前回までのあらすじ
ムショ仲間のケネディの助けによりようやく刑務所からの脱獄を果たしたルークは、看守の追跡を躱しながらようやく日本行きの貨物船へ乗り込み、米国から逃亡することに成功。
だが、そこでルークを待ち受けていたのはバウンティ・ハンターたちの容赦なき追跡であった。
闘いの中で自暴自棄になってゆくルーク。そうして遂に――――
警官A「いるんだよねー。あんたみたいに酔った拍子にとんでもないことする外人さんがさー」
ルーク「オイ聞こえてんぞこら」
警官B「おい通じてんぞお前」
ルークは、バーで酒瓶でマスターの頭を殴り、傷害罪で当局に逮捕されていた。ちなみにバーから逃げだしたところ、50mと離れていないコンビニの駐車場で、9時12分。捕縛される。
警官A「名前は?」
ルーク「ルーク・レオナルド・ディフォレスト・ヒギンズ」
警官B「ミドルネームまで言わんでいいよルーク・ヒギンズ。何だってアンタみたいな日本語を流ちょうに喋れる頭のいい外人さんがショボいことして捕まってんだ」
ルーク「酔ったからだよ。もう呑まなきゃやってらんねえご時世だからな」
警官A「ここはアメリカとァ違うぞ」
ルーク「そうだなァ。で・俺は強制送還されんのか?」
警官B「知らんね。それに興味もねえ」
ルーク「ああそうかい」
ルーク「日本人は肌は黄色いのに心は真っ黒と聞く」
ルーク「そんな民族と同じ檻ン中に入んのはごめんだね」
警官A「オイ言わせておけばッ!」
警官B「やめろッ! 下らん挑発に…」
ルークが警官を挑発した直後に、駐車場に微風が吹き
『パトカーが消えた』。
警官A「おいどうなって……」
矢継ぎ早に警官Aも消え去る。
ルーク「ヤバいな。もう新手が来たか」
黒服の女性「ルーク・ヒギンズ。アンタの首もらうわよ」
ルーク「はあ…………六時間前も似たような因縁をふっかけられたな……勘忍してくれよ」
警官B「な……何だお前は! 公務執行妨害でたい」
黒服「黙んなさい」
警官Bが拳銃を構えたところ、再び警官の耳元で微風が吹く。
するとやはり、警官Bも、構えた拳銃を地面に落とし、姿かたちもなく消え去る。
黒服「さあ次はアンタよルーク・ヒギンズ。いや……『クール・ハンド(すご腕)・ルーク』」
ルーク「ああ……もう。何か何もかも面倒くせえなあホント」
黒服の女が、そう叫ぶと彼女のすぐそばに黒いスーツを着た男性型の像が出現した。
黒服「『Gone With The Wind(風と共に去りぬ)ッ!』」
男性型の像。『GW2』が手をルークに向けて翳すと、先ほどの微風とは比較できないような風圧の『竜巻』が巻き起こる。
ルーク「どこへ吹っ飛ばすのか分からんが、証拠を残さんでいいのかい? 金を受け取れないかもよ」
黒服「お互い『スタンド使い』でしょう? 証拠なんて残る方がおかしい」
ルーク「…………」
ルーク「そうだなッ!」
ルークが、足元に転がっていた銃を足で拾い上げると、それを躊躇なく黒服の『GW2』に向けて発砲する。
するとどうだろう。右脚の太腿に「着弾した」のだ。
黒服「うぐあっ!?」
ダメージのフィードバックにより、黒服の女の右太腿にも穴が空く。
黒服「くそ……『スタンド』は『スタンド』でしか攻撃できないはず…………! 何で『スタンド』ですらない「拳銃」なんぞで私の『GW2』に風穴が空くんだぁああ」
ルーク「あん? そんなモン『スタンド』だからに決まってんだろ」
ルークがそう言うと、黒服の女同様に背後に人型の像が出現する。
極めて「本体」に似た容姿の『スタンド』
ルーク「『クール・ハンド・ルーク』」
「拳銃」を構えた『C・H・L』が、姿を現した。
ルーク「見たところお前の『スタンド』……『Gone With The Wind』…………銃弾を弾く破壊力はねえらしい」
ルーク「見たところお前「南部女」だろ。その『スタンド』の名前からして「スカーレット・オハラ」気取りのトンチキ女か? とにかく鼻につく喋り方をしやがる」
黒服「アンタ……それで勝ったつもりかい?」
ルーク「そうだな。詰めが甘え」
冷淡に言い放つと、今度は黒服自体の左脚に銃弾をお見舞いする。
黒服「う……うぐああっ!」
ルーク「ああうるせえなあ……」
コンビニの店員は、気付かない。拳銃による銃声は、すでに二回響き渡っているが、店員は全くこちらに目も向けない。
ルーク「趣味じゃあねえがチョイとイライラしてんだ。次は眉間を狙うぜ」
黒服「アンタはバカだねえ……」
黒服「『スタンド使い』と戦うときは、まず足じゃなく手を潰しなよ」
至近距離で銃口を向けるルークの『クール・ハンド・ルーク』の脚を、『GW2』の右手が掴む。
ルークが気が付くと、そこは草木の生い茂る森林地帯となっていた。
少し前の方向に何やら岩のような巨大なものが見えたが、別に気に止めはしなかった。
