第8話 黄金の再会
ネアポリス市内 某所
部屋の前方に座るボスとその側近に礼をし、俺は室内に入った。
・・・室内は張りつめた雰囲気だ。
まぁ当然といえば当然だろう。
これから俺達がする会議の内容からすれば・・・
これから俺達がする会議の内容からすれば・・・
全員が席に着き、部屋には鍵がかけられた。
極秘会議、内容は一切外に漏れてはならない。
極秘会議、内容は一切外に漏れてはならない。
「これより極秘のミーティングを始める・・・」
ボスが立ち上がり、話し始めた。
我らがボスはまだ若い。
それどころか、この組織の中において最年少クラスの人間である。
それどころか、この組織の中において最年少クラスの人間である。
だが彼には、甦った名君のようなカリスマ性と、100年生きてきた長老のような貫禄が、既に備わっているのだ。
恐るべきことに、彼はこの組織に入団してから僅か一ヶ月でボスになったらしい。
信じられない話だが、紛れもない事実だ。
詳しい経緯は知らないが、彼が所属するグループが先代のボスを倒したという。
そのグループの幹部は闘いの中で死んだため、彼の遺志を継いだ今のボス───ジョルノ・ジョバァーナがその座に着いたという訳だ。
そのグループの幹部は闘いの中で死んだため、彼の遺志を継いだ今のボス───ジョルノ・ジョバァーナがその座に着いたという訳だ。
・・・無駄話はこのくらいにしておこう。
これから始まる会議は一種の作戦会議だ。
俺達は近い日に、ある集団と戦わなければならない。
俺達は近い日に、ある集団と戦わなければならない。
「スペランツァ・ディ・イッディーオ」───
「神の望み」という意味の名を持つこの教団は、表向きには世界平和を願う、どこにでもある宗教団体だ。
しかし、裏で掲げる奴らの真の目的・・・
それは『ギャングの惨滅』なのである。
それは『ギャングの惨滅』なのである。
理由はまだ分からない。
恐らく、教祖が何らかの理由でギャングを恨んでいるのだろうが、それにしてもネジの飛んだ考えである。
恐らく、教祖が何らかの理由でギャングを恨んでいるのだろうが、それにしてもネジの飛んだ考えである。
教団は殺しを行うために、スタンド使いの集団「応報部隊」を結成し、イタリア中のギャングを手当たり次第に殺している。
次々に構成員を殺されては中小ギャングはひとたまりもなく、中には既に壊滅させられたものもあるらしい。
イタリア全土にシマを置く俺達のファミリー「パッショーネ」ですら、かなりの人数が殺害され痛手を負っている。
そこでついに、俺達「パッショーネ」が奴らの本部を襲撃して、壊滅させようという考えに至った訳だ。
ジョルノ「教団のについての情報は、ヴェルデが多くの信頼できるものを集めてきてくれた。
応報部隊にいた少年を一人保護したそうだ」
応報部隊にいた少年を一人保護したそうだ」
周りの奴が俺を見て、小さく拍手を贈った。
嬉しくはない。
俺はアラゴスタと出会った。それだけのことだ。
俺はアラゴスタと出会った。それだけのことだ。
ジョルノ「その情報を元に、諜報員達が調べを進めた。
そしてこの度、教団の本部がある場所が判明したので伝えておく・・・」
そしてこの度、教団の本部がある場所が判明したので伝えておく・・・」
室内の空気が一段と張りつめる。
こういう時に討ち入ってくる奴がいないだろうかと、要らぬ心配をしてしまった。
こういう時に討ち入ってくる奴がいないだろうかと、要らぬ心配をしてしまった。
ジョルノ「・・・場所はミラノ。教団、応報部隊共に本部がそこに置かれている」
ボスがそう言っても、こわばった空気がほぐれることはなかった。
ミラノか・・・遠いな。
俺は窓の外を見ようとしたが、そこはブラインドで固く閉ざされていた。
