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学生服に身を包んだ少年、相羽道人は暗闇の中を歩いていた。
迷路のように曲がりくねった狭い路地。薄汚れた高い石壁。乗り捨てられ錆まみれになった車。
肝試しでもするのでもなければ、開発と発展から見捨てられた、
この「旧市街地」に敢えて立ち寄ろうとする者はいない。
今日のような月明かりもほとんど無いような夜なら尚更だ。
迷路のように曲がりくねった狭い路地。薄汚れた高い石壁。乗り捨てられ錆まみれになった車。
肝試しでもするのでもなければ、開発と発展から見捨てられた、
この「旧市街地」に敢えて立ち寄ろうとする者はいない。
今日のような月明かりもほとんど無いような夜なら尚更だ。
道人「本当にこの場所であっているのかな……」
携帯のディスプレイの光で、大会運営から送られてきたハガキに描かれた小さな地図を照らして、何度も確認しながら歩みを進める。
しばらくすると中央に枯れた噴水の置かれている少し開けた広場のような場所に出た。
しばらくすると中央に枯れた噴水の置かれている少し開けた広場のような場所に出た。
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?「あんたが3回戦の対戦相手か……」
広場の奥の方から声がしたと思うと、ニット帽を被った若い男が、闇の中からヌッと姿を現した。
男は、道人から数メートルほど離れた場所で立ち止まると、再び口を開いた。
男は、道人から数メートルほど離れた場所で立ち止まると、再び口を開いた。
バド「俺の名前はバド=ワイザーだ。ベルギーで富豪の用心棒のようなものをやっている。あんたは?」
バドのただならぬ雰囲気に圧倒されそうになるも、道人も返事をする。
道人「俺は……道人。相羽道人。高校生だ。」
バド「お互い自己紹介も済んだことだ。さっさと始めて、さっさと終わらそうぜ!『スロー・アタック』!」
バドの背後に人型のスタンドヴィジョンがおぼろげに浮かび上がる。
それを認めるや否や、道人も自身のスタンド、『ブレイク・フリー』を発現させ、相手の攻撃に備えようとする。
それを認めるや否や、道人も自身のスタンド、『ブレイク・フリー』を発現させ、相手の攻撃に備えようとする。
道人「『ブレイク・フリィィィィイイイ!』」
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バド「(あの筋骨隆々のヴィジョンから推測すると相手のスタンドも近距離型だろうか……?)
何れにせよ、近接戦に持ち込んでしまえば、俺の『スロー・アタック』の能力ならば問題は無いはず)」
何れにせよ、近接戦に持ち込んでしまえば、俺の『スロー・アタック』の能力ならば問題は無いはず)」
バドは地面を勢いよく蹴って道人の方へ突進し、殴りかかろうとする。
バド「うぉおおおおおおおおおおおおおお」
『スロー・アタック』の拳を必死に叩きこもうとするが、『ブレイク・フリー』も同じようにラッシュで応戦する。
ラッシュ合戦は互角状態が続き、ある瞬間、お互い図ったように同じタイミングで距離を取る。
どちらも相当体力を消耗したせいなのか、肩で息をしていた。
ラッシュ合戦は互角状態が続き、ある瞬間、お互い図ったように同じタイミングで距離を取る。
どちらも相当体力を消耗したせいなのか、肩で息をしていた。
バド「……」
道人「……」
一息ついて、道人がふと自身の体に目を遣ると、重大な異変が起っているのに気付く。
道人「うわぁぁぁぁあああああああああ」
道人の右腕は、まるで干からびた野菜のように、くしゃくしゃにしぼんでいた。
『ブレイク・フリー』の右腕も同じようにしぼみ、使い物にならない様子であった。
『ブレイク・フリー』の右腕も同じようにしぼみ、使い物にならない様子であった。
バド「(さっきのラッシュ合戦の最中に、あんたの右腕を少しずつ『コーティング』した上で、空気を抜いて少しずつ『しぼませた』……
『スロー・アタック』のスピードと精密な動きならば、気づかれずに仕込むことも不可能では無い。
もっとも、それに気付かずラッシュに耐えたのは予想外だったが……)」
『スロー・アタック』のスピードと精密な動きならば、気づかれずに仕込むことも不可能では無い。
もっとも、それに気付かずラッシュに耐えたのは予想外だったが……)」
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バド「(夢中で気づかなかったさっきならまだしも、その恐慌状態で俺の攻撃が受け切れるかな……)」
バドは再び『スロー・アタック』を出し、道人に殴りかかろうとする。
