あらすじ
舞台は19世紀イタリアのパドヴァ。町の行政官の邸宅
第1場
朝っぱらから窓の外で大きな音楽が聞こえて来ます。行政官の娘ロレットがあれは何かと訝しがるところに彼女の父親とその後妻のヴェロニクもやって来ました。夜中にロレットに窓辺で言い寄る軍の大尉・シルヴィオがまた来たのではないかと疑う父親。彼氏の歌ならもっと素敵だから違うと反論するロレット。この目で確かめてやると窓辺に近づいた行政官の目に映ったのは怪しい薬を売っている偽医者のドクター・ミラクルでした(彼は舞台には登場せず。またここでは明かされませんが実はロレットの恋人シルヴィオの変装だったのです)。なおもしつこくがなり立てる音楽に行政官は腹を立て、ミラクルを追い払おうと出て行きます。出て行きしなに行政官は、娘とシルヴィオの仲を取り持った召使をクビにして、新しい召使を雇ったと言い捨てて出て行きます。
第2場
あとに残った継母ヴェロニクと娘ロレット。ヴェロニクは4度も夫を替えた猛者で、最初の夫が軍人だったと言います。その目からみてロレットがいつ徴兵されていなくなるか分からない軍人に惚れているのは理解できないと言います。ロレットはロマンス”Me gronder pour cela”で大切なのは愛だと歌います。歌のあとで従姉妹のフィロメーヌだって軍人と結婚して幸せだったでしょとガールズトークを続ける二人でした。
第3場
そこへドクター・ミラクルを追い払って戻ってきた行政官。これからやってくる新しい召使を受け入れる準備を妻ヴェロニクに頼みますが、お喋りに盛り上がっている女たちは完全シカと状態。腹を立てた行政官は二人をそれぞれ左右の部屋に追い出し、鍵をかけて閉じ込めてしまいます。
第4場
そしてやって来たのは新しい召使のパスカン(実はこれもシルヴィオの変装)。片目にアイパッチをしています。いったいその目はどうしたのだと問う行政官に「ぼくは軍人が大嫌いだからぶちのめした時にできた痣だ」と答えるパスカン。娘に言い寄るシルヴィオ大尉が大嫌いな行政官と意気投合します。
君は強いのかね と問う行政官に一発腹パンをぶちかますパスカン。それでも腹も立てない行政官はさらに「君は他に何ができるのかい?」という問いかけにパスカンはクープレ”Je sais monter les なんかどうでも良いような能力の開示ですが、行政官は前の召使のように賄賂も貰って娘ロレットとシルヴィオ大尉の仲を取り持ったりしないかどうか、もし大尉が忍び込むようなことがあれば撃退してくれるのかといった肝心なポイントについて更に問い、答にたいそう満足します。
第5場
喜んで閉じ込めていた妻と娘を出してやり、パスカンと合わせる行政官。さっそく行政官の娘を妻のヴェロニクと間違えるボケをかますパスカン。更には朝食を準備しろという命令に皿を落として粉々にするというダメダメ振り。でも激怒するでもなく行政官は彼とヴェロニクを台所へと行かせます。
第6場
残ったのは父と娘の二人。年増の継母と間違えられてかあまり新しい召使に好感を持っていない娘ロレットと、あわだけ酷い粗相をして置きながらまだ召使のことを高く買っている行政官とのちぐはぐな会話。父は娘を時分の決めた別の男と結婚させたいので、悪い虫シルヴィオは追い払いたいのだという思惑をここでカミングアウトするのでした。
第7場
パスカンが朝食に準備したのはオムレツでした。4人そろって”Voici l’omelette !”と、このオムレツに寄せるアンサンブルを歌います。ですがいざ食べてみるととんでもない味と臭い。これはたまらんと行政官は口直しのワインを注ぐようパスカンに命じますが彼は(故意に?)ワインをこぼして行政官の服をずぶ濡れにするのでした。これはたまらんと妻ヴェロニクを連れ、散歩に出ると言って行政官は出ていきます。
第8場
残された娘ロレットとパスカン、彼女はパスカンの正体が愛するシルヴィオとは知りませんのでつっけんどんに会話を始めますが(デュエット”En votre aimable compagnie”)。しかし自ら正体を明かしてくれたシルヴィオにいつしか愛のデュエットになります。
第9場
そこへ戻ってきた行政官。”Dieu ! son père !”と3重唱が始まります。行政官にも正体がバレてしまったパスカン(シルヴィオ)は追い出されてしまうのでした。
第10場
激怒してパドヴァの守備隊を撤退させろ(そうすればお邪魔虫のシルヴィオも居られなくなる)と叫ぶ行政官ともう会えなくなるのかと嘆くロレット。そこへ何やら手紙を持ったヴェロニクが入ってきます。
第11場
その手紙がとある兵士からのものと聞いて、そんなもの詠めるかと突き返す行政官。ですがその手紙の書き出しを見たヴェロニクとロレットが次々と気を失うのを見て気になり読んでみると「娘に会わせてくれない復讐に、あのオムレツには猛毒を混入した」と書いてあるではないですか。それを読んで突然苦痛を感じる行政官(ヴェロニクとロレットもオムレツは食べた筈ですが平気なのに気付きもせず)。あの偽医者ミラクルを呼んで来い と叫びます。
第12場
ドクター・ミラクルがやってきますが、ラテン語しか話さないのでコミュニケーションがうまく行きません。幸いヴェロニクの亡くなった3番目の夫が薬剤師で、彼女もラテン語が分かるということで通訳をします。治療はできるが法外な費用が掛かると言われて動揺。ところがこのドクター・ミラクル、ロレットに惚れたようです。彼女と結婚させてくれるなら治療しましょうと申し出るのでした。
”Mon enfant, si tu m’aimes bien”(最後の四重唱)で自分が助かりたい行政官はその申し出を受け入れ我が子を売ることに同意します(非道!)、しかし健気な娘ロレットはこの運命を受け入れる決断をするのでした。娘と引き換えに処方箋をふんだくる行政官。しかしそこに書かれていたのは「毒なんか初めから入れてませんでしたよ」という文句。さすがにこれはキレる行政官であったが、いつの間にかドクター・ミラクルの正体を明かしたシルヴィオと娘ロレットの仲睦まじい姿と妻ヴェロニクの説得に折れて、4人で愛を讃えて幕となる。
最終更新:2025年06月03日 10:28