東京都渋谷区にあるコンサートホール『東京織星シンフォニーホール』は熱気に包まれていた。
ここで行われるイベントのために、全国からそれを待ちわびていた人々が集まっていた。
1500人を収容するというAホールには、明らかにそれよりも多い数の人たちがいる。
彼ら、彼女らは一様に緑色のTシャツ、タオル、うちわなど緑色のものを身につけていた。
観客達は腕時計をチラチラと見ながら、イベントが始まるのを今か今かと待ちわびている。
Aホールを出たところのロビーにも、同じく緑色のものを身につけた人たちが大勢いた。
物販に並ぶ人や、イベントの開始を前に興奮している人、それを冷めた目で見ているコンサートスタッフなど……。
ホールの壁にはイベントのポスターがいくつも並べて貼られていた。
今日、ここで行われるのは新興アイドルグループのコンサート。
ポスターに写る4人の女の子たちは皆緑色を基調とした派手な衣装を着て、笑顔を向けている。
グループの名前は『エメラルド☆フロウジョン』。
世にも珍しい「スタンド使い」によるグループだった……。
――――東京織星シンフォニーホール ステージ裏
Aホールのステージの裏から通じる控え室までの廊下には、多くのイベント関係者達が行き交っていた。
コンサートの開演15分前とあって、彼らは皆何か不備はないかとタイムスケジュール表とステージをきょろきょろ見回しながら走り回っている。
その中をぬう様に『エメラルド☆フロウジョン』の若きマネージャーは彼女らの控え室に向かっていた。
マネージャー「もう15分前だぞ……さすがにそろそろスタンバイしないと……」
マネージャーは控え室のドアを開けて中に入った。
華名「ダ~~~~~~メッ!! 私が絶対真ん中に立つの!!」
真琴「い~~~~~かげんにしてっ! そんなこと許されないんだ!!」
控え室に入るやいなや、グループの2人の女の子がしかめっ面で向き合っているのが目に入った。
「「む~~~~~~~~~っ!」」
マネージャーが控え室を見回すと、奥のソファにはもうひとりの女の子が寝転がってくつろいでおり、
控え室の扉のそば、マネージャーのすぐ隣にはスーツを着た女性が腕を組んで気だるそうに立っており、仏頂面で様子を眺めていた。
マネージャーはその女性に尋ねた。
マネージャー「あの……」
スーツの女性「…………」
マネージャー「彼女たちなにやってるんですか……『プロデューサー』」
女性P「……別に、いつものことじゃない」
華名「きょうはぜ~~~~ったい私がセンターで歌うの! 元気で超かわいい私が『エメフロ(エメラルド☆フロウジョンの略)』のシンボルとして真ん中に立つのは当たり前でしょ!」
センターで歌いたいと主張しているのは、メンバー最年少、15歳の光石 華名(ミツイシ カナ)だ。
小柄だが人一倍元気な女の子で、『セヴンス・ムーン』のスタンド使いである。
真琴「何言ってるの! 4人なんだからセンターとかそもそもあるわけないじゃない! もう開演近いんだからワガママ言わないでよー!!」
華名を言い諭そうとしているのは、『シーサイド・ギター・ヴォイス』のスタンド使いであり、ショートカットにメガネが特徴の16歳、三瀬 真琴(ミセ マコト)である。
しかし、華名のワガママぶりに腹を立てているのか、真琴までも怒っているように見える。
真琴「シュリも何か言ってー! 華名ちゃんワガママすぎるよ!」
真琴はソファに寝ている黒髪の女の子に向かって言った。
シュリ「………………もぐもぐ」
真琴「ってシュリちゃん何肉まん食べてんの! コンサート中にお腹痛くなったらどうすんの!!」
シュリ「コレあんまん」
華名「つーか衣装のままソファに寝転がっちゃダメじゃん! しわくちゃになるでしょ!!」
マイペースで肉まんを食べているのは、中国からの留学生で『ブリット・ポップ』のスタンド使いである、16歳の晴山シュリ(ハレヤマ シュリ)だ。
中国からの留学生、と言っても名前から分かるように日本人とのハーフなのだが。
シュリ「んむぅ~…………もぐもぐ」
真琴「肉まん食うのやめろ! もう回収!」
マネージャー「い……いつものことなのはそうですけど、もう開演15分前……いや10分前ですよ?」
女性P「……いいじゃない、やらせとけば。緊張してガチガチになってるよりはずっとマシよ」
マネージャー「ええ~~でもセンターがどうとか言ってるし……ステージ上でモメたりしたら……って恵はどうしたんですか! どこに行きました?」
恵「すみません~おまたせいたしました~」