それから数時間、俺達は襲撃のための綿密な計画を練っていた。
基本は少数精鋭。スタンド使いなどの戦力のある人間のみで赴く。
移動中はまとめて返り討ちに逢わないよう、数人ずつがバラバラのルートでミラノへ向かうということになった。
移動中はまとめて返り討ちに逢わないよう、数人ずつがバラバラのルートでミラノへ向かうということになった。
やがて会議が終わり、解散となった。
俺は部屋を後にしようとしたが、その時やり残していたことを一つ思い出した。
ボスに話があったのだ。
ヴェルデ(しかしなぁ・・・)
俺はボスにそのことを話すのを躊躇していた。
それは拒否されて当たり前の要求なのだ。
どうせ返事は「NO」に決まっている。
どうせ返事は「NO」に決まっている。
だが俺には、どうしてもボスの意見を聞かなければならない理由があった。
ヴェルデ(仕方ないか・・・)
俺はボスの所へ足を進める。
ボスは側近の男、グイード・ミスタと共に部屋から出ようとしていた所であった。
ボスは側近の男、グイード・ミスタと共に部屋から出ようとしていた所であった。
ヴェルデ「ボス・・・」
ジョルノ「あぁヴェルデ、何かありますか?」
ヴェルデ「実は、今回の襲撃に・・・“同行させたい輩”が居りまして・・・」
ミスタ「同行? おいおい、どういうことだよ?」
ミスタが少しきつい語調で言ってきた。
俺はあくまで冷静に、事情を説明し始める。
俺はあくまで冷静に、事情を説明し始める。
ヴェルデ「というのも・・・」
―――――――――――――
それは二日前のことだった───
俺はロッソから、一本の連絡を受けた。
ロッソ「アラゴスタの居場所が、奴らに知られていました!
既に応報部隊の刺客が襲って来たそうです・・・」
既に応報部隊の刺客が襲って来たそうです・・・」
ヴェルデ「何ッ・・・!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
俺は驚愕した。
馬鹿な・・・こんなに早く場所を特定されたなんて・・・
しかもアラゴスタの居場所がバレたということは、ロッソが同居していることも知られているはず。
このままいけば、イザベラやビアンコの居場所も特定されて・・・
このままいけば、イザベラやビアンコの居場所も特定されて・・・
まずい。
みんなが殺されてしまうのは時間の問題だ。
みんなが殺されてしまうのは時間の問題だ。
ヴェルデ(これは・・・俺の責任なんだ・・・)
俺は激しく後悔していた。
何の罪もない人間を、こんな血生臭い戦いに巻き込んでしまうなんて・・・
もはや、俺が自害したとしても責任が取れるものではない・・・
もはや、俺が自害したとしても責任が取れるものではない・・・
ロッソ「ヴェルデさん・・・?」
ヴェルデ「・・・! いや、すまん・・・」
ロッソと電話をしていたのを忘れていた。
ロッソ「とにかく、このままでは危険だと思うんです。
それでヴェルデさん・・・いきなりですが、“こちらから奴らを潰しに行く”ということは、不可能ですか・・・?」
それでヴェルデさん・・・いきなりですが、“こちらから奴らを潰しに行く”ということは、不可能ですか・・・?」
ヴェルデ「な、何だって!?・・・」
ロッソの言葉に、俺は驚いた。
そんな大胆不敵な・・・
ロッソ「いや、無理なのは分かっています。ですが、みんながそう言ってるんです。
ビアンコさんも、イザベラもアラゴスタも・・・『このまま逃げてばかりじゃ駄目だ。自分達から攻めないと』って・・・」
ビアンコさんも、イザベラもアラゴスタも・・・『このまま逃げてばかりじゃ駄目だ。自分達から攻めないと』って・・・」
ヴェルデ「そんな・・・イザベラやアラゴスタまで言っていたのか?
