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『飛翔』

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匿名ユーザー

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「・・・ごめんっ・・! ボク先に帰るねっ・・!!」
俺や矢部くんが呼び止める声も聞かず、早川は出て行ってしまった。
そして俺ははっきり見た、彼女の頬を伝う一筋の線が・・・

「こんなっ! こんな馬鹿なことがあってたまるか!!」
俺が叫ぶ、辛苦をともにしてきた仲間たちはみんな辛そうな表情で俺を見ている。

俺たち恋々高校野球部は創部間もない部活だがなんとか部員をかき集め、2年目には晴れて大会に出れるようになった。
しかし、その矢先に大会出場停止だ。理由は女性選手の出場だと・・・馬鹿げてる!
「何でだ!? 女の子が野球やって何が悪い! ・・・みんな話がある。聞いて欲しい」

『飛翔』

恋々高校野球部は俺が創部した部活。そりゃあ設備も、実力のレベルも並み居る強豪にはかなわないだろう。
だけど俺たちはチームワークとそれぞれの長所を伸ばすことを重視し、弱い部分は互いにカバーしあう野球に徹してきた。
といっても守備力だけは徹底して鍛えてきたが。

「俺たちは、あかつきみたいに全てがハイレベルな野球は出来ないかもしれない。
だけど、みんな何か一つでいい。自分の得意なところを伸ばしていこう!」

これが新入部員加入時の俺のあいさつだ。
紹介が遅れた。俺の名は小波。恋々高校野球部のキャプテンを務めさせてもらっている。
そんな俺の得意分野は打撃だ。家がバッティングセンターを経営しているため、小さなころから遊んでいた。
ちょっと自慢になってしまうかもしれないが打撃だけならプロ級だと褒められたこともある。
もちろん球界関係者にだ。


「俺は、この処分に微塵も納得していない。
このままこの処分がまかり通るなら男女平等なんざどの口がほざいてるんだという話だ」
俺は真剣なまなざしでチームメイトをみる。顧問の加藤先生もマネージャーの七瀬さんもいる。
「全くもって同感でやんす!」
怒りをあらわにした表情で矢部が声を上げる。
「だけどいくらこのまま俺たちが抗議したところで高野連という巨大な組織を動かすことは不可能だろう」
「じゃ、じゃあどうするんスか先輩!」
円谷が俺に聞く。
「何かを動かすには力が必要だ。ここは人様の力を借りるしかない。署名活動だ!!」
「おおっ!!!」

幸いこの出場停止のニュースはそこそこ有名な話だったらしく、署名活動にはたくさんの人が署名してくれた。
その中で一つ、俺が語っておきたいエピソードがある。

「やあ、なんだかやかましい連中がいると思ったら君たちだったのか」
この文章だけ見たら非常に嫌味に見える言葉を口にした男。そう猪狩守だ。
「・・・猪狩か」
猪狩はふっとキザに笑うとペンを取り、自分の名前を書き込んだ。
「おっと、勘違いしないでくれよ。別に女性選手のことは関係ない。
プロ級と噂される君の打撃を楽しみにしていたのに不戦勝なんて僕は認めない」
そういって猪狩はその場を去っていった。根はいいやつなのだ。

俺も猪狩との対決を楽しみにしていただけにこの署名は相当に心強かった。




そしてかなりの数の署名を携えて恋々高校野球部は高野連に頭を下げ、
そしてついに女性選手の出場を認めさせることに成功したのである。

「ボク、今でも信じられないよ、みんな本当にありがとう」
この知らせが届いた日のミーティング、早川が涙ぐんで言う。
「・・・俺が言いたいのはこれだけだ。
これは”当然”なんだってな。これで役者はそろった、絶対に甲子園にいくぞ!!」
「おおーーーーっ!!!」
俺の言葉で部室の活気は今まで最高潮に達した。
そして部活のあと、俺は早川に呼び出され、部室にて早川を待っていた。
すっかり外が暗くなってきたころ、早川が部室に入ってきた。

「ごめんねボクが呼び出したのに」
「気にすんな、それで話ってなんだ?」
「まずもう一度言わせて、本当にありがとう。
みんなが署名活動してくれなかったらボクはもう野球が出来なかった」
普段は勝気な早川が深々と頭を下げる、よせよらしくない。
お前は元気にボール投げてるほうが似合ってるよ。
「そうかもしれない。でも今日はね」
早川がふっと微笑む、初めて見る表情に少し、驚き。
うん、そんな表情も悪くないと思うぞ。



