箱入り娘(パズル)

登録日:2025/07/11 Fri 11:31:45
更新日:2025/07/24 Thu 17:10:06
所要時間:約 2 分で読めます













番頭
丁稚 丁稚
丁稚 手代
出 ↓ 口



【概要】

『箱入り娘』とは、スライディングブロックパズル*1の一種である。
似たようなパズルは世界各国で多く見られるが、本項では日本で最もメジャーな名称であると思われる『箱入り娘』で紹介させていただく。

日本では第二次大戦前の1935年(昭和10年)頃からメジャーな存在になったらしい。
ただし、作成されるまでの来歴や起源は正確には分かっていない。
後述の通り同時期に各国で似たようなパズルが作られているのが散見されるため、伝聞などで徐々に広がっていったものと推測される。

名称である「箱入り娘」という言葉には「家庭で大切に育てられ、世間のことをあまり知らない娘」という意味がある。
おそらくは商家の娘さんが、親や使用人の目を掻い潜って外出をするもしくは嫁に出る……というイメージで命名されたのであろう。
そのため下記で紹介する各コマに付けられている名称には色々なバリエーションがある*2が、日本式のものでは基本的に「娘」は共通して存在している。

《構成》

パズルの見た目自体は、本項冒頭の図を見て頂くのが一番わかりやすいであろう。
  • ケース:横4マス・縦5マス
  • コマ*3
    • 大ゴマ(2×2マス):1つ
      • いわゆる「娘」。このコマを最下段の「出口」に導くことがパズルの目的である。
        家で一番デカいのが娘なのは……ダイエットせい!
    • 長コマ(2×1マス):5つ
      • 1つを横向き、4つを縦向きで使用する。
    • 小コマ(1×1マス):4つ
      • パターンによっては長コマを1つ減らし、小コマを6つにするものもある。
これらを配置すると空きマスが2マス分出来るため、その空間を利用して各コマを動かしていく。

一般的な基本の初期配置は大ゴマを最奥、その両端に長コマを縦で1つずつ(A群)配置。
次に大ゴマ横の長コマの下にも縦の長コマを1つずつ(B群)配置し、大ゴマの下に長コマを横向きで配置。
最後に長コマB群と横向き長コマの下にそれぞれ小コマを配置すれば配置完了。本項冒頭の図のようになる。

なお上記の初期配置の場合、最短手は81手になるらしい。*4



【バリエーションなど】

Klotski(クロツキー)

英語圏でメジャーなもの。
ポーランド語で「木のブロック」を意味する「klocki」から命名された。

コマの構成などは一般的な『箱入り娘』と同様。

Pennant Puzzle(ペナントパズル)

1909年にシカゴでルイス・W・ハーディにより商標登録されたもの。別名『Dad's Puzzler』。
米国特許記録から遡れる中では最も古い『箱入り娘』系パズルの公式製品。

コマの題材はなんと「野球チーム」。ブルックリンやセントルイス、フィラデルフィアなどに囲まれたシカゴ球団を救い出すのが目的。
コマのサイズ・ブロックの初期配置・「出口」の位置が異なるため、最短手は59手とやや少なめ。

L'Âne rouge(ラヌ ルージュ)

フランス語版のもの。
「L'Âne rouge」はフランス語で「赤いロバ」を意味する。

・華容道

中国語版のもの。
1940年代後半以降に広く知られるようになったという。

名称でピンときた方もいるかもしれないが、「『三国志』の赤壁の戦いでの曹操軍の敗走路」がコマの題材。
「娘」ポジが曹操で、関羽張飛/趙雲/黄忠/馬超といった劉備軍の猛将を掻い潜り脱出を図るのが目的。
なお「当時の劉備旗下に黄忠や馬超はいねぇだろ」というのは禁句。

『三国志』といういかにも歴史のありそうな題材選びとシンプルなパズル構成から高い人気を誇っている。
その人気ぶりから、中国で遊んでいるプレイヤーの多くは中国発祥の由緒あるパズルゲームと勘違いしているとかなんとか。
様々な題材が試されている『箱入り娘』系パズルの中でも、おそらく一番マーケティングが成功した例。

