実況パワフルプロ野球シリーズ@2chエロパロ板まとめwiki

ぱわQ1-2

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

1-2 


  講堂に集められた生徒の波の中で小波は、アヒルの群れに混じった白鳥の雛の心地を知
った。

  世代の平均より顔半分高い彼の身長は、同性の中にあってもそれなりに目立つが、周り
を女生徒に囲まれると闇夜の月である。壇上で長話を続ける学長は、ちょうどいい目印と
ばかりにこちらを見ている気がするし、壁際に立つ教師たちから丸見えなので、迂闊に欠
伸もできない。周囲の生徒からも好奇心に満ちた視線を感じる。

  もっとも、そんなものを気にするような神経でグラウンド、それもその一番高いところ
に立てる筈も無い。全方位から突き刺さる視線をさらりと無視し、いかにも真剣に話を聞
いている風を装いながら、小波は隙なく周囲に眼を這わせた。

  圧倒的多数を占める女生徒の中に、染みのように点々と男子の姿が見える。みんな自分
と同じような気分を味わっているのだろうかと思うと、話した事さえなくとも親近感は湧
いた。どこのクラスかを確かめて記憶にとどめる。後で部活に誘う為だ。向こうも自分同
様に、こちらに対して共感を覚えるようなら勧誘も楽になろう。そう考えればこの肩身狭
さも捨てたものではない。

  ──と、

「最後になりましたが、皆さんご入学おめでとうございます」

  ペコリと頭を下げる学長の、まだ話足りなそうな顔に向かって叩きつけるような拍手が
起こった。わざとらしくならない程度のタイミングでそれに便乗し、ぱちぱちと二度三度
手を叩く。

「やっと終わったでヤンスね」

  隣に並んでいた矢部がうっへりと呟いた。

「長話が好きなのは校長、学長になる最低条件か何かなんでヤンスかね?」

  思いの他皮肉った物言いに、小波は笑う。

「きっと選考試験の問題にあるんだよ。『入学おめでとう』という言葉を三千字以上に拡
張して述べよ、とかね」

「そんなのオイラでも出来そうでヤンス」

「五分間ていう時間制限付きなのさ。合格する連中の時計は、長針が一つ動くのに二分か
かるようにできてるんだ」

  スケジュールに狂いが生じた所為か、巻きに巻いた進行を繰り広げる生徒会を哀れみな
がら小波は言った。ちょうど校歌の段に入ったところで、時計と見比べてみれば張り出さ
れたプログラムからはまだ3分以上遅れている。心なしか伴奏のピアノさえもが急いて聞
こえた。二人の場違いなやり取りがツボに入ったのか、くすくすと周りから漏れる忍び笑
いもあって、歌詞も旋律もさっぱり耳につかない。なんとなく、歌い辛そうな曲だなとい
うのが正直な感想だ。

「はやいとこ、覚えなきゃな」

  別段、愛校心とかそう言った類の心根を持ち合わせての言葉ではない。

  高校野球は、試合に勝てばその度に歌う機会が訪れる。何度だって歌うつもりだ。それ
を毎回毎回口ぱくで凌ぐ訳にもいくまいというだけの話だ。部活を作る前から考えること
ではないかもしれないが、小波は掛け値なしの本気であった。

  もっともその為には、校歌の練習以上に野球のそれに身を入れなければならない。

「──そうだ。忘れてた」

「な、何でヤンスか?」

  結局駆け足のままに終わった入学式から、教室への帰り道。大きな声を出す小波に、矢
部はかすかに眉をひそめた。

「ああ、いや。入る部活もう決めたか聞こうと思って」

「ぶ、部活でヤンスか……」

  ギクッと大げさなほどに仰け反って、つつーっと視線を脇へ走らせる。あからさま過ぎ
る反応に、触れてはいけない話題だったかと内心舌打ちしながらも、話を振ってしまった
からには後戻ることも出来ない。敢えて小波はそのまま踏み込むことにした。

「うん、もうどこか入るところ決めた?」

「決めていた、というべきでヤンスか。決まっていない、というべきでヤンスか……」

「どっちなのさ」

  思わず半眼になる。それが怖かったのか、或いは単に語りたかっただけなのか、矢部は
眼鏡をくいっと押し上げて言う。

「聞くも涙、語るも涙の物語でヤンスが、そんなに聞きたいってぇんなら教えてしんぜや
しょう、でヤンス」

「まだ何も言ってないけど。っていうか、さっきからずっと聞きたかったんだけどキミお
国はいったい何処ですか」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー