「仕様書!やかんの下!」「奴めどこへ消えた」「誰だよこのスペルミス…」「今から直すわけ」
「首に縄結んで出社させろー」「はい、ええ、生憎サーバーの調子が」「…でどうすれば完成?」
「首に縄結んで出社させろー」「はい、ええ、生憎サーバーの調子が」「…でどうすれば完成?」
がばっ、…ベッドの上。白いシーツ。麻の寝間着。漆喰の壁。水瓶。藁の屋根。
暖炉の上には油の切れたランプ…いつもの俺の家だよな。俺は着替えて外へ出た。
いつもの朝に、いつもの街。煉瓦を敷いた道に、広がる牧草地。
「おはよう!どうしたんだい、怪訝な顔をして。明日結婚式だろ、元気つけときな」
向かいの食堂のおばちゃんは、そう言うと、雑炊になにか粉をかけて寄越した。
「これ…」「胡椒って言うんだ。疲れが取れるよ。ちょっと手に入ったんでね、サービス」
「ありがと…なに、ここ最近、時々妙な夢を見るんだ…やけにリアルな…死の誘いのような」
おばちゃんは俺の、辛さで一層変になった顔をじーっと見つめる。
「あんたは小さい時村を襲った化け物からもっと小さい子を庇って一度死んだ。そりゃ確かさ。
でもね、あんたの親御さんが、なけなしの牛と畑を教会に寄進して、あんたは生き返った。
何の変わりも無く元気に育って、明日結婚式。変な事考えずに親御さん喜ばしてやんな」
と言って、おばちゃんは俺の肩をばしばし叩く。…だよな。俺はここで育った。
俺の親は式に親戚を集めるため昨日から出かけている。何の不思議も無い。
ユウリの顔を見ればもやもやもふっ飛ぶだろう。俺は婚約者の住む家へ歩き出した。
暖炉の上には油の切れたランプ…いつもの俺の家だよな。俺は着替えて外へ出た。
いつもの朝に、いつもの街。煉瓦を敷いた道に、広がる牧草地。
「おはよう!どうしたんだい、怪訝な顔をして。明日結婚式だろ、元気つけときな」
向かいの食堂のおばちゃんは、そう言うと、雑炊になにか粉をかけて寄越した。
「これ…」「胡椒って言うんだ。疲れが取れるよ。ちょっと手に入ったんでね、サービス」
「ありがと…なに、ここ最近、時々妙な夢を見るんだ…やけにリアルな…死の誘いのような」
おばちゃんは俺の、辛さで一層変になった顔をじーっと見つめる。
「あんたは小さい時村を襲った化け物からもっと小さい子を庇って一度死んだ。そりゃ確かさ。
でもね、あんたの親御さんが、なけなしの牛と畑を教会に寄進して、あんたは生き返った。
何の変わりも無く元気に育って、明日結婚式。変な事考えずに親御さん喜ばしてやんな」
と言って、おばちゃんは俺の肩をばしばし叩く。…だよな。俺はここで育った。
俺の親は式に親戚を集めるため昨日から出かけている。何の不思議も無い。
ユウリの顔を見ればもやもやもふっ飛ぶだろう。俺は婚約者の住む家へ歩き出した。
「でな、繰り上がって、10となるが、これは$Aとも書いてな…」
道端で、長老が子供を集めて数を教えている。俺もあの子らと同じように習った…はずなのだが、
今日は$Aという表記がやけに気に障る。
この街が帝国に併合されて以来、通貨単位を揃えるため16進数を覚えさせられた…よな。
じいさんは四本の指で器用に0から15までを数えてみせる。子供に交じって俺が見とれていると…
「リューヤ、なに、今更お勉強?」声だけでわかる。俺はゆっくり顔を上げた。
赤いスカート、白い服にりんごを抱えた、「橘さん」俺は照れて…え?
「ん?誰?」ユウリは俺の顔を覗き込んで来る。
「…もしかして、あたしじゃ本当は嫌な」「そ、そんなことは無い!…俺も知らない名前だ」
タチバナ…本当に誰だ?
