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あねくろ@臨時まとめ
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あねくろ@臨時まとめ

デートの日

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
(舞人内面世界)


最初は恩返しのつもりだった。
クラス替えの日に声をかけ、親しくなった女子生徒。
いつも居眠りをする舞人を起こしてくれた。
宿題を忘れた舞人に、説教をしながらも最後には写させてくれた。
問題が分からずに困っていると、こっそりノートを視界の隅に置き、示してくれた。
いつも世話になりっぱなしの少女に、少し恩を返そうとノートを抱えてよたよたと歩いているところに救いの手を差し伸べた。
ただそれだけだった。
だがそれが何度か繰り返されるうちに、それは少しずつ、少しずつ好意へと変わっていく。
もっと志乃と仲良くなりたい。
話したい。笑いたい。
しょっちゅう説教されるけど、それも含めて舞人にとっては充実した時間だった。
しかし――
誰にも優しい志乃。
その笑顔は舞人だけに向けられるものではない。
(……性分なんだろーか。世話を焼きたくなるのが……)
微妙な女心になど気づけるはずも無く、舞人は志乃の真意を測りかねていた。
(しのしのにとって俺は、世話の焼き甲斐があるクラスメイトなだけなのかも……)
何のとりえも無い自分。
成績も、運動神経も人並み以下。
特技だって何も無いし、ルックスだって並の並。
特別な感情を抱いてもらえるような点は何も無い。
(……だったら、変に冒険するより……今のままでもいい)
もちろんもっと親密にはなりたかったが、この心地よい関係を壊したくない。
その強い想いが、舞人から度胸だの根性だのを失わせていた。


(内面終了)

(回想)

「映画、楽しかったねぇー」
「ああ、そうだな。最初はB級の臭いがプンプンしてたが、いやはやどうしてこれは……」
日曜日。
映画館から出てきた二人は、互いに感想を述べ合って笑っていた。
志乃の笑顔がまぶしい。
それは、想像以上に楽しかった映画のせいだけではないだろう。
午前の上映を観に行ったので、まだまだ日は高い。
それから二人は、商店街でウィンドウショッピングを楽しみ、小洒落たお店でお昼を食べ、公園を散歩して思う存分休日を楽しんだ。
「ふぅー。さすがに、疲れてきたねー」
「そーだな」
楽しい時間はあっという間に過ぎるというのは本当らしい。
すでに日が傾いていた。
「舞人くんは時間、大丈夫なの?」
「ああ。連休だから家族たち昨日から小旅行にいっててさ。今、気楽なプチ独り暮らし状態だし」
いくら遅くなっても問題はない、そういって笑う舞人。
「え……それじゃ、誘っちゃって悪いことしたかなぁ?」
志乃は逆に、不安げな顔になった。
「いやいや。最初から三人でいく予定だったから。商店街の福引であてたペア招待券に、妹の分を買い足してな」
「そ、そうだったんだ……ほっ」
露骨に安堵する志乃。
「あ……そっか、カップめん切らしてたから買って帰らないと」
どうでもいいことを思い出す舞人。
「舞人くん……独り暮らし状態だからって、カップめんは体によくないよぅ」
そのどうでもいい呟きを拾い、プチお説教モードに突入する志乃。
「い、いや。俺料理苦手だしさ」
「でも、その口ぶりからすると昨日からずっとカップめんなんでしょ?」
「ずっとって……昨日三食と今日の朝飯だけだって」
「十分だよぉ……」
じとーっと舞人をにらむ志乃。
「そんなにいうなら、しのしのが夕飯作ってくれよ」
思わず、そんな言葉が口を飛び出していた。
カマをかけてみよう。そういう気持ちがわずかながらにあったのかもしれない。
「えっ……」
一気に真っ赤になり、口ごもる志乃。
「………」
ほんの一瞬のうちに、いろいろな想いが頭の中を駆け巡る。
(せっかく舞人くんの方からお誘いしてくれてるのに……。勇気……もう一度、勇気出さないと……!)
(ちょwwwなにその反応wwwwフラグのようにも思えるんですけどwwww)
真っ赤になって黙り込んだ志乃を見て、舞人は内心で激しく動揺しつつも、続く言葉に舞い上がっていた。




「……うん。いいよ。今日の晩御飯、作ってあげる」


(暗転)


「ふぃー、美味かったー」
「お粗末様」
八神家の食卓に並んだ料理は、綺麗に片付けられていた。
食卓には、舞人と志乃の二人きり。
志乃が作ってあげたのは、何の変哲も無いカレーだった。
「いや、ホント美味かった。母さんのより13倍くらいは」
「なに、その中途半端な数字」
舞人の例えに、くすくすと微笑む志乃。
そんな時間が、志乃にとっては幸せだった。
最初こそ、初めてあがる男の子の――それも好きな人の――家ということで緊張していたが、大好きな料理をしているうちに、だんだんと慣れていった。
やがて、ソファーでそわそわと待つ舞人を横目で眺めながらお鍋をかき回している自分の姿に、幸せすら感じる余裕が生まれてきた。
(こんなに安心できるのは、やっぱり舞人くんだからかな……)
二人きりだというのに、不安はなかった。
それどころか、期待の方が勝っていた。
(舞人くんから誘ってくれたんだもん……もしかしたら、もしかするかも……)
そう考えると、再び軽く緊張してきた。
ドキドキと胸の鼓動が早くなる。
(……な、なんという新妻さん状態)
一方の舞人も、料理の出来に満足しつつも、この状況に順応しかけている自分がいたことに気づき、軽く焦っていた。
今までまともに女の子とデートしたことすらなかった童貞オタクの自分が、デート初日で女の子を家に上げているとは。
あまつさえその女の子と、談笑しながら夕飯を共にしているとは。
これがエロゲなら、確実にフラグが立っているところである。
(しかしここは現実世界だ……)
ゲームでは何人もの女の子を落としてきた舞人だが、現実の女心はこれっぽっちも理解できていない。
もしかしたら、クラスメイトの不健康な生活を黙って見過ごせなかっただけかも。
そういった思いが、いまだに捨てきれずにいた。
「……」
「……」
沈黙。
それがどれだけの時間続いたのか、正直分からなかった。
「あっ、じゃあ舞人くん、お皿洗っちゃうね!」
沈黙を破るように、志乃が立ち上がってお皿を片付け始めた。
(なら……もう一度くらい、カマかけてみようか……)
舞人は腹をくくって、賭けに打って出ていた。
「なぁ……しのしの。その、舞人くん、っての止めてくれないか?」
「……えっ?」
志乃の心底悲しそうな顔。
これだけでも十分のようにも思えたが、舞人はさらに続ける。
「くん付けってのはどーもくすぐったくて。呼び捨てでいいよ、舞人って」
「あ……」
続く言葉に、志乃の顔から悲しみが消えた。
だが、変わりに戸惑いと羞恥、そして僅かな喜びの色が浮かんでいた。
「駄目かな……? ………志乃」
「……!!」
そのときお志乃の顔は、忘れようもなかった。
花畑の花がが一斉に開いたような、そんな笑顔。
「……うん、わかったよ……ま、舞人」
少しはにかんだ志乃。
「……お、おう」
俺は志乃が好き。
舞人がそう確信したのは、そのときが最初だった。

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