Another Heaven/霞んでく星を探しながら ◆Z9iNYeY9a2
フレンドリィショップのすぐ近く。
森の中に、まるで目印になるように明るく照らしている空間の近くに、間桐桜は佇んでいた。
森の中に、まるで目印になるように明るく照らしている空間の近くに、間桐桜は佇んでいた。
視線の先にあるのは、盛り上がった灰の山。
これは確か、オルフェノクが死んだ時にこうなるものだったと思う。
この主が誰なのかは、一応探してみた同行者がどこにもいなかったことからすぐに推察することができた。
これは確か、オルフェノクが死んだ時にこうなるものだったと思う。
この主が誰なのかは、一応探してみた同行者がどこにもいなかったことからすぐに推察することができた。
「やっぱり、死んじゃったんですね。村上さん」
ポツリと呟かれた言葉。しかしその中には感慨はない。
正直なところ、桜にとっては村上はそこまで意識するような存在ではなかった。
オルフェノク――人間ではない存在になりきった男が語る価値観は、桜にとっては相容れないものだった。
オルフェノク――人間ではない存在になりきった男が語る価値観は、桜にとっては相容れないものだった。
化物になんかなりたくなかった、普通の人間で、せめて魔術師でいたかったと願う桜の心には、彼の言葉は響かなかった。
それでも唯一つ、彼が言った言葉に同調するものがあったとしたら。
「強くなればいい。そうして誰からも非難されないようになればいい。あなたはそう言いましたね」
それだけは、今の自分でもある意味真実であるものだと、そう思った。
村上は負けた。それはきっと彼が弱かったから。
自分が正しいと思うのならば力を示せばいい。
もし自分が負けるとするならば、それは”正義の味方”であった彼の手のみなのだから。
もし自分が負けるとするならば、それは”正義の味方”であった彼の手のみなのだから。
そうして村上の遺灰を過ぎ去っていく桜は、その力の先にある、ポッカリと空いた穴の存在に目をそむけた。
どれだけ強くなっても、もうその力を見てくれる者は誰もいないのだという事実から。
どれだけ強くなっても、もうその力を見てくれる者は誰もいないのだという事実から。
◇
フレンドリィショップ。つい先程通った場所。
そして、村上峡児と決着を付け、オルフェノクとしての自分と完全に決別した場所。
そして、村上峡児と決着を付け、オルフェノクとしての自分と完全に決別した場所。
(―――木場)
思い浮かぶのは戦ったかつての友。
あの後木場がどうなったのか、果たしてあいつは救われたのか。
あの後木場がどうなったのか、果たしてあいつは救われたのか。
さやかにでも最後に何か言っていたか聞けばよかったのかもしれないが、一方で聞かずとも彼が言おうとしたことを心のどこかで確信している自分がいた。
眠っている間に見えた木場の姿、彼が送ってきたエール。
あれが自分の見たただの夢だとは思えなかったから。
眠っている間に見えた木場の姿、彼が送ってきたエール。
あれが自分の見たただの夢だとは思えなかったから。
そして、だからこそ木場の死に立ち止まることはできない。
そこに思いを馳せるのはまだ先のことになるだろう。
そこに思いを馳せるのはまだ先のことになるだろう。
間桐桜。
それは衛宮士郎が語っていた、守りたいものの名。
しかしそんな少女が、今自分たちの前に最悪の敵の一人として立ち塞がっている。
それは衛宮士郎が語っていた、守りたいものの名。
しかしそんな少女が、今自分たちの前に最悪の敵の一人として立ち塞がっている。
セイバーから聞いた桜の罪。自身の大切な人を手にかけた事実から、死を願って殺戮の限りを尽くしているのではないかと。
その感情は巧には理解できるものだ。
真理を殺したと思い、草加や木場の手にかかることを望んでいた時があった。
その感情は巧には理解できるものだ。
真理を殺したと思い、草加や木場の手にかかることを望んでいた時があった。
長田結花の言葉が正しいのかどうかは分からない。
しかしきっかけにはなったのだと思う。
あの言葉がなければ、きっと自分はマミと向き合おうとは思わなかっただろう。
しかしきっかけにはなったのだと思う。
あの言葉がなければ、きっと自分はマミと向き合おうとは思わなかっただろう。
そして、今となっては真実はどっちでもいい。
自分が向かい合わなかったことでマミのように傷付く人が増えるなら、全て背負えばいい。
それが今の自分の覚悟、生きる理由なのだから。
自分が向かい合わなかったことでマミのように傷付く人が増えるなら、全て背負えばいい。
それが今の自分の覚悟、生きる理由なのだから。
そこには、間桐桜の存在も含まれている。
彼女と自分の違い。
それは一歩踏み出してしまうことができたか否かの違いだろう。
そしてその箍はデルタギアを使った時には外れていたのかもしれない。
それは一歩踏み出してしまうことができたか否かの違いだろう。
そしてその箍はデルタギアを使った時には外れていたのかもしれない。
だとしても、いや、だからこそだろう。
「見捨てられねえよな」
目の前で、幽鬼のようにユラリと佇む黒き鎧を。
殺気と禍々しい気配に覆われた少女を。
殺気と禍々しい気配に覆われた少女を。
その悲しみを受け止め、止めてやるべきだと。
「―――あなたは、誰ですか?」
黒い兜の奥、瞳は赤き光に覆われて見えない、しかし確かに視点は一直線にこちらを見ている。
「お前、間桐桜で、いいんだよな」
「ええ、そうです」
「衛宮士郎って、知ってるか?」
「ええ、そうです」
「衛宮士郎って、知ってるか?」
その名前を出すと、桜の不安定に揺れる体がピタリと停止した。
「そうですか、あなたが乾巧さんですね」
「…何で知ってんだよ」
「村上さんが言ってたんです。あなたなら、先輩のこと何か知ってるって」
(……あの野郎)
「…何で知ってんだよ」
「村上さんが言ってたんです。あなたなら、先輩のこと何か知ってるって」
(……あの野郎)
村上が自分と士郎の関係を知っていたとは思いづらい。何しろLがアリスから聞いた話ではいた場所が正反対だ。