マネージャーの後ろからゆったりとした声が聞こえた。
振り返ると胸元のきつい衣装を着た沢井 恵(サワイ メグミ)が立っていた。
『シャイニー・カラー』のスタンド使い、メンバー最年長の18歳である。
マネージャー「ど、どこ行ってたんだよ! もう時間ないんだぞ!!」
恵「ごめんなさい~お手洗いにいってました~……てアレ? またケンカしてたんですか?」
華名「シュリと恵姉ぇが私の両サイドに立って、マコっちゃんが後ろに立てばいいじゃん」
真琴「なんでよ! 私が見えなくなっちゃうじゃないか!」
華名「大丈夫だよ、私背低いからマコっちゃんの頭くらいなら見えるって」
真琴「ふざけんな! シュリ、華名に言ってやってよー!」
シュリ「ん~~…………もぐもぐ」
真琴「2個目の肉まん食ってるし!」
華名「つーかドコから持って来たんだよその肉まん!?」
シュリ「…………胸パッドのかわりに詰めてきた」
恵「あらあら~ダメよ、ちゃんとしたもの使わなきゃ~」
真琴「気にするトコおかしいだろ!」
華名「ふん、シュリちゃんも恵姉ぇも何も言わないし、私がセンターに立ってもいいよねマコっちゃん」
真琴「そんなのダメに決まってるでしょ!」
華名「ふーん……じゃ、スタンド勝負で決めようよ。私がマコっちゃんに勝ったらセンターでいいよね?」
真琴「そんなの横暴だよ、時間ももうないし、そんなことできるわけないでしょ!」
華名「あー怖いんだ、勝負して負けるの怖いから逃げるんだ、ふーん」
真琴「………………なんだって? わかったよ、やりゃあいいんでしょ! 『シーサイド・ギター・ヴォイス』!!」
華名「ふふふ……『セヴンス・ムーン』!!」
マネージャー「な、何やってんだよおまえたち! いいかげんにしろよ!」
ドドドドドドドドドドドドドドドド……
女性P「…………」
シュリ「………………もぐもぐ」
マネージャー「っちょ、観てないで止めてくださいよ!」
恵「あらら~ダメですよケンカは~」
華名「恵姉ぇは黙ってて!」
恵「もう皆さんお待ちかねなんですから~」
マネージャー「め、恵……」
恵「ケンカ止めればいいんですよね~『シャイニー・カラー』~~!」
恵のスタンドが発現し、両の手のひらでそれぞれ真琴と華名に触れた。
恵「さあ笑って~」
真琴「……わっ、わはっ、わははははははははははは」
華名「がはははははははははははははははははははは」
シュリ「華名、アイドルらしからぬ笑い声」
マネージャー「なんだこれ」
女性P「…………フゥ」
『エメラルド☆フロウジョン』の4人は控え室を出て、ステージの袖に移動した。
開演の時間はすでに3分前を切っている。
華名「うやむやにされちゃったけど、今度ちゃんと話つけさせてもらうからね」
真琴「いいかげんにしなさいって、今はステージに集中!」
シュリ「アーあー、ある、ある……アルアル。…………よし、みんながんばるアル!」
恵「シュリちゃんも気合十分ね~」
華名「ホント、ステージの上と普段じゃまるきり別人だよね」
マネージャー「よし、そろそろ時間だぞ」
シュリ「今日も盛り上がっていくアル!」
恵「みんなに笑顔になってもらいましょう~」
華名「元気に! がんばっていこう!」
真琴「ビッグウェーブ、起こそうぜ!」
「「「「オオーーーーーーーーッ!!」」」」
4人はステージの上に駆け出していき、
湧き上がる歓声と熱気の中へ飛び込んでいった。
彼女たちは『エメラルド☆フロウジョン』。
スタンドとともに輝く、深緑の宝石たちである。
Z1グループ『エメラルド☆フロウジョン』
No.6492 | |
【スタンド名】 | シーサイド・ギター・ヴォイス |
【本体】 | 三瀬 真琴(ミセ マコト) |
【能力】 | スタンドが叩いた箇所から地面を波立たせる |
No.6520 | |
【スタンド名】 | シャイニー・カラー |
【本体】 | 沢井 恵(サワイ メグミ) |
【能力】 | 触れた人を笑顔にする |
No.6490 | |
【スタンド名】 | セヴンス・ムーン |
【本体】 | 光石 華名(ミツイシ カナ) |
【能力】 | ものを引っ張る力、つまり「引力」を操る |
No.6531 | |
【スタンド名】 | ブリット・ポップ |
【本体】 | 晴山 シュリ(ハレヤマ シュリ) |
【能力】 | 「持つ」と言う行為で「プラシーボ効果」を生み出す |
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