いくら何でも、あいつらに殺し合いをさせるなんて・・・」
いくら何でも、あいつらに殺し合いをさせるなんて・・・」
ロッソ「無理ならそれでいいんです。
・・・ただ、あの二人も、“自分達が巻き込まれた運命”を悟っているような気がするんです・・・」
・・・ただ、あの二人も、“自分達が巻き込まれた運命”を悟っているような気がするんです・・・」
ヴェルデ「・・・それは、どういうことだ・・・?」
ロッソ「こうやって命の危険に瀕しているのは、不幸とか災難とかじゃなくて、ただ一つのあるべき『運命』なんだって。
『運命』ならば、それには絶対に立ち向かわなければならない。逃げたら駄目だし、そもそも逃げ場なんて無いってことです。
イザベラもアラゴスタも、そういう考えを持ってるってことが言動から分かりました。彼らには戦う『意志』があります」
『運命』ならば、それには絶対に立ち向かわなければならない。逃げたら駄目だし、そもそも逃げ場なんて無いってことです。
イザベラもアラゴスタも、そういう考えを持ってるってことが言動から分かりました。彼らには戦う『意志』があります」
ヴェルデ「・・・・・・」
ロッソの言葉に、俺は黙ってしまった。
こんなに説得力のある台詞は聞いたことがない。
いや、ある。俺の「ボス」だ・・・
俺達のボス、ジョルノ・ジョバァーナはよくこういうことを言っている。
哲学的で端から聞くと難しそうだが、何故かとてつもない説得力が感じられ、毎回聞き入ってしまう。
俺達のボス、ジョルノ・ジョバァーナはよくこういうことを言っている。
哲学的で端から聞くと難しそうだが、何故かとてつもない説得力が感じられ、毎回聞き入ってしまう。
あれにそっくりなんだ・・・
ロッソ「それでヴェルデさん、俺達が出来ること、何か無いんですか・・・?」
ヴェルデ「・・・・・・」
俺は悩んだが、ついにロッソに対してこう返事をした。
ヴェルデ「これは絶対秘密なんだが、今度俺達の組織で奴らの本部に襲撃を行う予定なんだ・・・
それにお前等を同行させてもらえるかどうか・・・」
それにお前等を同行させてもらえるかどうか・・・」
ロッソ「ほ・・・本当ですか!」
ヴェルデ「いや、ボスに直接聞いてみなければ分からない・・・
しかし、これは社会の『裏』での戦いなんだ。一般人が入ってはならない世界だ。
ほぼ100%無理だと思え・・・」
しかし、これは社会の『裏』での戦いなんだ。一般人が入ってはならない世界だ。
ほぼ100%無理だと思え・・・」
ロッソ「分かりました・・・」
ヴェルデ「あと、最後に一つ聞いておこう・・・
“お前は、この戦いを望むか”・・・?」
“お前は、この戦いを望むか”・・・?」
ロッソ「はい、俺はこの戦いが正しい未来を授けてくれると信じています」
ヴェルデ「よし、分かった・・・」
俺はそう言うと、受話器を置いた。
その後、俺は頭を掻きむしり、激しい後悔と自己嫌悪に泣きわめいた。
―――――――――――――――
ミスタ「おい、何てことしてくれんだよ・・・
堅気を争いに巻き込むなって常日頃言ってんだろうが!! あぁ?」
堅気を争いに巻き込むなって常日頃言ってんだろうが!! あぁ?」
グイード・ミスタが俺の襟刳りを掴んで捲くし立てた。
これくらいは、覚悟していたことだ。
これくらいは、覚悟していたことだ。
ヴェルデ「本当に申し訳ない・・・」
ロッソ達の名前までは告げていないが、その必要は後にももう無いだろう。
すまない、みんな・・・
ジョルノ「ミスタ、離してやりなさい・・・」
グイード・ミスタは荒々しく俺の襟から手を解いた。
ミスタ「チッ・・・完全に余計なお世話だぜ!
いくらスタンド使いだろうが、一般人を殺し合いに参加させていいはずがねぇ!
しかも襲撃のことを話してやがる・・・その端から敵に情報がバレたらどうすんだ!」
いくらスタンド使いだろうが、一般人を殺し合いに参加させていいはずがねぇ!