おそらくだが、桜を引き込むために口から出まかせを言ったのだろう。
実際のところは真実で、それが話を逆に円滑に進めてくれそうな状況になったのが皮肉でしかないが。
おそらくだが、桜を引き込むために口から出まかせを言ったのだろう。
実際のところは真実で、それが話を逆に円滑に進めてくれそうな状況になったのが皮肉でしかないが。
「ああ、俺はあいつと一緒にいた」
「そうですか、なら、あなたが」
「士郎のこと、聞きたいんだろ?少し付き合え」
「そうですか、なら、あなたが」
「士郎のこと、聞きたいんだろ?少し付き合え」
殺気が向けられるのを遮って、こちらのペースに持ち込む。
桜はきっと士郎のことを聞きたいはずだ。
話せることは多くはないが、ここから離れる時間を稼ぐ程度の会話にはなるはずだ。
準備したファイズギアを使うことなく話が進むとは思えないが、ことが起こった際ここでは少し遊園地に近すぎる。
桜はきっと士郎のことを聞きたいはずだ。
話せることは多くはないが、ここから離れる時間を稼ぐ程度の会話にはなるはずだ。
準備したファイズギアを使うことなく話が進むとは思えないが、ことが起こった際ここでは少し遊園地に近すぎる。
「先輩の、ことを―――」
言おうとした言葉、発していた敵意が止まり、葛藤するかのように頭を抑える桜。
この時の桜はクラスカードの狂化の影響で判断力が弱まっていた。
巧の言うことが自分の気を引こうとしているだけだと気付いていながらも、自身から湧き上がる「先輩のことを聞きたい」という欲に抗うことができなかった。
巧の言うことが自分の気を引こうとしているだけだと気付いていながらも、自身から湧き上がる「先輩のことを聞きたい」という欲に抗うことができなかった。
「…いい、でしょう。その代わり、私が聞いたことには全部正直に答えてください」
「………」
「………」
巧はその問いにYes、とは言えなかった。
おそらく聞かれるだろう質問に覚えがあり、それに答えることができるか、それが分からなかったから。
おそらく聞かれるだろう質問に覚えがあり、それに答えることができるか、それが分からなかったから。
その返答を待つことなく桜は巧に歩みをあわせるように踵を返した。
「私、先輩の隣で一緒に歩く時間が大好きだったんです」
「………」
「あの人は、私にとって数少ない光でしたから」
「………」
「あの人は、私にとって数少ない光でしたから」
歩みながらも目を見せないように話す桜に、責められているように感じた。
「あいつ、言ってたんだよ。お前が笑顔でいてくれることが、自分の願いだってよ」
「あははっ、そうですよね。先輩は私を選んでくれたんですから」
「だけど、もしものことがあったら自分は側にいてやれなくなるってもな」
「…やっぱり、そこだけは気付いてくれなかったんですね。
いつもそうでした。自分のことより人のことばっかり考えてて、人助けから危ないことまで色んなことに首を突っ込んで。
先輩がいなくなったら、私が笑顔でいられるはずなんてないのに」
「あははっ、そうですよね。先輩は私を選んでくれたんですから」
「だけど、もしものことがあったら自分は側にいてやれなくなるってもな」
「…やっぱり、そこだけは気付いてくれなかったんですね。
いつもそうでした。自分のことより人のことばっかり考えてて、人助けから危ないことまで色んなことに首を突っ込んで。
先輩がいなくなったら、私が笑顔でいられるはずなんてないのに」
だから、と続けた桜から不穏な空気が流れ出た。
意識したものではない。きっと無意識なものだろう。
意識したものではない。きっと無意識なものだろう。
「だから、先輩を守るために、”悪い人”はみんな殺そうって。
だけど私自身が悪い子になっちゃったから、せめて先輩の手で殺されたいって、それが私の願いになってたんですよ」
だけど私自身が悪い子になっちゃったから、せめて先輩の手で殺されたいって、それが私の願いになってたんですよ」
軽々しく放たれた、あまりに物騒な発想に一瞬顔をしかめる。
しかし怯むわけにはいかない。
しかし怯むわけにはいかない。
「…士郎を守れなかったのは俺の責任だ。すまなかった」
「……全く…、先輩はそういう人なんですから。そういう人を、私は好きになったんですから。
――――それで、先輩を殺したのは誰なんですか?」
「……全く…、先輩はそういう人なんですから。そういう人を、私は好きになったんですから。
――――それで、先輩を殺したのは誰なんですか?」
来た、と思った。
それは巧が全ての質問に答えると言えなかった理由。きっと問われるだろうと思っていた質問。
それは巧が全ての質問に答えると言えなかった理由。きっと問われるだろうと思っていた質問。
「聞いてどうするんだよ」
「殺しに行くに決まっているじゃないですか。
どうして先輩を殺した人がのうのうと生きているんですか。いいえ、もし死んでても許さないです。
殺して殺して殺して殺して、何度殺しても殺し足りないくらいにバラバラにしてぐちゃぐちゃにしてやるんですよ」
「殺しに行くに決まっているじゃないですか。
どうして先輩を殺した人がのうのうと生きているんですか。いいえ、もし死んでても許さないです。
殺して殺して殺して殺して、何度殺しても殺し足りないくらいにバラバラにしてぐちゃぐちゃにしてやるんですよ」
そして答えは巧の思っていた通りのもの。
これに答えてはならないと思った。
その復讐は、きっと誰も救われない。セイバーも、桜自身も、彼女の幸福を願った士郎も。
これに答えてはならないと思った。
その復讐は、きっと誰も救われない。セイバーも、桜自身も、彼女の幸福を願った士郎も。
「だったら言えねえな。少なくとも今のあんたには」
「さっき言いましたよね。質問には全部答えてもらうって」
「答えてやるとも言ってねえよ」
「さっき言いましたよね。質問には全部答えてもらうって」
「答えてやるとも言ってねえよ」
ギロリ、と桜の顔がこちらを向く。向けられた赤い光の奥には強い殺気を感じる。
「なら、あなたが代わりに”償って”くれるって言うんですか?