今日は$Aという表記がやけに気に障る。
この街が帝国に併合されて以来、通貨単位を揃えるため16進数を覚えさせられた…よな。
じいさんは四本の指で器用に0から15までを数えてみせる。子供に交じって俺が見とれていると…
「リューヤ、なに、今更お勉強?」声だけでわかる。俺はゆっくり顔を上げた。
赤いスカート、白い服にりんごを抱えた、「橘さん」俺は照れて…え?
「ん?誰?」ユウリは俺の顔を覗き込んで来る。
「…もしかして、あたしじゃ本当は嫌な」「そ、そんなことは無い!…俺も知らない名前だ」
タチバナ…本当に誰だ?
ユウリの追及は、駆け込んできた男…一瞬名前が出て来なかったがカイン、のおかげで逃れられた。
「長老!大変です!犬顔のやつらが、また攻めてきます!」
「なんと…しかし、駐在の騎士さんがいるじゃろう。今回も大丈夫じゃよ」
帝国に併合されて、我が物顔な連中が住むようになったが、こういう時はそんな連中が頼りになる。
「俺、狩りに行ってたら…偶然見て…奴らに味方が…う」
俺や長老、ユウリの目の前で、カインは膨れ、背中が避け、影が起き上がり…
「長老!大変です!犬顔のやつらが、また攻めてきます!」
「なんと…しかし、駐在の騎士さんがいるじゃろう。今回も大丈夫じゃよ」
帝国に併合されて、我が物顔な連中が住むようになったが、こういう時はそんな連中が頼りになる。
「俺、狩りに行ってたら…偶然見て…奴らに味方が…う」
俺や長老、ユウリの目の前で、カインは膨れ、背中が避け、影が起き上がり…
悲鳴をあげる暇も与えず、長老は呪文を唱えはじめる。
…if(dynamic_cast<shadow*>(this) != 0){return this;}…
俺は不思議な感覚に襲われた。長老の言葉のひとつひとつが、まるで文字の様に「見える」。
「悪魔め!己が住む世界へ帰れ!帰れ!」長老は呪文を続けるが、「影」は耐えている。
長老一人では力が足りないのか?俺は、とっさに長老の持つ指輪に手を触れ、叫んだ。
…if(dynamic_cast<shadow*>(this) != 0){return this;}…
俺は不思議な感覚に襲われた。長老の言葉のひとつひとつが、まるで文字の様に「見える」。
「悪魔め!己が住む世界へ帰れ!帰れ!」長老は呪文を続けるが、「影」は耐えている。
長老一人では力が足りないのか?俺は、とっさに長老の持つ指輪に手を触れ、叫んだ。
delete this;
影は掻き消えた。
すぐさま集まってきた人々の手で、可哀想な男は包帯でぐるぐる巻きにされている。
…あれ、名前、なんだったっけ。
ええと、さっきのはdeleteしてしまって良かったんだよな。後でダングリングポインタが
残ってて落ちたりしないよな。デストラクタにvirtual書き忘れたなんてオチは勘弁してくれよ。
僕が次のソースを探していると、女の人に声をかけられた。
「リューヤ、今の、あなたが…?」
僕は一瞬言葉が出なかった。受け付けの橘さんが、僕に口を聞いてくれている!
すぐさま集まってきた人々の手で、可哀想な男は包帯でぐるぐる巻きにされている。
…あれ、名前、なんだったっけ。
ええと、さっきのはdeleteしてしまって良かったんだよな。後でダングリングポインタが
残ってて落ちたりしないよな。デストラクタにvirtual書き忘れたなんてオチは勘弁してくれよ。
僕が次のソースを探していると、女の人に声をかけられた。
「リューヤ、今の、あなたが…?」
僕は一瞬言葉が出なかった。受け付けの橘さんが、僕に口を聞いてくれている!
…って、ここは、開発室じゃなくて?社内でもなくて?
