラキュラ「ヒロシくんは来るざますか?」
怪物くん「来る、きっと来る」
ドラキュラ「どうやって報せたざます?」
怪物くん「夢の中に念力を送ったのさ。みんな、ヒロシはきっと泣かないと思うが、みんなも絶対泣くな! 俺も泣かない。ともかく、楽しく別れような。……ほら、来たぞ!」
ヒロシ「怪物くぅん!」
パジャマ姿のままのヒロシが駆けてくる。
ヒロシ「怪物くん…… やっぱり本当だったんだね」
怪物くん「本当だったんだ」
ヒロシ「夢かと思った……」
怪物くん「元気でな」
怪物くんの差し出す手を、ヒロシが固く握り返す。
ヒロシ「怪物くんも…… だけど、また逢えるよね? みんなにもね」
ヒロシが我慢しきれずに、涙ぐむ。
怪物くん「うん、必ず逢いに来る」
ヒロシ「きっとだよ!」
怪物くん「きっとだ!」
ヒロシ「ダメだ、怪物くん…… 僕、泣いちゃう……」
ヒロシが顔をそむける。怪物くんも大粒の涙を流しており、お供たちも貰い泣きの涙を拭っている。
怪物くん「ヒロシ、泣いたら死刑だぞ! みんなも!」
ドラキュラ「ぼ、坊ちゃん…… うぅっ、こりゃ泣かないほうが無理ざます」
怪物くん「よし、最後の念力! 声を消すから、みんな遠慮しないで泣け!」
怪物くんもヒロシもお供たち3人も、無音の泣き声を張り上げる。
車掌「王子様、お取込み中ですが、そろそろ出発のお時間です」
怪物くん「お姉さんにも、番野くん、キザ夫、アコちゃんにもよろしくな」
ヒロシ「うん。最後に一つだけ、お願いがあるんだけど」
怪物くん「わかってる。俺の帽子の中が見たいんだろ?」
ヒロシ「うん……」
怪物くん「恥しいから、後ろを向いてて」
ヒロシ「こうかい?」
怪物くん「──いいよ!」
後ろを向いていたヒロシが振り返ると、一同は姿を消している。
ヒロシ「あれ? 怪物くん!?」
門の陰から、怪物くんが顔を出す。帽子を脱いでおり、その下はカッパのようなハゲ頭。
怪物くん「じゃあ、本当にさようなら!」
ヒロシ「あら! ツルツル・カッパ頭!?」
怪物くん「へへっ!」
怪物くんが顔を引っ込める。ヒロシが怪物くんを追い、門の中へ。
ヒロシ「怪物くん!? 怪…… あぁっ!?」
ヒロシの目の前で、怪物くんたちを乗せたモンスター号が、宙へ浮いてゆく。
ヒロシ「さようなら──っ!! 本当に、楽しかったよぉ──っっ!!」
怪物くん「さようなら──っ!! ヒロシ──っ!!」
ドラキュラ「さらばざます、怪物屋敷!」
オオカミ男「さよならでがんす、人間ランド……」
フランケン「フンガ、フンガァ!」
モンスター号が人間界を離れ、怪物ランドへと飛び立つ。
怪物くん「ヒロシ、実はこいつもヘルメットなんだ。本当は、こうさ」
ハゲ頭を模したヘルメットを脱ぐと、真の怪物くんの頭には、父王とそっくりの触角が生えていた。
そして、怪物くんたちが帰国した怪物ランド。
怪物大王「長い間、よく辛抱した。偉いぞ、坊主。人間の大人どもはずる賢くて野蛮。愚かしい戦争を起こし、罪のない子供を殺す。そういう人間どもを、とくと見てきたろうな。この平和な怪物ランドを離れて、恐ろしい人間の国で暮らすのは大変だったろう?」
怪物くん「ドラキュラ、オオカミ男、フランケンがいてくれたから、全然」
怪物大王「3人とも、よくやってくれた。ありがとう。お前たちに褒美をやろう。ドラキュラにはトマトジュース10年分」
ドラキュラ「10年分!」
怪物大王「オオカミ男は宮殿のコック長をやってもらおう」
オオカミ男「コック長!」
怪物大王「フランケンには10万ボルトの電極付きベッド」
フランケン「フガ、フガ、フンガ!」
怪物大王「そして坊主。お前は今すぐ、幻の園へ出かけねばならん。そこでは、素晴しいことが待っているだろう」
怪物くん「お父様しか行けない、あの幻の園へ……」
怪物くんが白馬を駆って、禁断の地・幻の園へ辿り着く。そこは一面、花の咲き乱れた草原。
怪物くん「ここが幻の園か…… なんてきれいなところだろう!」
草原の彼方に、1人の女性がいる。
怪物くん「誰だ!?」
女性「太郎…… そうですね?」
怪物くん「太郎? そう呼んでくれる人は……」
女性「やっと来てくれましたね」
怪物くん「もしかしたら…… お母さん!?」
女性「太郎!」
その女性こそ、怪物くんの母・怪物王妃であった。怪物くんが涙を流しつつ、王妃に抱きつく。
怪物王妃「長い間、ご苦労様でした。これが掟だったのです。怪物ランドの王子は、人間の国を見て帰るまで、母親のそばを離れていなければならないのです。あなたに逢える日を、ずっと待っていました。その日がとうとう来たのです!」
怪物くん「お母さぁぁん!!」
その夜。怪物城では、怪物くんの帰国を祝う宴が開かれていた。
怪物くんが王妃と共に、テラスで夜空を見上げる。怪子と爺やが、その後ろ姿を見守っている。
爺や「そっとしておいてあげましょう。怪子姫もゆくゆくは、坊ちゃんのお妃様になるお方です」
怪子「はい…… 怪物くん」
怪物王妃「きれいなお月様ね」
怪物くん「うん。ヒロシに初めて逢ったときも、ちょうどこんな満月の夜だったな……」
日本では、ヒロシが歌子とともに、夜空の月を見上げている。
歌子「怪物くんも、この月、見てるかしら?」
ヒロシ「見てるよ。怪物く──ん! また来てね──!! きっとだよ──!! きっとね──!!」
ヒロシの声が、夜空にこだまする。
ヒロシ「また来てねぇぇ──っっ!!」
※ 本来は一部セリフに歌の歌詞が含まれていますが、著作権を考慮して割愛させていただきました。
最終更新:2025年04月18日 15:20