先輩を殺した人の罪を」
「俺の償いは、あんたを助けることだよ」
先輩を殺した人の罪を」
「俺の償いは、あんたを助けることだよ」
殺気を受け流して歩みを続ける。
まだその感情が爆発するまでは猶予がある。せめてもう少しは歩みを進めておきたい。
一方で、不意の暴発にも耐えられるようにファイズフォンはいつでも装着できるように備えている。
まだその感情が爆発するまでは猶予がある。せめてもう少しは歩みを進めておきたい。
一方で、不意の暴発にも耐えられるようにファイズフォンはいつでも装着できるように備えている。
「士郎も、啓太郎に真理にマミも、誰も助けられなかった。せめてあいつらが守りたかったものくらいは背負いたいんだよ」
「真理さん、マミさん…、お知り合いだったんですね。二人とも優しい人でした」
「知ってんのか」
「ええ、すごくいい人で、だからこそ殺せば悪い人になれるって思ってました」
「真理さん、マミさん…、お知り合いだったんですね。二人とも優しい人でした」
「知ってんのか」
「ええ、すごくいい人で、だからこそ殺せば悪い人になれるって思ってました」
ふと思い返すのは、マミの最後の絶望の表情。
もしかして、あの絶望の顔の一因に桜は関わっていたのだろうか。
もしかして、あの絶望の顔の一因に桜は関わっていたのだろうか。
「私のこと、憎いと思いますか?殺したいと思いますか?」
「思わねえよ。ただ、自分のやるせなさが許せなくなるだけだ」
「―――何で、あなたはそんなに強いんですか。
憎いなら怒りをぶつければいいし、殺してしまえばいいのに。
何でそんな、先輩や姉さんみたいに強くいられるんですか」
「思わねえよ。ただ、自分のやるせなさが許せなくなるだけだ」
「―――何で、あなたはそんなに強いんですか。
憎いなら怒りをぶつければいいし、殺してしまえばいいのに。
何でそんな、先輩や姉さんみたいに強くいられるんですか」
嫉妬だろうか。
それだけの強さを持っていながらもうどこにもいない、憧れの人や憎い人。
自分が持たなかった強さを持っていた人たちに近い強い心を持っている。
それだけの強さを持っていながらもうどこにもいない、憧れの人や憎い人。
自分が持たなかった強さを持っていた人たちに近い強い心を持っている。
桜にとっては羨ましくもあり、しかしどうしようもなく癇に障るものだった。
「強くなんかねえよ。言ったとおり、こんなもので誰も守れなかった。
だから、お前にも死んでほしくないって、これ以上手を汚してほしくもないって思ってんだよ」
「勝手にそんなものに私を含めないでください。
こんな、人殺しの化物になった私の、何があなたに分かるんですか!?」
「分かるんだよ!俺だって、お前みたいに大事なやつを殺したと思って死にたいって思ってた頃があるから!
お前はデルタギアのせいでおかしくなっただけだ!やり直そうと思えばまだ戻れるんだよ!」
「あなたのことなんて知らないです!!
それに、あのベルトだって私が元々思ってたことを表に出させただけです!!私のことを助けてくれない、でも幸せに生きてる人が許せないって、そんな想いを!」
「なら、俺が助けてやるよ!俺だけじゃねえ、お前がそんなふうになるのを望んでないやつは他にもいっぱいいるんだよ!!」
「でも、その中に先輩はもういないんでしょう?!だったら意味なんてないです!!
もう話は終わりです!!早く、死んで私の前から消えてください!!!」
だから、お前にも死んでほしくないって、これ以上手を汚してほしくもないって思ってんだよ」
「勝手にそんなものに私を含めないでください。
こんな、人殺しの化物になった私の、何があなたに分かるんですか!?」
「分かるんだよ!俺だって、お前みたいに大事なやつを殺したと思って死にたいって思ってた頃があるから!
お前はデルタギアのせいでおかしくなっただけだ!やり直そうと思えばまだ戻れるんだよ!」
「あなたのことなんて知らないです!!
それに、あのベルトだって私が元々思ってたことを表に出させただけです!!私のことを助けてくれない、でも幸せに生きてる人が許せないって、そんな想いを!」
「なら、俺が助けてやるよ!俺だけじゃねえ、お前がそんなふうになるのを望んでないやつは他にもいっぱいいるんだよ!!」
「でも、その中に先輩はもういないんでしょう?!だったら意味なんてないです!!
もう話は終わりです!!早く、死んで私の前から消えてください!!!」
激情のままに叫んだ桜は、話を打ち切り戦闘態勢に移行。
元々構えていた巧は、すかさず後ろに大きく飛び退いて構える。
彼女の手には美遊が持っていたステッキが、桜の体から漏れ出す瘴気と同じ闇色に染まった状態で備わっている。
彼女の手には美遊が持っていたステッキが、桜の体から漏れ出す瘴気と同じ闇色に染まった状態で備わっている。
その後ろからは山のような巨大な影がぬらりと姿を表し、その脇には紫髪を持つ長身の女が桜を守るかのように鎖のついた短剣を構えている。
(やっぱ、こうなるのかよ…!)
覚悟はしていたが、それでも少しは桜に言葉を届かせたいと思っていた。
しかし結果はご覧の通り、戦うしかない状態だ。
しかし結果はご覧の通り、戦うしかない状態だ。
――Awakening
既にスタンバイ状態で待機させていたファイズフォンをファイズブラスターへ差し込む。
通常のファイズでは手に余る相手というのは既に実感している。故に今度は最初から全力で行かせてもらう。
通常のファイズでは手に余る相手というのは既に実感している。故に今度は最初から全力で行かせてもらう。
黒い影が長い帯のような腕をこちらに叩きつけると同時に変身が完了した巧は後ろに大きく飛んで空中でファイズブラスターを構える。
桜の姿が巨人の陰に隠れてこちらが見えないことを確認。
桜の姿が巨人の陰に隠れてこちらが見えないことを確認。
巧はセイバーに言われた言葉を思い出す。
◇
『その黒騎士の力が、もし私の知っているもののそれであるならば。
彼の能力はいかなる武器をも自身の扱う武具として使いこなす力でしょう』
彼の能力はいかなる武器をも自身の扱う武具として使いこなす力でしょう』
例えば動かすことに技術やエネルギー(魔力や燃料)が必要なものであっても、その力で扱うことができるものだという。
『かつて彼が素手でありながら敵の持つあらゆる武器を奪い使いこなした逸話が力として昇華されたものでしょう。
おそらくカレイドステッキを奪った力もそれです。
タクミ、あなたの武器は一見すれば武器とは見えないもので、例えサクラがそれを奪ったとしてそれを武器と認識できなければ使うことはできないはずだ。
ですから、戦う際には決して、サクラにはそれが武器だと認識させてはいけません』
