さくらん

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さくらん ◆Z9iNYeY9a2



柳洞寺。
円蔵山に存在する寺であり、その地下には聖杯戦争においての核となる大聖杯が収められている。
それが、本来のその寺の配置であり大きな存在理由だった。

では、この殺し合いの場に配置されたこの寺には何があるのだろうか?
確かにそこには寺があり、山門があり、そして洞穴も存在した。
人一人おらずともその佇まいには変わりがない。
しかし、冬木市ではないここには風水、龍脈的な加護を受けられてはいないだろう。

この場にこれがある意味は何だろう?
それを考えた者は現時点では一人としていなかった。
イリヤ、クロ、凛、ルヴィア―――聖杯戦争に直接関わらなかった彼らはその重要性に深く考えることはなく、唯一理解のある凛はそれを思考する前に脱落した。
衛宮士郎、セイバー、間桐桜―――聖杯戦争に関わった彼ら、しかし各々は殺し合いに呼ばれてからの状況に押され、それらに思考を割く暇がなかった。

今やこれがここにあるという事実を考えるものは少ないだろう。

では実際、ここにあるその柳洞寺には意味があるのだろうか?

ただ、今において言えることは。

行方のしれなくなった桜が転移した場所。それがこの柳洞寺であったということ。


くるくるくるくる

ぴゅーぴゅーと回ってくるくる

空っぽのお腹はご飯を求めてくるくるとなっている

今の気分は割と最悪。

だって友達がいなくなってしまったのだから。
もっと仲良くなれそうな気がしたのに、結局ナナリーちゃんも私の元を離れていってしまった。

悲しいです。
とても、悲しい。

会いたい。
先輩、早く私に会いに来て。

早く、私を殺しに来てください。



夜神総一郎がその異変に気付いたのは偶然だった。

月とゼロが夜神邸から離れ、一人政庁に戻ろうとして、ふと偶然山の方に目が行ったその時。
ふと、山の上にある建物に一瞬闇が落ちたように見えたのだ。

ほんの小さな、一瞬建物に落ちたその暗闇。
あの場所には寺があったように思う。
マップを確認すると、あそこの敷地内は半分が数時間前に禁止エリアとなった場所。
進んで人が入るとは思えない。
もしいるとするならば、止むに止まれぬ状況に追い込まれあそこに入らざるを得なかったか。
あるいは人がいないことを逆手に取って何者かが人に見られては困る何かをしているか。

無論何があったのかは分からない。だが、何かあったのならばあそこは危険だ。
もしあの場に誰か人がいた場合なおさらのこと。

「……行ってみるか…?」

もし自分の手に負えないようなことが起きているのであれば深追いせずに退くしかない。
だが、それでももし誰かいるのであれば見捨てることはできない。


と、その時だった。

定時放送がどこからともなく鳴り始めたのは。




「11人…、まだそんな数の死者が出ているのか…」

一回目の放送から減ることはなく、むしろ死者の数は僅かにだが増えている。
これが何を意味するのか。

恐らくは殺し合いに乗った人物が自分の思っている以上に多く、かつその多くが未だに存命しているということなのだろう。

ならば、なおさら何か危険な状態に陥ろうとしているあの場を放っておくことはできない。
眼前にある高い石段に、総一郎は足を踏み入れた。



本堂のど真ん中、昼間にも関わらず薄暗い雰囲気を感じさせるそこに、間桐桜は倒れていた。

魔力を尽きかけさせた今の彼女は、己の体を包む黒いドレスすらも作り出すことができない。
その身に纏っているのはボロボロになったジョーイの制服のみ。

傷だらけの素肌を晒した状態でできることはモゾモゾと蠢くことのみ。

そのままゴロリと仰向けになった桜。
視界に見えるのは、柳洞寺の広く高い本堂の天井。


立ち上がることすらもできないほどに体力や魔力を消耗した桜。
しかし恨み事を述べはしない。

これくらいの苦痛、痛みなど自分にとっては日常、あの調教に耐えてきたのだ、これくらいの苦痛に弱音をはいたりしない。

虚ろな目で天を仰いでいると、ふと桜の中に疑問が浮かんできた。

今の自分は魔力を大きく消耗している。
以前これに近い状態に陥った時、どのような目にあったか。
魔力を食らい餌とする刻印蟲が、魔力を求めて体そのものを蝕み始めたのだ。
あの時の痛み、苦しみはそれまでのものと比べて想像を絶するものだった。

