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我ハココニ在リ

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我ハココニ在リ ◆Z9iNYeY9a2



さっきから謎のざわめきを感じていた。

最初は体のダメージが体調に影響を及ぼしているのかと思っていた。
だが、あまりにざわつきは続いている。
少なくともあの戦いの後からのものだというのは何となくだが感じ取っている。

ゼロ、そしてバーサーカーとの戦い。
未知なる進化を果たしたポケモンの姿を見たこと。

いや、おそらく原因はそれではない。

そういった類の興奮、動揺ではない。

この感覚は、まるで己の元となったポケモン、ミュウと会った時のような―――――


道を往く3人、いや、2人と1匹。

各々に少なくない傷を負っているが歩みに支障をきたしている者はいない。

先頭を行くシロナはただの人間ながらダメージ自体は最も少なく。
ミュウツーはダメージが最も大きいがサイコパワーで移動するため痛みさえ耐えるならば移動に支障はなく。
さやかはダメージもあり片目の傷は治っていないため移動に支障がないわけではないが、それでも魔法少女という肉体、そして自身への嫌悪感は彼女を休ませはしなかった。

そんな時、ほんの少しだけ、シロナがまるで何かに呼びかけられたかのように顔を上げて足を止めた。

そのまま振り返ろうとして、しかしシロナは振り向くことなく前を向いたまま歩いていた。

偶然かどうかは分からない。
その時シロナが何かを感じ取ったその瞬間。
ガブリアスは金色の光の中、狂戦士に最後の一撃を放ち消滅していった。
だがそれを知る者は、知ることができた者は、この中にはいなかった。



それから間もなくだろうか。
どこからともなく響いた声が、まるでアラームのように一つの事実を知らせた。

定時放送の時間が来たのだ。

『12:00、定刻通り死亡者、並びに禁止領域の発表を始めよう』

全く感情のこもらぬ冷たい声。
ここへ来て3度目になるだろうアカギの声が、周囲に響き渡る。

思わず足を止める3人。
例えそこから名前が呼ばれることがないと願いたくとも、彼ら自身がすでに誰の名が呼ばれるのかをある程度は知ってしまっている。
その知りたくもない確認、そして未だ知らぬ死者の名を聞かねばならぬという事実もまた受け入れねばならないのだ。


「死亡者は
ナナリー・ランペルージ
ロロ・ヴィ・ブリタニア
ユーフェミア・リ・ブリタニア――――」

ユーフェミアの名に、さやかが僅かに反応した。


「ニア
藤村大河
クロエ・フォン・アインツベルン―――」

クロエ・フォン・アインツベルンの名に、その場にいる一同が息を飲み込む。
分かっていたはずだ、覚悟していたはずだと。
あの場に残していった時点で、バーサーカーか彼女とガブリアス、どちらかが倒れることになるのだ、と。

「ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト
バゼット・フラガ・マクレミッツ
オーキド・ユキナリ――――」

さやかが政庁で会った、クロの知り合い。
ミュウツーが一時的に共闘した、かなりの力を秘めた人間。
そして、シロナにとっても名の知れた存在であり、ミュウツーにとっては若干苦い思いもあった博士。

殺し合いで出会った者達が、そしてそれ以前から存在を知っていた者達が、次々と名前を呼ばれていく。

そして。

「 佐倉杏子 」

その名前が呼ばれることは、美樹さやかにとっての罪の象徴。

「呉キリカ
以上の11名――――」

そして、佐倉杏子の名を耳にした辺りから、さやかの様子に変化が生じる。


体をふらつかせながら膝をつく。
一見するとその様子はまるであの放送で呼ばれた名前に悲しみを感じているようにも見える姿。
だからこそ、シロナもミュウツーも、気付くのが遅れてしまった。

その様子が本格的におかしくなりはじめたのは、放送が終わって間もなくだった。
頭を掻きむしるように抱え、呻きながら体を小さく丸め始めたさやか。
明らかに何かおかしいその様子に気付いたシロナは、さやかに駆け寄り。

「さやかちゃん?だいじょう―――」

大丈夫?と声をかけようとして気付く。
さやかの上げた顔。その瞳にさっきまであったはずの光が無く、虚ろな目の中に真っ暗な闇を映し出していることに。
そしてシロナはその瞳を知っている。先に彼女が自分達を襲った時、気絶するほんの一瞬前に見た表情。
それが、今目の前にいる彼女の顔とあまりに似ていた。