『そしてもう一つ。もし他者の武器を操る力を封じて、自身の剣、黒き両刃剣を携えてきた時は注意を。それはかの騎士の持つ切り札だ』
おそらくカレイドステッキを奪った力もそれです。
タクミ、あなたの武器は一見すれば武器とは見えないもので、例えサクラがそれを奪ったとしてそれを武器と認識できなければ使うことはできないはずだ。
ですから、戦う際には決して、サクラにはそれが武器だと認識させてはいけません』
『そしてもう一つ。もし他者の武器を操る力を封じて、自身の剣、黒き両刃剣を携えてきた時は注意を。それはかの騎士の持つ切り札だ』
◇
Burst Mode
ファイズブラスターのトリガーをスライドさせてエネルギー弾を放つ。
巨体が揺らぎ、影の中心部に大きな穴を開ける。
巨体が揺らぎ、影の中心部に大きな穴を開ける。
「…っ、なんて力…!!」
一撃で巨人の体に崩壊寸前のダメージを与えたエネルギーに、桜は歯噛みする。
巨人の機能を大きく奪った巧は、地に降りて桜の元へと迫る。
しかし桜の数メートル先まで迫ったところで、その目前に飛来した鎖が進行を阻んだ。
しかし桜の数メートル先まで迫ったところで、その目前に飛来した鎖が進行を阻んだ。
長髪の女、クラスカードを聖杯の泥によって無理やり形作った英霊ライダー・メドゥーサが鎖の奥から飛来した。
まるで暗殺者のように最小限の動作で振り抜かれる短剣を払い、拳を叩きつけようとしたところで腕に絡みついた鎖に一瞬動きが止められる。
まるで暗殺者のように最小限の動作で振り抜かれる短剣を払い、拳を叩きつけようとしたところで腕に絡みついた鎖に一瞬動きが止められる。
その隙を逃さず、刃を携えたステッキを構え向かってくる桜。
ライダーの一撃と合わせて両側から斬りつけられるファイズの体。
ライダーの一撃と合わせて両側から斬りつけられるファイズの体。
「…っ」
一瞬の交差の後離れた桜は、警戒するかのように距離を取る。
次いでライダーも桜の隣に寄り添う。その腕の肌には焼けただれたかのように変色した箇所が見られる。
次いでライダーも桜の隣に寄り添う。その腕の肌には焼けただれたかのように変色した箇所が見られる。
ブラスターファイズの全身が放つエネルギーは、ただ立っているでもファイズエッジが放つものと同等以上の熱量を備えている。
一瞬の交錯であった桜はまだ全身を焼かれることもなかったが、密着して打ち込み続けたライダーはそれだけでかなりのダメージを受けていた。
一瞬の交錯であった桜はまだ全身を焼かれることもなかったが、密着して打ち込み続けたライダーはそれだけでかなりのダメージを受けていた。
更に、ブラスターファイズの装甲を、サファイアの刃とライダーの短剣では傷つける程度のダメージしか与えられなかった。
接近戦がダメであれば離れた距離から、とも考える桜だったが、そこまでの装甲を持っているなら遠距離からの砲撃で与えられるダメージなど微々たるものだろう。
ならば、と修復が終わった巨人を立ち上げる。
更に地面には幾重もの影が這い、巧の周囲を取り囲んでいく。
更に地面には幾重もの影が這い、巧の周囲を取り囲んでいく。
その影の接触を避けるように走る巧。その進行先を巨人の腕が振り下ろされ足を止められる。
一瞬の隙に巧に迫る影の黒帯を避け切ることができず、全身に巻き付かれてしまう。
一瞬の隙に巧に迫る影の黒帯を避け切ることができず、全身に巻き付かれてしまう。
全身から放出される熱が吸収されていくのを感じた巧。
帯のせいで手元が見えなくなった状態になっているのを見て、瞬時にブラスターにコマンドを入力。
帯のせいで手元が見えなくなった状態になっているのを見て、瞬時にブラスターにコマンドを入力。
Faiz Braster Discharge
背面のバックパックが帯の下で前面に展開、覆っていた影を一気に吹き飛ばした。
熱、全身のフォトンブラッドが吸収された影響か一瞬全身のスーツが通常のファイズと同じ黒いものとして現れるも、瞬時にまた赤き体へと変わる。
「生意気っ…!!」
再度巨人が腕を振り上げたところで、巧は空へと飛翔。
「ライダ-!!」
空中から巨人を潰す狙いを悟った桜は、ライダーに呼びかけ。
次の瞬間、ライダーは白き天馬にまたがり、巧を追って空を駆けていた。
次の瞬間、ライダーは白き天馬にまたがり、巧を追って空を駆けていた。
「!!」
突撃を間一髪で避ける巧。しかしライダーは間髪入れず旋回して再突撃を放つ。
それを巧は、更に上空へと飛び上がることで回避。
追ってくるライダーを見つつ、桜が見えないだろう距離にまでたどり着いたことを確認した巧は、ブラスターを展開。
それを巧は、更に上空へと飛び上がることで回避。
追ってくるライダーを見つつ、桜が見えないだろう距離にまでたどり着いたことを確認した巧は、ブラスターを展開。
Blade Mode
フォトンブレイカーを起動させた巧は、それを前に構えた状態でライダーの突撃を敢えて受け止めた。
地に叩きつけんと天馬の全身を押し付けるライダー。対して巧はそれに抗わずに、逆に背部ユニットの噴射を進行方向に合わせる。
地に叩きつけんと天馬の全身を押し付けるライダー。対して巧はそれに抗わずに、逆に背部ユニットの噴射を進行方向に合わせる。
地面が迫ったところで、巧はブラスターの刃を戻し、咄嗟にコマンドを入力。
激突寸前でライダーは地面から逸れるように飛び、叩きつけられた巧の体は地をえぐり地煙を上げた。
その場所は、巨人よりは少し距離があり、桜には近い場所。
夜の闇と砂埃で視界がよく見えない中でゆっくりと立ち上がる影を見た桜は、瞬時に手のサファイアの刃を展開して突撃。
夜の闇と砂埃で視界がよく見えない中でゆっくりと立ち上がる影を見た桜は、瞬時に手のサファイアの刃を展開して突撃。
今度は近距離用の短剣ではない、人の身長ほどはあろうかという大剣ほどのサイズ。ブラスターファイズのエネルギーを警戒し距離を取って斬りかかるつもりなのだろう。
地面に叩きつけられた巧が無事ではないと判断しての、トドメの一撃を放つために迫り。
地面に叩きつけられた巧が無事ではないと判断しての、トドメの一撃を放つために迫り。
砂埃ごと、巧の体を斬りつけ。
「――ー!?」
しかしその刃は、直立したファイズの体にがっちりと捉えられていた。
肩を斬りつけた刃はそこで止まり、更に後ろに引こうにも手で押さえつけられて動かせない。
肩を斬りつけた刃はそこで止まり、更に後ろに引こうにも手で押さえつけられて動かせない。
力を入れて引き抜こうとした瞬間、肩に備えられた小さな砲門がこちらを向いていることに気付き。
サファイアから手を放して後ろに下がった瞬間、桜の体を肩から放たれたブラッディキャノンが撃ち抜いた。
爆発で後ろに吹き飛ばされる桜。