なのに、今感じている苦しみは魔力や体力の消耗以外から来ているものではない。
まるで刻印蟲の存在などなくなったかのよう。

異常な体へと変化し思考も狂いつつある桜もこれにはふと疑問を持った。

(…まあ、どうでもいいことですけど)

だが疑問に持ったとてそう重要なものではない。
今の自分に重要なのは、この場からどうやって動くかということ。
この場に留まっていては探すべき人、先輩には出会えないだろうし、他の人に見つかれば恰好のカモでしかない。

移動しなきゃ、と思って体を起こそうとしても倦怠感と消耗した体力、片腕を失った体が立ち上がることすら許してくれない。
そのままモゾモゾと動き続けてもう十分以上は立ったかもしれない。
まるで朝起きられないねぼすけさんのようだ。
こんな姿を先輩に見られたら恥ずかしくて死ねる自信がある。
まあ死にたいとは思っていてもこれとそれは別だ。

待てば回復するだろうという思いと、他の人がくればこの場から離れられるだろうという2つの思い。
そのジレンマに挟まれたまま、しかし自身の力ではどうにもできない状況。

あるいは夜までこの状態でいなければならないのだろうか、と思ったその時だった。
桜の耳に、石畳を踏む足音が聞こえてきたのは。

先輩だろうか。それとも違う人だろうか?
違う人なら、私を殺す人だろうか?それとも生かす人だろうか?

その疑問を抱いたまま、桜は意識を闇に落としていった。






「君!大丈夫か!?」

長い石段を登り、広い庭を抜けて講堂に入った総一郎の目の前にいたのは、全身傷だらけで片腕を喪失し、ボロボロの服を纏った少女。

一瞬死体かと思うほどに肌の色も悪かったが、幸いにして息はあったようだ。
ここで何があったのかは分からないが、放置しておくこともできない。

総一郎はその露わにもなった肌に上着をかけ、その背に背負って柳洞寺を静かに抜けだした。

その少女が、自分の部下を、殺人者にしてかつての息子の恋人を惨殺した本人であることなど、知ることもなく。



私は、どうしていつも守れないの?
どうしていつも同じことを繰り返すの?

私は、また何度守ることができないの?


自問自答。そして自己憎悪。
一通り思考がループした後、襲いかかるのは悲しみ。
それが、今巴マミを埋め尽くす感情だった。

隣にいるニャースすらも、そんなマミに対して投げかける言葉を持たない。
目の前に倒れているものが既に躯であるということを受け入れることで精一杯だった。

そのままどれほどの時間が経っただろうか。
動かない自分達のところに、やってくる者がいた。


「これは……一体何があったんだ?!」

夜神総一郎は、目の前で胸を穿たれた少女の前で頭を垂れる自分を見て驚きの声をあげていた。

彼にしてみれば、ゼロから聞いていた政庁での戦いを生き残った面子が、放送から一時間も経っていない間に死んでいるのだ。
自分がこの場所へ戻るまでの僅かな間に。
場所としては政庁からそう離れた場所でもなかったため彼でも探すのに時間はかからなかった。しかしふと血の臭いを宙に感じ取った時から嫌な予感だけはしていた。
まさか的中してしまうとは夢にも思わず。

「……夜神…さん…」

顔を上げたマミの目は虚ろで、放っておけば自ら命を絶ちかねないほどの絶望を感じさせている。

「ゼロが…、C.C.さんを……、止めようとしたのに、私…全然歯が立たなくて…C.C.さんが……。
 …っ…、うああああああああああああああああああああああああ!!!」

どうにか絞りだすような声で、それらの状況説明を総一郎にも分かる程度に説明し。
その時どうにか精神を支えていた何かが崩れ、声を上げて泣き出してしまった。
人目も憚らないほどに大声を上げて泣くマミ。
かける言葉もなく、じっとその姿を見守るしかない総一郎。


