"ラ・ボエーム"

対訳

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ムゼッテ!わたしの家の宝(動画対訳)


あらすじ

  • 幕が上がるとカフェの店主ガウデンツィオと音楽家ショナールが言い争っています。彼やその仲間のロドルフォやマルチェッロがこの店でやりたい放題して、その上飲み代のツケをろくに払わないことに苦情をぶちまけていると、そこに怪しい風体の浮浪者が。カフェで開かれているという無料の音楽教室に興味を持って来たのだと言います。しかし心当たりのない店主。浮浪者の言う通り表のサインボードを見るとショナールが勝手に出した音楽教室の張り紙が。

訳者より

  • プッチーニの大傑作オペラの陰に隠れて今やほとんど耳にすることもないもうひとつの「ラ・ボエーム」です。
  • どうしてプッチーニとレオンカバッロが同じH.Murgerの「ボヘミアンたちの放浪生活」を下敷にした同名のオペラを書いたのかの経緯はここの更新情報ブログをはじめ色々なところに書かれておりますのでここでは割愛し、私はこのレオンカバッロの「ラ・ボエーム」、その物語や音楽の特徴をもっぱらご紹介することに専念しようかと思います。
  • このレオンカバッロ版、一言で特徴を語るとすれば「ヴェリズモのボエーム」とでもなりましょうか。ロドルフォ、マルチェッロたちボヘミアンのほとんど壊れているかのようなやんちゃ振り(第1幕でのカフェ店主や第2幕での近所住民たちに迷惑かけまくり。その上プライドだけは妙に高いけっこう厄介な奴らです)であったり、第3幕や第4幕での生々しい貧乏の描写であったり、更にはプッチーニ版ではメルヘンチックな恋人の別れを描いた第3幕がこちらでは流血も起きかねんばかりの別れの修羅場になっていたりと、美しい音楽にはおよそそぐわない強烈な物語が紡ぎ出されて行きます。ですが台本をじっくりと読み込みながら音を聴いていると思わず引き込まれ、特にこのドロドロの修羅場の第3幕が最も聴きごたえのある魅力的な音楽のように私には思えます。とびきりの傑作という訳には行きませんが、どこか忘れ難い味わいのある佳作として後世に残ってくれたら素敵な作品と思い、作曲者の没後100年を機会に訳して見ることとしました。
  • 原作小説「ラ・ボエーム・放浪芸術家たちの生活風景」、実は昭和3年の「世界大衆文学全集」(改造社)に邦訳が収録されているのだそうです。それを底本にした翻訳が平成7年、永竹由幸編集による新潮社オペラCDブック第6巻「ラ・ボエーム」(もちろんプッチーニのものです)に収録されていて、私もそれで読むことができました。こればかりでなく、オペラをはじめとする舞台芸術にことのほか造詣の深かった永竹のふたつのオペラ「ラ・ボエーム」評なども載っていてたいへん興味深い読み物でしたので、このオペラに関心をお持ちの方は図書館など探してぜひお読みになることをお勧めします。4人のボヘミアンたちのろくでなし振りなんぞはこのレオンカバッロ版、かなり原作小説に忠実なことが分かりますし、両オペラで取り上げられている小ネタ(たとえばイギリス人金持ちの家でショナールが鸚鵡を毒殺する話(プッチーニ)やコッリーネがコーヒーについて蘊蓄を垂れる話(レオンカバッロ)、ショナールとコッリーネが双頭のウサギの頭を貪り食うところ(レオンカバッロ)など)も原作のそこかしこに散りばめられています。面白いのは両オペラ共に第4幕はロドルフォがミミを自分のアパートで看取る幕切れにしていますが(ドラマの展開上はそうするしかないのでしょうけれども)、原作ではミミは病院で誰にも看取られず死んでいるのでした。
  • レオンカバッロ版で他にも興味深いところは、原作に書かれた詩篇をそこかしこに織り込んでいることでした。一応リブレットの上でも引用しているところには出典が記述されていますので注意してみてください。原作小説からばかりでなく、フランスの詩人ミュッセの詩やシャンソン、さらにはマイアーベーアのオペラ「ユグノー教徒」からのフレーズなど、色々と19世紀当時のパリの風物が散りばめられています。テキストばかりでなく、メロディにもそこかしこに当時の生活のオマージュと思しきものが隠されているようですので、そんなところも楽しめるオペラでもあります。

録音について

  • 更新情報で管理人さんも言及している1981年録音のワルベルク指揮によるミュンヘン録音が、ルチア・ポップのミミ、フランコ・ボニゾッリのマルチェッロ、ベルント・ヴァイクルのロドルフォ、アラン・タイトスのショナールと大物歌手を揃え、歌声の饗宴が聴きものです。特に第3幕での丁々発止な歌の掛け合いは鮮烈。ここでほとんどのアンサンブルに絡むムゼッテ役のアレクサンドラ・ミチェヴァも好演です。
  • ただ個人的にはそれから約10年後の1990年、このオペラを初演したゆかりのフェニーチェ歌劇場でのプロダクション(Jan Latham-Koenig指揮)が、有名な歌手はほとんどいないものの実に生き生きとした推進力に満ちてかなり魅力的でした。
  • 古くは1958年のナポリ、サン・カルロ歌劇場のライブもけっこう音がよくて聴けます(指揮はモリナーリ=プラデッリ)。この録音で特筆すべきは、セラフィン指揮でのプッチーニ版ボエームでマルチェッロを歌ったエットーレ・バスティアニーニがここではロドルフォを歌っていることです。
  • 英語版のWikiを見ると他にもいくつか録音があるようですが(2002年の映像も)、私は未体験です。

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@ 藤井宏行

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