さやかの中に入り込んだ異物、彼女を狂気に落とさせるきっかけとなったもの。
破壊の遺伝子。

確かにそれは美樹さやかの精神を狂わせるきっかけとなった物質ではある。
しかし、それだけが原因ではない。

もしもさやか自身に強い意志さえあれば、破壊願望に任せたまま狂気の道に堕ちることはなかったかもしれない。

ゲーチスの言葉に耳を傾けていた時のさやかは、強い自己嫌悪と破滅願望を身に宿していた。
そんな弱った心に破壊願望を植え付ければ、その隙間に入り込み意識を奪うのは容易だった。

今のさやかはクロによって注入された精神安定剤によりどうにか安定を保っていた状況。
その効果も少しずつ切れ始めていた時に、あの放送によりさやかの思い出したくない記憶が脳裏に浮かび上がってしまった。

佐倉杏子を殺した、そしてそれを巴マミに責められ撃たれたという事実。自身にとっての最大のトラウマ。

それは、精神安定剤が効果を切らしつつあった美樹さやかの体を、少しずつ狂気の道へと誘いつつあったのだ。





「どうした」
「さやかちゃんの様子が。何か薬のようなものを使われたみたいで、放送を聞いてから様子がまた…!」

そのまま腕を振り上げシロナに拳をぶつけようとしたさやかの体を、ミュウツーはサイコキネシスで取り押さえた。

しかし、予想外の力を出してそれすらも振り解こうとしている。明らかに生き物の限界を超えた力を発揮しようとしている。
ここでさらに魔法少女に変身されたら取り押さえることはできない。

ソウルジェムが光を放ちかけたその瞬間、ミュウツーはさやかの頭に強いサイコパワーをぶつけた。

「―――――」

脳に強い衝撃を受けたさやかは体をふらつかせて地面に倒れこんだ。
一応物理的なダメージは残らないようにしたはず。

しかし油断はできない。
このままの状態で目が覚めれば、彼女はまた暴れ出し人を襲うだろう。

ならばどうするべきか。

ここで殺す。
一番楽な手段ではある。しかしそれではここに来るまでの自分と何も変わらない。
そもそも殺すだけならばクロにも可能だったはずだ。それを生かしておいたというのならば、彼女の生にも何か意味があるのかもしれない。

ならばどうするか。

もし彼女の体にサイコパワーを送り込み、体のどこに異常があるのかを確かめることができれば、何故彼女がこうなったのかを調べ、あるいはその原因を取り除くことも可能――――


(それが私にできるのか…?)

これまで、最強のポケモンと謳われたこの力を、破壊や強奪、他者を傷つけることにしか使ってこなかったミュウツー。
そんな自分に、そのような真似ができるのか?と疑問と不安を覚える。
もしその結果彼女を死なせることになれば、結局はこの力がただの暴力でしかないということの証明にもなってしまうのではないか。
そう、例えばあの時ぶつかった、黒い狂戦士のように。


「うっ……あああああああああああああああああああ!!!」

叫んださやかに、一瞬迷いをもったミュウツーのサイコキネシスが押し返されかけた。

(迷っている場合ではない、か)

例え上手くいくものでなくとも、それをせねば美樹さやかを殺さねばならなくなる。そうなれば結局は同じだ。
ならば殺さずに済む可能性のあるやり方を選ぶしかない。
何、全ての責任を背負うのは自分だ。

「退いていろ、私に考えがある」

シロナを後ろに下がらせ、そのさやかの体に触れる。

「……何だこの感覚は…」

先ほどから感じていた違和感、謎のざわつき。
それが、美樹さやかに触れた時強くなり始めた。

彼女に植え付けられた何かとやらの影響なのか。一体何をされたのか?

疑問を持ちつつも、その体に触れたその瞬間。

ゾワリ

体の中に何かが侵食してくるような、不気味な感覚が悪寒となって全身を駆け巡り。

そして次の瞬間、ミュウツーの意識が反転して闇に包まれた。


ここはどこだ?

今私は美樹さやかの体に残った異常を探すためにその体に触れたはず。
何故、このようなところにいるのだ?

――――シリタイカ?

頭の中にテレパシーのように流れこんでくる声。

何だ貴様は。何故私にテレパシーを送ることができる?

何故貴様を前にすると、ここまでざわめきが止まらない?

何故、お前の存在にあいつの時のような感覚を感じている?