爆発で後ろに吹き飛ばされる桜。
起き上がるよりも前に、ファイズブラスターを入力。
Exceed Charge
桜の背後の巨人に向けて走り、勢いをつけて跳び上がり。
そのまま足から放たれたエネルギーと共に、巨人の体を貫いた。
そのまま足から放たれたエネルギーと共に、巨人の体を貫いた。
命中した箇所で赤い竜巻のごとくフォトンブラッドが巻き上がり、巨人の全身を切り刻んで消滅させていった。
「…はぁ…どうだ!!」
息をつきながら起き上がる桜とその側に駆け寄るライダーを目に収める巧。
地に叩きつけられたように見えていたが、実際はその直前で背部ユニットからの噴射を地面との緩衝材にしてダメージを抑えていた。
ダメージを受けたように見えれば桜が迫って攻撃してくるだろうと考えて、敢えて肉を切らせて骨を断つやり方を選んだ。
それでもサファイアの刃のダメージは覚悟していたのだが。
ダメージを受けたように見えれば桜が迫って攻撃してくるだろうと考えて、敢えて肉を切らせて骨を断つやり方を選んだ。
それでもサファイアの刃のダメージは覚悟していたのだが。
「助かった。お前、手を抜いてくれただろ?」
『いえ、私の方こそ助かりました。あの手に掴まれていては、この程度の抵抗しかできませんでした』
『いえ、私の方こそ助かりました。あの手に掴まれていては、この程度の抵抗しかできませんでした』
サファイアが刃の強度を制御し、巧のダメージを抑えてくれていた。
おかげで刃を掴むことも叶い、こうしてサファイアを奪還することができた。
おかげで刃を掴むことも叶い、こうしてサファイアを奪還することができた。
「すまねえ、さっき俺がもっとキチッとしてりゃ…」
『…美遊様のことは、乾様のせいではありません。
――それと、まだ終わっていません』
『…美遊様のことは、乾様のせいではありません。
――それと、まだ終わっていません』
桜が起き上がり、ユラリ、と脱力するかのように体を揺らす。
隙だらけなように見えて、すぐ側ではライダーがいつでも攻撃可能なように短剣を構えている。
隙だらけなように見えて、すぐ側ではライダーがいつでも攻撃可能なように短剣を構えている。
『それにしても…、不思議です。あの黒化英霊…、即興で作られた存在にしてはかなり息が揃っている…』
ふと、疑問の声を漏らすサファイア。
一方で桜は歯ぎしりをしながら、大きく崩れた巨人に目を向ける。
「全く、使えない子…。作っても作っても壊されてばかり…」
これまで幾度も召喚してきた使い魔、しかしその都度打ち砕かれ粉砕されてきた。
その不甲斐なさに桜の苛立ちは募るばかりだった。
その不甲斐なさに桜の苛立ちは募るばかりだった。
体を前に起こしてこちらを向いた時、桜の体を覆っていた鎧が少し広がり、肌色の範囲が狭まっているように見えた。
『乾様、警戒を!何かが来ます!』
サファイアの警告と共に、桜の背後にあった巨人の残骸が溶け、泥と化して地面を黒に染めていく。
「だったら、もう大きさなんていらないですよね。ライダーみたいに、こうすればよかったんだ」
溶け出した泥は6つに分かれ、やがてそれぞれが形を作り出していく。
一つは黒きバイザーを備えた鎧の女騎士。
一つは巨大な岩の斧を手にした大男。
一つは長槍を手にした細身の男。
一つはローブを纏い宙を浮遊する魔女。
一つは長刀を持った和服の侍。
そして最後の一つは、4メートルはあろうかという体を持った異形の巨人。
一つは巨大な岩の斧を手にした大男。
一つは長槍を手にした細身の男。
一つはローブを纏い宙を浮遊する魔女。
一つは長刀を持った和服の侍。
そして最後の一つは、4メートルはあろうかという体を持った異形の巨人。
漆黒の影に染まった、6つの存在が10メートルはあった巨人の魔力を分割させることで生み出された。
全ては間桐桜がかつて取り込んだことがある者たち。
本来泥をこんな形で使うことができる技量は桜にはない。
しかし、今の桜は夢幻召喚によってあらゆる武器を操る術を備えている。そして桜にとってこの泥は武器の一つだ。
ライダーのカードを受肉させた経験の応用、泥を人の形の使い魔として操ることを、桜は学んだ。
しかし、今の桜は夢幻召喚によってあらゆる武器を操る術を備えている。そして桜にとってこの泥は武器の一つだ。
ライダーのカードを受肉させた経験の応用、泥を人の形の使い魔として操ることを、桜は学んだ。
そうして生まれたのは影の英霊・シャドウサーヴァントとでも呼ぶべき者たちだった。
黒化英霊と比較して尚もその力は衰えており、きっと宝具を使うことも叶わぬ者たちだろう。
黒化英霊と比較して尚もその力は衰えており、きっと宝具を使うことも叶わぬ者たちだろう。
だが、少なくともこれらは巨人と違い相手の攻撃を受け、避けてくれる。
形を明確に定めた影響か吸収能力は失っているが、どちらにしろブラスターファイズの攻撃を受け止められないならば構わない。
形を明確に定めた影響か吸収能力は失っているが、どちらにしろブラスターファイズの攻撃を受け止められないならば構わない。
「もう、壊しちゃっていいですよ。皆さん」
桜の指示を受け、一斉に巧へと迫るシャドウサーヴァント達。
巨体に見合わぬほどの素早さで迫り斧を振り抜くバーサーカー。
地面を叩き砕く一撃を避けた巧を、バーサーカーの脇を抜けてきたランサーが迫り、長槍を突き出す。
辛うじて胸部の装甲で受け衝撃を減らした巧は後ろに跳び上がり宙へと逃走。
地面を叩き砕く一撃を避けた巧を、バーサーカーの脇を抜けてきたランサーが迫り、長槍を突き出す。
辛うじて胸部の装甲で受け衝撃を減らした巧は後ろに跳び上がり宙へと逃走。
しかしその先で空中から光弾を撃ち込むキャスターの連撃を避けることができず全身を衝撃が打ち据える。
「くそっ!!」
宙で落ちながらも背部のブラッディキャノンを撃ち返し迎撃。
しかし地まで数メートルといった位置まで落ちたところで巨人・マークネモが長刀を構えて振りかぶってきた。
しかし地まで数メートルといった位置まで落ちたところで巨人・マークネモが長刀を構えて振りかぶってきた。
キャスターの迎撃に意識を割かれていた巧は攻撃を受けることができず、宙をもんどり打って吹き飛び。
飛ばされた先には剣と刀を構えたセイバー、アサシンの姿。
飛ばされた先には剣と刀を構えたセイバー、アサシンの姿。
姿を視認した瞬間、巧は手を咄嗟に前面に構え。
すれ違い様に、巧の体を2騎の剣士はX状に切り裂いた。
装甲が火花を上げる。今度の一撃は減衰しきれず内の巧へも強い衝撃を与える。
装甲が火花を上げる。今度の一撃は減衰しきれず内の巧へも強い衝撃を与える。
「がぁっ!!」
地を転がる巧。
その隙を逃さず、桜の体が迫る。
その隙を逃さず、桜の体が迫る。