現在ではパワーアップした『超級華容道』(とその模倣品)も登場している。
こちらは携帯しやすい小型サイズながらも、マグネット付きで落ちないコマや盤面を表示するデジタル画面(電池式)が搭載されており利便性が向上。
更に簡単に解けるものから超難しい難問まで500パターン以上のお題の出力機能やエフェクト・効果音までもが搭載されている。
総じて人気は高く、各種動画投稿サイトでも早解きや対決といったプレイ動画が数多く投稿されている。
海外に向けても現代的知育玩具として『スーパースライド』という名前で輸出されており、日本でも通販サイトなどで気軽に入手することができる。

・シャロム 魔城伝説III 完結編

1987年発売のアクションアドベンチャーゲーム。『箱入り娘』のコンピューターゲーム移植としては日本の商業ゲームではおそらく初の例。

「ラスボスの前座となる魔王パズラの体内に閉じ込められた姫を救う」という戦闘シーンの形で『箱入り娘』系パズルを解くことになる。
初期配置は一般的なものと少し異なり、本項冒頭のものから最下段の小コマが上の長コマと入れ替わっている。

・ナゾ135 究極の脱出パズル

「レイトン教授」シリーズの1作目『レイトン教授と不思議な街』で、全てのナゾを解いた後に出現する最後のナゾ。

一般的な『箱入り娘』のケースを横に倒した形をしている以外は全く同じ。
以下はゲーム内で確認できるヒントである。

・怪奇都市伝説 アカズノハコ

『箱入り娘』を題材とした短編ホラーゲーム。

迫ってくる幽霊から逃げながらパズルを解いていく。
最初の方は1マスで動かしやすい「小僧」コマのみだが、徐々に2マスのコマが増えていき動かすのが難しくなっていく。
最終的に一般的な『箱入り娘』の構成になる。
世界観的には「コトリバコ」+「禁后」といった具合で、『箱入り娘』系パズルは「箱の蓋に付いている開錠手段」として扱われている。

自分を殺しに来る幽霊から適度に離れつつ手元のパズルを解くというシンプルながらも緊迫感のあるアイデアが見所。
また画面の小ささをうまく利用した恐怖演出も魅力的。
なおどうしてもパズルが解けない人向けの救済措置も存在しており、コマをひたすら連打しまくると豪快なSEと共にコマが破壊される
このため、ズルをすればエンディングを見ること自体は難しくない。

最終的に主人公・渡辺は箱の鍵を解き、中身を知ることとなるのだが……?

・箱入り娘の大家族

岐阜県高山市の「さわたく工房」が作成している『箱入り娘』のバリエーションの一つ。

「大家族」の名の通り、ケース自体が大きくコマもより多くの種類が使われている。
具体的には
  • ケース
    • 横が6マスに(縦は5マスのまま)。
  • コマ
    • 長コマと小コマがそれぞれ2つ追加。
    • 4×1マスの長大コマが追加。
      ちなみにコマに書かれた名称は「大番頭」。
      父母らよりも大番頭が幅を利かせているというのが妙にリアル感を醸し出しているのは穿ち過ぎであろうか……
ただ空マスが4マスになっており、それもあってか一般的な『箱入り娘』より難易度は低いとのこと。

なお2025年6月の某日、X(旧Twitter)でとあるユーザーが以下のポストを行ったところ……
これは「箱入り娘の大家族」という、
『並いる家族たちをどうにかして、箱入り娘を玄関から外に出そう!』というゲームなんですけど、
家族たちがマジで手強くて気が狂いそうになるので、パズル得意なフォロワーに攻略してほしい
これがなぜか大バズり

その結果なんと注文数が一気に1200倍に増加したとのこと。
工房の社長さんはテレビの取材に対し「いつかはバズってくれないかな…なんて思っていましたね」と答えている。
その夢が叶ったことは喜ばしい限りである。



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最終更新:2025年07月24日 17:10

*1 パズルの分類のひとつ。ケースの中に収められたコマを空きマスを利用して動かし、特定の配置にすることを目的とする。

*2 華・琴のような稽古事であるパターン、兄弟・友人・祖父母といった他の家族であるパターンなど。

*3 コマの名前は仮称。

*4 厳密には「一手」の定義(1マス動くのを一手とするか、直線上であれば何マス動いても一手と数えるか、ジグザグに動くのもアリかなど)によって最短の手数・解法が変わる模様。