しかも襲撃のことを話してやがる・・・その端から敵に情報がバレたらどうすんだ!」
ジョルノ「ミスタ、そのくらいにしましょう・・・
ヴェルデ、その少年達は、間違いなく戦う意志があるのですね?」
ヴェルデ、その少年達は、間違いなく戦う意志があるのですね?」
ヴェルデ「はい、アイツの言葉が正しければ・・・」
俺は力無く答える。
今の俺に、ギャングとしての威厳は皆無に近かった。
今の俺に、ギャングとしての威厳は皆無に近かった。
ジョルノ「ならば、一度彼らに会わせてくれませんか?」
ヴェルデ「えっ・・・?」
あまりに意外すぎる返事に、俺は目を見開いた。
そしてボスの瞳を、じっと見続けた。
そしてボスの瞳を、じっと見続けた。
ミスタ「な・・・ちょっとボス! いくら何でも・・・」
ジョルノ「会ってみなければ分からない。彼らがこの戦いに出られるかどうか、僕が決めます」
ヴェルデ「ボス・・・!」
駄目だと思っていたのに・・・俺達の願いを受け入れてくれた・・・
ボスの瞳の中には、確かな「意志」の灯火が輝いているように見えた。
ミスタ「まったく・・・ボスはそういう突拍子も無い判断が得意なんだから・・・
分かった、じゃあ今度そいつらを呼べ。例の場所にな」
分かった、じゃあ今度そいつらを呼べ。例の場所にな」
ヴェルデ「か・・・かたじけない・・・」
俺は今にも泣きそうだった。
理由はよく分からなかったが、いずれにせよ、今の俺は情けなかった。
後日 ナポリ大聖堂にて
ナポリ大聖堂───
シチリア王シャルルⅠ世の命によって建てられたこの教会は、ネアポリスにおける最大の観光名所である。
───と言っても俺達は、決してここに観光をしに来たのではない。
ここには、ヴェルデが所属するギャング組織の「ボス」が待ち受けているのだ・・・
あの後・・・俺はヴェルデからの連絡を受けた。
“お前達は、俺達のボスと面会することになった”と・・・
ヴェルデの話では、どうやらボスは俺達のことが気になるらしく、実際に会ってみてから同行が可能か決めることにするらしい。
それは、俺達にとって朗報であった。
だが、それと同時に厳しい「運命」に立ち向かうためのスタートラインでもある・・・
だが、それと同時に厳しい「運命」に立ち向かうためのスタートラインでもある・・・
俺達は今、そのラインから走り出すか、走らずに終わるかの二分された運命に直面しているのだ。
待ち合わせ場所である入り口の所で、俺達四人はヴェルデの迎えを待っていた。
ビアンコ「・・・ギャ、ギャングのヘッドなんて、どんな奴なんだろうな?
グラサンかけたオッサンか? それとも態度のデカいジジイかな?」
グラサンかけたオッサンか? それとも態度のデカいジジイかな?」
ロッソ「さっぱり・・・見当がつきませんね・・・」
イザベラ「怖い人なんでしょうね・・・」
アラゴスタ「ヴェルデさんの知り合いなんだよね・・・大丈夫だと思うけど」
俺達はかなりの不安を抱いていた。
イタリア最大級の勢力を持つというファミリー「パッショーネ」のボスとは、一体いかなる人物なのだろうか?
そして彼は、俺達をどうやって試そうとしているのだろうか?
そして彼は、俺達をどうやって試そうとしているのだろうか?
面会だけするのか?
何て話せばいいんだ?
いや、それよりも誰が代表して話すんだ?
何て話せばいいんだ?
いや、それよりも誰が代表して話すんだ?
考えるほどに不安がつのっていた。
ロッソ(いや、でも・・・)
その時俺は何となく、大切なことを思い出した気がした。
そしてそれを、少し小さな声で話した。
そしてそれを、少し小さな声で話した。
ロッソ「みんな、不安なのはよく分かる・・・
でも、これはまだ始まりにすぎない。もし合格したら、俺達は戦争に行かなくちゃあならないんだ。
俺達が選んだ道だからさ、何ていうか、もっと勇気を持たないと駄目なんじゃあないかな・・・」
でも、これはまだ始まりにすぎない。もし合格したら、俺達は戦争に行かなくちゃあならないんだ。
俺達が選んだ道だからさ、何ていうか、もっと勇気を持たないと駄目なんじゃあないかな・・・」
一瞬の沈黙があった。
その後、ビアンコが呟いた。
ビアンコ「・・・そうだったな・・・ この程度でビクビクするなんて情けねぇ。
ここは一つ、ガツンと挑まなくちゃあな!」
ここは一つ、ガツンと挑まなくちゃあな!」
イザベラ「そう・・・ですね」
アラゴスタ「だよね。何とかなるでしょ!」
ロッソ「何とかなるじゃあなくて、アラゴスタも何とかして欲しいんだけど!」
ビアンコ「いやロッソ、おめぇよりアラゴスタの方が融通が利きそうだぞ!」
ロッソ「な・・・何故!?」
イザベラ「フフフッ!」
いつの間にか緊張がほぐれ、普段の雰囲気に戻っていた。
アラゴスタ「あ、ヴェルデさん来たよ!」
アラゴスタの言う通り、どこからともなくヴェルデが歩いてきた。
近くに来るまで全く気付かれなかったのは、ギャングとしてのステータス故か、それとも存在感が薄いからか・・・
近くに来るまで全く気付かれなかったのは、ギャングとしてのステータス故か、それとも存在感が薄いからか・・・
ヴェルデ「お前等、みんな揃ってるか?