手に持っているのは先ほどセイバーがこちらへと向けて斬りつけた剣。
セイバーがから奪った、贋作ですらない影の剣をまるで己が武器のように振りかざす。
セイバーがから奪った、贋作ですらない影の剣をまるで己が武器のように振りかざす。
もはやなりふり構ってはいられないと判断した巧は、フォトンブレイカーを起動させ剣を受け止める。
少女の外見からは想像もできないほどの素早く鋭い連撃。幾度も受け流し払いのけるも、やがてその速さに押し負け始める。
少女の外見からは想像もできないほどの素早く鋭い連撃。幾度も受け流し払いのけるも、やがてその速さに押し負け始める。
このままでは埒が明かない。
ブラスターを放り投げ、剣を受ける覚悟で桜の元へと突撃をかける。
ブラスターを放り投げ、剣を受ける覚悟で桜の元へと突撃をかける。
武器を捨てるという挙動に虚をつかれた桜は対応が遅れるも、剣の冴えは変わらぬまま巧を斬りつけかけ。
脳裏に一瞬、先ほどサファイアを奪われた際の光景がよぎった。
脳裏に一瞬、先ほどサファイアを奪われた際の光景がよぎった。
至近距離を取られファイズの内蔵火器を受けることを警戒した桜は巧から距離を取ろうと後ろに下がり。
それを見た巧は、後ろに下がった桜の前で地を蹴り宙に跳んだ。
その足には赤熱したエネルギーが見える。
それを見た巧は、後ろに下がった桜の前で地を蹴り宙に跳んだ。
その足には赤熱したエネルギーが見える。
「っ!」
影の巨人をも吹き飛ばした一撃が来る。
桜の判断もまた早かった。
桜の判断もまた早かった。
離れた距離にいたランサーがその槍を投げ、更に離れた場所にいたキャスターが魔力弾を発射。
飛び上がった巧の体を槍と光弾が打ち付け、巧の体はバランスを崩して吹き飛んだ。
飛び上がった巧の体を槍と光弾が打ち付け、巧の体はバランスを崩して吹き飛んだ。
「は、あははは…!バカな人…、自分から武器を捨ててそんな…」
焦りを消そうと呟きながら、巧の捨てたブラスターを拾いに歩く桜。
トランク型に戻ったそれを手に取って武器として振るおうとするも。
トランク型に戻ったそれを手に取って武器として振るおうとするも。
「何これ」
拾った物体の、あまりにも武器からかけ離れた形状を見た桜の第一声がそれだった。
例えばの話。
桜が使用したベルトがデルタギアではなくカイザギア、あるいはファイズギアであったとすれば(使えるか否か、使うことへのリスクはこの際考えないとして)今の巧でも危なかったかもしれない。
ファイズギア、そしてファイズブラスターはキー入力によってそれぞれ求める攻撃を行う武器として使えるもの。
しかしキーが分からなければただの携帯電話、使い方の分からないオブジェでしかない。
桜が使用したベルトがデルタギアではなくカイザギア、あるいはファイズギアであったとすれば(使えるか否か、使うことへのリスクはこの際考えないとして)今の巧でも危なかったかもしれない。
ファイズギア、そしてファイズブラスターはキー入力によってそれぞれ求める攻撃を行う武器として使えるもの。
しかしキーが分からなければただの携帯電話、使い方の分からないオブジェでしかない。
巧が実際に剣として使っていた場面を視認したのは今の一度だけ。
その一度でこれを如何にして使うのかを確認することはできていない。
武器として認識できないものは、黒騎士の力をもってしても扱いきれるものではなかった。
その一度でこれを如何にして使うのかを確認することはできていない。
武器として認識できないものは、黒騎士の力をもってしても扱いきれるものではなかった。
加えて、今しがた桜はこれを使いこなせそうにないとも認識してしまった。
仕切り直すように桜はブラスターを再度放り、巧の方を向く。
使えない道具に気を取られたせいで、巧は態勢を立て直している。
使えない道具に気を取られたせいで、巧は態勢を立て直している。
使い方を知ったところで使えそうな気がしない道具。
奪っても使えないなら奪う価値はないだろう。こっちはこっちの武器を使えばいい。
奪っても使えないなら奪う価値はないだろう。こっちはこっちの武器を使えばいい。
「まあいいですよ。今度はちゃんと殺してあげますから」
周囲を取り囲むシャドウサーヴァント達に警戒しつつ、巧は地面のブラスターを拾い上げて構えた。
◇
桜を探して飛びながら、手元のカードを弄るイリヤ。
今手元にあるのはキャスター、アサシン、ランサー、そしてアーチャー。
ランサーのカードはさやかから受け取ったものだ。現状戦いを避けるべきとのルビーの言葉を受けた彼女から、使いこなせるイリヤが持っているべきだと渡されたものだ。
ライダーのカードは美遊が持っていたもので、今はおそらく桜の手元だろう。
セイバーとバーサーカーのカードは参加者にいることを考えればそもそもこの会場にあるのかどうかも怪しい。
ランサーのカードはさやかから受け取ったものだ。現状戦いを避けるべきとのルビーの言葉を受けた彼女から、使いこなせるイリヤが持っているべきだと渡されたものだ。
ライダーのカードは美遊が持っていたもので、今はおそらく桜の手元だろう。
セイバーとバーサーカーのカードは参加者にいることを考えればそもそもこの会場にあるのかどうかも怪しい。
現状で使えるものはアサシン、アーチャーの2つ。
キャスター、ランサーは先の戦いで使ったばかりでまだ時間が空いていない。
キャスター、ランサーは先の戦いで使ったばかりでまだ時間が空いていない。
『ですが、あの泥はそもそも英霊の力とは相性が悪いです。かといって、今のイリヤさんの出力で戦うのも無謀。
あれほどの魔力容量であればイリヤさんが全盛期であったとしても、厳しい戦いになるでしょうし』
「…もし、さっき戦艦から飛び出したロボットみたいなものだったら、いけたのかな?」
『あれですか。なるほど、確かにあれだったり、あとゼロの力でも突破はできるものなのかもしれませんね。
ですが、今はそれを願うべきではないでしょうね』
「……」
あれほどの魔力容量であればイリヤさんが全盛期であったとしても、厳しい戦いになるでしょうし』
「…もし、さっき戦艦から飛び出したロボットみたいなものだったら、いけたのかな?」
『あれですか。なるほど、確かにあれだったり、あとゼロの力でも突破はできるものなのかもしれませんね。
ですが、今はそれを願うべきではないでしょうね』
「……」
確かにそうだろう。桜と戦うと、向き合うと決めたのは自分自身なのだから。
『イリヤさん、美遊さんを手にかけた桜さんが許せないですか?』
「……」
「……」
口にしたくはなかった。
親友の命を奪った相手に対する恨みの念など。
親友の命を奪った相手に対する恨みの念など。
『ではもう一つ。桜さんをどうしたいですか?