――――オマエハ、ワタシダ

何?

――――ワタシハカツテミュウツートヨバレタモノノイチブ。ミュウカラウマレタポケモンノナレノハテダ。

貴様がミュウツー、私だと?

―――アア、ワタシノナカニアルノハハカイノイシノミ。ソレガオンナノノゾミニハンノウシテウゴキダシタダケ。
―――ダカラワタシニハワカル。キサマノウエガ、カワキガ。
―――ワタシヲウケイレロ。ソノチカラヲカイホウシロ

―――キサマノカワキハ、ハカイデシカウメラレナイ!


「グ…あっ…!」

美樹さやかに触れた瞬間、ミュウツーが膝を付くと同時に小さく唸った。
その手は、まるで何か異物が侵入したかのように血管が蠢いている。

それと同時にさやかの体はパタリと地面に倒れ伏せ動かなくなる。
一瞬ヒヤリともしたが、呼吸をしているように胸が動いているのを見て安心するシロナ。

しかし、それとは対照的に今度はミュウツーが何かに耐えるように呻いている。



ミュウツー。

その存在はシロナも風の噂には聞いたことがあった。
幻のポケモン、ミュウの細胞から生み出された最強の存在であり。
しかし有り余る力を制御することができず凶暴化し消えていったといわれるポケモン。

シロナとしては信じたい存在ではなかった。
実在するかどうかということをではない。そこまでの業を人が犯したということをだった。
人が好奇心から生命を生み出してしまうなどということがどれほど自然の摂理に反した罪深いものなのか、考古学者であり多くの生命の歴史に触れてきた彼女はよく知っている。

その罪の象徴が目の前にいる。
さっきまではガブリアスのこともあり深く意識することはなかったが、こうして目の前でその姿を間近に見るとそういったことも考えてしまっていた。

だが、目の前にいる彼は伝え聞くような凶悪なポケモンには見えない。
さっきはクロと協力しあのバーサーカーとも戦っていたらしいし他者と協力することができるほどには知性を持っているようだ。

そしてそれ以上に、このポケモンからは悲しみと迷いのようなものを感じる。
美樹さやかに対して傷つける手段でないやり方を選ぼうとしている辺りからもそういった感情を伺える。

だからこそ、そんな彼が今目の前であの時のさやかのような状態に陥っている様子を放っておくことができなかった。

しかし、そう思って傍に駆け寄ろうとしたミュウツーの体から、突如膨大なエネルギーが放出された。
彼の体を中心として放物線を描くように放たれるそれは、エスパーポケモンの持つサイコパワーだ。
だが最強のポケモンであるミュウツーから溢れるそれらのエネルギーは、並のポケモンのものではない。
シロナには近寄ることすらもできなくなっていた。


「一体…、何が起こっているの…?!」


止めろ…!私の中に入ってくるな!

――――ナニヲアラガウ?キサマトテオナジダロウ。

――――カツテコノチカラニミヲマカセスベテヲホロボシタノデハナイノカ?

それは、私が誕生してすぐの時。私を生み出した研究者達を施設ごと抹殺した時のことか?

だとしたら違う。私はそんなものが欲しいのではない!

――――チガワヌサ。ソレガモットモチカラヲチカラトシテツカウコトガデキルシュダン。

――――オマエモ、モトメテイタノデハナイノカ?オノレノイバショヲ。
――――ナラバアラガウナ。コワセ、コロセ、ハカイシロ。ワタシヲウケイレレバ、アノキョジンニカツコトモフカノウデハナイ。