僕は愕然とした。ディスプレイに向かって、終わらないデバッグの最中だった筈だ。
何故、こんなヨーロッパ?の田舎で、橘さんと話を…。
いや…段々思い出してきた。社内の憧れの的橘さんは、先月課長に持ってかれて引退したのでは
無かったか?…辞めるプログラマー続出だった事も覚えている。
「すまない…君は、誰?」
僕は愕然とした。ディスプレイに向かって、終わらないデバッグの最中だった筈だ。
何故、こんなヨーロッパ?の田舎で、橘さんと話を…。
いや…段々思い出してきた。社内の憧れの的橘さんは、先月課長に持ってかれて引退したのでは
無かったか?…辞めるプログラマー続出だった事も覚えている。
「すまない…君は、誰?」
その夜、僕は寝つけなかった。堅いベッドのせいじゃない。床で寝るよりマシだ。
明日になれば、親が親戚連れて帰ってきて、橘さんじゃなくてユウリさんと結婚式…って。
まだ7時か8時とは思うが、暗い。明かりはまるで無い。
ぼーっと天井を見ていると、思い出した。
僕は、デバッグの果て見つけ出した箇所にdelete this;の一文を書き足すと、緊張の糸が切れたか
そのまま倒れ込んで…周囲の「竜也!竜也!」という声が聞こえて…。
明日になれば、親が親戚連れて帰ってきて、橘さんじゃなくてユウリさんと結婚式…って。
まだ7時か8時とは思うが、暗い。明かりはまるで無い。
ぼーっと天井を見ていると、思い出した。
僕は、デバッグの果て見つけ出した箇所にdelete this;の一文を書き足すと、緊張の糸が切れたか
そのまま倒れ込んで…周囲の「竜也!竜也!」という声が聞こえて…。
…死に際に見ている夢ならそれもいいだろう。
何故こうなったか知らないが、この世界は悪くないような気がする。
そもそもユウリさんと、というか女性と会話ができたというだけで価値はある。(我ながら情けないが)
…流石に結婚式は取りやめになるだろうけど…。
何故こうなったか知らないが、この世界は悪くないような気がする。
そもそもユウリさんと、というか女性と会話ができたというだけで価値はある。(我ながら情けないが)
…流石に結婚式は取りやめになるだろうけど…。
少しして、ランタンって言うの?向かいのおばさんが鉄とガラスでできた提灯みたいなのを持って
駆け込んできた。
「リューヤ!ユウリが、脳震盪に効く薬草があるって聞くなり、時間構わず森へ行ったって!」
僕はがばっと起き上がった。
森は確か昼間の男が、なんつーかとにかく化け物がいると言っていた(とあの後長老に聞いた)!
「持っておゆき!」僕はランタンを受けとると、走り出した。
駆け込んできた。
「リューヤ!ユウリが、脳震盪に効く薬草があるって聞くなり、時間構わず森へ行ったって!」
僕はがばっと起き上がった。
森は確か昼間の男が、なんつーかとにかく化け物がいると言っていた(とあの後長老に聞いた)!
「持っておゆき!」僕はランタンを受けとると、走り出した。
街の入り口で、博物館にありそうな鎧(漫画の奴よりは遥かに軽装だ)を着た男達が番をしていた。
「ドット網だなんて、三世陛下はなにを考えておられるのか…」
なにかの噂話をしているらしいが、無視してわめく。「森に女性が!」
男達は顔を見合わせていたが、ぽつりと言う。「…あのな。俺達はこの街に駐屯してはいるが」
…えーい。どこの警察も言うことやる事同じかっ!僕は最後まで聞かずに再び走り出した。
「ドット網だなんて、三世陛下はなにを考えておられるのか…」
なにかの噂話をしているらしいが、無視してわめく。「森に女性が!」
男達は顔を見合わせていたが、ぽつりと言う。「…あのな。俺達はこの街に駐屯してはいるが」
…えーい。どこの警察も言うことやる事同じかっ!僕は最後まで聞かずに再び走り出した。
迷う心配は不要だった。もっと最悪だったわけだが。
森の入り口のところで、ユウリさんと、直立歩行している動物数匹、向かい合っている。
動物達の後ろに、青白い顔の猫目の人型生物(としか言い様がない)が控えている。
人型生物は、長老が持っていたのと同じような指輪をかざすと、彼女に近づいてゆく。
森の入り口のところで、ユウリさんと、直立歩行している動物数匹、向かい合っている。
動物達の後ろに、青白い顔の猫目の人型生物(としか言い様がない)が控えている。
人型生物は、長老が持っていたのと同じような指輪をかざすと、彼女に近づいてゆく。
「伏せて!」僕は走り出した。
これが僕の夢や妄想なら何も問題はないわけだし、とか考えながら。
これが僕の夢や妄想なら何も問題はないわけだし、とか考えながら。
「来ちゃだめぇ!」
ユウリさんは、突然振り返ると僕の前に飛び出した。
その背後に青く光る何かが突き刺さる。
発光している人型生物の腕が、服と皮と内蔵とを突き破って、腹を貫通している。
血溜まり。飛び散る内蔵。
その背後に青く光る何かが突き刺さる。
発光している人型生物の腕が、服と皮と内蔵とを突き破って、腹を貫通している。
血溜まり。飛び散る内蔵。
…これが、夢や妄想か?