ルーク「うーん。やられちまったか」
本当に面倒くさい。そんなことを思いながら、ルークは引き続き大の字で寝る行為を続行した。
ルーク「はぁ…」
腕時計を見ると、時間は9時15分
警官とのいざこざに約1分。『GW2』との交戦にもこれまた1分。いや、今16分になったから2分だ。
ようするに、時間がほとんど立っていないのだ。
それに何よりも。
ルークは『日差し』を浴びている。
ルーク「オイオイオイオイ……こりゃあどうしちまったんだホントによお……」
見たところ同じく飛ばされた警官やパトカーはそこにはなかった。それだけあの『BW2』は精密動作性が低いってこった。
ルーク「F○ck…………思った以上に厄介だなあ……」
ルークは、ない頭を絞って日本と時差が最低9時間はある国を思い浮かべるが、アルゼンチンとメキシコの、二つの国名しか頭に出てこない。
ルーク「F○ck……F○ck! どっかの島国かここァッ!」
「そこにいるのは誰?」
ルークがさらに驚いたのは、後ろからひびいた「日本語」。
振り向くとそこには、日本人とは思えないほど肌が白い、着物の少女が立っていた。
「あなたは誰? 南蛮人」
ルーク「はあ? バンバンジー? チャイナタウンで週3で喰ってんよ」
「外海の言葉を喋ってないけど……何か口調が変。それに眼の色もおかしい」
「ちょっと信繁様のお城まで私と来てもらうよ」
やっぱりか。ルークは心の中で悪態をつき、再度『クール・ハンド・ルーク』を発動させる。
最も、恐らく彼女に『スタンド』である『C・H・L』は見えていないし、攻撃は通らないだろう。
そう、ルークはタカを括っていた。だがいとも簡単にそれは打ち砕かれる。
彼女の手刀が、『C・H・L』の右肩を突き刺したのだ。
ルーク「何ッ!?? これは……」
ダメージのフィードバックにより、右肩に浅い刺突痕を負ったルークは、それを不可解に思いながらも、『スタンド』を突き刺した『右手』を観察する。
何て事はない。ただの籠手を装着しているだけ。
ルーク「その籠手が『スタンド』かァ?! お嬢ちゃんよ!」
「これは信繁様から頂いた大事な籠手よ。あなたが言う『すたんど』とは何の関係もないっ!」
ルーク「俺のコイツも見えてんだろッ?!」
『C・H・L』で直接拳撃を浴びせる。だが少女は、正確に右手でこぶしを受け止め、そのまま『C・H・L』ごとルークを、柔道の背負い投げよろしく投げ飛ばす。
ルーク「うおおああ?!」
一瞬にして地面がひっくり返ったルークを襲ったのは、直後に少女から「踵落とし」を腹にモロに喰らう。
ルーク「っはぁッ!!?」
血反吐を吐きながら、背中から地面にたたきつけられる。
「口ほどにもないわね。南蛮人」
ルーク「…………」
ルーク「誰が……誰がバンバンジーだコルアア」
ルークはピンピンしていた。『C・H・L』の懐からあるものを取り出した。それはひとりでに「うねる」牙の生えた生物。
「なっ!?」
ルーク「アンタにァちょいと聞きてえことがある。だから俺はアンタを殺したくねえ」
ルーク「『毒蛇』だ……管理に困る「代物」だが、連れてきた甲斐があったぜ。何より俺自身よりも速ェ……」
横たわる少女を上からしゃがみ込んで見下ろしながら、『C・H・L』が薬品の入った瓶を片手にチラつかせる。
ルーク「『解毒剤』だ……俺の能力下に置かれた蛇毒はこいつでしか治せねえ。逆に言えばコイツを飲んでくいっと眠れば元気百倍だ……」
「こ……殺せ…………信繁様に迷惑は……」
ルーク「その信繁様のとこまで案内しな」
『C・H・L』は少女に当て身を喰らわせ、そして昏倒した隙に口を開かせて瓶の薬を一気に流し込む。
少女は少し咳き込んだあと、すぐに再び気を失う。
ルーク「さて…………」
ルークは、辺りを見渡す。そうして、それを見つけたのだ。
ルーク「おおう……俺って奴ァいくつ罪を重ねりゃあ気が済むのかね」
まるで、誰かが意図的に配置したかのように、ルークが元いた場所から10mと離れていないところにそれはあった。
いや、ルークは最初から気付いていた。やや不自然なそれを。
まるで誰かが意図的に配置していたかのように、それはあった。
苔が生い茂り、すでに動くかどうかも怪しい『パトカー』が。
使用させていただいたスタンド
No.1734 | |
【スタンド名】 | クール・ハンド・ルーク |
【本体】 | ルーク・ヒギンズ |
【能力】 | 本体の持つ『暗器』を、スタンドに適用させる |
No.2360 | |
【スタンド名】 | Gone With The Wind |
【本体】 | 黒服 |
【能力】 | 時間の竜巻を発生させ、巻き込まれたものを『過去』か『未来』にランダムに飛ばす |
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