これからボスの所へ案内する。用意はいいな・・・?」
これからボスの所へ案内する。用意はいいな・・・?」
ビアンコ「用意っつったって、持ってく物とかねぇだろ?」
ヴェルデ「あぁ、必要ない。
ただ一つ・・・何かしらの“覚悟”だけしていてくれればそれでいい・・・」
ただ一つ・・・何かしらの“覚悟”だけしていてくれればそれでいい・・・」
ビアンコ「“覚悟”? な~に、そんなもんハナから持ち合わせてるに決まってるぜ!
だよなおめぇら?」
だよなおめぇら?」
イザベラ「はい、大丈夫です」
アラゴスタ「な~んにも心配ないよ!」
ロッソ「大丈夫です。俺達の選んだ道ですから」
ヴェルデ「みんな余裕があるな・・・いいだろう、じゃあ行くぞ」
俺達はヴェルデに連れられ、教会の地下へと向かっていた。
一般人は立ち入り禁止の場所を奥へ奥へと進むと、いよいよ社会の「裏」へと近づいているような雰囲気になる。
この先に「パッショーネ」の首領たる人物がいる・・・
不安は既に消えていたが、それでも一種のプレッシャーのような気迫が、俺達を押し潰そうとしていた。
ヴェルデ「ボスが誰かに面会する時は、必ずここに招待している。本部のある場所がバレないようにな。
あぁ、前にロッソとアラゴスタを連れてった所とは違うぞ」
あぁ、前にロッソとアラゴスタを連れてった所とは違うぞ」
ロッソ「ここで一体何をするんですか・・・?」
ヴェルデ「分からない。だがボスは穏健な方だから、少なくともスタンドの力比べなどはしないだろうな」
ビアンコ「あぁ~よかった。
『俺様を倒してみせよッ!』みたいな感じで襲ってきたらどうしようかと思ってたぜ」
『俺様を倒してみせよッ!』みたいな感じで襲ってきたらどうしようかと思ってたぜ」
イザベラ「その方もスタンド使いなんですか?」
ヴェルデ「勿論だ。・・・大変に意志の強い、聡明な方だよ・・・」
ロッソ「・・・・・・」
俺はヴェルデがそこまで敬意を示すとは思わなかった。
ますます、そのボスという人物が興味深くなってくる。
ロッソ(ギャングって凄いな・・・)
しばらく進むと、ヴェルデが扉の前で立ち止まった。
ヴェルデ「・・・ここだ。この部屋の中にボスがいる・・・
俺が手助けすることは出来ない。お前達だけでやってくれ・・・」
俺が手助けすることは出来ない。お前達だけでやってくれ・・・」
その部屋は、とてもギャングのボスが居るとは思えない、みすぼらしい通路の隅にあった。
いよいよか・・・
再び不安が押し寄せて来たが、俺はすぐにそれを押さえ込んだ。
この程度で『ガーネット・クロウ』を使うのは余りにも女々しい。
この程度で『ガーネット・クロウ』を使うのは余りにも女々しい。
ビアンコ「挨拶は、きちんとしろよ? 礼儀だからな」
アラゴスタ「わかってるよ。ビアンコさんも挨拶忘れないでよ?」
ビアンコ「俺の心配しなくてもいいっつーの!」
ヴェルデ「じゃあ、いいな? ・・・入るぜ」
ビアンコとアラゴスタは途端にかしこまった。
コンコン ガチャリ
ヴェルデ「ボス、連れて参りました。こいつらです」
ヴェルデがドアを開け、先に入っていく。
部屋の中は古い蛍光灯の光で少し暗かった。
部屋の中は古い蛍光灯の光で少し暗かった。
俺は一歩、部屋の中に入る。
入って右側に、革椅子が並べてあった。
そこに座っているのは・・・
入って右側に、革椅子が並べてあった。
そこに座っているのは・・・
その瞬間、俺の中に戦慄が走った。
ロッソ「!!!」
ジョルノ「やっぱり・・・君でしたか・・・」
“何故、この少年がいるんだ”!?
