対訳
あらすじ
- 朝っぱらから窓の外で大きな音楽が聞こえて来ます。行政官の娘ロレットがあれは何かと訝しがるところに彼女の父親とその後妻のヴェロニクもやって来ました。夜中にロレットに窓辺で言い寄る軍の大尉・シルヴィオがまた来たのではないかと疑う父親。彼氏の歌ならもっと素敵だから違うと反論するロレット。この目で確かめてやると窓辺に近づいた行政官の目に映ったのは怪しい薬を売っている偽医者のドクター・ミラクルでした(彼は舞台には登場せず。またここでは明かされませんが実はロレットの恋人シルヴィオの変装だったのです)。
訳者より
- ビゼーのオペラは既にカルメンと真珠取りは訳がありますので、次に知られた作品と言えば「美しいパースの娘」か「ジャミレ」ということになるでしょうか。ただ私は「パースの娘」はよく知らないし「ジャミレ」はお話も音楽もそんなに好きじゃないし、ということで今年(2025年)の没後150年はどうしようかと思案していたところとても素敵な作品を見つけましたのでこれを訳してご紹介することにしました。作曲が1856年と言いますのでまだビゼーが18歳のときの作品。もちろん後の作品のような完成度はありませんが、若きビゼーの才気あふれる魅力的なオペラ・コミークです。
- 1856年、まだこのジャンルの主要作品を書いてはいなかったジャック・オッフェンバックが若い才能を発掘するオペラ・コミークを盛り上げるために企画したコンクール。レオン・バトゥとリュドヴィック・アレヴィの書いた同じ喜劇台本に曲をつけて競い合うという試みでした。このコンクールに勝利したのはひとりはビゼー、そしてもう一人はビゼーより6つほど年長のシャルル・ルコック(Charles Lecocq 1832-1918)でした。両者の作品を聴き比べることのできる録音(スタンフォード・ロビンソン指揮ロイヤルフィル他・歌手も両作品で一緒の人が出ています Cameo Classics)けっこう両者甲乙つけがたい楽しさです。正直なところ年の功でルコックの方がよく出来てるかなと思えるところもありますが、そつなくまとまっていることが魅力となるかどうかは微妙で、ビゼーのメロディストとしての才能はもうこの時期から発揮されていることの方が勝っているのかも。演奏効果がそういうわけで高く、1時間ほどの長さで、また登場人物が4人と少ないためか、けっこう欧米では取り上げられる演目のようで、YouTube にもけっこう舞台が上がっていました。台詞付きオペラ・コミークの常で、英語版やスペイン語版などいろんな言葉で歌われてはいますが。
- リブレットはTimpaniレーベルから出ている「完全全曲版」とある録音(サミュエル・ジャン指揮アヴィニョン=プロヴァンス地方歌劇管弦楽団他)からお借りしました。台詞部分が厚いだけで、歌われている部分はどの録音・舞台でもさほど変わらないようです。
- 台本でははっきり示されていませんが、多分女声二人は比較的早いタイミングからシルヴィオ(パスカン&ドクター・ミラクル)の策略は早い時点で気付いて(あるいは知らされて)いたのでしょう。それと第12場でドクターがラテン語しか喋らないところ。こんな感覚でフランス語圏の聴衆は聴いているのかな?ということで一工夫させて頂きました。
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最終更新:2025年06月03日 10:35