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ぱわQ1-4

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匿名ユーザー

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 1-4


「──うん、大丈夫そうね。ちょっとコブになってるけど、きちんと冷やせば今日中に元
に戻るわ」

「ありがとうございます」

「女の子なんだから、怪我にはもっと気をつけなさいね」

「はーい」

  声だけは元気な返事に、保険医──加藤里香は苦笑した。

  明日返してね、と冷蔵庫から取り出した氷嚢を少女に手渡して、待たしていた小波と矢
部の方へ向き直る。矢部も既に治療を終えて、同じように氷を額に当てていた。

  一転、眉を逆八の字に曲げて、子供でもしかるような口調で言う。

「あなたたちも、こんなかわいい子に怪我させちゃ駄目でしょ」

「面目ありません」

「返す言葉もないでヤンス」

  年上の女性ならではの、逆らうという考え自体が浮んでこないような雰囲気の前に、二
人は深々と頭を下げた。ぴたりと揃ったその様が面白かったのか、里香と少女は顔を見合
わせて笑った。

「もういいよ。大したことなかったし」

  話題を打ち切るように、手をわさわさと大きく少女。本人がそう言う以上、蒸し返すの
も何なので、小波はもう一度軽く頭を下げるだけに留めた。

「それよりキミたち、何か急いでたんじゃないの?」

  照れくささの為か、少しばかり唐突に話題転換をして、少女は小首をかしげた。もとも
と、今の状況を生み出したのが急いた矢部の暴走なのだから、当然の疑問ではあるが。

  小波は青春を、と答えたくなる自分を堪えて頷いた。

「ちょっと職員室にね」

「野球部の設立手続きと、顧問をしてくれる先生を探しに行くところだったんでヤンス」

「冷静に考えてみればちっとも急ぐようなことじゃないよね」

  じろりと矢部の方に目線をやると、下手な口笛を吹き始める。煩いので勘弁してやるこ
とにした。

「今日は午前授業だから、先生方もすぐ帰っちゃうわよ」

  何故かニコニコと不可解な笑みを浮かべながら、里香が告げる。その目が少女のほうに
向けられていることに更に謎を覚えながらも、小波はその疑問を自分の心の中に閉まった。
気のせいだろう、と思ったのだった。

  少女が驚いたように目を見開いていたのも、まあ当然の反応だろう。

「じゃあ、矢部くんの所為で余計な道草になっちゃったけど、そろそろ行こうか」

「その通りなんでヤンスが、小波くん。できれば、もう少しオブラートに包んだ物言いを
して欲しいでヤンス」

「因果応報って知ってる?」

「仏教用語でヤンスね。異教徒の概念でヤンス」

  ナンセンスだ、とばかりに肩を竦める矢部。皮肉の通じないのはわざとなのか本気なの
か。

「矢部くんは、何か信じてる神様でも居るの?」

「それはもちろん。神様、仏様、トミノ様でヤンス」

  誰それ、と聞いてしまったが為に、彼の信じる神の凄さを滔々と語りだした矢部をなん
とか宥めて、小波は保健室を後にした。

「どうもいろいろ──」

「失礼しましたでヤンス」

  その際、里香が「またね?」なんぞと言い出したものだから、興奮して早くもメガネの
誓いを破りそうになる相方によって、小波はドッとやる気を削がれる羽目に陥った。おま
けに、ようやく辿り着いた職員室ではたらいまわしの挙句「そういうことは理事長に直接
頼むよ」と片付けられる始末である。

  再び生徒手帳を片手に、理事長室の前まで辿り着いた頃には、当初の気合など半分も残
っていなかった。陳腐な話だが、残っているのは野球への愛と、単なる意地ばかりである。

  職員室や保健室を含めた、他の部屋部屋がすべて引き戸であったのに対して、唯一ノブ
のついた頑丈そうな扉。その前で、二人は顔を合わせて綿密な打ち合わせを行う。

「ここの理事長は、まわりの反対を押し切って共学を推し進めたようなやり手だって話な
んだ。下手なことをして機嫌を損ねたら不味いことになるよ」

「分かったでヤンス。じゃあ、オイラは──」

「うん。絶対口を開かないでね」

  あれ、と肩透かしをくらったように体勢を崩す矢部を置いて、手の甲で二度、黒樫の戸
を叩く。

『──入っていいですよ』

「失礼します」


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