今までの感覚が全て吹き飛び、俺の頭は真っ白になっていた。
ビアンコ「うッ!!!」
イザベラ「は・・・初めまして」
アラゴスタ「初めましてッ! ・・・ほら、ビアンコさんも挨拶してよ・・・」
ロッソ「あ・・・あなたは・・・!」
ジョルノ・ジョバァーナ・・・
俺を救ってくれたあの少年が、何故ここに?
彼の傍らには、あのミスタという男の姿もある。
彼の傍らには、あのミスタという男の姿もある。
ジョルノ「久しぶりですね。ロッソと言いましたよね? そしてビアンコ・・・」
ヴェルデ「ボス・・・ロッソとビアンコをご存じなのですか!?」
ミスタ「お前は話す必要ねーぜヴェルデ。
ビアンコ、おめぇはちゃーんと足洗ったようだな。偉い偉い。
そんでロッソ、おめぇはよォ、あの時から随分と成長してんじゃあねぇか?」
ビアンコ、おめぇはちゃーんと足洗ったようだな。偉い偉い。
そんでロッソ、おめぇはよォ、あの時から随分と成長してんじゃあねぇか?」
いきなりそんなことを言われても、全く状況が飲み込めない。
他のみんなも同じだろう。
他のみんなも同じだろう。
ジョルノ「申し遅れました。僕がパッショーネのボス、ジョルノ・ジョバァーナです。
こちらは部下のグイード・ミスタ。どうぞよろしくお願いしますね」
こちらは部下のグイード・ミスタ。どうぞよろしくお願いしますね」
イザベラ「よ・・・よろしくお願いします!」
アラゴスタ「どうぞよろしく! ・・・ちょっと、ビアンコさんどうしちゃったの・・・挨拶は?」
俺が状況を理解するのに、30分近くかかった。
全員が椅子に座り、出されたお茶を飲み(菓子まで出た。甘かった)、少年の話を聴いているうちに、
彼がパッショーネのボスであったことは、疑いようのない事実であることが判明したのだ。
彼がパッショーネのボスであったことは、疑いようのない事実であることが判明したのだ。
あの後、俺達は各自簡単な自己紹介をして、ジョルノの話を聴いた。
ジョルノは襲撃の詳しい内容の他に、例の教団が行ってきた悪行を語った。
それを聴いていると、部下が次々に殺されていくボスの怒りと嘆きが、ひしひしと伝わってくる。
それを聴いていると、部下が次々に殺されていくボスの怒りと嘆きが、ひしひしと伝わってくる。
そして時間が経つにつれ、俺は彼に対して「驚愕」よりも「尊敬」の感情を抱くようになったのだ。
この若さでイタリア屈指のギャングのボスになるなんて、明らかに只者ではない。
それでいて、部下のことを想い、まとめあげているなんて・・・
それでいて、部下のことを想い、まとめあげているなんて・・・
才能などという言葉では片づけられない「何か」が彼にはきっとある。
俺はそう悟った。
俺はそう悟った。
ジョルノ「・・・それで皆さん、今回我々と一緒に襲撃に参加したい、ということですが、本当ですか?」
ついに来た。
質問をして俺達を試そうとしているんだ。
質問をして俺達を試そうとしているんだ。
ロッソ「はい、そうです」
ビアンコ「あぁ、俺達のスタンドでブッ潰してやらねぇとな」
イザベラ「逃げてばかりではいけないと思って」
アラゴスタ「あいつら僕を騙したんだよ。絶対許せないよ」
ジョルノ「襲撃には殺人も付き物となりますが、それでも厭いませんか?」
ロッソ「構いません。仕方のないことですから」
ビアンコ「向こうから殺しにかかってくるんだから、正当防衛だと思ってる」
イザベラ「私のスタンドは攻撃には向いていませんが・・・みんなを守るためなら、その時は私もサポートします」
アラゴスタ「悪い奴らだもん。やられそうなら・・・やるしかないよ」
ジョルノ「分かりました・・・皆さん本心からそう思っているようですね。
では僕から、最後にもう一つだけ質問をしましょう・・・」
では僕から、最後にもう一つだけ質問をしましょう・・・」
えっ、“最後にもう一つだけ”?