その拒絶したいほどの声。
なのに、何故かそんな提案に、力に魅せられかけている自分がいた。

力………。

私にはそれ以外の何もなかった。

心も、友も、他のポケモンが持つトレーナー――人間との絆も、自身の生きる理由さえも。
そんなもの、あの己を作った施設を破壊した時からすでになかったのかもしれない。

だからこそ、サトシに憎しみを取り除かれ、力を向けるべき先を見失った時。
そこに残ったのは大きな虚無感だったのかもしれない。

「私には……力でしか己を見出すことはできないのか……?」

――――アア、ソノトオリダ。

「私の居場所は、力でしか示せないのか……?」

―――ソウダ。

体の中に強い破壊衝動が沸き上がってくる。
なのに、不思議と嫌な心地はしなかった。

破壊でしか己を見出すことができなかったもう一つの私。
私もその道しか歩むことができないのならば、いっそその力に身を委ねてしまうのも――――



そこまで思考した時だった。
自分の体に触れる何者かの存在に気付いたのは。



ミュウツーの暴走。
周囲に撒き散らされたサイコキネシス。

それは彼の意図したものではなく、純粋な力としてのみならず様々なものが入り混じった力として発されていた。

例えば、その時のミュウツーの思念、テレパシー。
破壊の遺伝子の囁く声と、それに魅せられかけている自身の思いが知らず知らずのうちに周囲に投げられていた。


そして、それを受け取ったのは、そのすぐ傍にいたシロナ。

ミュウツーが破壊の遺伝子との交信で感じてしまった己への疑問、生きる意味の問いかけ。
それらの思いが全て彼女の中に流れ込んできたのだ。

(―――それは、いけない!)

自分が受け取ったのは、彼の持つ迷いのほんの一部にすぎないのだろう。
だから彼の持つ思いの全てを理解できたなどとはいえない。

だがそれでも、今ミュウツーが選ぼうとしているものが彼に不幸と破滅しか及ぼさないことに思い至るくらいは分かった。
力を力として、破壊のみに活かして証明するなど。

それを選んでしまってはもはやそれはポケモンですらない。
兵器、いや、人間にすら管理することができない以上、もはや災害と同じだ。

だからこそ、シロナは彼を止めなければならないと、吹き荒れる念力の中を無理やりにでもミュウツーに近づいていったのだ。
せめてこの声が届く距離まで。


まるで暴風のように吹き荒れるそれは、まるで風が数倍にも密度を増幅させて吹き荒れているかのようなもの。
生身の人間であるシロナには、一歩進むだけでも大きな負担をかけていた。
だが、そんなことで立ち止まってはいられない。

目の前には、大きな迷いをもったポケモンがいるのだから。
手を差し伸べてなければならない。
道を示してやらねばならない。

ポケモントレーナーとして、チャンピオンとして。


そんな想いの元、やがてミュウツーに手が届く距離まで接近を果たしたシロナの耳に聞こえてきた声。


「私には……力でしか己を見出すことはできないのか……?」

ミュウツーの最後の問いかけのような声。

「私の居場所は、力でしか示せないのか……?」



「違う!!」


その声に思わず叫び、そしてミュウツーの手に触れた。


確かに作られたことは間違いなのだろう。
人間の業であり罪。一つの迷いを持った命を生み出してしまったこと。

だが、生まれたその生物には何の罪もない。

例え作られた命であっても、その居場所を否定するほど世界は残酷ではない。


「あなたは強い力を持っている。だけどそれが人を傷つけるためだけにしかないなんてことはないのよ。
 あなたの生にも、きっと意味はあるわ」

「ならば、それはどうやって示せばいいのだ」

「それは私にも分からないわ。でもみんなそうよ。人もポケモンも、みんなそれを探して生きているのよ」

「クロエ・フォン・アインツベルンにも同じことを言われた。だが、ならばもう一つの私は何故それができなかったのだ」

それが今彼を強い迷いに陥らせている理由なのだろう。
いずれは自分も彼と同じ道をたどるのではないのかと。

ならば、今行きていることにどんな意味があるのだろうと。

「みんなで生きればいいのよ。
 人もポケモンも、それ以外のみんなも一人じゃ生きてはいけない。みんなと繋がって支え合って競い合って、そうやって生きているんだから」
「私に、できるのだろうか?力しか持たない、この私に」
「ええ、できるわ。いえ、もうしてるじゃない。
 クロちゃん達と協力してあの巨人に立ち向かって、彼女やガブリアスに助けられたあなたが一人ぼっちだなんて言わせない」

あなたは一人ぼっちじゃない。
たったそれだけの言葉が、自分の心の中に溶け込んでいくような感覚を感じていた。

そしてその心の意味を理解した時。
自分の中で疑問が氷解するように溶けていくのをミュウツーは感じていた。

そうだったのか。
私が探し求めていたものはそういうものだったのか。


一時とはいえサカキに仕えていたことも。
人間の思考を奪い、己の手駒としたことも。
コピーポケモンを生み出し、己と同じ境遇のポケモン達を生み出してしまったことも。

全ては、己の居場所が欲しかったのだ。

「私にも、居場所はあるのか?偽物の私が、世界にいてもいいのか?」
「生まれたものに本物も偽物もない。あなたの居場所は、きっと作れるわ」

――――ソンナモノハマヤカシダ。ワタシタチノチカラハヒトヲオソレサセ、ニクシミヤネタミヲウムコトシカナイ

あいつの声が聞こえる。
それは彼自身がそういう経験をしてきたということなのだろうか。

「そうかもしれない。だけど、それでもいつかはきっと居場所は見つかるわ。
 だって、彼には心があるんだから」

――――ココロ……

そうか、もう一人の私は、破壊の意志しか持っていなかったあいつには、心がなかったのか。
だからこそ、己の存在意義に迷うことも疑問を投げかけることもなく、その身にはただただ破壊しかなかった。