僕は無我夢中でそいつの指に噛みついて、指ごと食い千切った。
気味の悪い味がする。地面に落ちたランタンの光りに照らされ、血の色が赤では無いことがわかる。
構ってられない。僕はそいつの指を吐き捨て、指輪をつかむと、自分の指に滑り込ませる。
ふと、目の前に文字が浮かぶような感覚に襲われた。
気味の悪い味がする。地面に落ちたランタンの光りに照らされ、血の色が赤では無いことがわかる。
構ってられない。僕はそいつの指を吐き捨て、指輪をつかむと、自分の指に滑り込ませる。
ふと、目の前に文字が浮かぶような感覚に襲われた。
$
迷わず、叫ぶ。「ps -e」
それらしいのを適当に選ぶと、僕は連呼した。「killっ!killっ!killkillkillkill…」
気がつくと、奴らは全てくたばっていた。
それらしいのを適当に選ぶと、僕は連呼した。「killっ!killっ!killkillkillkill…」
気がつくと、奴らは全てくたばっていた。
全身を赤と青の血で染め分けながら帰り着いた僕は、彼女の位置を教えると、座り込んだ。
彼女を抱えて帰ろう、とか、墓を作ろう、とか、そんな勇気はとても無かった。
でも、指輪はその辺の石で砕いてきた。
命令が現実に影響するというのは、興味があるよりも先に恐ろしいし、そもそも
あの人型生物のものだったと思うと、持っている気もしない。
いきなり…ずっとここで暮らしてきたはずなのだが、実感としていきなり、
放り出されたこの世界で、する事を無くした気がする。
彼女を抱えて帰ろう、とか、墓を作ろう、とか、そんな勇気はとても無かった。
でも、指輪はその辺の石で砕いてきた。
命令が現実に影響するというのは、興味があるよりも先に恐ろしいし、そもそも
あの人型生物のものだったと思うと、持っている気もしない。
いきなり…ずっとここで暮らしてきたはずなのだが、実感としていきなり、
放り出されたこの世界で、する事を無くした気がする。
こちらの世界での両親が帰ってきたとして、事情を説明する自信も無い。
それより早く僕は街を出ようとした。
しかし、まだ朝焼けの時間帯というのに、街の門のところには既に人がいる。
ここでは朝早いのは普通なのかも知れない、と思って、普通に通り過ぎようとしたら、
呼び止められた。見ると黒尽くめに白、十字架、神父さんのような格好だ。
それより早く僕は街を出ようとした。
しかし、まだ朝焼けの時間帯というのに、街の門のところには既に人がいる。
ここでは朝早いのは普通なのかも知れない、と思って、普通に通り過ぎようとしたら、
呼び止められた。見ると黒尽くめに白、十字架、神父さんのような格好だ。
「覚えているかね?教会のジョーダンだ」
やっぱり神父さんらしい。それにしても、結婚式関係と思ったら、覚えているかね、とは?