皆を守るためです。殺すこともあるいは一つの選択ではあります』
「…私は、それでも殺したくはない…。できれば、助けてあげたいと思う」
『イリヤさん、それは桜さんが士郎さんの恋人だから、ですか?』
「…うん」
皆を守るためです。殺すこともあるいは一つの選択ではあります』
「…私は、それでも殺したくはない…。できれば、助けてあげたいと思う」
『イリヤさん、それは桜さんが士郎さんの恋人だから、ですか?』
「…うん」
迷ったように頷くイリヤ。
それを見たルビーは、今のイリヤでは少し危険な空気を感じていた。
それを見たルビーは、今のイリヤでは少し危険な空気を感じていた。
◇
既に何体かのシャドウサーヴァントを倒すことはできた。
しかし倒した端からまた泥は時間を置いて修復され、元の形を取り戻していく。
しかし倒した端からまた泥は時間を置いて修復され、元の形を取り戻していく。
巧は戦っていくうちにこの影の英霊達に対して、ある程度の強さの法則が見えてきていた。
例えば、今巧の目の前で長槍を振るう槍兵。
速さは巧の目で追うのがやっとというほどであり、更に離れての射撃が一切命中しない。回避できないよう足払いして打ち込んだブラッディキャノンが外れていくのだ。
しかし一撃一撃にはそこまでの力はない。急所や装甲の薄い場所さえ当たらせなければ受け切ることができる。
速さは巧の目で追うのがやっとというほどであり、更に離れての射撃が一切命中しない。回避できないよう足払いして打ち込んだブラッディキャノンが外れていくのだ。
しかし一撃一撃にはそこまでの力はない。急所や装甲の薄い場所さえ当たらせなければ受け切ることができる。
槍を胴の装甲で受け止め、腕でがっちりと抑えた後で力を込めて殴り、肘打ち、膝蹴りを叩き込んだところで体が砕け泥へと戻っていく。
その後ろから攻め込んできた巨腕の大男、バーサーカー。
これは先に一度相まみえたことがある存在。しかしそれと比べれば大きく強さは劣化しているものだ。
見かけによらず速く、力強い。劣化しているとはいえ受ければただでは済まない腕力だ。だがランサーのように飛び道具に対し特別な耐性を持ってはいない様子。
ブラスターを構え、光弾を発射すると吹き飛ばされていく。
これは先に一度相まみえたことがある存在。しかしそれと比べれば大きく強さは劣化しているものだ。
見かけによらず速く、力強い。劣化しているとはいえ受ければただでは済まない腕力だ。だがランサーのように飛び道具に対し特別な耐性を持ってはいない様子。
ブラスターを構え、光弾を発射すると吹き飛ばされていく。
吹き飛ぶバーサーカーの後ろに見えたのは巨大な魔法陣。
キャスターは接近をこなす技量がない様子で、常に距離を取って他の使い魔達のサポートに回っている。今構えている陣も巨大な砲撃を行う準備なのだろう。 遠距離戦には通じているのか、砲撃は防御陣で防がれることが多い。
キャスターは接近をこなす技量がない様子で、常に距離を取って他の使い魔達のサポートに回っている。今構えている陣も巨大な砲撃を行う準備なのだろう。 遠距離戦には通じているのか、砲撃は防御陣で防がれることが多い。
だからこそ巧は構えたブラスターから射出された赤い刃で斬りつける。
魔法陣ごと魔術師の体は切り裂かれ、その体は消失していく。
魔法陣ごと魔術師の体は切り裂かれ、その体は消失していく。
不意に背後に気配を感じた巧は咄嗟に振り返って腕をかざす。
たなびく紫の長髪が視界に映り、腕に当たった刃が火花を散らした。
他の影の英霊と比較して、この存在、ライダーだけは特別厄介な存在に感じられた。
力が強いわけでも、技量が高いわけでもない。速いといえば速いが、槍兵や侍の方が敏捷にも感じられる。
だが、他の存在は攻撃が単調で読みやすいのに対し、こちらはこちらの手にある程度の対応力を持っている。
力が強いわけでも、技量が高いわけでもない。速いといえば速いが、槍兵や侍の方が敏捷にも感じられる。
だが、他の存在は攻撃が単調で読みやすいのに対し、こちらはこちらの手にある程度の対応力を持っている。
至近距離からのブラッディキャノンや砲撃は確実に避け、攻撃を受けられても決してこちらには隙を掴ませようとはしない。
大きく展開させた刃を振り、相手を引き離して距離を取る巧。
『おそらくですが、影の英霊達は桜様が操られているからなのでは。技量は再現できても、対応力や経験の再現まではできないということでしょうか』
巧の考えに対してのサファイアの意見だった。
よく見れば、確かに影の英霊達は動く場合せいぜい一度に二体しかかかってはこない。
一体が撃退される度に次が動き始める。
よく見れば、確かに影の英霊達は動く場合せいぜい一度に二体しかかかってはこない。
一体が撃退される度に次が動き始める。
おそらくはそれが桜自身の使い魔使役の限界なのだろう。
巨大で鈍重だが、単調な動きだけで役割をこなせる巨人と比べれば小回りが効く分動きが複雑化しているのだ。
巨大で鈍重だが、単調な動きだけで役割をこなせる巨人と比べれば小回りが効く分動きが複雑化しているのだ。
しかし、そんな現状など桜自身とうに自覚していた。
そして相手が自分の限界を見せる程度では殺されてはくれない相手ということも、倒されていく使い魔を見て認識していた。
そして相手が自分の限界を見せる程度では殺されてはくれない相手ということも、倒されていく使い魔を見て認識していた。
故に、桜は自身にかけていた枷を解き放った。
「何…?!」
変化は急だった。
キャスターが空から援護射撃を放つと同時に、その合間を縫ってランサーが槍を突き出す。
射線から離れながら槍を受け止める巧だが、その背後からセイバーの剣戟が振り抜かれる。
対応しようにもランサーの連撃を受け止めることが精一杯で、間に合わぬままセイバーの一撃をまともに受けてしまう。
更には怯んだだ隙をついてランサーの鋭く、素早い突きが巧の全身を突く。
後ろからは繰り出されるセイバーの剣、そして前はランサーの槍。そして空からはキャスターの援護射撃。
横に飛び退き避けようとしたところで、影の中から飛び出したワイヤーとその先端につけられたナイフが視界に映る。
腕や足など受けきれなかった箇所に衝撃を感じつつもバックユニットからの飛翔で後退、一同から距離を取った。
射線から離れながら槍を受け止める巧だが、その背後からセイバーの剣戟が振り抜かれる。
対応しようにもランサーの連撃を受け止めることが精一杯で、間に合わぬままセイバーの一撃をまともに受けてしまう。
更には怯んだだ隙をついてランサーの鋭く、素早い突きが巧の全身を突く。
