ウロボロス-警察ヲ裁クハ我ニアリ-の第1話

?「15年前のあの日の朝、この世で一番大切な人が殺された。僕達二人は確かに見ていたんだ。逃げて行く犯人達の後ろ姿を・・・なのに」
刑事「君達は何も見ていない。何も知らない」
?「僕らの証言を強引に揉み消したのは、刑事だった」
`刑事なんて大嫌いだ`それが僕が刑事になった理由ーーー」

第1話 龍

夜の町。転落死を遂げた男の警察による調査が行われようとしている。
刑事たち「こりゃヒデェな」
「6階建てのビルから転落死。検死の結果は?」
「大腿骨頸部骨折、首と肋骨も骨折・・・まー無茶苦茶ですわ」
「足から着地か・・・って事は自殺でしょうね、おそらく」
調査する警察の中に、女性が一人いた。
刑事たち「日比野美月警部補、神奈川県警務部警務部長殿の愛娘、二世のスーパーキャリア新人か・・・」
「扱いにくいね、正直」
「でもカワイイじゃないスか!」
「オレ、あの娘とコンビ組みたかったなぁ」
「アホ、間違って手出したら次の人事で確実に離島の駐在所行きだぞ」
「アイツなら間違ってもその心配はないからな」
?「くんくん・・・」
警察官「うわ・・・・」
「何やってんだアイツ・・・」
美月「・・・・・・何やってんですか?龍崎さん」
イクオ「え?」
巡査部長龍崎イクオは、死体に顔を近づけて、その臭いをかいでいた。

美月「何度も言ってますよね!?現場では好き勝手動かないでくださいって!捜査には役割分担があるんです。好き勝手されるとコンビの私が恥かくんですよ!?」
イクオ「あ・・あの死体調べてわかった事が・・・」
美月「え?」
イクオ「死ぬ前の夕食、彼は・・・餃子食べてます!しかも王将の!」

イクオは美月に頭を叩かれた。
美月「検死の結果は自殺です。以上」
イクオ「おおおおお」
刑事「相変わらずKYなヤローだな、アイツ」
「流崎イクオ巡査部長ね」
「新宿第二署刑事課の嫌われ者」
「アイツ見てるとイラっと来るぜ・・・!」
イクオ「て・・・手伝おうか?」
警察官「いえ、いーです」
美月「・・・・・・」(・・・・ホントに一体何なの?アイツ・・・・)
(あんな抜けた刑事が新宿第二署の検挙率トップの刑事だなんて・・・!!)
イクオ「手伝お・・・」
警察官「結構です」
美月(私を差し置いて・・・納得いかない!)

イクオ(・・・捜査に加われない・・・なんかもう帰っちゃおうかな・・・)
「!、定期入れ?亡くなった男性の・・・・飛び降りた時にポケットから・・・」
「!」
(日比野さん達は自殺で間違いないって言ってたけど・・・ホントにそうなのかな・・・?)
(かけがえのない存在を持ってる人間が自分からその命を捨てるかな・・・?)
イクオが手を合わせる。
定期入れには、自殺した男性と妻子の写真が入っていた。

翌日。イクオは町中で携帯電話をかけた。
イクオ「久しぶりタッちゃん」
?「久しぶりだなイクオ」
イクオ「最近、わりと平和だったもんね」
?「そういやこの前は、裏DVDのガサ入れの情報あちがちよ」
イクオ「いや、どういたしまし・・・って何ソレ?僕、そんな事言ってたけ!?」
?「声デケーよ、バカ。オレ達の関係がバレたらマズいだろ?」
イクオ「だ・・・だったらこんな人混みの中で合わないほうが・・・」
?「世の中で一番他人に無関心な生き物は何だ?正解は都会の人間だよ。それよか昇進はいつだよイクオ?」
イクオ「え・・・・・」
?「検挙率ナンバーワンの名刑事なんだよな、お前?さぞかし後輩にも尊敬されてんだろーなあ」
イクオ「ま・・・近いウチに・・・」
?「まあいい、お前んトコの管轄で会社員飛び降り自殺あったろ?」
タツヤ「ありゃ自殺じゃねぇ、殺シだ」
イクオの電話の相手は、彼の真後ろに立つ男――、松尾組若頭、段野竜哉だった。
イクオ「!!」
タツヤ「振り向くじゃねーぞ、イクオ。死んだ会社員が勤めてた会社な、板田組のフロント企業だったらしい」
イクオ(坂田組・・・)
タツヤ「最近、松尾組とシノギ争いしてる武闘派暴力集団、その資金源は主に中国から入ってくる改造拳銃って話だ。しかも警察の摘発を避けるためにフロント企業の倉庫に大量に隠してたんだと。オレが裏から入手した情報によると、偶然拳銃見つけちまった会社員が警察に密告(チンコロ)しようとして口封じに殺されたらしい」
イクオ「!、・・・・・」
タツヤ「主犯の調べはついてる。ところで・・・・そっちはどうよ?」
イクオ「え・・・?」
タツヤ「15年前の事件に決まってんだろ」
イクオ「!!・・・・・」