―――ワタシニハココロナドナカッタ。ダカラコソハカイノミヲモトメタ。ソウデアレトイウコエニギモンモモタズニ。

「……」

―――ナラバ、ソノココロヲソナエタオマエニハワタシハヒツヨウナイトイウコトカ

「そうなるな」

―――ダッタライクガイイ。モウヒトリノワタシヨ。オマエニハワタシノヨウナハメツトハチガウミチガアルダロウ。

「いや、お前も連れて行く」

―――ナニ?

「お前は私なのだろう?なら私に受け入れられないものではない。
 かつてのお前は己の居場所への疑問すらも持つことができなかった。だが今のお前はそれを持っている。
 ならばそれを導くのも、私の役割だ。お前の居場所は、私がなってやろう」

―――……ホンキカ?ハカイノイシニノマレルカモシレナイノダゾ?

「今の私なら、耐える覚悟はある。
 お前のかつての苦しみを、私も受け入れてやろう」

―――ク、ククク、ハハハハハハハハ!

笑い声が脳裏に響く。
高く反響するその声、しかし嘲笑ではなくまるで面白いものを見つけた子供のような笑い声だ。

そうだ、こいつの中にあるのも邪悪な意志などではない。破壊衝動しかなかったのだ。
だからこそ、己に示された路から外れたものを歪めることもしない。

―――ナラバミセテミロ。オマエノコタエヲ。

「ああ、そのつもりだ」

―――ダガ、ワタシノチカラハヤサシイモノデハナイゾ。セイゼイノマレヌコトダナ

「心配はいらん。そのくらいの思いなら、力なら、私とてとうに背負っている
 それに、お前は私なのだろう?」

そう言ってこの存在を受け入れる。
体の中に強い力とそれを振り回さんとする衝動が生まれる。
が、それもさっきに比べれば遥かに御しやすくなっている。

路を見つけたことで、示したことで破壊衝動が薄れたのかもしれない。

「これでよかったのだよな?」
「ええ」

意識が浮き上がる感覚。
目覚めの時だろう。

だが、恐れることはない。
自分の居場所はどこにでもあるのだから。自分にはそれを探していける足があり、受け入れてくれる者も、きっといるのだから。


――――頑張って

そうして目覚めの時を迎えようとしたほんの一瞬前。
どこからともなくそんな声が聞こえた気がした。

聞き覚えのない、小さな少女のような声。
なのに、その声に何故か懐かしさを感じていた。


美樹さやかが目を覚ました時、周囲には謎の力が覆っていた。
ミュウツーを中心として発するそのエネルギーに、シロナが近寄っているところまでを視界に収めることができた。

「シロナさん…!?」

思わず駆け寄ろうとした時、シロナの手がミュウツーの体に触れ。
その瞬間これまでとは比べ物にならないほどの力が一瞬で彼の周囲を覆い尽くしていた。

軽々と吹き飛ばされるさやかの体。
それでもどうにか受け身を取り、前を向いたさやか。

そこには意識を取り戻したミュウツーが立っていた。
その手に抱きかかえているのは意識を失ったシロナ。

「あんた、何をしてたのよ…!?」

嫌な想像が脳裏をよぎり、思わずそう問いかけるさやか。

「案じるな。すぐに目を覚ます。
 お前の体に巣食っていた破壊の意志も取り除いた。もう暴れることはないだろう」

それに対するミュウツーの返答。
おそらく自分の不安を読み取ったのだろうが、その声はこれまでの彼のそれとは違ったもののようにも感じ取れた。

それまで虚無的なものとも感じ取れた彼の声を何かが埋めているような。

「お前が何を思ってこいつを受け入れたのかは知らん。
 だがお前はまだ生きている。私のように全てを捨てるにはまだ早い。それだけは言っておこう」
「…な、何を……?」