後ろからは繰り出されるセイバーの剣、そして前はランサーの槍。そして空からはキャスターの援護射撃。
横に飛び退き避けようとしたところで、影の中から飛び出したワイヤーとその先端につけられたナイフが視界に映る。
腕や足など受けきれなかった箇所に衝撃を感じつつもバックユニットからの飛翔で後退、一同から距離を取った。
離れて周囲を見回し状況を確かめる巧。
さっきまでと比べて、明らかに動きが違う上に一度に動いてくる敵も増えており、連携も取れているように思う。
さっきまでと比べて、明らかに動きが違う上に一度に動いてくる敵も増えており、連携も取れているように思う。
「…おい、何でだ?」
『……、もしマルチタスクが可能であるならば理論上は可能です。しかし、英霊の力を借りているとはいえこれだけの挙動を一度に扱い切ることは…。
乾様、少し急ぐべきかもしれません。桜様は、自身の負荷を度外視して能力を行使している可能性があります』
「そうは言っても、なあ!!」
『……、もしマルチタスクが可能であるならば理論上は可能です。しかし、英霊の力を借りているとはいえこれだけの挙動を一度に扱い切ることは…。
乾様、少し急ぐべきかもしれません。桜様は、自身の負荷を度外視して能力を行使している可能性があります』
「そうは言っても、なあ!!」
と、振るわれた刀を受け、更に後ろからライダーの飛び蹴りを拳で受け止め。
バーサーカーに放り投げられる形でこちらへと飛び込む桜の、その手の巨斧をブラスターの刃で受け止める。
バーサーカーに放り投げられる形でこちらへと飛び込む桜の、その手の巨斧をブラスターの刃で受け止める。
「あはははははははっ!!」
笑い声を上げながら自身の身長を超えるほどはあろうかという武器を軽々と、まるで自分の腕のように振り回す桜。
その後ろからは更に槍が、魔力弾が飛び込んでくる。
その後ろからは更に槍が、魔力弾が飛び込んでくる。
各々の攻撃も精度や速さが先程までとは桁違いで、対応だけでも精一杯だ。
(くそ、時間は…まだか…)
10秒間だけ1000倍速での戦闘が可能になる超高速形態・アクセルフォームへの変身を考えるが、この戦いの最中でブラスターフォームから切り替えるチャンスは訪れそうにはない。
いや、アクセルフォームでもこの数と技量を相手取るには手に余るかもしれない。
これだけの攻撃に耐えられているのもひとえにブラスターフォームの持ち前の耐久力のおかげなのだから。
いや、アクセルフォームでもこの数と技量を相手取るには手に余るかもしれない。
これだけの攻撃に耐えられているのもひとえにブラスターフォームの持ち前の耐久力のおかげなのだから。
そんな巧の後ろから、今度はマークネモのブロンドナイフが迫る。
その数はあまりにも多く、幾つかは装甲の薄い場所に刺さるかもしれない。
その数はあまりにも多く、幾つかは装甲の薄い場所に刺さるかもしれない。
体を襲うだろう衝撃に、心だけは備えようとしたその時だった。
宙から降り注いだ桃色の光弾が、ブロンドナイフのワイヤー部分に着弾、支えを失ったナイフはあらぬ方向へと飛んでいく。
更に迫っていた影にも幾重も砲撃が降り注いでいく。
それらは巧のブラスターと違い使い魔を倒すほどの威力はないものの、的確に武器を落とさせ、進行方向を防ぎ、足を止めさせた。
それらは巧のブラスターと違い使い魔を倒すほどの威力はないものの、的確に武器を落とさせ、進行方向を防ぎ、足を止めさせた。
『追いついてみれば、うわぁ何ですかこれ、どうしてこんなに黒化英霊がいるんですか』
「乾さん!!……で合ってるんですよね?」
「イリヤか!」
「乾さん!!……で合ってるんですよね?」
「イリヤか!」
空を見上げると、桃色の衣装と透き通った翼を広げた少女の姿が映る。
『姉さん!』
『サファイアちゃん!無事でしたか!』
『乾さんに助けられましたから。細かい話は後です。
桜様は自身の泥をあのカードの英霊の力で、サーヴァントの形に似せた使い魔として使役しています。それに加えて、ライダーは泥を受けて受肉したクラスカードです』
『うげぇ、この様子を見ると、一体一体は弱くてもイリヤさんの出力では少々手に余る相手ですね』
「…大丈夫、戦うだけが、やり方じゃないから。サファイア、こっちにお願い」
『了解しました』
『サファイアちゃん!無事でしたか!』
『乾さんに助けられましたから。細かい話は後です。
桜様は自身の泥をあのカードの英霊の力で、サーヴァントの形に似せた使い魔として使役しています。それに加えて、ライダーは泥を受けて受肉したクラスカードです』
『うげぇ、この様子を見ると、一体一体は弱くてもイリヤさんの出力では少々手に余る相手ですね』
「…大丈夫、戦うだけが、やり方じゃないから。サファイア、こっちにお願い」
『了解しました』
と、巧の手元を飛んでいくサファイア。
「またあなたですか。何度も何度も出てきて、すごく目障りで癇に障ります」
「桜さん、もう止めてください。これ以上、みんなを傷つけるのは――」
「桜さん、もう止めてください。これ以上、みんなを傷つけるのは――」
言葉の終わらぬイリヤへと、影の帯を飛ばして捕らえようとする桜。
それをイリヤは、不意を突かれる形になりながらもどうにか避ける。
それをイリヤは、不意を突かれる形になりながらもどうにか避ける。
その行動にやはり戦うしかないと迷う気持ちを払ったイリヤは地に降りて手元のカードをかざす。
「夢幻召喚!!」
光に包まれたイリヤの体を包む衣装が、桃色の魔法少女服からフードを被った黒いセーターのようなものに変化する。
その頭には二つ、髑髏状の仮面が張り付いている。
その頭には二つ、髑髏状の仮面が張り付いている。
「その格好……、似た人を知ってますよ。こそこそ隠れまわる蟲みたいに鬱陶しいサーヴァント…」
小さな短刀を構えながら、アサシンのクラスカードの力を得たイリヤは周囲を改めて見回す。
見覚えのある姿をした影たちとかつて戦った黒化英霊の一人、そして見たことのない巨人が一体。
『乾さん、この格好戦闘力に少し難があるので、可能であればサポートをお願いします』
「一人よりはそりゃマシだけど、ただお前、大丈夫なのか?」
「……」
「一人よりはそりゃマシだけど、ただお前、大丈夫なのか?」
「……」
その大丈夫かというニュアンスにどういう意味が込められていると受け取ったのか、イリヤの返答はなかった。
『乾さん、お願いします』
「…ああ、分かったよ」
「…ああ、分かったよ」
再度の念を押すかのようなルビーの言葉に何かを察した巧は、改めてブラスターを構え直した。