15年前。
刑事「君達は何も見てない。何も知らない」
イクオ「え・・・・ちょ、ちょっと待って下さい!」
タツヤ「犯人見たって・・・オレ達の話聞いてなかったのか」刑事「チッ!」
「チッ!チッ!チッ!チッ!チッ!チッ!」
「チッ!チッ!チッ!」
「・・・頭の悪い坊や達だ。この国の全ての人間は意識せずとも我々警察の庇護の下にある・・・逆に言うと、君達のちっぽけな人生を握り潰す事ができるのも・・・警察だよ?」
そう言った刑事は左手に金時計をしていた。

イクオ(その金時計の男は僕達二人をそうやって脅し、事件を隠蔽した)
僕ら二人だけで捜し出すんだ。結子先生を殺した真犯人をーーー)
タツヤが煙草を捨てて、去って行き、イクオがその吸い殻を拾い、一見してからゴミ箱に捨てた。
イクオ(・・・見てて先生。悪い奴らは絶対に逃がさないから・・・!!)
吸い殻には、「坂田組 滝川将司」と書かれていた。

夜。車が海に沈んでいき、左頬に入れ墨をした男がニヤリと笑った。

美月「もしもし龍崎さん!?ドコにいるんですか!?」
イクオ「え・・・?今から王将で餃子を・・・」
美月「5秒で全部胃につっこんで下さい。先日飛び降り自殺した会社員の妻と娘の乗った車が東京湾で発見されました・・・!」
イクオ(え・・・?)
美月「娘さんは奇跡的に一命をとりとめましたが奧さんのほうは・・・・」
イクオ「車で海に・・・?何で・・・・・」
美月「最初は後追い自殺かと思ったんですが、解剖の結果不自然な点が・・・」
「溺死体は通常溺れた際に大量の水を飲む・・・・でもそれが肺からまったく検出されませんでした・・・つまり」

イクオ(母親は何者かに殺された後海に沈められた・・・!!間違いない・・・父親を殺した犯人がその家族を—-―!!)

イクオは娘の由紀奈が収容された病室に駆けつけた。
イクオ(・・・この娘にはもう家族がいない。僕や・・・タッちゃんと同じ・・・)
(タッちゃんのタバコの匂い・・・)
病室には花の籠が置かれていて、イクオはそこに隠されていた紙を取った。
イクオ(!・・・・これは・・・・)
由紀奈「ママも死んじゃったんでしょ。さっき知らないお兄ちゃんが来て教えてくれたわ。『お前のパパとママは悪い奴らに殺された』って、そうなんでしょ?ケージさん」
イクオ「あ・・・安心して!警察(ぼくら)が・・・」
由紀奈「アタシ負けないから、パパとママを殺した奴らなんかに殺されないから」
「アタシが殺してやる・・・・!!」
涙を流す由紀奈を見て、イクオは15年前の誓いを思い返す。
タツヤ(イクオ・・・何人かかっても犯人(ヤツら)を捜し出すんだ。見つけてぶっ殺すぞ、オレ達二人だけで・・・!)

美月「とりあえず署に戻って経緯を課長に報告しましょう」
イクオ「ゴメン・・・気分悪いから、僕帰るよ」
美月「え・・・?ちょっ・・・ふざけないで!あなた捜査を何だと・・・」
(!?)

イクオ(タッちゃんから受け取った情報(ネタ)によると、犯人グループは坂田組の滝川将司と銃の運び屋三人)
(復讐は何も生み出さない。そんな事をしても死んだ人間はかえってこない。虚しく愚かな行為だ、忘れろ。・・・もしあの娘にそんな事言える人間がいるとしたらそいつは狂ってる)
イクオの後ろにタツヤもいた。
イクオ(「法の番人」と「闇の住人」、二匹の龍、ウロボロスが悪を裁いてやる・・・・!!)

