グランゼーラ革命軍は、耐用年数をすぎたヨルムンガンド級宇宙輸送艦数十隻を
アステロイドベルトに点在する岩礁の陰に隠して立てこもっていた。

これらの輸送艦は地球連合軍が民間企業と共同で開発したものであったが、廃棄されたものを
革命軍側が改修し、燃料ユニットの増設によってより長い航続距離を実現していた。
ただ、あくまでも輸送艦であるので、地球連合軍側の宇宙戦艦や巡洋艦のような
強力な兵装を持たない。
短射程の対空バルカンを2門持つのみである。
かわりに“デコイ”という囮を発生させ、敵の目を欺くことができた。


 グランゼーラ革命軍艦隊(輸送艦だけで構成されたこの集まりをそう呼ぶのなら)の旗艦
「イマジン」の艦内は緊張に満ちていた。

戦いの準備はできるだけのことはしたが、相手は連合軍の大艦隊である。
その総司令官ウィラードの勇名は革命軍とて知らぬ者はなく、緊張は増すばかりだった。

 その艦内を、陽に焼けた肌の、体格の良い男が歩いている。
年齢は30代半ばに見えるが、そのどこか穏やかな仕草から見るに、
もう少し年齢を重ねているかも知れない。

彼はクルーの緊張をほぐすために艦内を見て回っていた。
凛とした声の、勝利への強い信念をもつ彼を話をすると、皆自分も勇気が出るように感じられた。


 今回の作戦が成功するための一縷の望みは、
ハルバーがかねてから進めてきたプロジェクトにかかっていた。

ハルバーは軍事面よりも政治面に秀でた人物で、戦闘においても「戦術」ではなく
「戦略」で勝利を収めようとするタイプであった。

その先見性は皆の認めるところであったが、彼の推し進めてきたプロジェクト―
新型ミサイル爆撃機の開発には疑問の声も多かった。


 しかしここに至って、革命軍はそのプロジェクトに命運をかけることになったのである。



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最終更新:2011年07月17日 16:35