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『そのままの君で』

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テレビで中継されている今年のドラフト会議を食い入るように見つめる男がいた。
手に汗にぎり、瞬きもせずに画面を凝視するさまは正直怖いがこう見えてもこの男、いまや球界でも指折りの若手エースなのだ。
数年前、社会人野球の名門、神楽坂グループにてメキメキと頭角を現し、
ドラフト1位で入団。今に至るまでさまざまなタイトルを獲得している。
プロ野球選手にしてはやや小柄で細身ではあるが、整った顔立ちから女性ファンも多い。
・・・逆に華奢だ、とか頼りなさそうとかいうファンも少なくないが。

『そのままの君で』


『――1位 六道聖 捕手 神楽坂グループ』
「!!」
その選手の名が呼ばれた瞬間、男は目を見開き一人歓喜した。
それから数秒して同期にして同じ野球部出身の親友、矢部が喜びの表情で部屋にノックもせず入ってくる
「水無瀬くん! ドラフトを見てたでやんすか!?」
同じ寮に住む親友とはいえ、無許可で人の部屋にあがりこむ所業は正直どうかとも思うが今の彼にはそんなこと気にならない。
「もちろんだよ矢部君!!」
実はこの二人、もう寮を出て家を購入できるくらいには活躍しているのだが特に必要がないということでここに留まっている。
といっても水無瀬のほうはこの寮を出るのも時間の問題か。

「すごいなぁ、本当にたった数年でプロに来ちゃうなんて。」
「全くでやんす!おいらたちなんてずっと野球してたのに結局プロ入りしたのは社会人時代でやんすからねぇ。」

が、彼、水無瀬にとってなによりも嬉しかったことは彼女が本当に同じ球団でプロ入りを果たしたことであった。




興奮冷めやらぬ様子の矢部を電話をするからと追い返し、携帯電話を手に取る。
相手はもちろん・・・
『もしもし?』
今頃神楽坂野球部のメンバーに囲まれてお祝いをしているかとも思ったが案外にすぐ彼女は電話に出て水無瀬は少し拍子抜けした。
そのことをたずねてみるとどうやらお祝い会はやめてもらったそうだ。彼女らしいと水無瀬は思った。
「ドラフト1位、本当におめでとう聖ちゃん。しかも僕と同じ球団だなんてさ・・・」
感動のあまりそこで言葉に詰まる水無瀬。
『あぁ、これであの時の約束は果たされたな。』
「聖ちゃん、今から会えるかな?」
『ん・・・私もそのつもりだった、ぞ?』
彼女のそのセリフに彼はふっと微笑み、こう返した。
「じゃあ待ち合わせはあの公園で。」
『了解だ、水無瀬くん。』
そこで電話での会話は途切れた。

プロ一年目のオフシーズン、1月初頭に彼女の実家での情事以来二人は電話したり、たまには直接会ったりしていたものの、
互いの都合や周囲の目にも気を使わねばならず、直接会える機会はなかなかに巡ってこなかった。
水無瀬は私服に着替え、身だしなみを整えると寮を出た。
途中のコンビニでいつも買っている野球情報誌を購入し、例の公園へと向かった。



公園には誰もいなかった。
彼女は彼女の意思に関係なく野球部の仲間やらCEOやらに捕まっているのではないかと水無瀬は思った。
仕方ないので公園にあった自販で飲み物を購入し、買った情報誌を読むことにする。
別に意識したわけではない、いつもの習慣として純粋に購入したものだったが
今回の号は水無瀬をはじめとする最近活躍が目覚しい選手の特集が組まれた号だった。
知り合いがこの現場を見たら引かれそうだなと一人苦笑しつつ、ページをめくり始めた。
そのとき、ポケットに入れていた携帯がなる。着信ではない、メールだ。
そこには『すまない、野球部の連中に捕まった、適当に時間をつぶしておいてくれ。』という文面が画面に表示されていた。
メールを好まない彼女がこれを使うというのことは隙をみてとっさに送信したのだろう。
「案の定・・・か。」
彼は再び視線を情報誌に落とした。