滝川「ああ?あの子供生きてただぁ?チッ・・・組長に怒られんじゃねえか、今ドコだ?車回せや、ん?かわいそうだろ?子供はやっぱ親と一緒じゃねえとよ・・・!」

滝川に電話をかけたのは、タツヤにボコボコにされ、銃を突き付けられた運び屋達だった。
運び屋「助けて・・・」
「オレらは滝川があの家族脅かすから手伝わされただけで、まさか・・・マジに殺すなんて・・・!」
タツヤ「・・・今夜中に警察に自首しろ。「滝川の命令で殺し手伝いました」ってな」
運び屋「わっ・・・わわ、わかりましたぁっ!!」
タツヤ「あっ、あとな・・・もしオレの事密告するとな、
お前らの大事な家族や友人まとめて産業廃棄物になるぞ。極道を舐めるなよ」


地下駐車場。滝川が銃を構えて待っていた。
滝川「・・・にしても遅えなアイツら」
イクオ「あの・・・スイマセン。警察の者ですが・・・・」
滝川(!!何で警察(デコスケ)がこんな所に!?)
イクオ「このビルの駐車場で不審者の通報がありまして・・・何か見ました?」
滝川(ヤベェ・・・銃持ってんのバレたら・・・)
イクオ「?、右手どうしました?」
滝川「テメェにゃ関係ねぇだろーが!!」
イクオ「ちょっと調べさせてもらっていいですか?」
滝川(コイツ・・・へらへらしやがって・・・!捕まって偽装殺人までバレたら厄介・・・)
(コイツ殺っちまうか。こんなチビ一瞬で殺せる。また偽装すりゃわかりゃしねねだろ・・・)
「死ねやぁぁ」
滝川が銃を抜いたが、その瞬間、イクオに額を撃ち抜かれた。
滝川(アレ・・・?銃出してたのオレ・・・)
(・・・コ・・・コイツ、完全にぶっ壊れた目してやがる・・・!!)
その後、滝川の死体が警察に発見された。
刑事「ヤクザの抗争か・・・?」
「龍崎巡査部長が職質中に銃声がして行ってみたら死体が」
「・・・また手柄アイツかよ、運だけはいい野郎だな・・・!」
イクオは現場から去って行く。
タツヤ(---イクオ、滝川撃った銃はいつものコインロッカーに入れとけ、オレが処分しとくからよ、坂田組が潰れればオレらはこの街にあるヤツらのシノギを一手にできる。お前は担当事件の解決と密造拳銃の輸入ルート検挙の手柄までついてくる)
(警察と極道、それぞれの道で成り上がるんだよ、イクオ)

イクオ(警視庁新宿第二署刑事課強行班係、龍崎イクオ巡査部長)
(我孫子会系三次団体松尾組若頭、段野竜哉)
(決して交わる事のない表と裏、それが僕達だ—--)

美月「・・・・・」
(何なのアイツ・・・?さっきのアイツの目・・・)
(刑事というより・・・むしろ犯罪者の目だった)


叔母「刑事さん、いろいろと本当にお世話になりました。この娘はこれから私の家でめんどう見ようと想います」
イクオ「よかったね、由紀奈ちゃん」
由紀奈「・・・・・何がよかったワケ?叔母ちゃん家千葉の田舎だし、渋谷まで一時間もかかるし、学校の友達と帰りマック寄れないし、ケータイ電波悪いし」
イクオ「すごいヘンケンだ・・・・」
由紀奈「・・・・それにパパとママ帰ってこないし」
涙を堪えていた由紀奈をイクオがそっと抱き寄せた。
イクオ「それじゃあ、僕と同じだ」
由紀奈(え・・・・?)
イクオ「微笑うんだ。パパとママもきっとそれを望んでる」
イクオの言葉を聞き、由紀奈は涙を流しながらも、微笑みながら、叔母と去って行った。

イクオ(警察も・・・法律さえ無力な存在だったら、誰かが犯人を裁き、殺された人達の魂を救わなきゃ。そのために僕達がいる)
町中でイクオとタツヤがすれ違う。
タツヤ(次の犯人の情報だ、イクオ)


続く

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最終更新:2017年03月25日 23:24