「覚えていない、か…ちょっと、散歩に付き合いたまえ」
神父さんはそう言うと歩き出した。しかたなく付いていく。
街を外れ、牧草地を外れ、どこまで行くのか心配になったところで、衝撃の発言。
街を外れ、牧草地を外れ、どこまで行くのか心配になったところで、衝撃の発言。
「君は、私が生き返らせた」
僕があわてふためき言葉を絞り出せないでいるのも構わず、神父さんは続ける。
「君の御両親に頼まれ、蘇生を試みた時、君の魂は既に失われていた。
だが、霊界にはそんな身体に呼応する魂があった。よほど似ていたのだろう、
私が何をする間もなくその魂は吸い込まれるように身体へ入ってしまった。
目が覚めた君は、今までのことも覚えていたし、何ら変わりは無いようだった。
ひょっとしたら私の勘違いで、あれは本当に君の魂だったのかとも思っていたが」
……。
要するに、死んだ僕は、たまたま自分のと似た身体に入ってしまったらしい。
「はあ。…わかりました。でも、それなら元の持ち主に返してあげてください」
あんな事があって、そんな話を聞いて、僕は執着心を失っていた。
しかし、神父さんは首を振る。
「元の持ち主が既にいないから、ええと、今の君の魂はその身体に入る事ができたのだ」
「君の御両親に頼まれ、蘇生を試みた時、君の魂は既に失われていた。
だが、霊界にはそんな身体に呼応する魂があった。よほど似ていたのだろう、
私が何をする間もなくその魂は吸い込まれるように身体へ入ってしまった。
目が覚めた君は、今までのことも覚えていたし、何ら変わりは無いようだった。
ひょっとしたら私の勘違いで、あれは本当に君の魂だったのかとも思っていたが」
……。
要するに、死んだ僕は、たまたま自分のと似た身体に入ってしまったらしい。
「はあ。…わかりました。でも、それなら元の持ち主に返してあげてください」
あんな事があって、そんな話を聞いて、僕は執着心を失っていた。
しかし、神父さんは首を振る。
「元の持ち主が既にいないから、ええと、今の君の魂はその身体に入る事ができたのだ」
「せめてユウリさんを生き返らせてください!あなたならきっと!何でもします!」
神父はそれも首を振る。
「青白く光っての死というならそれはドレインだ。魂は既にロストしているだろう…」
そんな…。
神父はそれも首を振る。
「青白く光っての死というならそれはドレインだ。魂は既にロストしているだろう…」
そんな…。
だが、神父は続けた。
「或いは、全能の権限を持つ、神の合言葉があれば、可能やも知れぬ」
rootのパスワード!
「…君と話をしに来たのもそれなんだよ。離れた地で、神のパスワードを探す輩がいる。
報告では王は騙され姫が犠牲になったらしい…神のパスワードというのは、
本来使ってはならぬもの。私も教条的になるつもりは無いが、そんな輩に使わせるのだけは
何としても止めたい。…それで、だ。どうもその輩も異世界の人間らしく、
ちょうど君の記憶が蘇ったところで、君に心当たりがあれば、と思ったのだが」
「或いは、全能の権限を持つ、神の合言葉があれば、可能やも知れぬ」
rootのパスワード!
「…君と話をしに来たのもそれなんだよ。離れた地で、神のパスワードを探す輩がいる。
報告では王は騙され姫が犠牲になったらしい…神のパスワードというのは、
本来使ってはならぬもの。私も教条的になるつもりは無いが、そんな輩に使わせるのだけは
何としても止めたい。…それで、だ。どうもその輩も異世界の人間らしく、
ちょうど君の記憶が蘇ったところで、君に心当たりがあれば、と思ったのだが」
そんなものを知りたがる人間は…心当たりがあり過ぎる。
というか、僕の世界から来た人間で、ある程度知識があって、神の合言葉なんて単語を聞けば、
十人が十人きっと探しはじめる。いや、僕だって、今、探したいと思いはじめている。
というか、僕の世界から来た人間で、ある程度知識があって、神の合言葉なんて単語を聞けば、
十人が十人きっと探しはじめる。いや、僕だって、今、探したいと思いはじめている。
「わかりました。協力します、いや、させてください!
…ただ、最後にちょっと、叶えたい願いがあるのですが」
自分が帰りたいとは思わないけれど。
ユウリさんを生き返らせて、できることならこの身体を元の持ち主に返してあげたい。
…ただ、最後にちょっと、叶えたい願いがあるのですが」
自分が帰りたいとは思わないけれど。
ユウリさんを生き返らせて、できることならこの身体を元の持ち主に返してあげたい。
神父さんはうなずくと、僕の手に指輪を握らせた。
それを指にはめ、コードを唱えはじめる。flyweight──大空へ!
僕の旅ははじまった。
それを指にはめ、コードを唱えはじめる。flyweight──大空へ!
僕の旅ははじまった。
//恥ずかしいのでこれで完です