彼がその本を読み終わるころ、正確にはあるページで彼が読むのを中断したとき彼女は来た。
急いできたのか、らしくなく肩で息をしている。
「す、すまない水無瀬くん。あれから野球部のやつらに捕まってしまってな。」
「気にしなくていいよ、当然のことじゃないか。神楽坂野球部初の女性部員がドラフト1位でプロ入り、お祭り騒ぎにならないほうがおかしいさ。」
水無瀬があははと笑う。むしろよくこんなに早く抜けてこれたなと感心するほどだ。
「これから正式な入団まではかなり慌しくなると思う。でもその前にどうしても一度会いたかったんだ。」
電話をかけたのはこっちなのに・・・という彼に対し、あと数秒かけるのが遅かったら私がかけていたと彼女が微笑んで返す。
「プロ入り、本当におめでとう聖ちゃん。」
「ありがとうだ、水無瀬くん。」



互いに微笑みあったあと、ふと彼の座っていたベンチに置いてある飲み物と読みかけの野球情報誌に目がいく。
途中のページで広げたまま伏せてあるその本がなんとなく気になった私はその本を手に取り、開いていたページを見る。
「あっ!? 聖ちゃん、それはっ!」
彼が慌てて私が読むのを阻止しようとするが遅い。そのページを見る。
そのページには私の目の前にいる男・水無瀬選手の特集が組まれていた。
思わず彼を見てしまう。彼はそんな私の視線に宿る思考を読み取ったのか、あせった様子で私に弁解してくる。
「違うんだ聖ちゃんっ! 別に自惚れてたとかそういうわけじゃなくてっ! その・・・なんていうか・・・」
セリフの後半に全く勢いをなくした彼の声を聞いて私は疑問符が頭に浮かぶ。
「その・・・むしろ逆なんだ・・・」
何が逆だと言うのだ、私は軽くため息をつき、記事に目を通す。
彼の持ち味や決め球のスライダーについて、それに対するコメントなどがメインであったが、ページの左隅に
『ファンに聞く! 水無瀬投手!!』という記事を発見し、私はそれを読んだ。
そこには彼に対するイメージなどがいろいろと書かれていた、もちろん賛否両論に。

「そこに、僕が華奢で頼りなさそうとか書いてあるでしょ?」
不意の彼の言葉に私はいったん本から目を離し、彼のほうを見る。
「ああ、それがどうかしたのか?」
「昔から言われてたことだし、今までかけらも気にしてなかったんだけど、
いよいよ聖ちゃんがプロ入りして、僕の目の前に現れて、なんか急に不安になっちゃってさ。」
「・・・だからといって今すぐその見た目がどうにかできるわけがないだろう。」
「まぁ・・・そうなんだけど・・・」


煮え切らない様子で私に背を向け、うーんとうなり声を上げる彼。
私はその華奢だといわれている彼の背中にそっと抱きついた。
確かに彼は男にしてはかなり細身だがなぜだろう。私にとっては誰よりも頼もしい背中だと思う。
「聖ちゃん?」
「そんなこと気にしなくていい。そのままの君でいい、私は水無瀬くんという人間が好きだから・・・ね。」
「・・・ありがとう。」
そう言って彼は微笑んだ、気がした。
「でも、ひとつだけ変えて欲しい部分はあるな。」
そう、初めて彼と出会ったときから気になっていたこと。いや不快というわけではないが・・・
彼が驚いた様子で振り返ったのを見て私は続ける。
「私の呼び方だ。もうちゃんづけはいいだろう? 呼び捨てでいい。私の名前を呼んでくれ。」
彼は一瞬驚き、言った。
「その言葉、そのまま返すよ。」
彼が笑う。


その後、わたしたちは互いの名前を呼び合い、口付けを交わした。
その様子を彼を尾行して目撃していた矢部にそのことを冷やかされ、
二人で顔を真っ赤にして成敗するのはそう遠くない未来のことだ。

おしまい

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