そしてそんな彼に背負われた少女が、マミの声に反応するかのように静かに薄く目を開いたことに誰も気づくことなく。


涙でグシャグシャになった顔を拭い、顔を上げたマミ。

「すみません…、見苦しいところを何度も…」
「いや、構わんさ。俺がせめてそこにいてやれば……いや、大して変わらないか」
「何もできなかったのはニャーも一緒ニャ…」

強い後悔を感じさせるニャースの言葉。
実際、ゼロを相手にしてまともに戦える者などそうはいない。ニャースや総一郎とて恥じることはないのも事実。
だが、それは逆に無力感を感じさせるものだった。

「……あなたも、お友達を失ったんですか?」

ふと、そんなマミに声をかける少女。
マミは総一郎に連れられたそんな存在にたった今気付いたように意識を向けた。

紫の長髪の少女、とマミが言うには彼女より歳が上だろうか。
服はボロボロで、一見すればまるで暴漢にでもあったかのような恰好だ。

「目が覚めたのか。君、名前は言えるか?」
「…間桐、桜です」




巴マミさん。

ああ、なんてやさしい人なんだろう。


こんな私にこんなにやさしくしてくれて。


とてもうれしくて、とても温かくて。


とても。



おいしそう。



【D-2/市街地/一日目 日中】

【巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ソウルジェム(汚染率:中)、深い悲しみ
[装備]:魔法少女服
[道具]:共通支給品一式×2、遠坂凛の魔術宝石×1@Fate/stay night、ランダム支給品0~3(本人確認済み)、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、
     うんまい棒コーンポタージュ味@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・状況]
基本:魔法少女として戦い、他人を守る
1:さくらTVに向かう
2:今度こそ守りたい
3:たっくんの隣に立てるようになりたい
[備考]
※参加時期は第4話終了時
※ロロのヴィンセントに攻撃されてから以降の記憶は断片的に覚えていますが抜けている場所も多いです
※見滝原中学校の制服は血塗れになっています


【ニャース@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:ダメージ(大)、全身に火傷(処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、
[思考・状況]
基本:サカキ様と共にこの会場を脱出
1:さくらTVビルに向かう
2:C.C.…
[備考]
※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線

【夜神総一郎@DEATH NOTE(映画)】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:天保十二年のシェイクスピア [DVD]@現実、羊羹(2/3)羊羹切り 、不明支給品1(本人未確認) 、政庁にて纏めた情報
[思考・状況]
1:さくらTVビルに向かい、何かしらの他者との連絡手段を探る
2:月はゼロ(スザク)に任せる。月の対処は次に会った時に決める
3:真理を見つけ、保護する。
4:Lを見つけ次第、政庁で纏めた情報を知らせる
[備考]
※参戦時期は後編終了後です


【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:意識無し、黒化(一時沈静化)、喪失感と歓喜、強い饑餓
    ダメージ(頭部に集中、手当済み)(右腕欠損・止血)、魔力消耗(特大)、ジョーイさんの制服(ボロボロ)、麻痺状態
[装備]:総一郎の上着
[道具]:基本支給品×2、呪術式探知機(バッテリー残量5割以上)、自分の右腕、コルト ポリスポジティブ(6/6)@DEATH NOTE(漫画)
[思考・状況]
基本:??????
0:いずれ先輩に会いたい
1:さくらTVビルに向かう
2:先輩(衛宮士郎)に会ったら“悪い人”として先輩に殺される
3:くうくうおなかがすきました…
4:巴さん…、やさしい…、おいしそう…
[備考]
※学園に居た人間と出来事は既に頭の隅に追いやられています。平静な時に顔を見れば思い出すかも?
※アンリマユと同調し、黒化が進行しました。魔力が補充されていくごとにさらに黒化も進行していくでしょう。が、魔力不足で一時的に黒化が遅れています。
※精神の根幹は一旦安定したため、泥が漏れ出すことはしばらくはありません。黒い影も自在に出すことはできないと思われます。
※魔力不足とザ・ゼロの影響で記憶と人格が安定していません。現状は小康状態のようです。


114:魔人病棟 投下順に読む 116:その手で守ったものは(前編)
時系列順に読む 117:空白
110:ConneCt 巴マミ 122:マドルチェプリンセスの憂鬱
ニャース
102:始まりはZERO、終わりなら―――? 夜神総一郎
101:Code Alice-God Speed Love 間桐桜



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