「小波くんってさ、結構くさいセリフを言うのに何故か知らないけど不快な感じがしないよね」
「思ったことを正直に口にしてるだけだ」
この言葉にまた早川は微笑んで、続ける。
「それでいて態度はぶっきらぼうなのに実は誰よりも優しくて、頼もしくて仲間思い」
目を閉じ、言葉の一つ一つを噛み締めるようにゆっくりと語る早川。
「そりゃ買いかぶりすぎだ、俺はみんなと野球がしたいからここにいる。それだけだ」
「ほら、やっぱり」
いつもと明らかに様子の違う早川に俺は混乱していたがそろそろ時間も時間だ。
「それで、話の本題は?」
この若干急かすような問いに早川は一瞬たじろいだがなぜか大きく深呼吸をするとまたゆっくりと話し始めた。
「うん・・・小波くん、キミと出会ってもう1年と半年くらいだけど気づいたことがあるんだ」
俺はあえて口を閉じ、黙ったまま頷いた。
ここでまた早川が大きく深呼吸、心なしか顔を紅潮させている。
それでもなかなか言葉を発しようとはしなかったがやがて決心したように頷いた。

「ボクはキミのことが好き、どこまでも純粋でまっすぐなキミが好き」

いつからだろう、自分がこの気持ちを抱き始めたのは・・・
いや案外今この瞬間から湧いた想いなのかもしれない。
言の葉を紡ぎ終え、儚げな視線でこちらを見つめる彼女を見て俺はいつの間にか彼女を抱きしめていた。

「ありがとう、早川。・・・俺もお前が好きだ、でも待っていてくれ、今の俺には甲子園への道しか見えない」
早川は少しだけ哀しげな表情したがすぐにまたあの微笑へと変化する。
「うん、そんなキミがボクは好きだから」
そして早川の表情はいつものエネルギッシュな笑顔に戻った。


時は進み、俺たち恋々高校野球部はいよいよ地区大会決勝
あかつき大付属高校との決戦をこのあとすぐに控えていた。
「私が言えるのはこれだけよ、みんな仲間を、自分を信じて。決して諦めないで」
顧問の加藤先生が言う。これに俺たちは大きな頷きと返事をかえした。
「じゃあ小波くん、今度は試合は止まらない。みんなに勇気をくれるコメントをひとつ頼むわ」
予想外の先生の言葉に一瞬呆然とする。
柄じゃないんだけどなと思いつつも今日この瞬間はみんなに伝えたい言葉が、
まるで用意されていたみたいに次々と浮かび上がってきた。

「正直創部まもない俺たちが甲子園に行こうだなんて夢物語かもしれない、
雲をつかむような話だ、でも俺たちはここにいる、甲子園の目の前まで来ている、雲を掴み取ってやろう!
駆け足で過ぎてく季節と風の中で俺たち恋々高校野球部は甲子園への地図をみつけたんだ。
死ぬほど努力はしてきた、気持ちがひとつになればきっとたどり着けるはずだ。
諦めないで踏み出そう、夢を掴み取ろう! 俺たちの夢がどんなに遠くに見えても、
ありったけの力であかつきを越えていこう! 行くぜみんな!!!」

「うおおおーーーーーっ!!!」
「やってやるでやんすーーー!!!」
「もはや恐れるものは何一つないぜーーー!!!」



運命のあかつき戦は奇跡的に恋々高校の勝利となる。
恋々の主砲小波があかつきのエース猪狩から文句なしのサヨナラホームランをもぎ取った。
そのあとの夏の甲子園予選でも猪狩は小波に敗れることとなるがこれが起因して
のちの日本シリーズにて歴史に残る大勝負をこの二人が繰り広げることになるがそれはまた別の話。
そして場面は試合終了後の恋々高校野球部部室・・・

「ボクまだ信じられないよ」
早川がまぶしいくらいの笑顔を見せる。
「みんなの努力が実ったんだ、今日ほど恋々に来て良かったと思えた日は無い」
「うん本当に・・・みんないつも以上の実力が出せてた感じだったし、小波キャプテンの言葉のおかげかな?」
早川がおどけて笑う。
「どうだろうな、まさに無我夢中って言葉が相応しいとは思ったが」
「本当にありがとう小波くん、ボクはキミに出会えて本当に良かった」
早川が俺の手を取って言う。
「早川、人間ってのは欲深い生き物だな、
甲子園出場が決まっただけでもすごいのに優勝したいと思ってる自分がいるんだ」
「でも、今ならどこまでも進める気がするよ、みんなと、キミと一緒に」
「そうだな・・・一緒に行こう早川」

そして俺たちは唇を重ねあった・・・

やがて春の甲子園にて、
あかつきを破り登場した恋々の主砲とエースは世間を大いに沸かすことになる。

おしまい。

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