たったそれだけでいいのか?
たったそれだけでいいのか?
てっきり、面接試験の如く質問責めにしてくるのかと思っていたが・・・
ジョルノ「どんな小さな集団でも、何かしらの“リーダー”は必要です。
統率する人間がいないと、前に進むのがとても難しくなるからです。
そこでお聞きしますが、“あなた方のリーダーは誰でしょう?”“そしてその人を信頼できますか”?」
統率する人間がいないと、前に進むのがとても難しくなるからです。
そこでお聞きしますが、“あなた方のリーダーは誰でしょう?”“そしてその人を信頼できますか”?」
ビアンコ「リーダー・・・だと?」
俺には質問の意味がよく分からなかった。
リーダーなんて、始めから決まっているものだと思っていたからだ。
リーダーなんて、始めから決まっているものだと思っていたからだ。
ロッソ「ヴェルデさんだと思います・・・
俺達を案内してくれる人ですし・・・」
俺達を案内してくれる人ですし・・・」
ジョルノ「確かに、ヴェルデは我々の組織の人間で、何でも知っているでしょう。
ですが、仮に“彼がやられたらどうしますか”?
応報部隊にまず最初に狙われるのは、船頭役である彼だからです・・・」
ですが、仮に“彼がやられたらどうしますか”?
応報部隊にまず最初に狙われるのは、船頭役である彼だからです・・・」
ロッソ「えっ・・・!」
イザベラ「そんな・・・」
ヴェルデ「・・・・・・」
ヴェルデは無表情で黙っていた。
俺達にとって、ジョルノの言葉は大きなショックであった。
俺達が付いていくことによって、ヴェルデにそんな危険が伴うなんて・・・
彼は何も言わないが、きっと大きな不安と責任を抱えているに違いない。
彼は何も言わないが、きっと大きな不安と責任を抱えているに違いない。
ジョルノ「だから、ヴェルデはあくまで案内役です。
いざという時、正しい判断が出来る人間が別に必要なのです」
いざという時、正しい判断が出来る人間が別に必要なのです」
ロッソ「・・・・・・」
俺はリーダーが云々よりも、ヴェルデに謝りたい気持ちでいっぱいだった。
今からでも・・・引き下がろうか・・・
今からでも・・・引き下がろうか・・・
イザベラ「私はロッソだと思います」
ロッソ「・・・!」
イザベラ「さっき私達がここに来るまで、ずっと不安だったんです。
でもロッソが一言、正しいことを言ってくれたお陰で、私達は勇気づけられたんです。
だから、私は彼を信頼できます。彼に付いていこうと思います」
でもロッソが一言、正しいことを言ってくれたお陰で、私達は勇気づけられたんです。
だから、私は彼を信頼できます。彼に付いていこうと思います」
ビアンコ「イザベラちゃんの言う通りだ。
俺じゃあ力不足だしよ、ロッソならきっとやってくれるぜ」
俺じゃあ力不足だしよ、ロッソならきっとやってくれるぜ」
アラゴスタ「ロッソは凄いんだよ! とっても優しいし、スタンドも強いんだ!」
ロッソ(みんな・・・)
始めはその場凌ぎための嘘をついているのかと思ったが、次第に俺はみんなを疑うことが出来なくなった。
ジョルノ「そうですか・・・分かりました。
ではロッソ、あなたはどうですか? 責任を果たす自信はありますか?」
ではロッソ、あなたはどうですか? 責任を果たす自信はありますか?」
ロッソ「・・・・・・」
俺は数秒間考えた後、思ったことを口にした。
ロッソ「俺は“未来”は“運命”を受け入れた先にあると思っています。
みんながこうして信頼を示してくれたのも一つの運命。俺はそれを拒否しません。
リーダーとして、やるだけのことをやる“覚悟”はあります」