混乱状態の道人は、何もできないうちに殴り飛ばされ、数十メートル後ろの石壁に勢いよく叩きつけられた。
混乱状態の道人は、何もできないうちに殴り飛ばされ、数十メートル後ろの石壁に勢いよく叩きつけられた。
道人「……ぐっ」
右腕が既に使い物にならないのに加えて、
先ほどの壁に叩きつけられた衝撃で右足までも骨折して、動かせなくなったようであった。
先ほどの壁に叩きつけられた衝撃で右足までも骨折して、動かせなくなったようであった。
道人「(……このままじゃ押される一方だ
何か起死回生の策を考えないと……)」
何か起死回生の策を考えないと……)」
不自然な方向に曲がった脚を庇いながら、『何か』使えるものはないかと周囲を見回す。。
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バド「(少し殴り飛ばす力が強すぎたか……一体どこに行った?あの手負いの体でそう遠くへは行けないはずだが……)」
街灯も建物の明かりも無い場所である上、月も光も無い真夜中である。
まともに視界が効くのは、多く見積もっても3メートルかそれ位。
バドはトドメを刺そうと、先ほど自身が殴り飛ばした男を求めてを広場を彷徨っていた。
まともに視界が効くのは、多く見積もっても3メートルかそれ位。
バドはトドメを刺そうと、先ほど自身が殴り飛ばした男を求めてを広場を彷徨っていた。
バド「あれは……」
広場の隅のほうで、物陰から地面に沿って、淡い光が僅かに漏れていた。
バド「(あれは、この場所に来るときに、あのガキが手に持っていた携帯のディスプレイの光?)」
バドは用心しながら、その僅かに漏れる光の方へ歩み寄る。
バド「(ションベンちびらせながら、ママに助けのメールでも打ってるのか?)」
腰を屈めて、光の漏れている場所を覗きこもうとする。
彼の探していた男はそこにいた。
彼の探していた男はそこにいた。
バドの予想したような恐怖に駆られた顔ではなく、自信に満ちた顔で。
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道人「ブレイク・フリィィィィィィィィィィィイイイイイ!!!!」
道人の掛け声が聞こえた瞬間、バドの視界は溢れるばかりの強い光で満たされ、反射的に目を瞑ってしまう。
バド「(うっ……眩しくて何も見えない!……一体何なんだ!)」
そして、目を再び開けたときに、眼に入ったのは、二つのライトを光らせ、猛スピードで自身の方に迫ってくる錆びついたトラックであった。
バドは、暗闇のせいで気づかなかったが、道人が身をひそめていたのは、広場の隅に放置されたトラックの車体の下であったのだ。
バドは、暗闇のせいで気づかなかったが、道人が身をひそめていたのは、広場の隅に放置されたトラックの車体の下であったのだ。
バド「!!!!! な、な、な、な、なん」
道人「(……『ブレイク・フリー』は束縛を破壊し、秘められた力を解き放つ能力!
放置されていたトラックの『束縛』を破壊し、元通り、いや、元以上の力で動くようにしたッ!)」
放置されていたトラックの『束縛』を破壊し、元通り、いや、元以上の力で動くようにしたッ!)」
バド「スロォォォォオオオオー・アタック!!!」
今から動いて避けることのできる距離、スピードではないと判断したのか、バドはスタンドで受け止めようとする。
普通の車なら『スロー・アタック』のような近距離型のスタンドでも受け止められたかも知れないが。、
これは『ブレイク・フリー』の能力により秘められた力を解放された、言わば、リミッターのぶっ壊れた車である。
普通の車なら『スロー・アタック』のような近距離型のスタンドでも受け止められたかも知れないが。、
これは『ブレイク・フリー』の能力により秘められた力を解放された、言わば、リミッターのぶっ壊れた車である。
バド「……うっ」
『スロー・アタック』の能力で、しぼませて対処するにしても、車ほどの大きさの物体ともなると、
コーティングするだけでも時間がかかり思うようにいかない。
そうこうしているうちに、四肢の骨から嫌な音が鳴り出す。
コーティングするだけでも時間がかかり思うようにいかない。
そうこうしているうちに、四肢の骨から嫌な音が鳴り出す。
バド「……俺の負けだ」
バドが自らの敗北を宣言したのを認めると、道人は『ブレイク・フリー』を解除した。
数十年の眠りからたたき起こされた錆びだらけのトラックは再び眠りにつき、
そして、空気を抜かれたようにしぼんでいた道人の右腕も元通りの状態に戻っていた。
そして、空気を抜かれたようにしぼんでいた道人の右腕も元通りの状態に戻っていた。
★勝者:
本体名 相羽 道人
スタンド名『ブレイク・フリー』
スタンド名『ブレイク・フリー』