シロナをさやかに預けたミュウツーは立ち上がる。
フワリと浮き上がる体。よく見ると先までは大きなダメージを受けていたはずの箇所が綺麗な状態に修復されているように見える。
かつての自分が癒やしの願いを己にかけることでその肉体を維持していたように。

「って、あんたどこ行くのよ?」
「どうしても確かめたいものがある。私はここで離れさせてもらおう。
 何、生きていればいずれ会えるだろう」

そう告げたのを最後に、ミュウツーは空へと浮かび上がりそのまま飛翔。
光の軌跡を残しながら遠くへと飛んでいった。

わけも分からぬまま、視界から完全に見えなくなるまでその姿を見送っていたさやか。
シロナが目を覚ましたのは、その軌跡が視界から消えていった頃だった。

「…ミュウツーは?」
「何か、確かめたいことがあるって言って飛んでいったんですけど…」
「そう…」

確かめたいことというのもきっと彼にとって必要なことなのだろう。
ならば、自分に止める術はない。

シロナは立ち上がりながら、さやかの傍でミュウツーの去っていったらしき方を見送る。

(――――頑張りなさい)

心の中で静かにエールを送って。



破壊の遺伝子を受け入れたあの時以降、あいつの声はもう聞こえない。
すでにこの体に一つの細胞として取り込まれたということだろうか。

その作用かどうかは分からなかったが、体にあったあの戦闘におけるダメージはほぼ治癒されていた。
肉体の足りない部分をあいつが補ったということなのだろうか。


ミュウツーが確かめたいと思ったこと。
それはあの狂戦士。自分を負かし、おそらくはクロとあのドラゴンポケモンを葬ったであろう黒き巨人。
己の意志を持たず、暴れまわるだけに見えたあの怪物。

あいつが、まるでもう一つの自分の存在そのもののようにも思えたのだ。
だからこそまだ生きているのならば、確かめねばならないと。
そう思ったのだ。

勝てるのか、と言われれば分からない。
だが、それでも確かめたかったのだ。
あの巨人が何を求めて戦い、暴れているのかを。

それが、破壊しか持たなかったもう一つの自分を受け入れた自分がしなければならないことのようにも感じたから。

バチッ

「ん?」

ふと体の中で何かが変わったような、そんな感覚が走ったような気がした。
しかし依然として何も変わったところは見られない。

気のせいだろうと考え、そのままミュウツーはあの巨人、バーサーカーを探して飛び去った。

その体に少しずつ起きている変化に気付くことなく。

【E-3/市街地上空/一日目 日中】

【ミュウツー@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、肉体に変化(?)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1(確認済み)
[思考・状況]
基本:己の居場所を見つけるために、できることをする
1:バーサーカーを探す
2:プラズマ団の言葉と、Nという少年のことが少し引っかかってる。
3:できれば海堂、ルヴィア、アリスとほむらとはもう一度会いたいが……
4:プラズマ団はどこか引っかかる。
5:サカキには要注意
[備考]
※映画『ミュウツーの逆襲』以降、『ミュウツー! 我ハココニ在リ』より前の時期に参加
※藤村大河から士郎、桜、セイバー、凛の名を聞きました。 出会えば隠し事についても聞くつもり
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※破壊の遺伝子を受け入れましたが破壊衝動は起こっていません。しかし肉体に謎の変化が生じているようです。


【D-4/市街地/一日目 日中】


【シロナ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:ガブリアスのモンスターボール(空)@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:基本支給品、ピーピーリカバー×1@ポケットモンスター(ゲーム)、病院で集めた道具、クロの矢(血塗れ)
[思考・状況]
基本:殺し合いを止め、アカギを倒す
0:ミュウツー、頑張りなさい…
1:どうするべきか考える
2:ゲームを止めるための仲間を集める
3:N、サカキを警戒 ゲーチスはいずれ必ず倒す
4:乾巧を探して謝りたい
[備考]
※ブラックホワイト版の時期からの参戦です
※ニャースの事はロケット団の手持ちで自分のことをどこかで見たと理解しています

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、左目に傷(治癒不可)
[装備]:ソウルジェム(濁り65%)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:私は…
1:何がどうなっているのか分からない
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)


112:Fragment Hope 投下順に読む 114:魔人病棟
時系列順に読む
103:HORIZON-金色の奇跡 シロナ 116:その手で守ったものは(前編)
美樹さやか
ミュウツー 121:X-evolution~戦いの中で



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