みんながこうして信頼を示してくれたのも一つの運命。俺はそれを拒否しません。
リーダーとして、やるだけのことをやる“覚悟”はあります」
ジョルノ「!」 ミスタ「!」
一瞬の沈黙があった。
そしてジョルノは満足したような表情で話した。
ジョルノ「・・・皆さんのお気持ち、しっかりと伝わりました。
襲撃に参加することを許可しましょう」
襲撃に参加することを許可しましょう」
アラゴスタ「やったッ・・・!」
思わず叫ぼうとしたアラゴスタが、すぐに口を塞いだ。
ロッソ「ありがとうございます・・・」
ついに、彼に認められた・・・
俺はジョルノに対する感謝と同時に、敵に立ち向かう勇気が一気に湧いてきた気がした。
ミスタ「襲撃は二日後だ。お前等はヴェルデの運転する車でミラノまで行ってもらう。
長旅になるから、ちゃんと準備しとけよ」
長旅になるから、ちゃんと準備しとけよ」
ビアンコ「よっしゃ、俄然やる気が湧いてきたぜ!
アラゴスタ、覚悟は出来てんだろうな」
アラゴスタ、覚悟は出来てんだろうな」
アラゴスタ「当たり前だよ! 絶対負けないんだからね!」
ヴェルデ「おいお前等、スポーツの大会に行くわけじゃあないんだぞ・・・」
ジョルノ「心配する必要はありませんよヴェルデ。彼らには“覚悟”が出来ていますから。間違いなくね・・・」
俺はこの時のジョルノの微笑みを忘れない。
かくして、俺達は「教団」を倒すため、ミラノへと赴くことになった。
もう逃げることは出来ない・・・
だが、俺はもう恐れない。
だが、俺はもう恐れない。
その後、俺達はジョルノに別れを告げ、部屋を出た。
地下から地上に戻ると、そこは別世界のような明るさと賑やかさに満ちていた。
地下から地上に戻ると、そこは別世界のような明るさと賑やかさに満ちていた。
ミスタ「ボス・・・襲撃したいと言った奴が、何であのロッソだって分かってたんスか?」
ジョルノ「僕にも分かりません・・・ただ、初めて彼と会った時、またいつか会うことになるような気がしていました。
ところでミスタ、あなたはあのロッソという少年をどう思いますか?」
ところでミスタ、あなたはあのロッソという少年をどう思いますか?」
ミスタ「あの時と見違えるくらい成長してたッスね・・・
単にスタンドが発現したからって理由じゃあない。他と違う何かがきっとある。
そんであの言葉・・・なんつうか、ブチャラティを思い出しましたよ・・・」
単にスタンドが発現したからって理由じゃあない。他と違う何かがきっとある。
そんであの言葉・・・なんつうか、ブチャラティを思い出しましたよ・・・」
ジョルノ「ミスタもですか・・・僕も思いました」
しばらく沈黙が続いた。
部屋の時計の音が、やたら大きく聞こえる。
部屋の時計の音が、やたら大きく聞こえる。
ミスタ「・・・あいつらの心配は、もうする必要はないッスよね。
さて、早いとこ、俺達の準備を終わらせねぇと・・・」
さて、早いとこ、俺達の準備を終わらせねぇと・・・」
ジョルノ「・・・そうだミスタ、敵地へ向かうのに、“あれ”を持っていくのを忘れないように・・・」
ミスタ「あぁ“あれ”ッスね。了解しました。
・・・え~っと、どこにしまってたっけ・・・」
・・・え~っと、どこにしまってたっけ・・・」
ジョルノ「・・・・・・」
ジョルノは、ロッソ達のことを思い出していた。
そしてただ一つ、想い続けた。
「健闘を祈る」と。
「健闘を祈る」と。
第8話 完
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