第一場 出征を前に、兵士たちが村の娘たちとお別れのパーティーを開いています(En attendant que l’heure sonne)。別れを悲しむ村娘のヴァンダに、恋人の一兵卒フリッツは、悲しんでいないで陽気に踊って楽しもう(Allez, jeunes filles, Dansez et tournez)と爽やかなワルツを歌います。
第二場 そこへ突然現れたのは、パワハラ・セクハラ体質の司令官のブン大将。兵士たちがイチャイチャしていることに激怒し、村娘たちを追い散らします。それにぼそっと口答えする兵士フリッツ、ブン大将の怒りの火に油を注いでしまいます。ブン大将はここで有名な登場の歌(À cheval sur la discipline)を兵士たちのコーラスと共に颯爽と歌います。歌い終わったあとには自分に反抗的なフリッツにお説教ともくろんだところですが、フリッツから「ぼくに厳しくあたるのは大将がぼくの恋人のヴァンダに言い寄って振られたからでしょう」と逆襲されてさらに怒りが増します。
第八場 ブン大将の部隊が整列する前を、女大公殿下とその侍女たち、宮廷部隊の将校たちが行進して行きます。女大公殿下は 私は大好き 兵隊さんが(Ah! Que j’aime les militaires)とミリタリーオタクっぽい偏愛を表明し、また歩き出しますがそこでふと、整列している兵士の中のフリッツに目を止めます。彼のイケメン振りに目を奪われてブン大将に命じて彼を前に出させ、じわりじわりと彼にモーションをかけ始めます。まずは彼の階級を伍長→中尉と上げて行くプレゼント攻撃。続いてはブン大将の提案した「連隊の歌」のデュエットの相手に女大公はフリッツを指名し、彼の階級を大佐にまで引き上げます。バックコーラスの掛け声も愉快に歌われる女大公とフリッツのデュエット「連隊の歌 Chanson du Régiment」 歌が終わったところでまたまたネポミュック、今度はピュックが仕組んだ女大公の花婿候補・ポール殿下の訪問を告げます。あまり気乗りしない女大公ですが会わないわけにも行かず、通すように命じるのでした。
第十三場 出征する兵士たちが再び集まってきて Nous allons partir pour la guerreと戦いに赴く決意を歌います。そこで女大公は衝撃的なアナウンス、今回の戦争の最高司令官はなんと今まで一兵卒であったフリッツです。各人各様の思惑が歌われたあと、おもむろに女大公はネポミュックに例のものを持って来なさいと命じます。一同ざわめく中、持ってこられたのは女大公の父のサーベル。Voici le sabre de mon père!と出陣する総司令官フリッツにそのサーベルを手渡して武運を祈る、古いイタリアオペラなんかでよくある典型的なシーンのパロディ。ただなかなかにかっこいいメロディで盛り上がります。また彼を快く思わない三悪人ピュック、ブン、ポール殿下が彼の破滅を願う合いの手を入れるところなどもなかなかに笑えます。壮麗な式典の音楽のあとはさすがやはりオッフェンバック、軽快なギャロップに乗せてフリッツの出陣の決意が歌われます。それに合わせて三悪人の呪詛も軽やかに。最後は華やかにコーラスが出陣の歌を響かせますが、ここでやっぱりオペレッタ。フリッツがせっかく授けられた女大公のサーベルを置き忘れ、慌てて戻ってくるというひと騒動で幕となります。
第二幕
宮殿の広間
第一場 戦争は公国の勝利のうちに終わったようです。出征して行った恋人の兵士たちを待ちわびる女大公の侍女たち(Enfin la guerre est terminée)。そこへネポミュックが戦場から彼女たちへの手紙を持ってきます。めいめいに届いた手紙を紹介しあう4人の侍女たち。うきうきするようなワルツの調べが、もうすぐ再会できる喜びへの期待を表しているのでしょう。
第一場 前の幕の終わりにフリッツに対する復讐を企てたその昔伯爵マックスが暗殺されたと伝わる部屋、女大公とブン大将がふたり居合わせます。ブンは別室の舞踏会場に引き留めているフリッツのことを報告。彼は自分の婚礼に出かけたかったのですが。もちろん引き留められた理由はこれから3人組+女大公の餌食となるためです。昔マックスが暗殺されたことを思い出しながらO grandes leçons du passé!とデュエット。そんな事件があっても二百年も経てば観光名所にもなりかねない と結構皮肉のきつい歌。そして女大公は出て行きます。
第六場 そこへやって来たのはフリッツ、ヴァンダの婚礼を祝しつつ、二人を初夜のあずまやへと導く一団。Nous amenons la jeune femmeと歌いながら。フリッツは先客のブンやピュックに挨拶し、他の皆も一緒に退出して二人きりにしてくれるように頼みます。皆はおやすみの挨拶をして大人しく退出して行くのでした。 Bonne nuit, monsieur, bonne nuit!と。
第七場 やっと二人きりになれたフリッツとヴァンダですが、あまりの環境の激変にお互い戸惑っています(Faut-il, mon Dieu, que je sois bête!)。そこへ次々と押しかけてくる婚礼を祝う集団が邪魔に入って来る。それらを何度も押し返し、ようやく愛の語らいを始めようというところでまた激しいノックの音が...
第一場 こんな場所であるにも関わらず、女大公とポール殿下の婚礼の宴が開かれています。Au repas comme à la batailleと楽しげなコーラス。「ラインのワインを飲み干そう」と歌っているところを見ると、なんとなくこの大公国、どこの国をモデルとしているのか想像がつくような...
第二場 続いては女大公による「大酒飲みのバラード」Il était un de mes aïeux、女大公の祖父の酒飲みっぷりを物語ります。歌のあとは感極まっているポール殿下、六か月の苦労がようやく報われたのです。ブン大将はフリッツを嵌めた顛末を女大公に報告します。ブン自身の不倫相手のところに戦闘だと偽ってフリッツを身代わりに行かせ、怒り狂った亭主にボコボコにさせようというのです。
第三場 そこへ夫がひどい状態で帰って来たと駆け込むヴァンダ。どうやらブンたちの罠はうまく行ったようです。ヘロヘロになって出征の顛末を語るフリッツEh bien, Altesse, me voilà。あの気高き女大公の父のサーベルもひん曲がってまるで栓抜きのよう。この失態を利用して、女大公はフリッツから貴族の階級も軍の地位も剥奪します。剥奪した地位を一目ぼれしたばかりのグロックに与えてこの宮廷に留まらせようという目論見ですがそうはうまく行きません。このグロック、実は妻帯者で故郷に4人の子持ち。その事実をここへ来て知った女大公。とうとう観念して地位と権威はもとの通りブンとピュックに、そしてグロックは妻子の待つ故国へと、フリッツはヴァンダと共に故郷の村へと戻るのでした。最後の女大公の独白「好きなものが得られないのなら 持っているもので満足しなくちゃね」に引き続いて皆が満ち足りた終曲で楽しげに幕となります。