対訳
訳者より
- 私のサイトでも既に訳詞は取り上げている作品ではありますが、こちらのサイトの方が間違いなく見て頂ける方も多いですし、あわよくば動画対訳に取り上げて頂ける可能性も出て来るのではないか と期待して逐行訳を見直し、動画対訳に使いやすい形に直した上でこちらでも取り上げて頂くこととしました。英語のところはまあ、そんなに難解な単語もあまりなく比較的スムーズに行きましたが、厄介だったのは最後の合唱のヘブライ語の部分、旧約聖書の申命記6章 4~7行目をそのまま取り上げたとのことでしたがヘブライ語原文と歌詞の翻字との対照はけっこう骨でした。世に流通している英語の翻訳では申命記8行目まで取り上げているもの(お前たちの戸口に書きつけて の部分)がけっこうありますがここはこの曲では省かれているはずです。
- 1933年にナチスの迫害を逃れてアメリカに亡命したシェーンベルク、東欧で激化したユダヤ人迫害の酷さを記録に留めるためでしょうか。第2次大戦終結後の1947年にナレーション付きの7分ほどのオーケストラ曲としてこの曲を書きました。ナレーションも自由に語られるのではなく、音の高低やリズムなどは厳密に指定され、音楽と緊密な連携を取っています。最後にナレーターの語りの高揚のあとには男声合唱ユニゾンによる旧約聖書の一節、これがナレーションの冒頭にある「忘れられていた古い祈り」なのでしょう。ワルシャワの地下水道に閉じ込められていたユダヤ人たちがドイツ兵の一団に暴行をうけ、ある者はガス室送りとなる情景を描き出しています。そんな極限状況の中で忘れていた古い信仰を思い出す。カトリックからユダヤ教にあえて改宗したシェーンベルク自身の姿もだぶります。
- 戦うことよりも、迫害し殺すことを目的としてしまった現代の戦争、ここで迫害を受けた者たちの子孫が今また別の場所で今度は同じ迫害する側に回ってしまっている、なんともやるせない人間の業なのでしょうか。
録音について
- 抑揚やリズムが厳しく指定されているシュプレヒテンメではありますが、興味深いことに結構録音ごとの個性は歌われる作品よりも大きく出ているように思います。1952年 おそらく最初のスタジオ録音と思われるハンス・スワロフスキー指揮ウィーン交響楽団(語り:ハンス・ヤーライ)、丁寧な語りと音楽が一番この曲を理解するのにはうってつけの分かりやすい演奏と思いますが、残念なのは語りに若干アドリブがあること。1957年にはポーランドのお隣チェコのノイマン指揮チェコフィル(語り:リチャード・ベイカー)、かなり遅めのテンポでじっくりと語られます。英語ネイティブではない感じのナレーターなので言葉を我々が聞き取るには一番良いかも。1963年ロバート・クラフト指揮のCBC交響楽団(語り:ジョン・ホルトン)は快速のテンポで緊迫感が半端ありません。最後の方など語りはとんでもない早口。英語のネイティブでないととてもではない(ドイツ語の軍曹の語りも早口なのでこれも練習しなくてはならないですが)。クラフトは2007年にフィルハーモニア管(語り:ディヴィッド・ウィルソン=ジョンソン)とも入れています。バリトン歌手でもある語り手の語り口の巧さと美声には惹かれますが、私は旧盤の熱さの方がより好みです。新盤は少し芝居がかりすぎている感じ。同じバリトン歌手を起用しているアバド指揮ウィーンフィル(語り:G。ホーニック)やブーレーズ指揮BBC響(語り:ギュンター・ライヒ)も似たような印象であまり気に入ってはおりません。ということで私は本職のナレーターを起用した録音の方が好きなようですがこのあたりは好みの問題でもあるかと。語りの芸が一番素晴らしいと思ったのはウード・サメルがナレーションをつとめたメッツマッハ―指揮バンベルク響のものでした。
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最終更新:2025年01月10日 15:42